今回はちょっと長いです。(^_^;)辛抱強く読んでやってください。
第17話
夜の暗い森の中、アルとゼロは対峙していた。
ゼロはアルの言った一言がよく理解出来ずにいた。
「え〜・・・っと、アルさん?今のシャレの笑いどころ教えてくれますか?」
「あら?今のシャレでも何でもないよ。」
アルは冷たい目でゼロを睨みつける。
「言葉の通り、あなたを殺す」
アルの目は嘘をついていない。
「・・・お前が本気なのは分かった。けど理由が分からん」
「理由?」
アルはクスリ、と笑いをもらす。
「当然でしょう?私はあなたを殺すためにあなたに近付いたんだから。」
「・・・どういうことだ?」
「・・・今から17年前、とある土地でとある危険分子がこの世に産み落とされた。」
アルは昔を思い出すような遠い目をして語り始めた。
「それは、生まれると同時に檻に入れられ、研究対象として扱われた。・・・そして、研究が進につれてその危険性が明らかになったの。・・・そしてある日、事故は起こった。研究対象が檻を脱走し、沢山の研究員を殺した。自分の両親も一緒に・・・」
それは、どう聞いてもゼロのことだった。
「・・・その危険分子はね、脳のブレーキが外れると、とんでもないことになるってことが研究の結果分かってたの。推測だけど、おそらくとてつもない破壊衝動にかられるはず・・・心当たり、あるでしょ?」
「・・・」
ない、とは言えない。
ゼロはクシャルダオラを倒したとき、確かに破壊衝動にかられていた。
「それが発狂したとき、人間を襲う前に殺すために私はここに来た。・・・ここからは少し恨み言を言ってもいいかな?・・・人間は、それが発狂したときの対処法を考えた。それは、同じ年頃の子供に殺人術を教えて、刺激しないようにそばで観測させ、発狂したら殺す、っていう簡単な対処法をね・・・」
この状況からいって、その子供とはアルのことだろう。
「その子はね・・・年齢が同じと言うだけで選ばれて、今までの長い年月、一時も休ませてもらえず殺人術を教えこまれたの。感情は邪魔になるって教えられて、他人と接触することなんてなかった」
アルは淡々と語る
「まわりで楽しそうに遊んでいる子供を、ただ羨ましそうに見つめることしかできなかった。・・・でね、その子は思ったの。何で自分だけつらい思いをしなくちゃいけないんだ?って」
「・・・」
ゼロは黙って耳傾ける。
「それで、その子は簡単なことに気付いたの。」
言って、アルは剣を構える。
「あなたを殺せば自由になるってね・・・!」
「・・・質の悪ぃ冗談やめてくれよ。」
「勝手に否定して、ずっと惚けててても構わないよ。私の仕事が楽になるだけだから。」
アルはあざ笑うような声で言った。
「・・・つまり、最初からお前は俺を殺すために俺に近付いたってことか?」
「・・・」
「密林で倒れてたのも俺に近付くためだったのか?」
「・・・」
返事はない。
アルは、どこに剣を突き立てればすぐに仕留められるのか、それだけが関心事のようにゼロを見つめている。
「・・・なんだよ、それ。それじゃあ今まで泣いたり笑ったりしてたの全部・・・!」
ゼロはその先を口にする事ができなかった。
そうしてしまえば、その瞬間にすべての出来事がうそになってしまいそうで。
「・・・は・・・はは・・は」
ゼロは自分でもよく分からないような、悲しい笑い声を出していた。
アルは、もう語る言葉はないというような表情で、ゼロに向かって駆け出した。
「くそ・・・!」
考える暇はない。
ゼロは前に向かって走りだした。
背を向ければ、背後から心臓を一突きにされる気がしたから。
「・・・!」
アルは予想外なゼロの動きに戸惑いながらも、剣をふる。
剣は、ゼロの顔面スレスレの所を通過する。
ゼロはそのまま走り去ろうとしたが、できなかった。
アルは、すぐに体をゼロに向けて、ゼロの足を斬りつける。
「ぐぁ・・・!」
ゼロはそのまま、数メートル転がる。
アルはチッ!と舌打ちしてゼロを睨む。
「痛いでしょう?傷は大した事はないわ。でもこれは、あなたの場合かすっただけでも激痛を伴うの。あなたにだけ有効な毒が付着してあるもの。厳密に言えばあなたの血に有効ないわば、アンチゼロ武器ってとこかな」
アルは、少し呆れた素振りを見せる。
「剣、抜かないの?そのためにもってきたんでしょ?」
アルはつまらなそうに言う。
「そんなこと出来る訳ねぇだろ・・・!」
「あなた馬鹿?」
アルは冷たい瞳でゼロを見つめる。
そのまま、ゼロに駆け寄り、喉もとへ剣を走らせる。
「・・・っ!」
ザクッと音をたてて、剣はゼロに突き刺さる。
「が・・・ぁ・・・」
ゼロは剣が刺さる瞬間に身をかわし、剣はゼロの右肩に刺さった。
ドクドクと、ゼロの右肩から鮮血が溢れだす。
「・・・その出血でもショック死しないなんて。やっぱり人間とは違うってことかな」
アルは剣を引き抜く。
「あぐっ・・・」
痛がるゼロをよそに、アルはまた剣を構える。
次こそ外すまいと、慎重に狙いをつける。
「・・・発狂はしないの?」
突然、アルそんなことを聞いてきた。
そのとたん、ゼロの頭に声が響いた。
“剣をとれ”と、何度も響く。
「だか・・・ら、できねぇっ・・・て言ってるだろ・・・」
そうしてしまえば、確実に取り返しのつかないことをするとゼロは理解していた。
ゾワリと空気が燃えるような殺気が立ち込める。
「・・・つきあってられないわ。いいからもう死んで・・・」
アルは剣を握る手に力を込める。
ドス!
「きゃっ!」
ゼロはアルを蹴り飛ばし、森の中へ逃げ出した。
「逃げてどうするの?」
後ろからアルの声がする。
「あなたには戦うか殺されるかの道しかない。けど、戦わないなら死ぬしか無いでしょう?」
アルはゆっくりゼロを追いかける。
「・・・」
ゼロは何も考えずにただ走る。
が、それもすぐ限界が来た。
出血のせいでもう手足が動かない。
ゼロは、そこにあった木に背中をあずけ、座りこんだ。
「ぉ・・・月・・・」
見上げれば、そこには綺麗な月が浮かんでいた。
「はっ・・・気づかなかったな。今夜は月が綺麗だ・・・」
ゼロは無理やりに笑顔を作った。
「・・・あ〜ぁ。馬鹿馬鹿しい。」
ゼロは、なにもかもが馬鹿げて思えた。
アルの涙や笑顔にだまされてた自分や、信じきっていたアルは存在自体が嘘みたいだったことや、短かったけど、今までの思い出や・・・
「・・・ちく、しょう」
悔しくて地面を引っ掻く。
騙されていた。
「・・・それなのに」
確かに騙されていた。
「それでも、俺はアルを憎めない・・・!」
ゼロは、そばに落ちていた石を弾く。
「憎めるはずねぇじゃねぇか。あいつにとって嘘でも、俺は楽しかったんだから・・・。それだけは、何があったって本当じゃねぇか。」
そう、まだ出会って間もないが、ゼロは笑ってそばにいる人がいるだけで幸せだった。
ジャリっという足音が聞こえてくる。
アルがやってくる。
“殺せ”
頭の中でそんな声が聞こえた。
“死にたくないなら殺せ”
「うるせぇ・・・!」
ガツンと、頭が割れそうな勢いで、ゼロは頭を木に叩きつけた。
ーーー剣、抜かないの?
アルはそんなことを言っていた。
ゼロは背中の剣をゆっくりと抜く。
「・・・できるかよ・・・」
ゼロは剣を放り投げた。
剣は、ドスンと重い音をたてて、地面に刺さる。
「アルには剣を向けない。・・・絶対に、向けない。」
剣を放り投げたのは、もっていると死ぬより嫌なことをしてしまいそうだったからだ。
「・・・」
無言でアルがやってきた。
感情の無い瞳も、不吉な凶器も、さっきとまったく変わっていない。
アルは、座りこんだゼロの前で止まった。
アルはなぜかすぐにトドメをさそうとしない。
ただ、ゼロをぼんやり眺めていた。
「・・・一つ、聞くけど。」
剣の切っ先がゼロの胸に向けられる。
「どうして剣を抜かなかったの?どうしてただの一度も私と戦おうとしなかったの?」
「・・・どうしたもこうしたも、そんなこと考えられなかっただけだ。アルにそんな酷いことできないだろ?」
「酷いって・・・あなた本当に馬鹿?私はあなたを殺すのよ?私はあなたの知ってるアルじゃない。すべて嘘だったって、あれだけ言ってまだ分からないの・・・!?」
アルの声には苛立ちがある。
すごく怒ったような声。
冷静な顔をして、手足が震えるくらいに怒っていた。
「・・・分かってる。ずっと俺を騙してきた。俺の知ってるアルなんて言う人間は、初めからいなかったって、分かってる。」
「分かってるならどうして・・・!」
「いいんだ。お前が嘘でも俺には関係ない。お前と過ごした時間は、お前にとってはどうでもいい無駄な時間だったかもしれねぇけど、俺にとっては大切だった。・・・だからいいんだ。たとえお前にとって嘘でも、俺がそれに救われてたのは本当だ。今お前を憎めば、それさえもなくなっちまう。お前にとってそれが嘘だったなら、せめてあとの半分、半分の俺ぐらいは最後までそれを本当のものにしてもいいだろ?」
「・・・そんなことのために命を投げ出すと言うの?あなたの望みはその程度のものなの?」
「・・・ははっ。やっぱ小せぇかな?」
「・・・私、色んな人間を見てきたけど、あなたみたいな馬鹿な人は初めてみた。」
アルは剣の切っ先をゼロの心臓の位置にあてた。
「・・・・・・・・・」
しばしの沈黙。
何故か、アルはトドメをさそうとしない。
アルは虚ろな瞳でゼロを見つめる。
それはよく見ると、感情が無いのではなく、自分をだませないから感情を殺しているような瞳だった。
「・・・殺さねぇのか?」
「・・・私も鬼じゃないわ。最後に言い残したことはない?ここで聞いてあげる。」
「・・・言い残したことはねぇんだけど、一つ聞いてもいいか?」
「えぇ、手短にね」
「・・・すぐに済む。ただ、どうしてそんなに泣きそうな顔してるのかな?って思ってよ。」
「な!?私は泣いてなんか、いない」
断言するアルの顔は冷酷そのものだった。
「?本当だ・・・でも、なんとなく、泣きそうな顔に、見えるぞ。」
「それはあなたの勘違いよ。私にある感情は、自由になりたいってことだけなんだから。それ以外の感情なんてない」
感情の無い目をしたまま、アルはそう言った。
ゼロは、なんとなくそれが嘘だとわかってしまった。
「・・・ひでぇな。最後の最後まで、俺に嘘をつくのか・・・」
「・・・」
返事はない。
アルは凍りついたように動かない。
「・・・それを言うならあなただって嘘ついてる。ここで殺されることが望みなんて思って無いでしょう。」
「・・・そんなの当たり前だろ。・・・本音を言えば生きていたい。けど、俺のせいでお前が苦しんでいるなら、俺の命なんてやすいもんだ。・・・お前達とバカな話して、笑ったり泣いたりする時間が、夢みたいに楽しかった。・・・それが俺の望みなんだと思う。もう叶わねぇけど、俺は・・・ずっとあの生活が続いて欲しかった。」
「まで分からないの?あれはただの芝居だったって言ったのに。」
「あぁ・・・それでも、本当に楽しかった」
「な、んて・・・愚か・・・」
剣の切っ先が胸に食い込む。
あと一歩前にでれば、ゼロの心臓を貫けるだろう。
しかし、最後の一歩がなかなか始まらない。
アルは剣を構えたまま、ゼロを凝視する。
ぎり・・・と、アルは唇を噛む。
「・・・あぁ、そうか。俺に見られてちゃやりづらいよな。」
そういって、ゼロは目を閉じる。
「・・・・・・っ」
息を呑む音がする。
「どうして・・・どうして、そんな・・・」
ゼロの胸に突きつけられた剣が震えている。
「どうして・・・どうして私を恨まないでいられるの・・・?」
アルの声は剣と一緒で震えている。
「私はあなたを殺そうとしてるのよ・・・!?今まで騙して、裏切って、こうして残酷に追い詰めてるのに、何でそんなに穏やかな顔してるの!?」
ジャリ・・・と、切っ先はそのままで、アルはゼロに向かって踏み込んだ。
「答えて・・・!私はあなたを殺すの。あなたの意志なんて関係なく、ただ一方的に殺そうとしてるのよ・・・!・・・ならせめて、あなたは私を憎まないと報われないじゃない・・・!」
火がついたような激しさで、アルは問い詰める。
「それとも、あなたは本当に馬鹿なの・・・!?私はあなたを化け物として処理するの!なのになんで・・・」
「・・・だって、それはお前のせいじゃねぇだろ」
「・・・・・・っ!」
ズッ・・・と、剣の切っ先がゼロ胸に食い込む。
そのまま、皮膚を引き裂き、つぅっと血がたれる。
「っ・・・!あ、ぐ・・・ぅ」
傷自体はそう深くはないが、ゼロには激痛を与えていた。
「ぐぁ!・・・あ、ぁ」
ゼロは痛みのあまり、手がガクガクと痙攣する。
「痛いでしょう。本来なら楽に死なせてあげられるのに、こうしてわざわざあなたを苦しめてるの・・・今まであなたに付き合わされた分、こうでもしないと割があわないから」
アルはたどたどしい声でそう言うと、いっそう深く剣を食い込ませた。
「ぐ・・・!ぁぁぁぁ・・・!」
「ほら、私が憎いでしょ、ゼロ?だから・・・早く恨んで・・・!私に裏切られたって、信用しなければよかったって言って!・・・そうじゃないと、あなたを殺せないじゃない・・・!」
アルは震える声で、そんなことを言った。
「・・・そ、れは、むちゃ、な注文、だ。やっぱ、り、お、前を恨め、ない」
ゼロは途切れ途切れに言葉を口にする。
「や・・・やめて・・・!どうして最後までそんなことを言うの・・・!悪いのは私で、被害者はあなたなのに・・・!」
「・・・被害、者なの、は、アルもおな、じだろ。お前は悪、くねぇ、よ。それより、ごめん、な。こ、んな役、目をお前に押し、付けちまって・・・」
「やめ・・・て・・・」
小さく呟いて、剣の切っ先が離れる。
「だめ・・・私はあなたを見逃すなんてできない・・・!」
ぎり・・・と歯をかんで、ピタリとゼロの心臓をねらう。
「・・・・・・」
アルは息を呑む。
ゼロは、目を閉じていても、アルの剣を握る手に力が込められていく気配がわかった。
「ありがとな。たとえ嘘でも、お前がそばにいてくれてよかった・・・」
ゼロは、最後に一番伝えたかった言葉を遺した。
ドン・・・と剣は刺さった。
「う・・・う・・・」
声が聞こえる。
「うあ・・・あ、ああ、あ」
ポロポロと、子供が泣くような声が聞こえる。
トスッ・・・と軽い音。
それは木に刺さっていた剣が地面に落ちる音だった。
ひっく、ひっくと、苦しそうな声がする。
ゼロはそれに気付いて、ゆっくりと目を開けた。
そこには、いつものアルがいた。
アルの手には何もない。
ゼロの心臓を貫ぬくはずだった剣は、ゼロのわき腹をすり抜けていた。
「う・・・うあ、ああっ・・・」
アルはただ泣いていた。
何が悲しいのか、血を吐き出すような苦しさで泣いていた。
「・・・・・・アル?」
ゼロが声をかける。
「・・・ずる、い・・・ゼロ、は・・・ずるい・・・」
ひっく、と喉をしゃくり上げて、子供のようにアルは声をあげる。
「・・・あんな・・・あんな事言うなんて・・・ずるい、よ・・・」
アルは一向に泣き止まない。
「できない・・・最後にありがとう、なんて・・・そんな幸せな人を死なせるなんて、ヤだ・・・」
アルは両手で両目を覆って、ただボロボロと泣き崩れる。
「・・・いや、あの・・・そんなに泣かれると・・・困る。・・・その、どうしていいか解らん。」
「うっ・・・うう、うわぁぁぁぁぁん・・・!」
言葉が悪かったのか、アルはいっそう大きな声で泣き始めた。
「ちょ・・・あの・・・その」
あたふたするゼロに、ドン、と衝撃がはしる。
アルがゼロの胸に顔をうずめて泣き出した。
「・・・ごめん、なさい・・・」
ごめんなさいと、何度も何度も、そんな言葉を繰り返す。
「・・・謝らなくてもいいって・・・泣きたいだけ泣けばいい・・・」
ゼロは満足に動く左手で、アルの頭を撫でる。
「森に入ってから、一時間位たったか・・・やっとアルを見つけられた・・・。今ここにいるのはいつものアルだ・・・」
そう言って、ゼロはアルに笑いかける。
「あ・・・」
アルは張り詰めた何かが切れたような声ん出して、ようやく泣きやんだ。
「・・・アルの体あったけぇな。」
「・・・違う。あったかいのはゼロの体だよ。私はイヤになるくらい、冷たい人間よ。こんなに優しいひとに、こんなに酷いことをしてしまった・・・」
「・・・もういいって。俺はまだ生きてるんだから、それでいい。」
アルはゼロの服をぎゅっと握る。
「・・・やっぱりだめだよ、そんなの・・・」
不意に、泣きそうな声でアルは言った。
「私は、悪いことしちゃったから・・・簡単に許されちゃいけない人間なの・・・」
「許されちゃいけないってどうして?そりゃお前は今までいろいろあっただろうけど、それはお前のせいじゃねぇだろ」
「・・・でも、悪いことをしてきたのは私の手だよ、ゼロ」
「・・・やっぱ違う。悪いのは・・・俺だ・・・俺がいるばっかりにお前にそんなつらい思いをさせちまってる。・・・すべてを狂わせたのは俺なんだ。アルが許されちゃいけない理由なんてない。」
「でも、許されていい理由もないじゃない・・・」
言って、クスリと、自分自身を蔑むようにわらった。
「・・・わかってる。私にはそんな資格なんてないって、わかってるつもりだった。私は、酷いことを沢山してきたから。・・・なのにどうして・・・。私は幸せになっちゃいけないのに・・・だから今までずっと考えなかったのに、夢みることさえなかったのに。なのに・・・なのに・・・どうして・・・」
だん・・・とアルの手がゼロの胸を叩く。
「今になって、こんな夢を・・・。・・・あんまりにも楽しかったの。こんなのは嘘だ、私は楽しい生活の芝居をしてるだけなんだってわかっていたのに、それでもいいなって思えるくらい・・・嘘でもなくしたくないって思えるくらい楽しかった・・・まるで、夢の中にいるみたいで、1日でも長く続いて欲しかった」
「・・・何だ、ひとにとやかく言っておいて結局お前の望みも俺と変わらねぇじゃねぇか」
ゼロはクスッと笑う。
「・・・でも、そんなわがままは許されない。こんな夢をみて、ゼロも殺せない私は消えるしかない。私はもう、ここにいていい理由なんてない。」
痛みに耐えるような悲しい顔をして、アルはそう言った。
「さよなら・・・。ありがとうって言ってくれて、本当に嬉しかった。」
アルはゼロの体からそっと離れた。
「まて・・・どこ行きやがる・・・!」
「え・・・きゃ!」
ゼロは離れかけたアルの体をもう一度引き寄せる。
「いいか・・・お前がさっきから言ってるのは夢なんかじゃない。」
ゼロはどこか怒った口調で語る。
「お前は、普通の人が当たり前と考えるようなことを、尊い夢のように言ってた。それを続けたいなら続けりゃいいじゃねぇか。お前が言ってることは決して夢なんかじゃねぇ。」
「そんなの・・・できっこない・・・」
「なんで?本当にあったことじゃねぇか。アルさえ望めば戻ってくる生活だろ?そんな簡単なこと、夢みたいだったって諦めないでくれ。」
「・・・無理よ・・・ゼロをこんなに傷つけて・・・いまさら戻ることなんて、できない」
「あぁ、そのことなら大丈夫。俺も気にしてないからお前も気にしなくていいの。」
ゼロは明るく、冗談のように言う。
「・・・」
アルは黙っている。
「それに、今日のアルかっこよかったぜ?ドジなお前もみてて飽きないけど、しっかりしたお前も見れてラッキーだった。」
「・・・」
アルは黙っている。
「アル、今日のお前イメージ違ったぜ?なんかキリッとして、年上みたいだった。」
「・・・」
やっぱりアルは黙っている。
「・・・はぁ。なんか返事してくれよぉ〜。言葉のキャッチボールしようぜぇ。それとももう俺なんかとは話したくねぇか?」
アルは、ゼロの胸に額をコツンとぶつけ
「・・・・・・ばか」
なんてことを言った。
「いきなり何言いやがりますかあなたは?」
「ゼロはやっぱりバカだよ。私はゼロが思ってるような人間じゃないよ。なのになんでこんなに優しくするの?」
「なんでって・・・なんとなく、アルには泣いてほしくないだけだ。アルには笑っててほしいだけだ・・・」
「・・・けど、私にはゼロに優しくしてもらう資格なんてない・・・」
「それを言うなら俺だって同じだ。でも、そんなこと関係なくそばにいてくれたのはお前だろ?」
「・・・で・・・でも・・・」
「まぁ、ぶっちゃけちゃうと、お前の罪なんて俺はしらねぇし、興味もねぇ。・・・俺がお前に優しくするのは俺がそうしたいからだ。厄介な奴につかまったって観念してくれ。もし迷惑でも、俺はお前のそばにいてやるから覚悟しろ。」
「・・・私にそんな約束してもいいの?」
アルの声は、さっきまでの弱々しさは消えていた。
「・・・ん〜、最後の方は勢いだから聞き流してくれ。」
「だめ。時間切れでぇす」
「なんの時間だよ・・・?」
「ふふ、とりあえず傷の治療しなきゃね。」
そう言ってアルは一番深い肩の傷口をみる。
「あ、やっぱ流石だね。もう傷口が塞がっちゃってる。・・・これならなにか巻いとけばいいかな?」
そう言って、アルはポケットからリボンを取り出して、傷口に巻き始めた。
「・・・言っとくけどこれ大事なんだから後で返してよ?」
「わかったよ・・・。つか他の物はねぇのか?」
「ありません・・・と、これでよし。」
ゼロの肩にリボンを巻き終えたアルは、すっと立ち上がる。
「ゼロ、一人で立てる?」
「ん?・・・あぁ、なんとかな・・・」
言って、よろよろと立ち上がる。
「さ、帰ろうぜ。なんか眠くなってきた。」
「うん。私も疲れちゃった。早く帰ろう!」
そう言って、ゼロとアルは森を抜けて、帰宅した・・・
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