第14話
ゼロとリリスは海の見える丘の上で穴を掘っていた。
マリーの墓である。
「こんなもんか・・・」
ゼロは穴を掘るてをとめた。
その穴の中にマリーの体をそっと寝かせる。
「・・・おやすみ・・・」
ゼロは一言口にして、マリーの体に土をかぶせた。
「・・・お兄ちゃん。お花・・・」
リリスは摘んできた花をゼロに手渡す。
「ありがとな。・・・でも、この花はお前が添えてやれ。そのほうがマリーもよろこぶぞ。」
そう言ってゼロは、リリスに花を返した。
「・・・」
リリスは無言でマリーの墓標の下に花を添える。
「・・・さて、街に戻るぞ。街の人達の手伝いをしなきゃな。」
「・・・うん・・・」
リリスは頷き、ゼロとリリスは街へと向かった。
街に戻ると、生き残った人々が食材を持ち寄り、その食材で作った料理を配っていた。
「ゼロ!こっちこっち!」
声のする方を見ると、アルとミリアが瓦礫に腰掛けていた。
「あれ?ゼロ、その子は?」
アルはリリスを指差して首を傾げる。
「あぁ。お前にはまだ言ってなかったな。この子は昔俺が拾った子だ。ミリアは知ってるよな?」
「前に何度か会ったことあるわ。・・・今日はマリーちゃんは一緒じゃないの?」
「・・・」
ゼロは黙り込む。
ミリアはゼロの様子を見て全てを悟った。
「・・・ごめんなさい。嫌なこと聞いちゃったわね・・・」
「・・・いや、もう大丈夫だ。・・・それよりお前らはどうだった?家族は無事だったか?」
「えぇ。両親とも無事だったわ。ジョンの方も無事だったみたい。」
「そうか。よかった・・・。」
ゼロは安堵の表情をみせる。
「・・・さ、暗い話しはここまでにして、ご飯食べましょ。いまリリスちゃんの分も貰ってくるわ。」
そう言ってミリアは、配給所まで駆けていった。
「リリス、ほら。」
ゼロは配られたご飯をリリスに手渡す。
「・・・お兄ちゃんは?」
「兄ちゃんは後で食うよ。お前腹減ってるだろ?」
「・・・」
リリスは黙って頷く。
「素直でよろしい。」
ゼロは笑ってリリスの頭をなでた。
「・・・いただきます・・・」
リリスはご飯を食べ始める。
「ゼロ、本当に食べないの?」
アルが聞く。
「だから俺はミリアが持ってきた分を食べるって。お前もへんな気ぃつかわねぇで早く食べろ。」
「分かった」
そう言って、アルもご飯を食べ始めた。
・・・
しばらくして、ゼロ達の周りがざわつき始める。
「・・・まぁただりぃことになりそうだ・・・」
と、ゼロはため息をつく。
すると。
ヒュッ!と、石がゼロ目掛けて飛んできた。
ゼロは無言で石をキャッチし、石が飛んできた方に目を向ける。
そこには人だかりが出来ていた。
「何だよ。俺に何か用か?別に悪ぃことした覚えはねぇぞ。」
ゼロがそう言うと、人だかりの中から声があがる。
「うるせぇ!街をこんなにしやがって!」
「おいおい。寝ぼけてんのか?街を壊したのは俺じゃねぇだろ。」
「あの満月の夜のようにお前が災いを運んできたんだ!この疫病神が!」
この一言でざわつきは一層激しさを増す。
ゼロは反論する気配を見せずに、ただ街の人達をみつめていた。
「お前が災いを運んできたせいで俺ん家はメチャクチャだ!どうしてくれる!それに、そこの小さい奴!」
街の人達はリリスを指差す。
今まで無反応だったゼロがピクリと反応する。
「お前も呪われているんだろう!?だからお前のいた教会は・・・」
メキッ!
その人物は、全てを口にする事ができなかった。
「・・・くだらねぇこと言ってんのはこの口か?」
「うぐ・・・う・・・」
ゼロにあごを鷲掴みにされ、その男は言葉を発することが出来ない。
「・・・このまま殺すか?」
“殺す”・・・
このありふれた言葉は男に、まるで生まれて初めて聞いた言葉のように突き刺さる。
「不幸を何でも人のせいにするんじゃねぇよ。・・・確かに俺は大量の人間を殺した。だからお前らが俺のことをなんと罵ろうと、それはお前らの勝手だ。だが、リリスは関係ねぇだろ。この子に何の罪がある?何の恨みがある?リリスだって被害者なんだ。てめぇ一人が不幸みてぇな言い方してんじゃねぇよ。」
ゼロは男を人ごみの中に放り投げる。
「・・・いつまでも見てんじゃねぇ!さっさと失せやがれゲスども!」
ゼロが叫ぶと、人々はおびえたようにその場を立ち去った。
「・・・ごめんなリリス。兄ちゃんのせいで嫌な思いさせちまって・・・」
「・・・そんなことない・・・大丈夫・・・」
リリスは首を横に振る。
「そうか・・・ありがとな。」
ゼロはリリスの頭をそっと撫でる。
すると、ミリアが配給所からもどってきた。
「お待たせ〜。はい、リリスちゃんの分・・・ってすでに食べてるじゃない。」
「あ、俺の分を先に食わせたからそれ俺にくれ。」
「・・・三回まわってワンといいなさい。」
ミリアは悪戯な笑みを浮かべる。
「ひど!いくらなんでもそりゃねぇだろ〜・・・。俺もう腹ペコなんだよ〜・・・。早くくれよ〜…。」
ゼロは恨めしそうな目でミリアを見つめる。
「しょうがないわねぇ。ありがたくいただきなさい。」
「はいはい〜。」
ゼロはミリアからご飯を取り上げ、瓦礫に腰掛ける。
「いただきまぁす。」
ゼロはガツガツと食べ始めた。
「全く・・・行儀悪いんだから。・・・それより、さっき人が集まってたみたいだけど何かあったの?」
「別に何もねぇよ。なぁアル?」
「え・・・あ、うん」
「ふぅん・・・?・・・ま、ならいいわ。さっき配給所の帰りにいつもの宿をとっておいたから、今日はそこに泊まるといいわ。って言ってももう朝なんだけどね。」
「えっ?宿代はらってくれたのか?」
「えぇ。アルちゃんのとリリスちゃんの分だけね。あんたは貸しよ。」
「男女差別だ!」
「うるさいわね!そう言うことは借りたお金をちゃんと返してからいいなさい。」
「・・・鬼」
ゼロは聞こえないようにぼそりと呟く。
「なんですって・・・?」
聞こえてた。
「いや、何でもありません・・・」
「よろしい。じゃ、私はもう帰るわ。3人もしっかり疲れをぬいておきなさいよ〜。」
そう言ってミリアは去って行った。
「・・・今寝たら生活のリズムが逆転しちゃうね」
「ハンターやってりゃそんなこともある。とりあえず宿屋に行こうぜ。俺眠い。」
ゼロ達は宿屋に向かった。
宿屋にたどり着き、ゼロ達はそれぞれの部屋に入った。
リリスはまだアルに慣れていないため、ゼロと同室に入る。
「あ〜、つかれた!」
ゼロはベッドに倒れ込む。
「・・・」
リリスは無言で、ゼロの横にちょこんと座る。
その表情は暗く、どこか悲しそうである。
「どうした?そんなに暗い顔して。」
「・・・マリーちゃんが・・・死んじゃった・・・」
口を開くと同時に、涙が溢れ出す。
「・・・ずっとそのことを考えてたのか?」
「・・・こんなに早く死んじゃうなんて・・・マリーちゃん、悔しいだろうなって考えたら・・・悲しくなる・・・」
「そうか。・・・リリスは優しい子だな。」
「・・・お兄ちゃんは悲しくないの?」
リリスが寂しそうにたずねる。
「・・・兄ちゃんだって悲しいさ。大事な妹をなくしたんだから・・・。でもな、兄ちゃんやリリスがずっと悲しんでたら、マリーはもっと悲しくなると思うぞ。・・・確かにマリーを亡くしたことは悲しいけど、だからっていつまでも悲しんでちゃ駄目だ。マリーの分まで精一杯生きることが、マリーのためにもなると思うぞ。」
「・・・」
リリスは何も言わず、難しそうな表情でゼロを見つめる。
「・・・まだリリスにはむずかしいか。でも、いつか分かる時がくるから安心しろ。」
ゼロはリリスの頭をクシャクシャっと撫でる。
「ほら、もう寝ろ。大分つかれてるだろ?」
ゼロがそう言うと、リリスはゼロのベッドに潜り込んできた。
「こらこら。ベッドはもう一個あるだろ。お前のベッドはあっち。」
「・・・1人・・・やだ・・・」
「・・・何だ?恐いのか?」
「・・・」
リリスはコックリ頷く。無理もない。さっき襲われたばかりだ。不安になって当然である。
「・・・しょうがねぇなぁ・・・分かったよ。兄ちゃんがついててやるから・・・」
ゼロはそう言って、リリスの頭をそっと撫でる。
そのうち、リリスはウトウトし始める。
「おやすみ・・・」
そう言うと、リリスはすうっと目をとじた。
「・・・」
ゼロは無言でリリスの寝顔を見つめる。
「・・・知らない間に大きくなるもんだなぁ・・・」
ゼロは感心したようにリリスの顔をまじまじと見つめる。
「・・・いつか、俺のそばにいるってだけでつらい思いさせちまうかもなぁ。・・・ごめんな・・・。」
ゼロはベッドから体を起こし、何かを書いた・・・ーーー
ーーーリリスが目を覚ますとゼロの姿はなかった。
「お兄ちゃん・・・?」
リリスはゼロがいないことに気付き、部屋の中をきょろきょろと見渡す。すると、机の上の手紙に気付いた。
「・・・」
リリスは何も言わず手紙を開く。
「・・・!!」
リリスは手紙の内容を見て驚く。
あわてて隣部屋にいるアルを起こしに行く。
ドンドン!
リリスは乱暴にドアをノックする。
ガチャ。
「どちらさま・・・ってリリスちゃん。どうしたの?」
「・・・!!」
リリスはあわてた様子で手紙を見せる。
「ん〜?なになに?リリスへ・・・」
“リリスへ
勝手にいなくなってごめんな。この手紙を見たら、アル達にも見せてやってくれ。
実は、街の連中の救助をしてる時、嫌なことを聞いちまってよ。情報によると、クシャルダオラは俺達と入れ違いでまた密林に戻ったらしい。確かな情報じゃないが行ってくるわ。
黙っていなくなったことについては謝る。けど、お前らを危険にさらしたくなかった。ハンターやってる奴のセリフじゃねぇけど、さすがに今回ばかりはやばすぎる。もし帰って来たら、責めはその時聞いてやる。
それじゃあ、行ってきます・・・”
「こ・・・これって!?」
アルは驚愕する。
「と・・・取りあえずみんなに知らせなきゃ!リリスちゃんもついてくる!?」
「・・・うん」
「よし、じゃあいそご!」
アルとリリスは急いで街に飛び出した。
しばらく街の中を走り回って、ジョンとミリアを発見する。
2人は夕食を済ませ、帰ろうというところだった。
「ジョン!ミリアさん!」
「ん?なんだ、アル?そんなにあわてて。」
「これ見て!!」
アルは2人に手紙を見せる。
「な・・・なにこれ!?」
「・・・あの馬鹿!!」
「ど・・・どうしよう!?」
「とにかく集会所に行くぞ。まだ船が残ってるかも知れん。」
4人は集会所に向かった。
集会所にたどり着くと、4人は駆け込んだ。
「おい!あまりの船あるか!?」
ジョンは受付の女性に尋ねる。
「そ、それが・・・古龍の襲来により大半が破損してしまって、船が残ってはいたのですが、ゼロ様が出立される時に全て破壊してしまいました・・・」
「くそっ!」
「他になにか方法はないの?」
「・・・悔しいが、この街に船着き場はここしかない。俺達に出来ることはまつことだけだ。」
「・・・お兄ちゃん・・・」
リリスは心配そうな表情を浮かべる。
その場にいた全員が、それぞれ何も出来ないことに苛立ちを感じていた。・・・ーーー
ーーーゼロが密林にたどり着いたとき、日はすっかり沈んでいた。
密林には、以前と同じように生き物の姿はなかった。
しかし、台風のように強い風雨が容赦なく降り続いている。
「・・・ち、やっぱり居やがるか・・・」
ゼロは面倒臭そうに歩き出した。しばらく奥に進むと、ゼロは異変に気付く。
「・・・ここら辺だけ風の流れがめちゃくちゃだ・・・近い・・・!」
ゼロが視線を奥に向けると、“それ”はいた。
どんな飛竜とも異なる姿、漆黒の鋼の鎧を纏う巨体、風を起こし嵐を呼ぶ力。
そう、クシャルダオラである。
「出やがったな・・・!」
クシャルダオラはゼロを確認すると、より一層強い風を巻き起こし、臨戦態勢に入る。
「へっ・・・慌てんじゃねぇよ。むしろはらわた煮えくり返ってんのは俺なんだよ・・・」
ゼロはスラリと剣を構える。
「・・・てめぇだけはゆるさねぇ!!」
ゼロは言葉と同時に地面を蹴り、走り出した。
ギュオオオ!!
クシャルダオラはゼロに向けて風の玉を撃ち出した。
「な!?」
ゼロはいきなりの攻撃に面食らった。
「ちぃっ!」
ゼロは風の玉を回避するため、走る方向を急激に変える。
ブゴォオオゥ!
風の玉はゼロの真横を通過する。
「ぐ!」
ゼロは直撃は避けたが、風圧によって吹き飛ばされる。
「くそっ!」
なんとか着地したゼロは再びクシャルダオラに突撃する。
すると、クシャルダオラはまたしても風の玉を撃ち出す態勢に入る。
「二度もくらうかよ!」
ゼロは撃たれる前に旋回し、クシャルダオラまで一気に接近する。「よし、もう少し!・・・って、うぉあ!」
ゼロはギリギリまで近付いたが、クシャルダオラの纏う風にまたしても吹き飛ばされた。
「・・・ちくしょう!近付くことすら出来ねぇ。・・・だが、あいつだって生き物だ。何か突破口があるはずだ。・・・よく観察しろ、俺。」
クシャルダオラの攻撃をよけながら、ゼロはあることに気付く。
「あいつ、頭のまわりに風があまりない。クビが長い分、カバーしきれてないのか?・・・いずれにせよチャンス!」
ゼロはまたもやクシャルダオラに突撃する。
「三度目の正直だ!くらいやがれ!!」
ゼロは思いきり剣を振り下ろす。
バキィィン!
ゼロの剣がクシャルダオラの頭部を直撃する。
しかし、大したダメージは与えられなかった。
「く〜っ!硬ぇ!」
攻撃したはずのゼロの手が痺れていた。
ギュオオオ!!
クシャルダオラは頭部を攻撃された事に激怒する。
ブァっ!ヴァサッヴァサッ。
クシャルダオラは飛び上がり、空中からの攻撃を仕掛けてきた。
「ち!これじゃ手が出せねぇ・・・」
ゼロが言いかけると、クシャルダオラは今までと違って、空気を体に溜め始めた。
「なんだ?なにがくる?」
ゼロはなにがくるか分からずに身構える。
ギュオオオォ!!
クシャルダオラは風を吐き出した。
風の玉ではなく、風そのものを。
ヒュオォオオ!!
「ぐあっ!」
ゼロは物凄い勢いで飛ばされ、木に叩きつけられた。
「がはっ!」
ゼロは気を失い、その場に崩れ落ちる。
クシャルダオラは勝利を確信したように、ゆっくりとゼロに近付いていった・・・
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