87話 100vs1
単純な数的有利はまるっきり逆転したわけだが、それでも油断なんて全く出来ねぇ。
数回の交戦を経て、俺もボスドラゴンも『敵』が一筋縄じゃいかねぇ相手だと十分理解している。
この戦いにおいては『おまけ』でしかない飛竜軍団の支配権を奪い取った程度で、ボスドラゴンを確実に倒せるなんて妄想、自惚れもいいところだ。
序盤の手駒運用は俺に分があったが、戦いは結果がすべて。
過程がよくても、最後に負けちまえば意味がねぇんだ。
だからこそ、持ちうる手段の何もかもを出し切って、ボスドラゴンを全力で潰す。
そうでもしねぇと、あのボスドラゴンはしとめきれねぇだろうからな。
「まずはお手並み拝見だ。ドラゴンの長を張る実力、見せてもらおうか」
睨み合いも短く、《同調》で繋がった端末に《神経支配》で命令を送り、全個体に口を開かせた。
使わせるのは《竜属性魔法》の基礎であり極意でもあるブレス。それを一発二発なんてケチなことはせず、飛竜軍団全体による一斉放射だ。
注目する点は、ボスドラゴンの対処法だな。回避するにせよ相殺するにせよ、あれだけのドラゴンブレスを受ければ、少なからず消耗するはず。
そして、逃げを選べば『耐久力』か『知力』に、反撃を選べば『敏捷』に付け入る隙があると見ていい。
ステータスはありえねぇ値に違いねぇが、少なくともボスドラゴン自らが苦手とする能力値の傾向を推測する材料にはなる。
たとえこれでしとめきれなくても、次の手を模索する情報を得られるはずだ。
「やれ」
『ガアアアアアアアアアアッ!!!!』
ドラゴンどもには聞こえてねぇだろう命令と同時、奴隷ドラゴンズは気合い全開の咆哮を合唱させた。
瞬間、余波だけで酔いそうなほどの魔力が爆発し、光線となってボスドラゴンへ放たれた。
「……」
壁のように迫る眼前のブレスを前に、しかしボスドラゴンは全く焦りの様子を見せなかった。
翼を大きく羽ばたかせてホバリングを維持し、少し大きめに息を吸い込む様子が見て取れる。
迎撃するつもりか。っつうことは、ステータス値としては『敏捷』が弱点の可能性が、
「グラアアアアアアアアアアッ!!!!」
「っ!?」
ボスドラゴンの分析中、遠く離れた俺のところまで響く咆哮が脳を揺らし、俺は思わず思考を中断してのけぞった。
また、ボスドラゴンの声に遅れること一拍。次に襲いかかってきたのは凄まじい強風だ。
レイトノルフで従えたドラゴンのブレスを軽く超える突風は、俺の弱い足腰じゃ立ってられねぇほどの勢力で叩きつけられ、背後の町にも強く吹き抜けていく。
とっさに顔をかばい、抵抗虚しく尻餅をついちまった俺は、数秒その突風に晒され続けた。
風とともに運ばれた小石がビシバシと体に打ち付け、地味に痛ぇ。それに、肌で感じる風も妙に生温く、ただの風じゃねぇことがわかっちまう。
「…………は?」
ようやく風が収まった瞬間、すぐに立ち上がって《神術思考》で状況把握をしようとしたが、伝わってきた情報を前にして中腰のまま一瞬動きが止まっちまった。
慌てて首を持ち上げ、視線をドラゴンたちへと向けると、そこには情報通りのありえねぇ光景が広がっていた。
「……ははは、おいおい、マジかよ」
遠く相対したドラゴンたちは、たった十数秒の時間で大きく数を減らしていたのだ。
広がって飛行させていた奴隷ドラゴンたちの壁は、綺麗に円形にくり抜かれて吹きさらしになっている。
残った奴隷ドラゴンズもすべてが無傷ではなく、不自然に削られた空白地帯に近いほどダメージを負っていた。鱗が溶解し、皮膚は焼け焦げ、体の一部が欠損し、かろうじて魔力だけで飛んでいる状態の個体も少なくない。
被害状況は、飛竜軍団はおおよそ七割が完全に消滅し、一割が重軽傷、かろうじて無傷だったのが二割ほど。ほぼ壊滅状態だと言っていい。
《同調》から読みとった記憶からして、この惨状を引き起こしたのはボスドラゴンが放った一発のブレスだった。
奴隷ドラゴンたちが放ったブレスよりも後出しで放たれたそれは、明らかに次元が違った。
飛竜軍団の記憶によると、ゆっくりとした動きで口を開いたボスドラゴンは、絶叫と同時に魔力を圧縮・解放。
ブレスと思しき攻撃はドラゴンたちの目を焼くほどの光量を発し、ほとんどの奴らは死を理解する前に光に飲み込まれて消えちまったようだ。
生き残った数少ない奴らの記憶を引っ張り出すと、まるでSFのビーム兵器みてぇな光が飛竜軍団の中央を穿ち、大気ごと焼き尽くした姿が残っていた。
奴隷ドラゴンたちに撃たせたブレスは、ボスドラゴンのブレスにすべて飲み込まれちまったらしい。客観的に見ても、威力、大きさ、被害規模、何もかもがボスドラゴンが上だったからして、力負けして当然か。
つまり、この時点でボスドラゴンと飛竜軍団の間には、隔絶した越えられない壁が存在してる、っつうことになる。
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名前:ーー(なし)
LV:398
種族:飛竜種:エラグ・トゥーネイクナ・ドラゴン
適正職業:凶獣
状態:混乱(《同調》)
生命力:22000/24800
魔力:17100/20300
筋力:2370
耐久力:2050
知力:2440
俊敏:3280
運:10
保有スキル
《竜属性魔法LV10》《限界超越LV10》《隠形LV8》《疾風迅雷LV6》
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名前:ーー(なし)
LV:421
種族:飛竜種:アガム・トゥーネイクナ・ドラゴン
適正職業:凶獣
状態:混乱(《同調》)
生命力:30300/30300
魔力:20000/25000
筋力:3120
耐久力:3000
知力:2200
俊敏:2050
運:10
保有スキル
《竜属性魔法LV10》《限界超越LV10》《鬼気LV8》《振動過熱LV6》
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名前:ーー(なし)
LV:407
種族:飛竜種:エズィールフ・トゥーネイクナ・ドラゴン
適正職業:凶獣
状態:混乱(《同調》)
生命力:27000/27000
魔力:29300/33600
筋力:2250
耐久力:2280
知力:3340
俊敏:2140
運:10
保有スキル
《竜属性魔法LV10》《限界超越LV10》《活力操作LV8》《静止固着LV6》
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名前:ーー(なし)
LV:414
種族:飛竜種:ガーラス・トゥーネイクナ・ドラゴン
適正職業:凶獣
状態:混乱(《同調》)
生命力:34500/34500
魔力:21100/26300
筋力:2870
耐久力:3480
知力:2390
俊敏:1990
運:10
保有スキル
《竜属性魔法LV10》《限界超越LV10》《極硬化LV8》《石化粒子LV6》
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ちなみに、これが奴隷ドラゴンの種族別ステータスだ。種族自体は最初からこの四種類で、生き残っている個体の最も高いステータスを参照している。
これを圧倒できるってことは、最低でもボスドラゴンの能力値はこのステータス最高値を軽く超えているとみて間違いない。
ボスとは能力差があることは覚悟していたが、まさかここまでとは思わなかった。っつか、あんなのと正面からやり合ったら即死確定だろ。
どうすんだよ、これ?
「グラアアアアアッ!!」
「っ! 惚けてる場合じゃねぇ!」
あまりにもあんまりな戦力差に現実逃避しかけたが、もう一度上がったボスドラゴンの鳴き声に我を取り戻す。
どこまでできるかはわからねぇが、奴隷ドラゴンたちを使ってボスドラゴンの力を引き出させる。
このままじゃ、ただ強すぎるってことしかわからねぇ。せめて《竜属性魔法》以外のスキルを出させて、ボスドラゴンの手札を把握しなきゃ、対抗する戦術すらまともに組めねぇぞ。
「グラアアアアアッ!!」
『ガアアアアアッ!!』
刹那、再度放たれたボスドラゴンのブレスを、大げさなくらい余裕を持って躱させる。負傷したドラゴンは回避に回せる力が残っておらず、残念ながらここで脱落した。
残りの手駒は二十数体。
さっきみてぇな過ちを犯さねぇためにも、こっからは個別に動かして攪乱してみるか。
二度目のブレス回避で散開させた奴隷ドラゴンたちを操作し、ボスドラゴンを三百六十度包囲するように飛行させる。
たとえブレスを放たれても、また回避できるだけの距離感を保ち、なおかつ一直線上に奴隷ドラゴンを配置しないようにした。これで一撃全滅は防げる。
最善は一発でもブレスをボスドラゴンに当て、《同調》を感染させることだが、かなり厳しいだろうな。
さっきの小競り合いで、飛竜軍団を《同調》の支配下に置いた条件の一つが『ブレスの被弾』だと、ボスドラゴンには気づかれているはずだ。
それに、奴隷ドラゴンに対する肉弾戦が危険だ、ってことも予想しているだろう。ブレスが裏切りのきっかけなんだったら、それを放つドラゴンそのものも危険だと考えるのは自然だ。俺がボスドラゴンであっても、直接接触を行いたいとは思わねぇし。
よって、ボスドラゴンは奴隷ドラゴンズの攻撃を完全に回避し、自身へ近づけさせないよう立ち回るはずだ。
そうなると、直接的に【普通】をぶつけることはおろか、《同調》の感染もかなり厳しくなる。
また一段と、ボスドラゴン討伐は厳しくなった。
「よし、撃ちまくれ!」
『ガアアアアアッ!!』
包囲網を完成させるとすぐ、適当な奴隷ドラゴンに命じてボスドラゴンへブレスを撃たせる。
出し惜しみはしねぇ。全力のブレスを何発も発射して、一発でも掠れば俺の勝ちだ。
とはいえ、拡散タイプのブレスじゃかき消されるのが目に見えてっから、少しでも成功率が高い威力重視でいく。
まあ、さっきのボスドラゴンのブレスを見る限り、どっちにしろあまり違いはなさそうだがな。
「グラアアアアアッ!!」
上下左右、前後斜め、立体的な角度で襲いかかるブレスに、ボスドラゴンは移動とブレスを織り交ぜた回避を披露して見せた。
尾部後方や上空に低空と、ブレスでかき消せねぇ角度からの攻撃は高速移動ですり抜け、首の可動域からくるものは弱めのブレスで対消滅させていく。
っつか、レイトノルフの偵察に派遣した風ドラゴンよりも速ぇってどういうことだよ? ボスドラゴンのサイズは他のドラゴンより二回りはデケェんだぞ? おかしいだろクソが。
迎撃のブレスも、弱めっつったのは一発目と比べたらの話で、実際は奴隷ドラゴンの数倍以上の威力はある。あっさり押し返すボスドラゴンのブレスから逃れさせるのも、かなり骨が折れる。
なるべくレイトノルフや人のいる町へ被害が及ばないよう、ブレスの発射角度にも気をつけてるから、あんまり撃ちすぎると癖が読まれるかもしれねぇな。
今も、回避された奴隷ドラゴンのブレスが、俺とレイトノルフの上空を何発も通り過ぎていく。数分撃ちまくっても、こっちのブレスが焼くのは大気と地面だけ。魔力も減ってジリ貧だ。
「グラアアアッ!」
「く、っそ!」
しかも、段々ボスドラゴンの迎撃精度が上がってきてやがる。こっちが《同調》ブレスを放つ直後か、下手すりゃ直前に奴隷ドラゴンの方へブレスを向けることが多くなってきたんだ。
それにより、散らばらせた奴隷ドラゴンにも徐々に被弾していき、落とされていく。また一体、全身を焼かれて肉片も残さず塵と消えた。
気づけば、奴隷ドラゴンは残り十二体にまで減った。
このままじゃ、何も出来ねぇまま全滅は避けられねぇ。
しょうがねぇ、戦法を変えるか。
「半分は突撃、残りは足止めだ!」
『ガアアアアアッ!!』
球体状に取り囲んだままの奴隷ドラゴンたちへの次の指令は、ぶっちゃけ一度限りの賭けだ。が、上手くはまれば戦闘を終わらせる奇襲になる。
ただ、敵もさるもの。奴隷ドラゴンたちの動きが変わったのを、ボスドラゴンは敏感に察知し身構えている。
『ガアアアッ!!』
まずは青い透明感のある鱗のドラゴンに《静止固着》を、茶色でごつごつした鱗を持つドラゴンに《石化粒子》を使用させた。
《静止固着》は指定した空間の『運動を停止・固定させる』っつう効果で、単純な動きだけじゃなく生命活動さえも容赦なく止める、そのままでも十分脅威なスキルだ。
《石化粒子》は割とそのままで、『触れたものを石化させる』砂状の粒子を発生させるスキルだな。通常は体表から噴出するんだが、これをブレスに混ぜて放つと簡単に石像を量産できる。
この二つのスキルで、ボスドラゴンのいる空間を《静止固着》でガチガチに固め、《石化粒子》のブレスを追加することでさらに身動きを奪おうとした。
推定でもかなりのステータス差があるみてぇだから、これは移動阻害や拘束用の小細工と割り切る。本命は残りの特攻隊だ。
『ガアアアッ!!』
六体のドラゴンによる拘束の効果を確かめる前に、もう六体のドラゴンを山形の軌道で飛翔させ、《疾風迅雷》と《振動過熱》で落下時のスピードを極限まで高めた。
《疾風迅雷》は攻撃も可能な速度アップのスキルで、偵察に来ていた種である緑色のドラゴンが使用する。『敏捷』が突出してっから、その速度はかなりのもんだ。
一方、赤くトゲのような鱗を持つドラゴンの所持する《振動過熱》は、《制止固着》とは真逆の『あらゆる運動を促進・加速させる』効果のスキルだ。これの範囲は原子や分子の運動をも含まれ、スキル名の通りに熱を際限なく発生させることも可能。
今回は主に速度アップで使用し、鱗の隙間から煙を出しているのは副次効果だな。それでも触れれば火傷じゃすまねぇことになりそうだ。
これらを発動した奴隷ドラゴンたちは暴風や焦熱をその身に纏い、猛スピードでボスドラゴンの真上から垂直に急降下する。
作戦は単純。一体につき一発限りのドラゴン空爆だ。
命を使った捨て身の特攻、受けてみろや!
俺が命張るわけじゃねぇけどな!!
「グルルル」
で、標的となったボスドラゴンは《制止固着》の力場が発生する前にさらに加速して逃げ、ちゃんと狙って放ったはずの《石化粒子》ブレスはスイスイ回避される。この時点で作戦の半分は失敗した。
だが、本命はまだ終わっちゃいない! 上空から落としたドラゴン爆弾はきちんと軌道修正を行い、ボスドラゴンを追尾していく。
「グラアアアッ!!」
おそらく魔力の気配から空爆ドラゴンの存在を察知したらしいボスドラゴンは、即座に翼を翻して上空を睨み、主砲ブレスをぶっ放した。
空爆ドラゴンもブレスも相当なスピードがあったため、回避なんてできるはずもなく。哀れ、空爆ドラゴンは一瞬でビームの中に突撃するしかなかった。
今までの流れからして、ボスドラゴンは空爆ドラゴンが完全にブレスの餌食になったと思ったはずだ。ブレスに突っ込んですぐに、魔力反応がぱったりなくなったのも、いい証拠だろう。
「ッ!?」
しかし、数秒後ブレスを抜けて顔を出した『無傷』の空爆ドラゴンに、ボスドラゴンはわずかに瞠目した。
ブレスに空爆ドラゴンが飲み込まれる直前、俺は《同調》を通して空爆ドラゴンたちに【普通】を全身に付与した。これにより、皮膚に触れた瞬間ブレスは霧散し、消滅することなく貫通する事ができたわけだ。
その代わり、ステータスがオール『1』かつ魔力が『0』となった空爆ドラゴンは、現在一切の身動きが出来なくなっている。それでもボスドラゴンへ向かうのは、急速落下で与えた惰性の力が残っているため。
当たっても外れても、空爆ドラゴンは地面に落ちれば脆弱なステータスが原因で死亡する。
これが、『一発限りのドラゴン空爆』の仕掛けだ。
完全な虚を衝いたこの作戦により、すでにボスドラゴンと空爆ドラゴンとの距離は目と鼻の先。空爆ドラゴンを倒したと油断していたことも加味すると、かなりの確率で接触が可能となる。
わずかにでも空爆ドラゴンに触れさせれば、俺の勝利が確定する。
くたばれ、ボスドラゴン!
「グルアアアッ!!」
「っ! マジかよ!?」
ほぼほぼ勝利を確信していた俺だったが、悪い意味でその期待は裏切られた。
なんと、鼻先数メートルの距離まで迫った状況で、ボスドラゴンは膨大な魔力を消費したかと思うと、空爆ドラゴンの前から瞬時に姿を消しやがった。
見ると、ボスドラゴンはいつの間にか垂直軌道で上空へ急上昇しており、瞬間移動がごとく逃れていた。
あの不自然な動き、何かしらのスキルか? それとも、単純なステータスと技術によるものか?
いずれにせよ、あそこまできたんなら避けんなよ! こっちの手札はほとんど残ってねぇんだぞ、コラァ!!
回避されちまった空爆ドラゴンはもちろん不発。そのまま地面に墜落しちまって、六体とも首の骨を折って死んだ。
これで、残る飛竜軍団は残り六体。しかも、動きが素早いドラゴンは全滅しちまったから、ボスドラゴンを捕らえられる可能性はほぼゼロ。
形成が逆転し、勝機が一気に遠のいた。
「クソッ! だが、まだ手駒は残って」
「グラアアアアアッ!!」
失敗した攻撃に気を取られている暇なんかなく、残るドラゴンをけしかけようとしたが、それより先にボスドラゴンが動いた。
回避後も続いていた急上昇によって生じた運動エネルギーが減衰し、頂点に達した瞬間にボスドラゴンは魔力を収束。
俺が奴隷ドラゴンたちを動かす前にブレスをぶっ放し、一体残らず飲み込まれた。
後に残ったのは、奴隷ドラゴンを通り過ぎてもまだ衰えぬブレスにより、赤熱化した地面だけ。
それもかなり広範囲。レイトノルフの町を丸ごと一つ入れても余裕があるくらいの広さがある。
幸い、着弾地点に人間の町は存在していなかったが、あんなもんやられちまったら『大気浸食』の【普通】でも防ぎきれるかわかんねぇぞ。範囲が広すぎて、全域をカバーしきれる保証がねぇ。
しかも、あれだけいた飛竜軍団が、この短時間でゼロになっちまった。
一体いればクソ王を城ごと瞬殺できそうな化け物じみた手駒が、完全にゼロだぞ?
どんだけ規格外なんだよ、ボスドラゴンは?
「……はははっ」
なんだこりゃ。
もはや笑うしかねぇ。
俺に残されてる手なんて、もう何個もねぇんだぞ?
どうしろってんだよ、あんな奴?
「グルルル」
ヤバすぎる戦況に途方に暮れだした中、障害が消えたボスドラゴンはこちらへ視線を向け、喉を鳴らした。
気力、体力、魔力と、まだまだボスドラゴンには余裕がありそうだ。
ここから、ボスドラゴンを落とさなきゃなんねぇのか?
俺だけで?
「キチガイ難易度の無理ゲーだろ、ふざけんな!」
心からの気持ちをボスドラゴンへと吐き出すと、聞こえたわけでもねぇだろうに翼を動かし、俺へ頭を向けて飛来してきやがった。
ほぼほぼ丸腰になっちまった俺と、限界知らずの力を有したボスドラゴンとの戦いは、タイマンという最悪の形で激突することとなった。
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名前:ヘイト(平渚)
LV:1(【固定】)
種族:イセア人(日本人▼)
適正職業:なし
状態:健常(【普通】)
生命力:1/1(【固定】)
魔力:1/1(0/0【固定】)
筋力:1(【固定】)
耐久力:1(【固定】)
知力:1(【固定】)
俊敏:1(【固定】)
運:1(【固定】)
保有スキル(【固定】)
(【普通】)
(《限界超越LV10》《機構干渉LV2》《奇跡LV10》《明鏡止水LV2》《神術思考LV2》《世理完解LV1》《魂蝕欺瞞LV3》《神経支配LV4》《精神支配LV2》《永久機関LV3》《生体感知LV3》《同調LV4》)
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