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Trans Trip! 作者:小紋
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11‐(4).思わぬ遭遇

 レボカタス砦、輸送馬車の停留場。
 落ちかけた夕日があたりをほんのりとだけ照らす中、五日間お世話になった馬車からの荷降ろしを済ませた私たちは、御者さんにさようならとありがとうを告げた。
 御者さんは楽しかったよと挨拶を返し、ふくよかな手を振って微笑んでくれる。
 とてもいいおじさんだった。一泊して帰りの護衛を捕まえてからリグへ帰るらしいから、帰途も穏やかな旅路になることを祈りつつ、私たちは停留場を後にする。

 レボカタス砦は堅牢な石造りの砦だ。廊下を歩いていると、がっしりと組まれた石材の壁ばかりが目に入る。飾り気はなく、守り特化って感じ。
 ここについて、今朝方パーシヴァルさんに真剣な顔で言われたことがある。

「お前が考えてる数倍は悲惨な光景を見ることになると思うから、覚悟を決めておけよ」

 戦争真っただ中だということと、この言葉。当たり前に良い想像はしていなかったのだが……レボカタス砦に踏み込んで目にすることになった現実は、それ以上だった。

 思ったより、ずっと悲惨。
 中はひどい有様だ。どこを見ても怪我人だらけで活気などゼロに等しい。しんと沈み込んだ空気の中に呻き声が低く響き、時折啜り泣く声も聞こえる。
 荷降ろし中に漏れ聞いた噂によると、国境側の城壁は片付けが追い付かないほどボロボロぐちゃぐちゃで、瓦礫だらけだそうだ。不死者アンデッドの魔法が飛んで来たという箇所は、赤い液体が染みついて取れないらしい。……前回の戦闘も辛勝だったという。
 先ほどの輸送馬車の停留場の近くにあった他の馬車の停留場にだって、ぱっと見ただけで十両以上のアルカが並んでいた。それだけの量必要だということなんだ。
 黒塗りの馬車が視界を埋め尽くす光景は……精神的にいいものではない。私も、ソルも、エナも、パーシヴァルさんでさえ、この光景に気圧されている。言葉少ななのがその証拠だった。

 攻撃に参加するヴィーフニルを探すからには、この光景を作り出した戦いの中走り回らなきゃいけないかもしれない。
 少しだけした想像に手が震えて、慌てて拳を握りしめた。

(ぶるってて、どうする……! お留守番はヤダって言ったの、自分だろ)

 気合を入れなければ。
 襲撃は不規則に行われるらしい。この砦を守る人は、いつ敵がくるかわからない緊張の中で、負傷したからといって簡単に撤退することも出来ずにずっと戦っている。
 周囲を見渡す。
 立って歩いている人たちだって、怪我をしていない人の方が少ない。廊下でこれなら、ところどころに設置されている治療所などはどうなってしまうのか。

(……私が、治癒魔法、使えたらな)

 そう考えたところで、繋いでいる手のうちの片方がぎゅっと握られる。
 顔を上げると、厳しい表情のパーシヴァルさんと目が合った。

「余計なこと考えるなよ」
「……は、い」

 見透かされていたようだ。この人は本当にすごい。
 ……私がわかりやすいだけかもしれないけど。





 夜になりかけということで、調査は明日から始めることになった。
 今夜体を休める宿泊施設へ向かうべくして廊下を歩いていると、前から早足で歩いてくる人たちが。人数は二人。他の人と比べて力のある足音だ。
 なんとなくほっとして顔を見てみる。するとそちらもこっちを見ていたようで、ばっちりと目が合った。そして私は驚いた。

「ヤマト、か?」

 聞いたことのある、静かだが凛とした声で名前を呼ばれる。
 そう、前から歩いてきていたのは、よく見知った二人だった。
 青みがかった黒髪を持つスレンダーな黒コートの青年と、銀色のロングヘアのきまじめそうな女の人。イクサーさんとカルーアさんだ。国で一番規模の大きい剣士ギルドカヴァリエのギルドマスターと、その補佐である。

「……何故、こんなところに」

 二人とも私と同じように驚いた顔をしており、イクサーさんが目を見開いて呟いた。
 お互いがまさかこんなところで会うと思っていなかったのだ。私がイクサーさんの呟きと同じ感想を持ったところで、ふと、すごく怪訝な顔をされる。

「というかどういう状態だそれは」

 あれ。……あっ、もしかして、二人の驚きは私たちの状態にも向けられているのかな。確かに大人の男が三人手を繋いでいるのは……うん、状況的におかしい。ちょっと慣れたせいで麻痺してしまっていた。
 そういえばすれ違う人たちも私たちを見ると自分の怪我とか一瞬忘れたような顔でこっちを二度見か三度見してたし。……明確にツッコミを貰えたのは初めてだな。
 ツッコミ貰えても、説明していいかどうかわからないんだけど……。

 私が困っている間にも、イクサーさんが近寄ってくる。それについてくるカルーアさん。
 と、ソルが私とイクサーさんの間に立ちはだかった。三人で手を繋いでいるため、一人が動くと必然的に三人とも動かなければいけなくなり、パーシヴァルさんが迷惑そうな顔をする。大きく動かなきゃいけないため、エナも後ずさらせられていた。
 しかしソルは特に気にせず、空いている片手を腰に当てて不遜な態度を取る。
 ……どんな顔しているのだろうか、後ろ姿しか見えないが、イクサーさんの眉間の皺がすごいのできっとまあ、うん。

「……リンド、どけ」
「うちのお姫様に悪漢近づけたくないんで」

 ソル、古い。挑発するにしたって言語センスが古い。お姫様って。
 いやそんな場合ではなかった。こんなところで喧嘩なんて駄目だ。

「ふん、悪漢だというのなら貴様の方が余程だ。酒場に屯うごろつきと変わらないチャラついた服装で偉そうに」
「時代錯誤な黒コートに言われたくねーんだよ……。流行追えるごろつきの方が三倍マシだっつーの」

(あああああ、ほらあ……)

 バチバチと火花が散るのが見える。この二人は、どうしてこう。この雰囲気の中で喧嘩なんてよくできるな。
 そう咎めたくても勇気が無くてできない。これじゃ私も同罪か。

「おい、喧嘩すんな。そんな場合じゃねえだろうが」

 私が言いたかったことを、パーシヴァルさんが鋭い叱責で飛ばす。すると舌戦がぴたりと止まった。やっぱりパーシヴァルさんはすごい。頼りになる。……怖いけど。
 それでもまだめちゃくちゃ睨み合ってる二人をさらに引き剥がすべく、私はソルをぐいぐいと引っ張った。

「ヤマト?」

 ソルが怪訝そうに私の名前を呼びながらこっちを見る。私は少し高いところにある碧眼を見上げた。なんて言えば一番いいだろうか。それを考えていたのだが。

「……ごめん」

 何も言わないうちに、バツの悪そうな顔をしてソルが謝る。言わなくてもわかってくれたようだった。
 私が安堵の息を吐くと、パーシヴァルさんがソルを押しのけて一歩前に踏み出た。一人が動くと連動して三人とも動く。……これ、なんとかならないのかな。いちいち締まらない。
 パーシヴァルさんは、奇妙なものを見る表情をしているイクサーさんに問いかける。

「イクサー、レボカタスにはカヴァリエの剣士も常駐していたのか」
「数はそう多くありませんが、多少。普段ここの指揮は団幹部のジョルマに任せているのですが、今回あまりに被害状況がひどいので昨日から視察に来ている次第です」

 問われたイクサーさんがとりあえず表情を正して答えた。
 この砦は、カヴァリエなどの戦闘系ギルドも人員を提供しているらしい。道理で兵士でも騎士でもない人の姿がちらほらあると思った。

「……コロナエ・ヴィテはこんなところへ何をしに? 物見遊山というわけではなさそうですが」
「ああ、うちのガキを探しにな」

 イクサーさんの探るような質問に、パーシヴァルさんがストレートに答える。

「ガキ? ……ああ、あの青い髪の」

 イクサーさんが怪訝な顔をする。当たり前だ。常識的に言って、戦争の最前線に来るような内容の用事ではない。

「こんなところに子どもを探しに、ですか。何があったんですか?」
「いや、少しな」
「……そうですか」

 パーシヴァルさんに喋る気がないことを悟ったイクサーさんは、早々に諦めたようだった。
 わざわざ首を突っ込まなければならないほど、イクサーさんも暇ではないんだろう。何せ、カヴァリエの被害状況が大きいからと言って視察に来ているくらいだ。かなり忙しいんだろうな、と表情を窺ってみれば、だいぶ疲れた顔をしているようにも思える。
 話題が途切れ、少し沈黙。
 場を持たせるためにか、イクサーさんが咳払いをする。そして腰に帯びた江刀に手を置き、姿勢を正してパーシヴァルさんの目を真っ直ぐに見る。

「しかし、俺としてはコロナエ・ヴィテにお会いできたのは幸運でした。お話したいことが……と、失礼」

 折角そんな風に気を取り直して話し始めたのに話を中断し、イクサーさんが振り返った。
 イクサーさんたちの背後からやってきた人が、「イクサー様」と声を掛けてきたのだ。言動と剣士らしき出で立ちから察するに、カヴァリエのギルド員だろう。

「何だ」
「ハロルド隊サニア副隊長が戦没なさいました。前回の戦闘での負傷が原因です」

 告げられた内容に……私は息を呑んだ。戦没、って。

「……そうか……」

 イクサーさんは短く答えると、少しだけ俯いた。どんな表情をしているのかは後ろからでは見えない。
 数秒、そのまま静止していたイクサーさんだが、すぐに顔を上げるとテキパキと指示をしだす。

「マリア隊のタバサを補充しろ。タバサならハロルドの手綱をうまく握るだろう。……遺体移送の手配と、サニアの親族への連絡も頼む」
「了解いたしました」

 返事と敬礼を返し、報告者がこの場を後にする。
 イクサーさんはひとつだけ頭を振った。そしてこちらへと向き直る。表情は先ほどと変わらない。

「失礼しました。それでお話したいことがありまして、お時間を頂きたく……む」

 再度話し出そうとしたところで、今度は私たちの背後に視線を向けて停止する。
 私たちも振り返れば、またも人が。先ほどの報告者と同じように「イクサー様」と声を掛けながら駆け寄ってきたその人も、カヴァリエのギルド員のようだった。

「フォールティスのギルドマスターがいらっしゃいました。お話があるそうです」
「火急か」
「はい」

 短いやり取りの後、イクサーさんがパーシヴァルさんに向き直る。

「……申し訳ありません、今お話を聞いていただくのが難しいようです。しばらくこの砦に滞在するようであれば、後ほどお時間をいただきたいのですが」
「ああ、大丈夫だ」
「ありがとうございます、どちらに泊まられますか?」
「西の宿泊施設だ。そこが満員ならどこか適当に横になれる場所を探す。その場合、カヴァリエの誰かを捕まえて言付けておこう」
「お手数をおかけして申し訳ない。よろしくお願いします。それでは」

 イクサーさんは、そのやりとりが終わると、カルーアさんに何事かを指示をして二手に別れ、行ってしまった。
 二人の後姿をきょろきょろと交互に見送り、完全に姿が見えなくなったところで、私は呟く。

「イクサーさん、疲れた顔してたね」
「そうだね……だいじょぶかな、イクサー」
「かなり、キテるな。嫌味言ってる時の方が安らいだ顔してるくらいだ」

 表には出していなかったが、彼の重責は、迷いは、私の想像もつかないものなんだろう。直接の指示ではないとはいえ、ギルドマスターである自分の元で死んでいくギルド員がいるなんて。上に立つということは……そういうことだ。
 さっき戦没の報告を聞いてすぐに表情を正せた彼を冷たいとは思えなかった。だって、少しだけ俯いたイクサーさんの背中は、その報せを軽んじているようにはとても見えなかった。
 ……本当に、大丈夫だろうか?
 あまりにも年若いギルドマスターがこんな非常事態を乗り切れるものなんだろうか。疲れたように見えた顔が脳裏に蘇り、不安が募る。
 ソルはさっきからずっと黙っていた。パーシヴァルさんがソルに向き直って、言う。

「大規模ギルドのギルドマスターの辛いところだ。背負う責任がとてつもなくデカイ。こういう非常時は特にな」
「そんなんわかる」
「いろいろ思うところはあるだろうが、ぶすくれてんなよ。そんな顔するくらいなら、力になってやれ。小規模ギルドの平団員さん」
「……ムカつく」

 いろんな意味が詰まったムカつく、だろうな。そのくらい複雑な顔をしている。
 顔を合わせれば喧嘩しちゃうけど、ソルもやっぱり、イクサーさんのこと心配なんだ。
 今ばかりは、腐った視点がどうので心の中で騒ぐ気にもなれなかった。





◇ ◇ ◇





 一晩明けて、翌朝。
 昨夜は負傷者だらけでどこもベッドが足りず、持ってきた毛布を被って砦の一室で雑魚寝をした。あんまり野営と変わらない。
 標高の高いところにあるこの砦の夜は、野営よりも寒かったかもしれない。寒過ぎて朝起きたら四人で団子状態だった。『温暖ワールム』をかけたにもかかわらず、だ。私たち三人はともかく、エナは女の子だからキツイだろう。明日は強めに『温暖ワールム』かけてあげようと決意した。

 レボカタス砦には、物資はまだまだたくさんあるらしい。足りないのは人手のようだ。朝食の配給を手伝いがてら朝食を済ませ、ヴィーフニルについての情報を収集することにする。
 情報の収集手段は主に聞き込みだ。私とパーシヴァルさん、ソル、エナの三手に別れ、話せる元気のある人に話を聞いて回る。効率の問題でソルには手を離してもらった。うん、片手だけでも自由っていいな。ソルは恨めしそうにしてたけど。
 そんな感じでしばらく頑張ったものの……これがまた、全然成果が上がらない。簡単に情報を入手できるなんて思ってはいなかったが、予想以上だ。
 知らない、わからない、なんで手ぇ繋いでんの? という言葉を一生分聞いてしまった。
 そろそろ手を繋いでいる理由を適当に喋るのも飽きてきたそんな時、突然背後から声を掛けられる。

「あの」

 年若い女の子の声だ。

「はい?」
「あっ、やっぱり!」

 振り返れば、声の通りに年若い、鎧に身を包んだ女兵士が。彼女は返事をした私の顔を見て嬉しそうに声を弾ませた。なんだろう。

「あのっ、魔術師殿ですよね?」
「ま、魔術師?」

 そう呼ばれる、ことはあるが……何故、今そう呼ばれるのか。私を知っているんだろうか。
 私の怪訝そうな顔を見て、女兵士は不安になったようだった。少し歯切れが悪くなる。

「えっ!? あ、あの。リグ周辺の大規模掃討作戦で……」
「あ、あー……はい。そう、ですね」

 言われてみて思い当たる節しかなく、私は頷いた。女兵士がまたにっこり笑う。

「やっぱり! あの、あのですね、魔方陣があるんです!」
「魔方陣?」
「はい! 不死者アンデッドが残していったんです。調査していただけないでしょうか……」
「……え、でも、俺……」
「お願いです、見ていただくだけでも! 不死者アンデッドの残した魔方陣なんて、放置しておくには危険すぎるんです!」

 捲し立てた女兵士は、こっちです! と駆け足で行ってしまう。
 後には呆然とした私と、そんな私と手を繋ぐ呆れ顔のパーシヴァルさんが。

「お前、押されすぎ。どうすんだ。魔族の気配はしなかったが」
「……で、でも俺、魔方陣なんて見たことも……」

 いや、聞いたこともない。元の世界では……漫画でなら読んだことがあるな。杖で描くやつだ。すごく好きな漫画だった。あ、でもあれ、魔方陣じゃなくて魔法陣なんだよね。
 思考が脱線しかけたところで、パーシヴァルさんが溜息をつく。

「俺が多少わかる。ガキの手掛かりもあるかもしれねえし、行ってみるか?」

 それを聞いた瞬間、それなら安心だ! と思ってしまった。……他力本願すぎない? 私。
 ばらばらになるわけにはいかないので、ソルとエナを呼びに行ってから、女兵士についていくことにした。
 合流した瞬間に当たり前のように手を握ってきたソルは、もう私の理解の範疇に及ぶところにはいない。





 女兵士に先導された先は、国境側の城壁の外側だった。
 不死者アンデッドが残した魔方陣というからにはそっちの方にあるんだろうとは思って覚悟はしていたが、話に聞いた通り荒れている。落ちているのは瓦礫ばかりだが、たまに不死者アンデッドの切れ端とか欠片が目に入ってしまい、そのたびに慌てて目を背けなければならない。グロい。
 目を背けた回数が五回目くらいになった時、私の手を引いていたソルが立ち止まった。

「……あいつ、何やってんだこんなとこで」

 苦々しい声の呟き。その目線の先には、イクサーさんが。
 イクサーさんは誰かと話しているようだった。真剣な顔で話し込んでいて、こちらに気付いていない。そして、相変わらず疲れた顔だ。……昨日より顔色が悪いようにも思える。
 大丈夫かなとは思ったが、邪魔するのも悪い。私たちは声を掛けずに魔方陣だけ調査することにした。
 魔方陣のあるところまで案内してくれた女兵士は、ここです、と言うなり逃げるように去ってしまう。

「……行っちゃった」
「まあ、不死者アンデッドの残したもんの近くになんざいたくねえんだろうさ」
「っていうか、どれなの? エナ魔方陣って初めて見るからわかんないんだけど」
「意外と地味なもんだぞ。あれだ」

 パーシヴァルさんが指さした箇所には、薄らと緑色の光を放つこじんまりとした陣がある。
 かっこいい模様が描いてあって、なるほど、魔方陣だ。

「へー、意外と地味。ねえパース、これどういうやつなの?」

 エナがしげしげと魔方陣を眺めながら尋ねる。パーシヴァルさんも目を細めて覗き込んだ。

「……見た限り転移の術式だな。記述が乱雑だ……ん? ぶれを増幅させてるのか、珍しいな。対象は……描画者より高い力量を持つ生体? なんつー曖昧な。こんな適当に描いても成り立つもんか。勉強になっちまった」
「独り言じゃなくて説明してよう」
「端的に言えば、発動した時に近くにいる強い奴を無作為な座標に転移させる魔方陣だ。ヴィーフニルが持ってた魔導器で飛ばされたことがあるだろう。あれの転送先ランダムバージョンって感じか。中心地点はここだし小さな魔方陣だから、そこまで遠くには飛ばされねえかな」

 ランダム転送(強い人限定)ってことか。すぐ横から「わけわかんね」と呟く声が聞こえた。ソルが顔を顰めている。

「それ、何かの役に立つわけ?」
「そうだな、描画者を守るためには使えるだろう。強い敵が来たら発動させれば、そいつらはいなくなるからな」
「あー、そっか」

 ソルとエナと私、三人が頷く。あ、もしかしてこれで調査終了じゃないかな? 呼ばれたのに頷いただけだった私は情けないやら何やら。
 でもしょうがない。わかんないし。遠くに待機している女兵士に報告しに行こう。
 しかし踵を返そうとしたその時、足元の瓦礫が私に牙をむく。……牙をむく、というか、自分の不注意で瓦礫に躓いた。
 私は思った。またこけたらまた縺れてまた団子になってまたパーシヴァルさんに怒られる! それは遠慮したい。怒られイベント回避のため、必死に踏ん張ろうと浮いた左足を遮二無二踏み下ろす。
 それがいけなかった。
 踏ん張った瞬間、変な音が。……ぶおん? ぴかっと足元から緑色の光。

「あっ」

 まずい……! 魔方陣踏んじゃった! これ間違いなく発動してる!

「ばっ!」

 横からパーシヴァルさんによる一文字の罵声。
 それが私の脳みそに届く前に、緑色の光が視界を埋め尽くす。

「えっ、あ、うわっ」

 一瞬で視界を、そして意識を奪われた。
+注意+
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