第21話
ゼロはミリアをおぶったまま街をうろつく。
「そう言えばあんた・・・」
ミリアが口を開く。
「ん?どうした?」
「さっきのアレ・・・本気で言ってたの?」
「さっきのアレ?」
「いや・・・その・・・」
ごにょごにょと言葉をにごす。
「なんだ?よく聞こえねぇぞ」
「だ・・・だから!・・・私があんたの女とかどうとか・・・」
「勘弁してください」
「な!?勘弁してほしいのはこっちよ!私がいつあんたの女になったって言うのよ!?」
スパーン!と、ゼロの頭を殴る。
「ってぇ〜・・・ああでもいわねぇとあいつら消えてくれねぇだろ!俺だって言いたくなかったんだ!」
「全員倒せばいいじゃない。あんたなら出来るでしょ?」
「いや出来るとか出来ねぇとかじゃなくて・・・可能な限り平和的に解決してぇじゃん?」
「あら?その割には結構むちゃくちゃやってたわよ?」
「・・・まぁ、状況によりけりだな」
「状況によりけりねぇ・・・どうでもいいけど、あんた派手に建物に穴開けてたけど、弁償する金あるの?」
「う゛・・・そこはなんとかする」
「なんとかってどうやって?」
「ん〜、そうだなぁ〜」
ゼロは考える素振りを見せる。
「あ!そうだ!」
ぱっ・・・と、顔を上げる。
「知らん顔しよう」
「だと思ったわこのバカ!」
またゼロの頭をパコンと殴る。
「いってぇ〜・・・暴力反対」
ゼロは手を上げて講義する。
「はぁ・・・もういいわ・・・なんか意識が遠くなってきた・・・」
「おいコラ!まてまて!お前ん家はどこだ!?」
「家には・・・帰れない・・・」
ミリアはそれだけ言い残して気を失った。
「えぇ〜・・・俺にどうしろっつうんだよ・・・」
タラタラと冷や汗を流す。
「・・・宿とろうと思っても金がねぇし・・・はぁ・・・困ったお嬢様だぜ・・・」
ゼロはトボトボ歩いて行った。
ーーーー
「ん・・・ここは・・・?」
目を覚ますと見知らぬ場所に寝ていた。
「・・・ここどこ?」
ミリアはキョロキョロ周りを見渡す。
すると、小さな女の子と目があった。
「・・・」
女の子は何も言わず、部屋の奥へ駆け出す。
すると、部屋の奥から見知った男が出てくる。
「・・・ゼロ?」
出てきた男はゼロだった。
ここはゼロの家。
先ほどミリアと目があったのはリリスである。
「よぅ。目が覚めたみたいだな。」
「ここ、あんたの家?」
「そうだけど・・・何で?」
「いや・・・なんとなく・・・」
言ってもう一度周りを見渡す。
「汚いとこだなと思って」
「お前つまみだすぞ?」
ゼロはピクピク眉を吊り上げる。
「あら?本当の事を言っただけよ?」
「・・・もういい。そんだけ喋れればもう大丈夫だな。」
「そうみたいね」
「じゃあ、そろそろ聞かせて貰おうか」
何を?と、ミリアは首を傾げる。
「お前が家に帰れない理由だよ。何があったのか話してみ?」
「・・・しょうがないわねぇ・・・」
はぁ・・・と、ため息をついてミリアは話し始めた。
ーーーー
ミリアは朝目を覚ますと、いつものように広場に向かうため家をでようとする。
「ミリア!どこにいくの!?」
ミリアの親が出てくる。
「別に・・・母さんには関係ないわ・・・」
「またケンカするつもり!?」
「だったらなんなのよ?」
「だめよ!今日は家からでたらだめ!」
母親の言葉にミリアは苛立ちを覚える。
「馬鹿なこと言わないで!なんの権利があってそんなこと言うのよ!?」
「権利ならあります!私はあなたの母親よ!娘を心配するのは当たり前でしょう!」
「母親?」
ミリアはクッ・・・と笑う。
「血もつながってないのに勝手なこと言わないで!私が問題を起こせば母さん達が噂される!それが心配なだけでしょう!?母さん達は結局偽善者なのよ!」
パシン!
「・・・!」
いきなり頬をぶたれ、ミリアは驚く。
「・・・なによ!母さんなんかしらない!」
バタンと、ミリアは勢いよく家を飛び出した。
ーーーー
「ってことがあったの・・・」
「なんだ・・・単なる親子喧嘩か・・・つか一方的にお前が悪いじゃん」
ゼロは呆れている。
「私だって反省してるわよ・・・ちょっと言い過ぎたかなって・・・」
「・・・いい母親じゃねぇか。何が不満でお前グレちまったんだよ?」
「不満っていうか・・・血がつながってないって知ったとき、何か裏切られたような気持ちになって・・・」
「で?なんでいきなりグループ抜けようと思ったんだ?」
「それは、なんとなくあいつらがうざったくなっただけ。あんな奴らと連んでても強くなれないって、あんたに負けておもった。」
「俺一つ気になることがあるんだけどよ・・・」
「何?」
ミリアは首を傾げる。
「・・・血が繋がってるとか繋がってねぇとかって、そんなに大事なことか?」
「大事に決まってるでしょ!」
「じゃあ聞くが、血の繋がってる親に虐待されて生活すんのと、そうでない親に愛情そそいでもらって生活すんのとどっちが幸せなんだ?」
「な!?それは・・・」
ミリアは黙り込む。
「・・・つまりはそういう事だろ?血が繋がってりゃ幸せとは限らない。俺なんか殺されかけた。けどお前の親は今まで愛情そそいでくれてただろ?お前は今まで一度も親の愛情を感じたことはねぇのか?」
「そんなことはないけど・・・」
「だろ?なら血のつながりなんて大したことじゃねぇだろ。・・・おーい!マリー!リリス!」
ゼロが大声で呼ぶと、マリーとリリスがとてとて走ってきて、ゼロの膝の上に座る。
「なぁに?ゼロ兄ちゃん。お話終わった?」
「ん?残念ながらもうちょっと話はかかるな」
え〜・・・と、ぶーたれるマリーの頭をゼロはなでる。
「昨日話しただろ?妹がいるって。俺はこいつらと血は繋がってない。でも俺は本当の妹だと思ってる。俺にとって、たった一つの大事な家族だ。お前らはどう思ってる?」
「ん〜・・・難しいことは分かんないけど、ゼロ兄ちゃんは私の本当のお兄ちゃんだよ!」
「そうか。リリスは?」
「・・・マリーちゃんと同じ・・・」
な?と、笑顔でミリアに向き直る。
「かわいい奴らだろ?・・・こういうことだよ。血なんて関係ない。大事なのは心だ」
「こころ・・・?」
「そ、心だ。俺は血の繋がりなんかより、心の繋がりのほうがよっぽど大事だと思うぞ」
「心の繋がり・・・」
「・・・まぁ、お前の家庭にとやかく口だす気はねぇが、とりあえず一回親と話し合ってみろよ。今日はとりあえず泊めてやるから、明日は家に帰れ。」
「分かったわ・・・あんたの言うとおりかも知れないわね・・・」
じー・・・と、ミリアはゼロの顔を見つめる。
「な、なんだよ?」
「あんた頭悪いくせにそういう所はしっかりしてんのね。」
「ほっとけ!」
ゼロは少しすねる。
「ね〜ね〜」
ひょこっと、マリーが顔をだす。
「ゼロ兄ちゃんとお姉さんはどういう関係なの?」
ミリアは少し考えてから
「ん〜?恋人同士っところね。」
なんて言葉を口にした。
「何だって!!?」
ゼロは驚きを隠せない。
「え〜!本当!?ゼロ兄ちゃん!?」
「んなわけないだろ!何で俺がお前と恋人同士なんだ!」
「あら?さっき私に愛の告白をしてくれたじゃない?」
ミリアは悪戯な笑みを浮かべる
「ば!?あれは芝居だっての!誤解を招くような言い方はやめろ!」
「こくはく〜!?」
マリーはゼロの膝の上でキャーキャー騒いでいる。
「復唱しないでくれ〜!考えるだけでおぞましい!」
「おぞましいですってぇ!?」
ばっ!と、ミリアはベッドから立ち上がる。
「うわ!ちょ!タンマタンマ!お前怪我人だろ!?大人しく寝とけ!」
「うるさい!覚悟しなさいよ!」
「だからまてって!」
ゼロは、マリーとリリスを膝の上からどかし、ドタバタと逃げ回る。
「待て〜!」
ミリアもドタバタ追いかける。
「だぁ〜!勘弁してくれぇ〜!」
「うるさい!問答無用・・・って・・・ん?」
ミリアは壁に立てかけてあるゼロの剣に気付く。
「何?この馬鹿でかい剣?」
「これか?俺が使ってる剣だぞ。俺ハンターだから」
「あんたハンターなんだ・・・」
「まぁ、あまり狩猟には行かないけどな」
「へぇ〜・・・ちょっと持ってみてもいい?」
「いいけど・・・落っことして怪我するなよ」
大丈夫よ・・・といって剣に手をのばす。
が、剣を持ち上げることは出来なかった。
「ちょ!何この重さ!?」
ぐらりと剣が傾く。
「うわ!あぶねぇぞ!」
慌ててゼロは剣を手にとる。
「あっぶねぇなぁ・・・気をつけろよ。お前の骨くらいならぽきぽき折れちまうぞ・・・」
言って、剣を持ち上げる。
「あ・・・あんた片手で・・・」
「ん?そんなに驚くことか?・・・お前らの得意な台詞だろ?・・・俺は人間じゃねぇんだからさ・・・」
ほいほいと、剣を右に左に軽々しく振り回す。
「・・・どうりで・・・私なんかかなわなかったはずね・・・」
ゼロを感心して見つめながらそんなことを言った。
「・・・私もやってみようかしら?・・・ハンター」
「え?お前がか?」
面食らった表情でゼロが聞く。
「なによ?悪い?」
「いや・・・悪くはねぇけどよ・・・何でいきなり?」
「別にいきなりじゃないわよ・・・前から少し考えてたわ・・・強くなりたいからハンターやってみようかなって思っただけよ」
「まぁ、なんでもいいけど・・・半端な覚悟でやるなら最初から止めとけよ。」
「分かってるわよ。・・・気にくわないけどこれからいろいろお世話になるかもしれないから・・・そのときは宜しくね、ゼロ」
「おう。俺にできることなら協力してやるよ。」
すっ・・・と、ゼロは手を差し出す。
「・・・何?この手。」
「いや、握手だよ。握手は万国共通だろ?」
「・・・んじゃ、これから宜しく」
言って、ミリアはゼロの手を握り返す。
こうして、ミリアはハンターを目指すことになった・・・
ーーーー
「って言うわけよ。・・・これでいい?アルちゃん。」
「はい。その後、ご両親とは・・・」
「仲直りしたわ・・・ゼロの言うとおり、血の繋がりなんて大したことなかったわ」
「ゼロもいいこと言うんだねぇ」
うんうん、とアルは感心する。
「この話のすごい所はこの後にあるんだぜ。」
ゼロが口を開く。
「ちょっと!それはもう言わなくていいでしょ!」
「いや!是非言いたいね!・・・実はこの後な、ミリアはあのグループに復讐して、全員半殺しにしたんだぜ。な、ジョン。」
「あぁ。もうこの世のものとは思えない形相だったな。」
ジョンは笑っている。
「そんで、街のチンピラ共にある決まりができちまったんだよ」
「ある決まり?」
アルは首を傾げる。
「あぁ。“鬼のミリア”には手を出すなってな!」
アハハ・・・と、ゼロは笑う。
「ゼロ、あんた・・・」
ミリアの周りの空気がピリピリと張り詰める。
もう、明らかに怒っている。
「ミ・・・ミリアさん・・・空気が痛いっすよ・・・!」
「もう我慢の限界よ・・・いつぞやの借りをいまここで返してやるわ・・・!」
ガタッ!と立ち上がり、ゼロに襲いかかる。
「またこのパターンかよ!?もういい加減にしてくれぇ〜!」
他人の迷惑を考えず、店の中をドタバタ走り回る2人。
いつまでたっても進化のない2人であった・・・。
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