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第13話
4人が密林に到着した頃、日は落ちて夜になっていた。
密林は異様な静けさに包まれていた。
「・・・なんか・・・やけに静かだな」
「そうね…それに、普段はうじゃうじゃいるランポスが見当たらない」
ジョンとミリアが見事になにもない密林を見て驚く中、ゼロだけが腑におちない顔をしていた。
「ゼロ・・・どうしたの?」
アルが尋ねる。
「・・・様子がおかしいぞ・・・」
「そりゃ古龍がいるからだろ?」
「違う・・・生き物の気配すら感じない。」
「なおのこと古龍のせいだろ。モンスターが姿をけしたせいだ。」
「・・・」
ゼロは黙り込む。
「とりあえず古龍を見つけに行くわよ。話はそれから。」
「そうだな。なら手分けして・・・って言いたいとこだが、ここは固まって動いた方が得策だろう。」
「そうね。」
アルとミリアが頷く。
4人は密林の奥へと歩きだした。
しばらく歩いていたが、ゼロは一向に口をひらかずに、何かを探るように辺りを見回していた。
「どうしたゼロ?さっきからおちつかねぇな。何してるんだ?」
「見て分からん奴には言っても分からん。」
「そんなこと言わずに教えろよ」
「気配を探してる。」
「気配?」
「・・・お前が言うように、古龍のせいで密林が静かなのは分かってる。だが妙だ。いくら何でも静かすぎる。」
「静かすぎる・・・?」
「あぁ。まるで・・・ここには生物が一匹もいないみてぇだ。」
「気のせいだろ。いきなり密林から生き物がいなくなったから動揺してるだけじゃないか?」
「だと良いけどな・・・」
「ゼロ・・・そんなに気になるの?」
アルが問いかける。
「いや、気になるって言うか・・・なんかこう・・・胸騒ぎがすんだよ。」
「ゼロ、アルちゃんを怯えさせるような事いったら駄目じゃない。」
「そんなつもりで言ったんじゃねぇよ。・・・アルももう心配すんな。俺はただ落ちつかねぇだけだ。」
「気分悪いなら早めに言ってね?」
「分かった分かった。」
4人はさらに奥へと進んでいった。
しかし、奥に進めば進ほど、ゼロの言った言葉が現実味を帯びてくる。
他の生き物は当然ながら、どれだけ探してもクシャルダオラは見つからなかった。
「いねぇなぁ・・・さっきゼロが言ったことは本当だったのか?」
「それはどうか分からないけど・・・これだけ探していないって言うのはおかしいわね・・・」「ゼロ・・・やっぱり気配は感じないの?」
「あぁ、全くな。」
「なんだよ。使えないな。」
「こらこら!俺を探知機か何かと一緒にすんな!」
話している途中、ゼロがあるものに気付く。
「隠れろ!」
3人を引っ張り、岩陰に隠れる。
「どうしたんだよゼロ!?」
「・・・あれ・・・」
ゼロが指差す方向に見たこともない姿の龍が寝そべっていた。
その姿に全員が息をのむ。
「・・・あれがクシャルダオラか?」
「こうして見ると、ますます古龍って感じね・・・」
アルは言葉もなく、ただ呆然としている。そんな中、やはりゼロは妙な顔をしていた。
「どうしたゼロ?まさかまだ妙だとか言うのか?」
「・・・あぁ、様子がおかしい・・・。」
「そんなこと言ったって実際にいるじゃねえか。」
「それはそうだけどよ。・・・けど、あれは・・・いるんだけどいねぇんだ。」
「何わけのわからねぇこといってんだ?」
「・・・ちょっと様子を見てくる。お前らはそこにいろ。」
「っておいゼロ!」
ゼロはジョンの呼びかけを無視してスタスタ歩いて行く。そして、ゼロは龍のもとへとたどり着く。
「・・・やっぱりな…」
そう言うとゼロは、3人にこっちに来いと合図する。
「・・・なんだよ・・・これ・・・?」
3人は言葉をなくしていた。
「・・・抜け殻・・・?」
そう。今まで龍と思っていた物の正体は龍の抜け殻だった。
赤く錆びたその抜け殻は、本体の体の大きさと、甲殻が金属であることを物語っている。
「じゃあさっきゼロが言ってたことは・・・」
「あぁ。多分クシャルダオラはここにはいない。恐らく別の・・・」
ゼロは言いかけてハッとする。
「おい!走れ!船に戻るぞ!」
「どうしたんだよ急に!?」
3人は疑問に思いながらもゼロについて行く。
船までたどり着き、4人は急いで船に乗り込み、船は出航する。
「ゼロ!いきなりどうしたんだよ!?」
ジョンが聞くと、ゼロは真剣な表情をする。
「・・・街が危ない。」
この一言で3人に戦慄が走る。
「ま・・・まさか?」
「そのまさかだ。確実とは言えないが、可能性は十分過ぎる・・・」
「くそっ!なんてこった!」
ジョンは拳を握りしめ悔しがる。
「ミリア!もっとスピードは出ないのか?」
「これで目一杯よ!今日は風が少ないからあまりスピードは出ないわ!」「くそっ!頼む!間に合ってくれ・・・」
焦る4人をあざ笑うように、風は一向に強くならなかった。
ーーーユニウスーーー
4人がやっとの思いで街に着いたときには、街は無惨な姿になっていた。
「間に合わなかった・・・」
アルは呆然とする。
「くそっ!」
ゼロは走り出した。
「ちょっとゼロ!どこにいくのよ!?」
「バカやろう!生存者の救出に決まってんだろ!お前らも早く行け!」
言われて3人はバラバラに行動して救出活動に向かった。
ゼロは走りまわっている内に、鍛冶屋の前にきていた。
「おっちゃん!大丈夫か!?おっちゃん!!」
ゼロが叫んでいると、瓦礫の下から親方が出てきた。
「ゼ・・・ゼロ・・・」
親方は足を引きずって歩いてくる。
「おっちゃん!よかった無事で・・・」
「俺は無事だ・・・だが、街の南ブロックは・・・ひどいらしい・・・」
「南ブロック・・・」

言われてゼロはぞっとする。南ブロックには、マリー達のいるレライズ教会があるのだ。
「おっちゃん、一人で大丈夫か!?」
「あぁ、大丈夫だ・・・。いってきな。」
「すまん!」
ゼロは教会に向かって走り出した。
「くそっ!マリー、リリス・・・無事でいてくれ!」
ゼロは息をするのを忘れてしまいそうな勢いで走った。
ゼロが南ブロックにたどり着くと、レライズ教会が跡形もなく崩れているのが見えた。
最悪の事態がゼロの頭をよぎる。ゼロが教会の近くに走りよると、教会の前にリリスが座り込んでいた。
腕に抱かれた白いうさぎの人形は血に染まり、真っ赤になっていた。
「リリス!大丈夫か!?」
ゼロが呼びかけると、リリスはゼロのもとへと走りよる。
リリスはその小さい体を震わせていた。
「怖かったか?兄ちゃんがついててやるからもう大丈夫だ。それより・・・マリーはどうした?」
ゼロが尋ねると、リリスは黙って指を指す。
リリスが指を差した方をみると、マリーが血まみれで倒れていた。
「マリー!!」
ゼロはマリーのもとに駆け寄り、マリーの体を抱き上げる。
「マリー、しっかりしろっ・・・!」
ゼロが必死に呼びかけるとマリーはゆっくりと目を開く。
「あ・・・ゼロ兄ちゃん・・・どうしたの?そんなにあわてて・・・」
「マリー!よかった、気がついたか。」
マリーはゼロの腕の中から顔をだし、周りを見渡す。
「そうだ・・・わたし・・・瓦礫の下敷きになって・・・。」
マリーは全てを思いだし、悲しそうな瞳でゼロをみる。
「ゼロ兄ちゃん・・・わたし・・・死んじゃうのかな…?」
ゼロは胸を抉られるような思いがした。
リリスには大した怪我はない。切り傷が目立つくらいだ。
だが、マリーはすでに手遅れだった。大量に出血していて、病院に行こうと思っても、クシャルダオラの襲撃により病院はすべて破壊されていた。
「ばっ・・・ばかだな!死ぬわけないだろ!」
ゼロは不安にさせないように、必死にごまかす。「・・・ゼロ兄ちゃん・・・わたし、海に行きたい。」
「海?」
「うん…今まで海に行ったことなかったから・・・」
「わかった。兄ちゃんが連れてってやる。」
ゼロはそう言うと、マリーを抱えて、海岸へと向かった。海岸につくと、穏やかな海の上に朝日がのぼっていた。
「マリー、着いたぞ。」
ゼロはマリーを抱えたまま、砂浜に腰掛ける。
「朝日・・・キレーだね…」
マリーは、すでに言葉を口にすることもままならないほど衰弱していた。「あぁ、きれいだな。・・・リリス、いつまで突っ立ってるんだ?隣に座れよ。」
後ろで黙って立っているリリスに座るように促す。リリスはゼロの隣に座る。
「・・・きれい・・・」
一言もらして、朝日を見つめる。
すると、マリーが口を開く。
「・・・わたしね・・・お父さんとお母さんが死んじゃってから、ずっと寂しかったけど、ゼロ兄ちゃんに拾われてからは、すっごく幸せだったよ。」「いきなり何言うんだよ?」
ゼロが尋ねるが、マリーは無視して話を続ける。「・・・わたしが悲しいときはいつもそばにいてくれたし、わたしが風邪をひいたときは寝ないで看病してくれた。・・・ゼロ兄ちゃんにイタズラされたりとか、逆にイタズラもいっぱいしたけど、それが全部楽しかった。ゼロ兄ちゃんのイタズラ好きな所とか、優しい所が大好きだったよ。本当のお兄ちゃんみたいだった。」
「バカやろう。初めから俺はお前の兄ちゃんだ。血はつながってないけど、心はつながってただろ?」
「うん・・・。あのね・・・今までありがとう・・・お兄・・・ちゃん・・・」それが、マリーの最期の言葉だった。
マリーは、ゆっくりと、眠るように目を閉じた。「マリー?おい、起きろよ。・・・頼むから目を開けてくれよ・・・。昨日指きりしたばっかりじゃねぇか・・・。」
ゼロの声はかすれていた。その目は、今まで決して見せることのなかった涙でいっぱいだった。リリスはゼロの横で泣きじゃくっている。
「・・・今度遊ぶんだろ?こんな所で寝たら風邪ひくぞ?・・・マリー・・・」
ゼロは冷たくなったマリーの体を、ぎゅっと抱きしめる。
「マリー・・・俺は兄ちゃんらしかったか?少しでもお前を幸せにすることができたか?・・・今まで・・・あまりかまってやれなくてごめんな・・・。そして・・・こんな馬鹿でしょうがない俺のそばにいてくれて・・・ありがとな・・・。」マリーは、2人に見守られ、朝日がのぼるなか、永遠の眠りについた。
その顔には、安らかな笑みを浮かべていた・・・。


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