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魔法少女になってしまった僕の受難 作者:yukke

魔法少女機関 MGO

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第9話 歪み

 異変が起きたのはお昼休みの時、僕がいつもの3人と一緒に、気まずい空気の中教室でお昼ご飯を食べていた時です。

 急に何かが割れたような音が響き、空気が一瞬で凍り付くような寒さを感じ、気付いたら大輔達3人を含め、クラスメイト達全員が動かなくなっていました。

「……何これ……なに? 何が起きたの! ねぇ、なにこれ!」

 僕は立ち上がってそう叫ぶけれど、誰も返事をしない。

「大輔! 花音! 心忍!」

 そして、僕は慌ててその3人に触れてみるけれど、硬いです。まるで石みたいとは言わないけれど、ボンドで身体全体を固められたプラモデルみたいにして、ガッチリと固定されたようになっている。

「なに……なんなんだよぉ……いったい」

 その訳の分からない状況に、僕は得体の知れない恐怖を覚えた。まるで僕以外の時が止まったかのようになっている。

「へっ? 誰……誰かいるの?」

 そんな時、廊下の先から何かがやって来る音が聞こえる。

 人? 誰か他にも動けている人がいる。

 でも……違う。人の歩いている音じゃない。何かを引きずりながら歩いて来ている。

「うっ……うぅ」

 もう何がなんだか分からないよ。
 恐い……いったいどうなってるの? 僕はもう戻れないの? ここに閉じ込められたの? 誰か……誰でも良いから反応して!

 だけど、廊下から続く音は止まる事なくこちらに近付いて来る。

 逃げなきゃ、とにかく逃げないと……でも、恐怖のあまり腰が抜けてしまい、その場から立てない。
 そして遂に、廊下からやって来ていたそいつが、僕の教室の入り口から顔を覗かせる。

「――――――っ!!」

 それは、異形のものと呼ぶに相応しい程のドス黒い身体をしていて、長い首の先に付いている目のようなものが1つ。顔はない。
 身体はナメクジのようになっていて、その身体からは人の手足が何本も生えている。

 いったいなんですか、この化け物は!!

「うぅ……来ないで……」

「…………」

「来ない……で」

 目が見えていないのか、それとも僕がいったいなんなのか判断しかねているのか。その化け物は1つだけの目をギョロギョロと動かして、僕を見ている。

 それなら、今の内に逃げ……。

「ギュォォオオオ!!!!」

「わぁぁあ!!」

 だけどそう思った瞬間に、そいつは不思議な叫び声を上げてきた。

 まるで超音波みたい……耳が痛い! 鼓膜が破れる! というか、顔がなくて口もないのに、どこから叫び声を上げてるの?!
 いや、これは叫び声じゃないのかも……お腹から発せられている気がする。

「えっ……うわっ!!」

 そして今度は、その身体に付いている手足を僕に向かって伸ばしてきました。だけど、僕は咄嗟に後ろに飛び退いて回避します。

 いったいこいつはなんなんだ! そして僕の身に何が起きたの!

 色々とパニックになる中でも、その化け物は僕に向かって飛びかかってくる。勘弁して下さい。こんな非日常はお断りです!

「くっ……プリティ・チェンジ!」

 とにかくこのままでは逃げられないから、僕は魔法少女に変身して、更にもう1人の僕であるアンナが使っていた魔法を使ってみる。

「グラビティ・マター!」

 良かった、魔法少女に変身出来るし魔法も使える。使えなかったらどうしようかと思ったよ。
 確かアンナは、空気中のチリやホコリ、漂っている色んな物質を重力で圧縮していた。だから同じようにしてやってみるけれど……。

「小っちゃい……」

 まるで小石みたいなサイズの物しか出来ませんでした。
 あ、あれ? 確かアンナは、金の延べ棒位の大きさにしていたよね……範囲が違うのかな。

「ギュォオオ!」

「うわっ!! わわっ!」

 だけど、僕が再度その魔法を使い、新たな物質を作ろうと思ったところで、目の前の化け物がその身体から生えてる無数の手足を使い、僕を捕まえようとしてきた。

 咄嗟に自分の周りの重力を減らし、高く飛び上がって回避……した後にもう1本の腕が!

「グラビティ・ショット!!」

「ギュォッ!」

 間に合った……重力魔法で相手の腕に重力の塊をぶつけ、それでなんとか化け物の腕を弾けたよ。その後着地して、その化け物から距離を取ります。

「ギュオォ……」

「くっ……今度こそ、グラビティ・マター!」

 そして僕は、もう一度さっきの魔法を唱え、重力で固めた物質を作り出します。
 今度はもっと広い範囲……この教室いっぱいのチリやホコリ、そういった物を重力で押さえて固め、僕の手のひらに集めていく。

「これで……やっとこれだけ?!」

 そうして出来たのは、ほうきの握り手と同じくらいの棒でした。思った以上にこの魔法は使いどころが難しいのかも。

 空気中に浮かぶ物質なんて、目に見えないのが殆どなんだよ。つまり、一つ一つは凄く小さい物質だ。
 それを集めて固めて大きな物質にするなら、もっと広い範囲で集めないと駄目なんだ。それこそ、消しゴムのカスで作る練り消しみたいな感じだね。

 それでも、これでやっと武器が出来そうです。そう、槍みたいに鋭くすれば!

 そして僕は、その棒をしっかりと握り締め、そのまま持とうとする……けれど、重くて地面に手がめり込む所でした。そうだよね、凄い重力がかけているから当たり前じゃん。
 ということは、この物質を固めている過重力を解かずに、その物質の周りの重力は軽くするって事をしないといけない。

 難しい……思った以上に繊細な作業だよ。

 でも、そんな事をしている間に化け物が!

「ギュォォォォオ!!」

「くっ……グラビティ・ランス!!」

「ギュォォォオオオ!! オ……オォ」

「あっ……えっ? 嘘。上手く出来た」

 人間必死になると出来るものなんですね。

 僕はやられたくない一心で、手の上の黒い物質の周りの重力を減らし、その場で浮かんでいるイメージをし、そのまま槍の形を思い浮かべ、そして化け物に向かってそれを放り投げました。

 そのイメージが上手く出来たのか、ほうきのような棒は見る見るうちに槍みたいな形になっていました。
 そして化け物の目玉を貫き、そのまま後ろの壁に刺さりました。もちろん、その壁にはもの凄いヒビが入りましたけどね。危うく壁も壊すところでした。

 でも、化け物は倒れた!

「……死んだ? う、動かないよね?」

 とりあえず新たに作った重力物質の棒で、倒れた化け物をツンツンしてみます。だけど動かない。良かった、完全に倒しています。

「ふぅ……なんとかなった……でも、本当にどうなってるの?」

 そして僕は、再び教室を見て回ります。全員確かに止まっている。時が止まったかのようにして……。

 だけど音はある。建物が外の風に揺られて軋む音、何かが転がる音。
 つまり、時が止まっているわけではない。僕だけが別世界にいるような、そんな変な感じがする。

 別世界? そう言えば、朝にDr.Jが何か言っていたような……歪みがどうとか……。

「歪み……何だろう。今のこの状況と関係あるかも」

 だけど、このまま戻らなかったらどうなるんだろう? この止まった3人の姿を見ながら、僕はここで独り年老いていくの?

 嫌だ嫌だ。そんなの嫌だ。何とかして元の世界に戻らないと!

「~~♪」

 だけどそんな時、風に乗って何かが聞こえてくる。

 歌? 誰か歌ってる。人だ! 誰かいるんだ!

「……これは、屋上から聞こえる」

 ここに居てもしょうがない。脱出の手がかりになるかも知れない。僕は急いで教室を出て、その歌の聞こえる方へと走って行く。

 でも、こんな化け物がいる世界に人がいても、僕の味方をしてくれるとは限らないよね。警戒はしておかないと。

 そして僕は、教室を出て廊下を歩き、校舎の1番奥にある屋上に続く階段を、一段一段上がっていく。どんな人……? それとも化け物かな? 化け物なら逃げよう。
 徐々に近付いてくる歌声を前に、僕はちょっと恐くなってきました。

 人間の出せる声域じゃない……かなりの高音が続いている。それなのに耳は痛くならない。むしろ心地よくなっていく。危ないよこれ……意識が持っていかれそう。

「くっ……しまったなぁ、化け物かも」

 それでも、この世界から出られる唯一の手がかりが、そこにあるかも知れない。僕はそう思いながら、一歩一歩、一段一段ゆっくりと階段を上っていく。

 そしてその1番上、屋上に続く扉までやって来た。

 だけど、ここは常に施錠されているから開かないかも。でも、別世界ならもしかしてと思い、僕はその扉の取っ手を掴み、下に動かしてみる……すると。

「開いた……」

 鉄の金具の動く音と共に、扉が開きました。やっぱりここは、僕の居た世界じゃないんだ。
 そして重い扉をゆっくりと押し開き、錆びた金属の擦れる音が辺りに響いていく。これ、歌ってる人とか化け物に聞こえないかな?

 だけど、扉を完全に開いた瞬間、僕は一瞬で意識が遠くなっていきます。
 広い空に放たれていくようにして、あの高音の歌声が広がっていたのです。駄目、このままじゃ……。

「誰?!」

「あっ……! はっ、はっ……はぁ、はぁ……」

 でも、突然その高音の歌声が止まり、代わりに女の子の声が聞こえて来た時、一気に覚醒するかのようにして意識が戻りました。
 危なかった……歌声が止まるのがあと一瞬遅かったら、僕は意識を失って、2度と目が覚めないとかそんな状況になっていたかも……。

「……女の子? このエデン・ワールドに迷い込んだの?」

 えっ? エデン・ワールド? それがこの世界の名前? それならやっぱり、僕は別世界に……。

 そうだとしたら、帰る方法なんてあるのかな? 普通なさそうだけど……でも、目の前のこの女の子なら何か知ってるかも! この女の子……えっ、この女の子……。

「リリン……?」

「…………何で私の名前知ってるの、あなた誰?」

 相手も答えた……間違いない。
 ウェーブのかかった真っ白い髪に、真っ白い肌。そして真っ白のワンピース。この子はリリンだ。でも顔付きがちょっと違う。

 僕が知ってるリリンは、ちょっと抜けてる所があって、ぼうっとした表情をよく取るけれど、こっちは違う。ハッキリとした目で、しっかりとした表情で口調で、力強く言葉を放ってくる。

「あなた……私の力を、そして匂いを感じる。気持ち悪いねぇ……って、まさかあなた、私の同位体を?!」

「えっ? えっ? なに? なんなの?! 僕は君と同じ見た目の少女から、力を少しだけ貰っただけだよ!」

「その少女はどこに居るの?」

「うっ……多分僕の家。でも、この世界とは別の世界だよ!」

「……へぇ、生きてる証拠は? その子、ちゃんと力が使えるんでしょうね?」

 ちょっと、恐いってば。睨みつけながら来ないで。手が白く光ってるってば! 臨戦態勢じゃん!

「お、落ち着いてよ! 僕はなにも奪ってなんかいないから!」

「……あなた、お姉ちゃんの匂いもする。なんなの……何者なのよあなたは!」

「わぁっ!!」

 遂に攻撃してきたよ! 光る手を横になぎ払って来たから、思わず条件反射でしゃがんだけれど、その瞬間屋上の入り口の建物が真っ二つに……。

「ちょ、ちょっと待って!」

 冗談じゃないよ! こんなとんでもない力を持つ子だったなんて!

「問答無用……私の同位体だけじゃなく、お姉ちゃんにも何をしたの!」

「僕には何の事だか分からないよ!!」

 とにかく冗談じゃない。僕にとっては何の事なのか分からない事で、今殺されそうになってる。そんな理不尽な理由で死にたくはない。

 そして、僕は屋上の入り口の瓦礫を、重力魔法で一瞬浮かして、その先の階段へと走って行く。

 でも、化け物じゃないならなんとかして説得しないと。僕の話を聞いてくれる状態に落ち着けさせないと。その為には、あの子を止めないと……それには屋上だと不利です。

 あの歌声を出されたら終わりだからね。だから僕は、また校舎に戻ります。

 ここなら隠れる場所もある! なんとか立ち回られるはずだ!
+注意+
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