第16話
ゼロが街に戻ると、ジョンとアルとミリア、リリスが待っていた。
・・・いや、待ちかまえていた。
「ゼロ〜〜〜!!」
ジョンはこっちに走って来る。
「あ、ジョン。ただい・・・」
ゼロは全てを口にする事はできなかった。
ジョンは走ってきた勢いで、ゼロに見事な跳び蹴りをお見舞いする。
「ごふぅ!?」
ジョンの放った跳び蹴りは見事にゼロをとらえ、ゼロはゴロゴロと地面を転がる。
『・・・』
ゼロとジョンは無言で立ち上がり、服についた砂を払う。
3秒間のインターバル。せーのっ・・・
「何しやがる!?」
「心配かけやがって!」
2人はまったくの同時に声をあげる。
「まったく・・・、見損なったぜ!俺らに黙って行っちまうなんてよ!」
ジョンは怒っている。
他の3人も同じである。
「えっ・・・と、そのぉ・・・すまん」
「すまんじゃねぇだろ!いったいどれだけ心配したと思ってんだ!」
ジョンは本気で怒っている。
「・・・」
ゼロは無言で縮こまる。
「ゼロ・・・今回のことは流石の私も許せないんだからね!」
アルは珍しく、プンプンと怒っている。
「・・・」
ミリアに至っては、無言でゼロを睨みつけている。
リリスは怒ると言うより、心配そうにゼロを見つめている。
「全く・・・まぁいい。お前が無事に帰って来たからこのぐらいにしといてやる。・・・ただし!次こんな真似したらただじゃおかねぇからな!」
「へ〜い。肝に命じておきまぁす。」
「で・・・クシャルダオラはどうなったの?」
ミリアが聞く。
「あぁ。なんか討伐したみたいだ。」
ゼロは他人事のように答える。
「したみたいだって・・・どういう事?」
「よくわかんねぇんだ。なんか・・・俺が俺じゃなくなる感じがして、気付いたら殺してた・・・」
ピクリと、アルが少し反応する。
「本当によくわかんないわね・・・あんた頭おかしくなったんじゃない?」
「・・・ミリアさん・・・あなたの言葉は心にささります・・・」
「あらそう?ならこれに懲りて二度とこんな事しないことね」
「あぅ・・・わかりました・・・」
ゼロは少し落ち込んで、船から大きな袋を取り出した。
袋を動かすと、ガチャガチャと音がする
「なんだそれ?」
ジョンが首を傾げる。
「これか?これはクシャルダオラから剥ぎ取った素材だ。今からこれもっておっちゃんのとこに行ってくる」
「おっちゃんのとこって、鍛冶屋か?」
「おう。こいつを加工してもらおうと思ってよ。」
「なら俺らも付き合うぜ。」
「ん?そうか?ならちゃっちゃと行こうぜ。・・・よっと・・・」
ゼロは右手で荷物、左手でリリスを抱えて歩きだす。
それにミリアとジョンはついて行く。
「おい、アル。ぼーっとしてるとおいてくぞ。」
ゼロが振りかえると、アルは無感情な冷たい目でゼロを見つめていた。
「どうした?アル・・・?」
ゼロが声をかけると、アルの目はいつもの目に戻る。
「あ・・・ごめん。ぼーっとしてた。」
そう言って、ゼロのもとに歩み寄る
「・・・」
ゼロは腑に落ちない表情でアルを見つめる。
「ん?私の顔に何かついてる?」
「・・・いや。別に何でもない・・・」
ゼロはそう言って鍛冶屋に向かった。
ーーーー
「お〜い!おっちゃ〜ん!」
ゼロは鍛冶屋に着くと、いつものように大声で親方を呼ぶ。
「おう!どうした?」
親方は、足に包帯を巻いた姿で出てくる。
「おっちゃん。怪我大丈夫か?」
「馬鹿やろう!こんなのへでもねぇよ。・・・ゼロ、そんなこと言いにきたんじゃねぇんだろ?」
「ばれたか。」
ゼロは抱えていた袋を親方に差し出す。
「・・・これは?」
「クシャルダオラの素材だ。これで防具作ってくれねぇか?」
そう言ってゼロは袋を開ける。
「こ・・・こいつぁ・・・」
その袋の中には、肉体から離れてなお、変わらぬ威厳を放つクシャルダオラの素材が入っていた。
「・・・分かった。これで作れんこともない。・・・いや、おそらく最高のものが作れるだろう。だが・・・」
「だが?」
「・・・俺ぁこんな大層なものを扱うのは初めてだ。どんな物になるかは出来上がるまで俺にも分からん・・・。それでいいなら作ってやるが?」
「もちろん。むしろ俺はおっちゃんを信じてるから頼んだんだぜ。よろしく頼む。」
「分かった。仕上がりは明日の朝になるが、それでいいか?」
「了解。じゃあ明日また取りにくる。」
ゼロは、それじゃ!と手を振って、鍛冶屋を後にした。
ーーーー
「ゼロ、お前これからどうするつもりだ?」
街を歩きながらジョンが口を開く。
「ん〜?まぁ、取りあえず家に帰るよ。そんで寝る」
「馬鹿!お前の話じゃねぇよ!」
ジョンはゼロの頭をポカンと殴る。
「ってぇな。なんなんだ一体?」
「リリスはどうするんだってきいてるんだよ!」
「さぁ?」
「さぁ?ってお前・・・」
「それは俺が決める事じゃない。リリス自身が決める事だ。」
ゼロはそう言って、さっきから肩車しているリリスに目を向ける。
「リリスはこれからどうしたい?」
「・・・」
リリスは考えこむ。
「いっとくけど俺達の意見なんか気にしなくていいぞ。純粋にお前がどうしたいのか、どうするべきか決めてくれ。」
「・・・お兄ちゃんの家に行く・・・」
「そっか。・・・そのかわり、兄ちゃんが狩りに出てるときは留守番するんだぞ。」
「・・・分かった」
「ちょっとまて!」
ジョンはまたゼロの頭をポカンと殴る。
「いって!一体なんだってんだおめぇは!?」
「今のは勢いだ。ってそんなことより、お前この前、リリスを教会に預けたのは仕事でかまってやれないからって自分で言ってたじゃねぇか。それなのにお前の家に住まわせていいのかよ?」
「そりゃあ、あまりかまってやれないかもしれねぇけど、出来るだけ家にいる時間を長くするよ。それにリリスだってもう赤ん坊じゃねえし、それに・・・」
そこまで言って口ごもる。
「それに?」
「・・・その・・・あんなことがあったばかりじゃねぇか。なのにまたどっかに一人預けるなんてひどいことできるかよ。」
「・・・まぁ、その通りだけどよ。」
「それに、リリスが自分で決めたことだからな。俺らがとやかく言うことじゃねぇよ。」
「分かった。そこまで考えてるんならもう何もいわねぇよ。」
「って勝手に決まってしまったけど、アルもそれで構わねぇか?」
ゼロは2・3歩後ろを歩いていたアルにふり返る。
アルは何か考えている様子で、ゼロの呼びかけに反応しない。
「お〜い。聞こえてますかぁ〜?」
「え?あ、うん。・・・で、何?」
「で、何?じゃねぇよ。リリスがうちに来るって話。」
「あ、私は構わないよ。もともと私の家じゃないし」
「・・・」
ゼロはアルの顔をじ〜っと見つめる。
「な、何?」
「いや、さっきから様子がおかしいなって思ってよ。」
「そう?私はいつも通りだよ?」
「・・・どっか悪いならすぐ言えよ?何か悩んでるんなら相談くらい乗るぞ?」
「だ、大丈夫だって!そんなに心配しないで。」
「ふ〜ん。ならいいけど。」
ぺしぺし。
「ん?」
ゼロはリリスに頭を叩かれて、リリスを見上げる。
「ん?どうした?」
「・・・前・・・」
「ん?」
ゼロが前を見た瞬間、ドンと通行人と肩がぶつかる。
「何しやがんだこら?」
ぶつかった相手はやたらと柄の悪そうな人である。
「どうしたんすか?」
後ろから仲間らしき人達がぞろぞろでてくる。
「こいつがいきなりぶつかってきてよ。こりゃあ肩がいっちまってるなぁ。」
「こらテメェ!兄貴の肩がいかれちまったってよ!どうすんだこらぁ!」
「カルシウムとっとけ」
ゼロはさらっと言い流してスタスタ歩いていく。
「待てやこら。とことんコケにしてくれるじゃねぇか。俺らがだれだか知らんのかい?あぁ?」
「・・・」
ゼロはしばらく考えていたが、いきなり顔を上げてニコニコしだした。
「お〜!久しぶり〜!いゃ〜大きくなったなぁ!で、名前なんだっけ?」
「じゃかしいわ!いっとくけど初対面や初対面!」
「じゃあお前らはなんなんだよ?」
ゼロは少しむっとする。
「金貸し屋のバートグループの者や」
「知らん。じゃあな。」
ゼロはまたスタスタ歩去ろうとする。
「まて!本気で知らんのか!?」
「だからしらねぇっていってるだろ!もう用はねぇんだからさっさと帰らせろ!」
「んだとテメェ!」
リーダー的な男がゼロに詰め寄る。
「お?」
男はゼロのすぐ後ろにいたミリアに気付いた。
「あ・・・あんたは!?」
男はいきなり慌てだす。
「お・・・おい!ずらかるぞ!」
リーダーがそう言って、男達はその場から逃げ出してしまった。
「かわいい奴等だな」
ゼロは逃げて行く男達を指差して、笑いながらミリアを見る。
「知らないわよ。あんな奴ら。」
ミリアは呆れている。
「昔、今と似たような状況に遭遇したことあったなぁ。」
ゼロはニヤニヤしている。
「いやぁ、かわいい後輩だなぁ!」
「あんた・・・その口縛ってやるからじっとしなさい!」
「うは!怖ぇ怖ぇ!アル、逃げるぞ!」
「え?・・・きゃっ!」
ゼロはアルの手を引いて走りだした。
「まちなさ〜い!」
「待てねぇよ!また明日なぁ〜!お前らも気をつけて帰れよ〜!」
「こらぁ〜!」
ゼロ達は怒るミリアを背に、街から出ていった。
ーーーー
ゼロ達が家にたどり着いたとき、日は沈みかけていた。
「うぉ〜!久々の我が家!相変わらずの汚さだ!」
「本当・・・久しぶりに帰ってみると散らかってるねぇ」
「とりあえず腹が減ったなぁ〜。アル〜、なんか作ってくれよ〜。」
「しょうがないわね〜。作って来るけど、文句言わないでよ?」
「大丈夫。お前の料理の上手さはこの前証明されたから。」
「じゃあちょっと待っててね」
アルはフフっと笑って台所へ消えていった。
「さて・・・」
ゼロはリリスに目を向ける。
「・・・?」
リリスは何?といいたげな目でゼロを見つめる。
「お前が人と接するのが苦手なのはよく知ってる。だからすぐにとは言わないけど、ここで暮らすならアルとは仲良くしてくれよ?」
「・・・分かった・・・」
リリスはこっくり頷く。
「よし。いい子だ」
ゼロはリリスの頭を撫でる。
「・・・けど・・・」
「ん?どうした?」
「・・・やっぱり何でもない・・・」
「?」
ゼロは腑におちない表情をする。
そこへ
「ご飯できたよ〜」
アルが料理を運んできた。
「お!早いな。」
「簡単なものだからね。っていうかこの家食材がないから簡単なものしかつくれないよ。」
「それを言わんでくれ。貧乏だからしょうがないだろ。」
「ま、ここまで来ればレアものよね〜」
「レアとか言うなぁ。」
「はいはい。ご飯冷めちゃうから早く食べよ。」
「いっただきまぁす。」
3人は夕食をすませ、就寝した。
リリスはベッド、アルがソファー、ゼロは床に寝ている。
ゼロはなかなか眠れないでいた。
クシャルダオラを殺した時の感覚が頭に染み着いて、眠りの妨げになっていた。
「・・・くそっ!眠れねぇ。・・・あの感覚のせいで・・・あの感覚・・・」
“殺せ・・・ころせコロセ殺せころせコロセ殺せ殺せころせコロセころせコロセ殺せころせコロセ殺せ・・・ーーーー”
「〜〜〜〜〜っ!!」
ゼロはたまらず床から飛び起きる。
「はぁ、はぁ。・・・くそっ!」
「ゼロ?どうかした?」
アルがソファーから身を起こす。
「いや、何でもない・・・」
「顔色わるいよ?汗もかいてるし。」
「いや、本当に何でもねぇんだ。起こして悪かった。寝てくれ。」
「・・・自分じゃない人の声が聞こえたりした?」
「なっ!?」
ゼロが驚いてアルをみると、アルは無感情な瞳でゼロを見つていた。
「冗談だよ。お休み。」
アルは嘲笑うように言って、また横になった。
「・・・」
ゼロは何か考えて、横になった。
ーーーー
「う・・・ん」
ゼロは、ずっとまどろんでいたが、はっと目を覚ます。
まだ、夜は明けていない。
「・・・アルがいねぇな・・・」
アルが寝ていたソファーにアルがいない事に気づき、まわりをキョロキョロ見渡す。
が、アルの姿は見当たらない。
「・・・便所にでも行ったな・・・」
そう言って、ゼロはまた横になる。
ガサっ。
「ん?何だこの紙?」
ゼロの枕元に、一枚の手紙がおいてあった。
「ん〜と・・・」
“話があるの。目が覚めたら近くの森にきて。”
「話ってなんだ?・・・面倒くせぇな。」
ゼロが立ち上がろうとすると頭の中で声がした。
“剣をもて”
「!?・・・なんだ?」
“剣をもて”
「?・・・剣をもて?なぜ?」
“剣をもて”
「分かったよ・・・持てばいいんだろ、持てば。」
ゼロはしぶしぶ剣を背中にさげ、近くの森に向かった。
森に入り、ゼロはなかなかアルを見つけられないでいた。
「どこにいるんだ?」
ゼロはさらに奥に進んだ。
しばらく進むと、人影が目に入った。
「やっと見つけた。お〜い!」
アルに歩みよると、アルの姿がはっきりと見えてきた。
手には、見たこともない剣を持って、体中に鎧を纏っていた。
それはどう見ても、戦闘体制だった。
「アル、そんな格好でなにしてんだ?」
ゼロが聞くと、アルはゼロに剣を向けて、無感情な瞳で
「・・・あなたを殺す」
と言った・・・
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