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竜巻
作:ごはんライス


 竜巻に巻き込まれた。
 今オレは竜巻の中をぐるぐるぐるぐる回って目が回る。
「うえっぷ。吐きそ」
 竜巻の中でオレは為す術もないが、しかし、竜巻の中はいろんなものが飛んでる。ゲーム機やら傘やら箪笥たんすやら。被害の大きさが感じられる。
 もっとよく見渡すと、ぐるぐる回りながら、ちゃぶ台に座り飯を食ってるおっさんがいる。座りといっても浮いてるので実際には座ってる格好ということなのだが。座ってて飛んでる。
「お、おじさああん。よ、ようこんなとこで食うてられますねえ。ひえええ」
 おじさんは秋刀魚さんまを箸でつまみながら、がっはっはと笑う。
「わしは巻き込まれてかれこれ十年や。君も慣れればそうのうちできるようになるさ。わははは」
 おっさんは回転しながらホントに器用に飯を食う。
 調子が出てきてお銚子を開ける。
 しかしこれがうまくいかん。
 お銚子から注ごうとするたびに酒がこぼれあっちへこっちへ飛ぶ。
「ううん。これだけは十年たってもどうにもならん」
 そのうちおっさんはお猪口ちょこをうっかり手から離してしまい、お猪口は彼方へ飛んでいった。
「あ。わしの大事な」
 おっさんはそれを追いかけどこかへ行ってしまった。
 ぐるぐるぐるぐるよく回る。吐きそう。おえっぷ。
 向こうから、女の人が歩いてきた。歩いてきたといっても足場がないので歩いてる格好をして来たというべきか。
 というか何というかスカートがめくれてパンティ丸見えだ。
「あら。見ない顔ね。こんにちは」
「わん。わん」
 犬の散歩? 犬は足をバタバタさせて今にも吐きそうな表情だ。
「お、おねえさん。よく平気ですね。うえっぷ」
「そう? あたしジェットコースターとか好きだからさ」
 そういう問題かぁと思いつつ、犬の方を見てると足をバタバタさせながら気張り始めた。いやな予感がする。
「あら。ジョン」
 犬は大便をした。
 それがものすごいスピードでオレの方に飛んでくるではないか!
「あわわわわわ」
 オレは逃げた。ぐるぐる回りながら逃げた。
「ひええええ。助けてええええ」
 竜巻の中をぐるぐる回りながらぐるぐるぐる。
 大便はどこかへ飛んでいった。
 ひと安心。
 もくそもない。オレはぐるぐる回ってもう気が滅入りそうだ。
 とちょうどその時。
 向こうの方から回転する何かがやって来る。
 大群だ。
「な、なんだろう」
 よくよく目をこすって見ると。
 海老えび、タコ、海栗うに、イクラ、玉子、納豆巻き、中トロ、イカ。
「なんじゃい! なんじゃい!」
 それらの脇で小さい子供が泣いてる。
「春ちゃあん。取れないよう。ボク、イカが食べたいよう。わあん。わあん」
 隣でおねえさんと思しき女性が手を伸ばすも速すぎて取れない。
「ちきしょう! ちきしょう!」
 オレはぐるぐる回り、いつの間にかその一団に加わっていた。
 すると、赤ら顔したおっさんがオレを捕まえた。
「ほっほ。旨そうなはまち」
 やべえ。このおっさん。酔うてる。
 オレははまちじゃねえオレははまちじゃねえと叫ぶも、容赦なくおっさんは口を大きく開き、オレを口の中へ放り投げる。
「うわあああああああああ」
 おっさんの胃に向かって落下していくオレ。上からビールがどひゃあああああ。
「ひっく。ひっく。よう食ったな。ねえさん。勘定」
「はぁいィ」
 おっさんは会計を済ますとふらふらして店を出た。(了)














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