79話 因果応報
注意。この話は『R15』と『残酷描写あり』が仕事をします。人によっては気分が悪くなる表現が出てきますので、注意して読み進めてください。
作者的には、1章にあった残酷表現ありだった話と同じか、それよりはちょっとマシだとは思っています。マシだとはいえ、エグい内容に変わりはありませんので、耐性がない方は読み飛ばし推奨です。
該当個所は、『(悲鳴)』の後に続くヘイト君の長台詞です。それ以外はあまり言及しないようにしてますので、そこだけ飛ばせば読めるとは思います。
あれから俺は襲撃者どもを引き連れ、昨晩と同じようにレイトノルフの西門をノーチェックで通り抜けた。
その際、俺たちの異様な行軍を見てもノーリアクションだった衛兵に、馬鹿どもが必死に助けを訴えかけようとしていたのが印象的だった。
そこからはいくつかのグループに分かれ、《神術思考》で肉体を操作して解散。夜の闇が支配した無法地帯をひたすら走る。
俺と一緒についてきているグループは、襲撃者たちの中でもリーダー的立場の実力者たちばかり。スラムの自称ボスに、最近『黒鬼』級に昇格した冒険者も中には含まれている。
移動時間短縮のため、『種族』を『異世界人』に変更して走る。他は腐っても実力者なだけはあり、速度を一定に維持し余裕を持って追走していた。
あ、ちなみにコイツらの強制気道収縮は町の外に出た時点で解除している。酸欠が原因でぶっ倒れられても、運搬が面倒だからな。
「おし、ついたぞ」
で、店から離れて形だけの敬語を続ける意味もなくなり、いつもの口調に戻してコイツらに目的地を示してやった。
「おい、おいおいおい!? ここって、『餓狼の森山』じゃねぇのか!?」
「あ、頭おかしいのかテメェ!? 真夜中ってだけでも危険度は跳ね上がんのに、『偉人』級のダンジョンに俺らを放り込むなんて、狂ってる!」
俺が手で指し示したのは、昼間より一層危険なかほりのする、『餓狼の森山』だ。月明かりも鬱蒼とした木々が遮り、ここから森の中の様子を見ることは出来ない。
俺は割と頻繁に来ていて散歩コースみてぇなもんだが、コイツらに取っちゃ正しく死地なんだろう。酸欠とはまた違った意味合いで顔色を悪くし、必死に首を横に振りまくる。
「誰がそのまま放り込む、っつったよ? 俺も中に入るに決まってんだろうが?」
『…………は?』
意味が分からず、ポカーンとする十数名の間抜けどもを後目に、勝手知ったる他人の家とばかりにダンジョンへ足を踏み入れた。
放置してたらいつまで経っても動き出しそうになかったし、俺が先頭を切って移動を開始したと同時に、スキルを使って襲撃者たちの足も無理矢理動かす。
「ちょ! 待て! 止めろ!」
「ふざけんな! 俺は帰る! 帰らせてくれぇ!」
「い、嫌だ! 嫌だ嫌だ嫌だ嫌だぁ!」
集団でいた時はあんなに威勢が良かったのに、ホームから引きずり出して人数を削られるとコイツらの様子は一変した。
主にスラム住民が《神経支配》で勝手に動く体に抵抗しようと、恥も外聞もかなぐり捨てて喚きだす。
「……は、ははっ! 何だ、スラムの連中もこの程度でビビるとか、大したことねぇな」
「ま、まったくだぜ。『偉人』級のダンジョンでも、境界付近はまだランクの低い魔物が多いからな」
「それに、最近の『餓狼の森山』の現状を考えりゃ、単なる脅しだろ? ビビることはねぇさ……」
一方、日頃からダンジョンに入る機会の多い冒険者連中はまだ冷静だ。ランクも『黒鬼』級と上位ランクに食い込んでるだけあり、この程度じゃ肝試しくらいにしかならねぇんだろう。
とはいえ、少々読みとれる思考に油断が多いのはどういうことだ? 確かに、ダンジョンの浅い場所に出る魔物は、指定ランクより二ランクは下の強さしかねぇのが一般的だが、それを差し引いても夜のダンジョンの危険度は高い。
ダンジョンに入ったばかり、というだけじゃ理由にならねぇ慢心は、一体どこから来てやがるんだ?
ま、いいか。俺には関係ねぇ話だし。
うるさい連れを無視し、普通の山登り感覚でどんどんダンジョンを上っていく。
「…………お、おい! どこまで行く気なんだよ!?」
「ここ、もう中層なんじゃねぇのか!?」
「ヤベェって!! 死んじまうって!!」
そのまま何事もなくダンジョン中腹にさしかかったところで、今度は冒険者連中も我慢できずに騒ぎ出す。
おいおい、コイツら本当に『黒鬼』級の冒険者かよ? 昇格は最近したらしいとはいえ、いくらなんでもお粗末すぎやしねぇか?
「ピーピーさえずるのはテメェらの勝手だが、夜中のダンジョンで騒ぎまくったらどうなるか、予想も出来ねぇのか? まあ、自主的に魔物を呼び寄せたいってんなら話は別だけどよ?」
『っ!?!?』
さっきから《生体感知》にいくつもの魔物の反応がひしめき、こちらの様子を窺ってるのがわかる。生物の気配を感じ取ったのもそうだが、ほぼ九割はコイツらの大声を聞いて集まったんだろう。
冒険者にとっちゃ初歩も初歩なことを改めて指摘してやると、今度は一斉に口を閉じる。冷や汗をだらだらと流し、今更ながらに周囲へ視線を向けて警戒態勢に入った。
ほとんど町の外に出ねぇスラム住民ならまだしも、『黒鬼』級冒険者のする事じゃねぇな。
『偉人』級ダンジョンが町周辺にあるってのに、冒険者の質がこんなんじゃ、レイトノルフの寿命はそう長くなさそうだ。
「お、おい」
「あ?」
大人しくなった奴らとぞろぞろダンジョンを移動するさなか、一人の冒険者が小声で声をかけてきた。
「さ、さっきからぜんぜん魔物が襲ってこねぇが、テメェが何かしてんのか?」
は? 今さら聞くことか、それ?
速度を緩めず背後を振り返ると、似たような視線がいくつも向けられていた。
ほとんどが今気づいた、って顔してんな。揃いも揃って、無能ばっかかよ?
「……別に何も。このダンジョンの魔物は、単に俺を警戒して近づかねぇだけだよ」
「な、なんでテメェを警戒してんだよ?」
「さぁ? 思い当たる節は、この二ヶ月で『餓狼の森山』内にいる魔物の数を半分以下にしたことくらいだが、それ以外に心当たりはねぇな」
「…………は?」
さらっと告白した俺の台詞がよほど信じられなかったのか、質問した冒険者は思考を停止させて口を半開きにした。
実際、『副業』でこのダンジョンを利用し始めた時と比べると、魔物の数は4割程度にまで減少している。
スキルレベル上げで大量の魔物を相手にした、ってのもあるが、基本は『副業』の露払いで減った。他にも理由はあるが、今はいい。
『代謝草』や『魔源草』などのアイテム収集の際、人の気配を察知した魔物がうようよ湧く。特に夜中は頻繁に襲ってきやがるから、いちいち相手せにゃならんのが面倒だった。
まあ、ようやく俺の臭いか気配を覚えたのか、魔物が近寄ることも減ってスキルレベル上げがしにくくなってるんだがな。だから、最近は襲われるのを待つよりこちらから襲いに行く方が多くなってる。
ちょっとした悩みの種の一つだったが、今回は移動がスムーズで助かったとみるべきか。
「…………じゃ、じゃあ、他の奴らは、一体どこに行ったんだ?」
コイツらも俺が本格的にヤベェと気づいたのか、絞り出す声も震えて小さい。男のくせに、情けねぇなぁ。
んで、これ以上この話題を掘り下げるのは精神衛生上危険だと判断したらしい。次に気になっていた、他の面子の処遇について尋ねてきた。
……減るもんじゃねぇし、教えてやってもいいか。
「話で聞くより、実際に聞いた方が早いだろうな」
「へ?」
さっきから返事が間抜けだな、と思いつつコイツらの《同調》に干渉。
今現在の仲間たちの様子を、声だけ届けさせてやった。
『いぎゃああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?』
『ひっ!?』
途端、コイツらの耳には背筋が粟立つ悲鳴が爆発した。
唐突な絶叫を聞かされたためか、全員が背筋を凍らせて息を飲む。
「これは『猿王の森』に行かせた奴の声だ。過去の経歴を遡ると、スラム住民のそいつはどら息子のパシリとして、よく債務者の取り立てに行ってた。基本暴力で脅迫し、傷害、器物破損、住居不法侵入などなど、やりたい放題やってたみてぇだな。
それだけならまだよかったが、そいつは相当な小児性愛者でな。どら息子の名前を使い、行く先々のガキを無理矢理レイプしてたクズだった。それも、一件や二件ならまだしも、ほぼすべての家でやってたんだから、救いようがねぇ。
だから、最後くらい被害者の立場になってみてもいいんじゃねぇか? って思ってな。さんざんガキを食ってきた報いとして、魔物の巣穴で幼体に食わせてる。生きたまま、痛覚を倍増させて、発狂させずに、な。
『猿王の森』にはそいつと似たような経歴ばっかの連中を向かわせたから、順次ゴブリンの巣に身投げさせる予定だ。ゴブリンは数だけは多いからな。大量に降って湧いた人間に大喜びで、勢いよくがっついてるよ」
食う、って意味合いは違うが、アイツらがしてきたことの所業を考慮した処理方法だ。
火炙りとか生き埋めとか串刺しとか斬首とか、人間の死刑でありそうな方法も考えたが、後で隠蔽や片づけが大変そうだったし、食物連鎖の輪に乗せる方が手っ取り早いと結論づけた。
他の連中も、だいたいそんな感じだな。
『あがごげぐげごぼごぽ!?!?』
『あ、あぁ……』
「こっちは『黒鬼』級ダンジョンの『蠱毒の坩堝』だな。ここに向かわせた奴らはドがつくほどの加虐嗜好者ばかりで、どら息子の依頼以外にもスラム弱者を相手に拷問まがいのことをやってやがった。
特に最悪なのは、今テメェらが聞いてる声の主。生きたままどれだけ人間を解体できるか、ってイカレた妄想を嬉々として実行してた異常者だ。ざっと調べるだけで、およそ人間のやるこっちゃねぇことをあらかた踏み外してたクズだよ。
さすがに胸くそ悪ぃから、『蠱毒の坩堝』名物、毒虫プールに沈めてやった。多種多様な雑食性の毒虫数百万匹に体を食い破られて、どんな拷問よりも興奮する気分を自分の体で直接味わってることだろうぜ。
ついでに言うと、残りの奴らは連れが一人ずつ虫に食われていく様をじーっと見続けてる。瞬き以外は目を逸らすことも、耳を塞ぐこともさせずに、己の末路を神経の一本まで理解させるために。コイツが最初なのは、他人の残虐シーンなら無条件で興奮しそうな変態だったからだな」
音声を別のグループに切り替えてやると、背後からすすり泣く声や歯がカチカチ鳴る音がし始めた。恐怖と同情が感情を満たし、わけがわからなくなってるようだな。
何だ。どうしようもねぇ悪党連中でも、自分の身に起きるかもしれねぇってなると、他者に共感できる能力はあるのか。
もし、今までの人生で他人の痛みを知る能力を発揮できていたら、俺みてぇなろくでなしに出会っても、まともな死に方が出来たかもしれなかったのにな。
かく言う俺も、まともな死に方は期待出来そうもねぇけど。
『死ねぇ! 俺が! 俺だけが生き残ればいいんだぁ!!』
『…………』
「最後は『黒鬼』級ダンジョンの『無明の洞』だ。ここのグループはテメェの身勝手で友人や家族、仲間を売った冒険者連中が主に集められている。どら息子の命令で事故に偽装して殺害し、残された女をどら息子に献上した後、自分も美味しくいただいた、ってクズ連中が多いな。
今騒いでやがんのは、『黒鬼』級冒険者だな。テメェの実力っつうより、主にパーティーを組んだ連中の手柄を横取りしてランクを上げたハリボテ野郎だ。己の利益だけを考えて平気で嘘をつき、人を騙し、何人も殺した、薄汚ぇクズの一人。
コイツらは今、俺の命令でダンジョン内で殺し合いをさせてる。適当に単独でダンジョンに入らせ、一時的に肉体支配を解いたバトルロワイヤル形式だ。ルールは一つ、生き残った奴だけは見逃してやる、って伝えてるから、張り切ってんだろう。
洞窟型ダンジョンで真夜中な上、光源を一切持たせてねぇから、苦労してそうだな。それに、魔物や死のプレッシャーと視界を封じられたストレスで、一気に発狂した奴もいるみてぇだ。まぁ? 残った一人も、また体を操って自殺させっから、全滅に変わりはねぇけどな?」
ん? 何人か漏らしてねぇか? すっげぇ小便臭ぇんだけど?
いい歳した大のオトナが、便所も我慢できねぇのか? ったく、情けねぇ限りだな。
それに、俺がやらせてんのはある意味禊だ。
こっちの世界にも、死後の世界で罪過の審判を行うって宗教観がある。それを受ける前に、ある程度の罰を俺が与えることで、罪の軽減を手伝ってるんだよ。
そう考えれば、コイツらに与えているのは魂の浄化(棒読み)だ。俺自身は宗教も神も仏も信じちゃいねぇけど、効果ハアルンジャネェノ?
にしても、『トスエル』に来た襲撃者が全員漏れなくクズで、変な話やりやすかったところはある。
ぶっちゃけ、ゴークに脅迫されて無理矢理やらされてた、みてぇな奴なら手加減していただろう。その場合、クズどもの最後を記憶に焼き付けた後、俺のスキルに関する記憶を消して放逐、って流れを想定していた。
が、そんなリスクを負う面倒な真似をしなくてもいいほど、コイツらは一人残らず清々しいほどのクズだった。
ダンジョン地獄巡りの刑に招待するのに、少しも躊躇しなかったくらいにはな。
俺と同じグループのスラム住民や冒険者からは、「いくら何でもやりすぎだ」って思考が流れてきているが、何を勘違いしてるんだか。
今まで自分たちが犯してきた罪が、俺に敵対することによってそっくりそのまま返ってきただけ。
つまり、すべては自分自身が招いた結果であり、因果応報なんだよ。
悪人は悪人らしく、重罪には重罰が科せられるのが、自然の流れだ。
それは俺も、例外じゃねぇ。
いずれ突きつけられる報いは、きっちり受けるつもりだよ。
「っと、無駄話もここまでだな」
そうこうしている内に、一行はついに『餓狼の森山』の上層までたどり着いた。
ここからは俺も魔物からの襲撃リスクが発生し、下手に動かずともいい練習相手を見つけることが出来る。
同時に、コイツららしい処刑の場としても的確で、一石二鳥だな。
《神経支配》でなすがままだったスラムや冒険者連中は、すでに顔色が真っ白だが、気にしたりはしない。
「さて、道中の説明でわかってもらったと思うが、俺は独断と偏見で今までお前らがやってきたことを参考にし、死に場所と死に方を選定してきた。当然、お前らに相応しい方法を実行する上で、こんな山奥につれてきたわけだが」
「グルアアアアアッ!」
すると、説明の途中で魔物の咆哮が響きわたり、スラム住人と冒険者が反射的に身を竦め、直後に武器を構えた。
「ちょうどいい。向こうから来てくれるなら話は早い。じゃあ、手短に説明しよう」
真正面から迫ってくる強大な気配を感じながら、俺は死刑囚どもを振り返ってコンセプトを説明する。
「この場に集まったのは、どら息子に雇われた中でも実力が上位の連中ばかりで、何でもかんでも権力と暴力で好き勝手してきたクズどもだ。スラム連中は恐怖支配で他者の利益を貪り、冒険者は後輩相手に似たようなことをさんざんしてきただろう?
どら息子からの依頼じゃ、暴力を正当化する免罪符を得てやりたい放題だったようじゃねぇか? 銀貨数枚程度の借金であっても、債務者を執拗に殴り蹴り、果ては腕や足を切り落とし、破壊欲求と支配欲に酔って楽しんでたよなぁ?」
ガサガサと森が揺れ、膨大で攻撃的な魔力をまき散らしながら接近する気配に集中してるらしく、誰も俺の話を聞いてねぇ。
が、別にそれでもいい。
どうせ俺のスピーチん中に、この場を切り抜けるヒントがあるわけでもねぇし。テメェらの現状を、改めて思い知らせるだけの、リップサービスみてぇなもんだしな。
聞くかどうかは本人次第。後はテメェらで勝手に決めろ。
「そんなテメェらには、原点回帰って意味合いを込めて、『暴力』と『恐怖』がどんなもんだったかを思い出してもらう。その方が、口頭で説明するよか自分たちがやってきたことの悪辣さが身に沁みるだろ?
町っつう狭い範囲で上位なだけの半端な力をひけらかし、人の上に立つ支配者階級だと勘違いした井の中の蛙どもにゃ、より広い大海に出てもらった方が『暴力』と『恐怖』を再認識でき、被害者たちの気持ちにより共感できるはずだ」
冷や汗を流し、武器を構えて一点を見つめ続けるスラム住民と冒険者たちの集団から、俺はゆっくりと離れた。
そして、暗闇の中から姿を現した一体の魔物を指し示し、紹介する。
「ってわけで、テメェらの相手はこのダンジョンの主である『グラトニーウルフ』先生だ。知っての通り、ランクは単体で『偉人』級に指定されていて、この界隈の魔物じゃ最高位に認定されている化け物狼だな。
レイトノルフの全戦力を投入してなお、倒せるか倒せないか微妙なラインとされる魔物を相手に、たった十数人で立ち向かわなきゃならねぇ『恐怖』と、理不尽なまでに圧倒的な『暴力』を味わえる、一粒で二度美味しい相手だろ?」
それは巨大な狼だった。暗闇に浮かぶ爛々とした双眸は黒く濁った赤。真っ先に血の色を連想させるそれに睨まれたスラム住民は、止まらない『恐怖』に従い手にした武器をカタカタ揺らす。
体高4mはあるだろうこちらを見下す黒毛の巨躯は、ダンジョンの主に相応しい威圧と魔力を放っていた。一生出会うはずのなかった『暴力』を前に、冒険者たちは体中から水分を吐き出し気絶寸前だ。
「では、特別講師を招いての特別授業を開講するとしよう。テーマは『自業自得』。人語がしゃべれない先生だが、代わりにお前らの体に社会道徳を色々教えてくれるぞ。それこそ、どこの教師役よりも懇切丁寧に、死ぬほど詳しく、な?
後、『単位取得』以外の途中退席は認められず、『教室』から逃げだそうとした場合、しばらく身動きが取れなくなるペナルティが発生する。少々加減がわからない先生の『折檻』が嫌なら、真面目に取り組んで『勉強』するように」
楽しい深夜の青空学級における諸注意を行った後、担任補佐の役目を完璧にこなした俺は、哀れな生け贄たちに背を向けた。
「じゃあ先生。出来損ないの『生徒』どもへの指導、頼んだぜ?」
「グルアアアアアッ!!」
『う、うわあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?』
俺に呼応したわけじゃねぇだろうが、餓狼先生はそれを合図に再度咆哮。
こうして、人間社会から落第しちまった奴らを対象にした、よい子の道徳講座が開催された。
うんうん、始まってすぐに盛り上がってるようで、企画・主催・進行を一手に引き受けた俺も大満足だ。
じゃ、俺は俺で勉強させてもらうとするかね。
餓狼先生から距離を離した直後、あらゆる方向から集まる殺気に笑みを浮かべ、《同調》を大気に広げた。
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名前:ヘイト(平渚)
LV:1(【固定】)
種族:イセア人(日本人▼)
適正職業:なし
状態:健常(【普通】)
生命力:1/1(【固定】)
魔力:1/1(0/0【固定】)
筋力:1(【固定】)
耐久力:1(【固定】)
知力:1(【固定】)
俊敏:1(【固定】)
運:1(【固定】)
保有スキル(【固定】)
(【普通】)
(《限界超越LV10》《機構干渉LV2》《奇跡LV10》《明鏡止水LV2》《神術思考LV2》《世理完解LV1》《魂蝕欺瞞LV3》《神経支配LV3》《精神支配LV2》《永久機関LV3》《生体感知LV2》《同調LV3》)
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