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第22話
「だ〜!つかれたぁ〜」
ゼロは、帰ってくるなりソファーに倒れ込んだ。
「あれだけ暴れれば当たり前よ・・・全く・・・」
アルは呆れている。
その横で、ゼロは大口を開けてあくびをする。
「ねみ・・・俺、もうねるわ・・・」
「あれ?晩御飯は?」
「ん〜・・・今日はいいや・・・とにかく眠い・・・」
「そう・・・」
アルは少し残念そうな表情を見せる。
「まぁいいか・・・お休みなさい・・・」
「ん・・・お休み・・・」
言って、ゼロは眠りについた。
ーーーー
・・・誰かが動く気配がする。
時間的には、恐らく夜中だろう。
「ん・・・う・・・」
ゼロはまどろんでいた。
誰かが足下に立って、何か言っている気がする。
ゼロは耳を傾けた。
「・・・さよなら・・・ゼロ・・・」
・・・さよなら?
こんな夜中に?
何故?誰だ?
ゼロは、混乱した頭を抱えて起きあがった。
足下には誰もいない。
「夢・・・か・・・」
ふぅ・・・と、ため息をついて、もう一度横になる。
と、ここでゼロは異変に気付いた。
「・・・あれ?・・・アルがいねぇな・・・」
アルがいない。
さっきの夢が頭をよぎる。
ゼロは、家中を探したが、アルは見つからなかった。
「・・・まさか・・・あれは夢じゃなくて・・・」
“さよなら”
何気ないこの言葉の意味。
ゼロは、その意味を理解して、現実を叩きつけられる。
理由はよくわからないが、アルはいない。
そして、“さよなら”と言う言葉。
その言葉には、どこか決意のようなものが感じられた。
「・・・何なんだ一体?・・・落ち着け・・・落ち着いて考えろ・・・」
すぅ・・・と、深呼吸をする。
「・・・アルの装備品は置いてある。つまり、狩りには出てないよな。とすると・・・街か?」
ゼロは家の外にでる。
すると、沢山の足跡が街に向かってのびていた。
「やっぱり街か・・・けど、何でこんなに足跡があるんだ?4、5人じゃあこうはならねぇぞ・・・。急いだ方がいいか・・・」
部屋に戻り、ベッドに寝ていたリリスを起こす。
「・・・なに?・・・」
リリスは眠そうな顔で体を起こす。
「すまない、リリス。兄ちゃんはちょっと街まで行かなきゃいけなくなった。ちょっと留守番しててくれるか?」
「え?・・・うん・・・」
コックリ頷く。
「すまない。出来るだけ早くもどるから。・・・じゃ、ちょっと行ってくるな。」
そう言って、家を飛び出した。
ーーーーー
走る。
さっきから妙な胸騒ぎがする。
体が、とにかく急げと命令する。
「はっ、はっ、はっ・・・」
ゼロは、一度も立ち止まらずに走った。
しかし、アルに追いつかない。
足跡からして、走った様子はない。
恐らく、随分前にここを通ったのだろう。
・・・結局、アルには追いつけないまま、街にたどり着いた。
街の通路は石が敷き詰められているため、足跡を辿ることは出来ない。
「・・・ここからは聞き込みか・・・て言っても、この街で頼れる奴は・・・ミリアとジョンくらいか・・・確かジョンは今日、豪邸の方に戻ってるっていったな・・・」
ジョンは普段、格安の貸家をとって、そこに暮らしている。
家の金を使うのを嫌っての事らしい。
ふぅ・・・と、息を整えて、ゼロは夜中の街の中を走り出した。
ーーーーー
ゼロは、まずミリアの家に向かった。
位置的にミリアの家の方が近いのが理由だ。
ゼロがミリアの部屋の窓を見ると、明かりは消えていた。
「・・・まぁ、当然と言えば当然か。・・・とりあえず・・・」
ヒュッ・・・と、足下にあった石を投げる。
カツン
「・・・」
反応なし。
カツン
「・・・」
2発目にも反応はない。
「3度目の正直・・・よっ・・・と」
カツン
・・・ガタン
「誰?こんな夜中に?」
ミリアが窓から顔を出した。
「俺だ。」
「・・・あんた、こんな夜中に随分気合いの入ったイタズラね・・・」
「いや、違うんだって。」
「じゃあ何?事と次第によっては殺すわよ。」
ミリアは、早く寝かせろといいたげな目でゼロを睨む。
「ダメもとで聞くけど・・・さっきここをアルが通らなかったか?」
「アルちゃん?」
ミリアは首を傾げる。
「知らないわよ。っていうか、その頃多分寝てたわ」
「そうか・・・起こして悪かった。じゃあな。」
「ちょっと待ちなさいよ!」
走り去ろうとしたゼロを止める。
「私も手伝うわ。そこで待ってなさい。」
言って、バタバタと支度をし始める。
2分ほど経って、ミリアが玄関から出てきた。
「お待たせ。・・・で、一体何があったの?」
「走りながら話す。行くぞ!」
「あ!ちょっと・・・もぅ・・・」
はぁ・・・と、ため息をついて、ミリアは急に走り出したゼロの後を追いかけた。
ーーーーー
「んで?何があったの?」
ジョンの家に向かう途中、ゼロに追いついたミリアが口を開いた。
「・・・俺にもよく分からねぇんだ・・・」
ゼロは少し目をふせる。
「・・・夢の中で、足下で誰かが俺に“さよなら”って言って・・・目ぇ覚ましたらアルがいなかったんだ。・・・んで、家の前に大量の足跡があった・・・」
「・・・それが街に続いてたからここまで来た、ってこと?」
「あぁ・・・」
「よく分からないわね・・・わざわざゼロの家に行く人間なんてこの街にいたかしら?しかもアルちゃんがいないって事は、アルちゃんを迎えに・・・?何故かしら?」
「・・・分かんねぇ・・・!」
ゼロは、ギリ・・・と、唇を噛む。
「・・・あんた、何か心当たりあるのね?」
「・・・」
ゼロは何も言わない。
「・・・まぁいいわ・・・ジョンの前でゆっくり聞かせてもらうから・・・」
「・・・」
ゼロは黙ったまま走った。
そして、ジョンの家にたどり着き、塀をよじ登って侵入する。
ジョンの部屋を見ると、明かりがついていた。
「まだ起きてるみたいね。」
「あぁ・・・助かった。」
言って、お約束通り足下の石をひろう。
「これでカツンと・・・」
ヒュッ・・・
がシャン!
『・・・あ・・・』
・・・
しばし沈黙。
「・・・やっちまったよ・・・」
「少しは加減しなさいよ!このバカ!」
頭を抱えて座りこむゼロの頭に、ミリアは、スパン!・・・と、ツッコミを入れる。
少し経って、割れた窓を開けてジョンが顔を出す。
ジョンはゼロとミリアの顔を見て、深いため息をはく。
「・・・これほど大して嬉しくも何ともない予想的中が他にあるだろうか・・・で?何の用だ?」
「ジョン、この辺をアルが通らなかったか?」
「アル・・・?じゃあ、さっきのあれはやっぱり・・・」
「何か知ってるのか!?」
「・・・」
ジョンは黙って何か考える。
すると、シュルシュルとロープがおりてきた。
「登って来い。話がある。」
そう言って、部屋の中に姿を消した。
ゼロとミリアは言われた通り、ロープを登ってジョンの部屋に侵入した。
・・・ジョンの部屋に入ると、ジョンは険しい顔をして、考え込んでいた。
「よぅ・・・」
ゼロがためらいがちに声をかける。
「・・・アルがどうしたって?」
「あぁ・・・いきなりいなくなっちまった・・・家の前に大量の足跡があって、それが街まで続いてたからここまで来た。」
「そうか・・・」
「お前なにか知ってるのか?知ってるなら教えてくれ・・・!」
「・・・さっき、アルに似た奴が俺の家の前を通ったよ・・・」
「本当か!?で、どっちに行った!?」
「話は最後まで聞け・・・」
ジョンは真剣な顔をする。
「・・・アルに似た奴は確かに家の前を通った・・・ただし、一人じゃない。他にも沢山の人がいた。」
「それは・・・」
「あぁ。多分、お前の家の前の足跡の主だろう・・・」
「そうか・・・で、だれと一緒だったんだ・・・?」
ゼロがそう聞くと、ジョンの表情はますます険しくなった。
「おい、ジョン・・・?」
「・・・アルと一緒にいたのは・・・自衛団だ・・・」
『自衛団・・・!』
「あぁ・・・しかも、どうみても連行されていた・・・」
「アルちゃんが・・・連行・・・?」
「・・・まさかとは思ったが・・・ここまで話がかみ合うと、疑いようがない。疑わしいのはその理由だ・・・。ゼロ、お前何か知ってるんじゃないか?」
「・・・そうね。そろそろ聞かせてもらおうかしら・・・」
「・・・」
ゼロは黙り込む。
「・・・ゼロ・・・事情が分からないと、俺らも手助けできない。自衛団が絡んでたんじゃ、尚更だ。・・・何があったのか話してくれ・・・」
「・・・分かったよ・・・ただし、1つ頼みがある・・・」
「何だ?」
「・・・この話を聞いても、アルの事を嫌わないでほしい。この通りだ、頼む・・・!」
言って、ゼロは深々と頭を下げる。
「・・・頭あげろよ、らしくないぞ・・・」
「・・・」
ゼロはゆっくりと頭を上げる。
「・・・それに、嫌うかどうかは、話を聞いてからじゃないとな。」
「・・・分かった・・・」
ゼロは少しためらって、ゆっくりと口を開く。
そして話し始めた。
アルがどういう人間で、何の目的でゼロに近付いたのか。
そして、ゼロを殺そうとした夜の事を・・・


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