第12話
ジョンとゼロは集会所に向かって歩いていた。
「なぁ、ゼロ」
ジョンが口を開く。
「ん?何だ?」
「料理を作ってるのはアルとミリアなんだよな?」
「それがどうした?」
「いや、それは本当に食えるのかなぁと思ってよ」
「・・・俺は、ミリア達の料理は旨いって必死に自分に言い聞かせてここまで来た・・・」
「必死にかよ!?嘘でも旨いと言ってくれ!」
「食ったことねぇんだから分かる訳ねぇだろ!俺達に出来るのは、自分に言い聞かせることぐらいだ!」
「マジかよ・・・。出来ることが少ねぇなぁ、おい。」
ゼロとジョンはトボトボ歩く。
少し歩いて、ジョンは異変に気付く。
「なんか・・・街が静か過ぎねぇか?」
そう、いつもならば商業で賑わっている時間にも関わらず、街には人の影がなかった。
「なんだ?お前知らないのかよ?」
「何をだよ?」
ジョンが聞き返す。
「昨日の夜に警報がでて、みんな家の中に避難したんだぜ。」
「警報・・・?」
ジョンは首を傾げる。
「あぁ。何かが襲ってくるとか来ないとか。確か・・・クシャ・・・何とか言ってたような。」
それを聞いて、ジョンの顔が青ざめる。
「まさか・・・クシャルダオラか・・・?」
「あ〜、そんな感じだったな。」
「嘘だろ・・・。」
「ヤバいのか?」
「ヤバいなんてもんじゃねぇぞ!!お前何も知らんのか!?」
「知らん」
ゼロのそっけない返事にジョンは呆れる。
「はぁ・・・クシャルダオラって言うのは・・・古龍の名前だ」
「古龍!?マジかよ!?」
「あぁ、残念ながら大マジだ。古龍って言うぐらいだから、目撃例が少なく詳細はわからん。だが情報によると、そいつが来ると風を操り周辺の天気を一変するらしい。そして、甲殻は漆黒の鋼に包まれていることから鋼龍とも言われているらしい・・・」
「そりゃあヤバいな・・・」
「あぁ・・・ヤバすぎる・・・」
ゼロとジョンは暗い雰囲気をまとって街を歩く。すると。
「お兄ちゃん!!」
後ろから声がする。
ゼロとジョンは同時に声がする方に顔を向ける。
「あ!マリーにリリスじゃねぇか!」
声を上げたのはゼロであった。
そこには、12歳位の女の子が2人並んでいた。
「ゼロ兄ちゃん!何してるの?」
ゼロのまわりをぐるぐるまわってはしゃぐ活発な子がマリーで、ゼロの足にぴったりくっ付き、何も言わずに、白いウサギのぬいぐるみをもって微笑んでいるおとなしい子がリリスである。
「俺のことより、お前らちゃんと家の中にいないとダメだろ?危ないぞ。」
「ゼロ・・・その子達は?」
ジョンが質問する。
「あぁ、言ってなかったっけ?この子達は昔、両親を亡くしてな。道端に2人で暮らしてたのを俺が拾ったんだ。
しばらくは俺の家で面倒みてたんだけど、俺もハンターの仕事があったから、家を空けることが多くなってな。寂しい思いをさせるといけないから、レライズ教会に預かってもらって、俺はちょくちょく遊びに行ってたんだ。」
「なるほど。前々から不信教者のお前が教会にやたらと寄付するからおかしいとは思っていたが・・・こういうことか。」
「まぁ、そゆこと。」
「お兄ちゃん・・・今からどこか行くの・・・?」
リリスが聞く。
「あぁ、兄ちゃんは今から集会所に行ってくる。」
「えぇ〜。遊ぼーよー。」
「今は遊んでやれないんだよ。また今度な。」
「じゃあ指きりしよ!」
マリーは小指をピコピコしている。
『ゆーびきーりげーんまんうそついたら針千本のーます!』
ゼロはマリーと指きりを済ませ立ち上がろうとしたが、リリスが服を引っ張っていたため、立ち上がることができなかった。
ゼロがリリスを見ると、リリスも黙って小指を突き出していた。
「リリスも指きりするか?」
ゼロが聞くと、リリスは黙ってコクリと頷く。
ゼロはリリスとの指きりも済ませ、マリーとリリスは教会へと帰って行った。
「ふぅ・・・あいつらも大きくなったなぁ。」
「なかなか面倒見がいいなぁ・・・お兄ちゃんは・・・ぷぷっ!」
「うるせぇ。わらうな。」
ボクッ!
「ぐば!」
ゼロのグーパンチがジョンの顔面にめり込む。
「なっ・・・殴ることねぇだろ!?」
「悪いな。手を握りしめて腕を伸ばしたらそこにお前の顔面があっただけだ。」
「・・・ったく・・・。それにしても、リリスは随分大人しい子だな。」
「いや、あれでもよく喋るようになったよ。前までは親を亡くしたショックで口もきけなかったし、俺と教会のシスターとマリー以外の人間には近付きもしなかったからな。」
「へぇ〜・・・大変だったんだなぁ・・・」
「・・・って感傷に浸ってる場合じゃねぇぞ。俺らも覚悟を決めねぇと・・・」
「・・・行くか・・・」
「・・・あぁ・・・」
2人は集会所に向かって歩き出した。
ーーー集会所ーーー
2人が集会所の扉を空けると、いつも賑わっているはずの集会所は静まり返っていた。
「あ!ジョンだ!おっかえり〜。」
厨房からアルが出てくる。
「よぅ。ただいま。」
「もう料理はできてるよ〜」
「くっ・・・いよいよか!」
「何かいった・・・?」
「いや、何も・・・アルさん、包丁をこちらに向けないで頂けますでしょうか?」
アルは不適な笑みを浮かべ、包丁をもとに戻す。
「2人共、あまりの美味しさに腰抜かさないように覚悟しときなさいよ・・・」
アルはフフフ・・・と笑う。
「覚悟ならすませてきたよ・・・」
ゼロは落胆したように言う。
「またしても空耳かなぁ?」
アルは指をぽきぽきならす。
「ア・・・アルさん、ど〜してそんなに指をぽきぽき鳴らしていらっしゃるんですかぁ?」
「いや、少々落胆の声が聞こえたような気がしてね・・・」
「そりゃあ空耳ですよ。」
「ならいいけどね・・・」
またしてもアルはフフフ・・・と笑っている。
「あら?ゼロとジョンじゃない。来たんなら来たって言いなさいよ。」
奥からミリアが顔を出す。
「いまそっちに料理持っていくから待ってなさい。あ、アルちゃん手伝って。」
「は〜い」
アルはパタパタと厨房に戻る。
ゼロとジョンは適当に座る。
「はい、ご馳走あがりぃ〜」
アルはニコニコして料理を運んできた。
『おぉ〜!』
ゼロとジョンは同時に声をあげる。
運ばれてきた料理はゼロ達の想像よりはるかによく出来ていた。
「ほら、早く食べないと冷めちゃうよ!」
アルにせかされ、ゼロとジョンは料理を口に運ぶ。
「ん!んまい!」
「旨いな。うちのコックより旨いぞ。」
ゼロとジョンは料理をガツガツ食べる。
すると奥からミリアがやってきた。
「その料理、実は・・・」
「うわぁぁ〜!言わないでくれぇ!」
「ジョン・・・まだ何も言ってないわよ。・・・だからその料理・・・」
「えっ!・・・ちょっ・・・マジでぇ〜!?」
「2人してうるさい!!」
ドスっ!バキっ!
「ぎゃあ!」
「がふ!」
ミリアの怒りの鉄拳がゼロとジョンの顔面を潰す。
「まったく・・・人の話は最後まで聞く!」
「いや、聞いちまったらそれと同時に俺の人生の幕を閉じることになりそうだったから・・・」
「ゼロ・・・あんたいい度胸ねぇ。私をからかうなんて百年はやいわよ」
「ミリアさん!目がすわってますって!怒りを鎮めたまえ〜。」
「はぁ・・・まぁいいわ。で、この料理・・・実はほとんどアルちゃんが作ったのよ。」
「マジで!?よく作れたなぁ。」
「アルちゃんは私がちょっと教えただけですぐに作っちゃったわよ。」
「へぇ〜。すげーな〜。」
「ところで・・・、今日は他のハンターは誰も来てないのか?」
ジョンが質問する。
「他のハンターは古龍が来たからってみんな来ないわよ。腰抜けばっかりなんだから・・・」
「そうか。」
「なぁ、ミリア。その古龍がいまどこにいるのか分かってるのか?」
「密林にいるらしいわ。やっぱりいくの?ゼロ。」
「当たり前だろ。一応様子だけでも見ておかないとな。」
「そう言うと思った。・・・クエストの手続きならもうすませてるわ。」
「本当か!?気がきくなぁ!」
ゼロはそう言うと、あっという間に料理をたいらげた。
「ふぅ〜。アル、料理旨かったぜ!」
「本当?よかったぁ。」
アルは安堵の表情を見せる。
「よし...いっちょ行ってきますか!」
ゼロがそう言うと、4人はそれぞれの武器を手にし、船に乗り込む。
船は4人をのせ、密林に向かって動きだした。
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