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第11話:学園寮/酒盛り/チョビーヌ
――Side Yuuto Souga

試験に合格した俺達は、学園寮へと向かっていた。

不機嫌そうにそっぽを向きつつ、歩いている沙那ちゃん。

鈴ちゃんに突っかかっては、言い返されてムキーっと叫んでいる縦ロール。

俺の頭の上で丸まっている銀ちゃんに、付き従うように横に並んで歩いている、あっちゃん。

そんな超個性的なメンバーで道を闊歩している。そんな訳で、俺は同じく暇そうな茶髪君と会話をしていた。

「んで、寮ってどういう所なんだ?」

「あぁ、大概の学生はここで生活してるな、沙那とかメルティアの貴族なんかは高級住宅地にある自宅やら別荘やらから通ってる。」

「ふーん、おまえは?」

「俺も…まぁ、自宅からだな」

何故か苦笑いを浮かべながら言う茶髪。聞いちゃいけないことだったか……

「なのに態々着いてくるとは律儀な奴等だな」

「はは、先生に頼まれたしな」

話題を変えることに成功して、そのまま何気ない雑談をしながら歩いていると、交差路に行き着いた。

「此処を真っすぐ行けば、町に出られる。んで、左の道が女子寮。右が男子寮へと続いてる」

茶髪が説明をする。なるほど、風紀上の関係だな。まぁ、あんまり意味はないと思うがねぇ。夜這いなんて言葉があるくらいだし。

「そんな訳で、俺らはこっちだ」

「あぁ。んじゃ、またね」

俺と茶髪君は男子寮へと続く右の道へと歩いて行くが……

当然のようにあっちゃんが着いてきた。

「あんたはこっちよ!!」

それを見て、沙那ちゃんが咎めるが…

「お断りします。私とマスターを引き離すなどという愚行を働くとは……万死に値しますよ」

意に介せず、逆に殺気混じりで答えるあっちゃん。

「いいから着なさいよ!あんたは女の子なんだから女子寮よ!」

「……あなたに私を縛る権利はありません。黙りなさい!」

二人の殺気が膨れ上がる。言わずもがな、沙那ちゃんとあっちゃんだ。

やれやれ…

「あっちゃん、我儘言っちゃダメじゃないか」

メッて感じで叱る。その途端に、あっちゃは俯き…

「マスターは…私と一緒なのが嫌なのですか?」

悲しげにそう漏らした。

うっ!?

「いや、そうじゃないけど…決まりだし……」

って言っても、無駄だろうな……そう思ったので、念話で説得することにした。

『あっちゃん、大人しく従っといて、後で合流しようよ。迎えに行くからさ』

「……そうですね。分かりました」

早っ!?まぁ、聞き分けがよくていいけどね。まぁ、論点は俺と一緒の部屋が良いって事だから、目的は達してるしな。

俺の言葉であっさり意見を変えたあっちゃんを腹立たしげに見る沙那ちゃんと、苦笑いを浮かべている鈴ちゃん。

そして、あっちゃんは踵を返そうとして、ふと何かに気が付き。

「マスター、申し訳ありませんが屈んで貰えませんか?」

「ん?こう?」

言われたとおりに屈むと、あっちゃんは頭の上の銀ちゃんの首根っこを掴んで、頭の上から下ろす。

『どういうつもりじゃ?』

物凄い不機嫌そうにギンちゃんが念話で文句を言ってきた。

『ふん、雌狐だけ残していけるわけがないでしょう。あなたも女子寮です』

『ほほぅ…乳臭い小娘が、我と主のらぶらぶな逢瀬の時を邪魔するというのか?』

『ええ……万年発情期の駄狐の毒牙にかけるわけには行きませんからね』

『『ふふふ……』』

まったく…ほら、黙り込んじゃった俺らが不審そうに見られているじゃないか

『ギンちゃんもあっちゃんと一緒に女子寮に居なさい。後で迎えに行くから、反論したり、喧嘩したら………お仕置きだからね?』
『お、お仕置きですか!?』

『ぐ、具体的に何をするつもりじゃ?』

そうだなぁ…

『徹底的に無視する。んで、あんまり度が過ぎたら………捨てちゃうかもなぁ』

『なっ!?あんまりです!』

『そうじゃ、主よ!お主は鬼か悪魔の血でも引いているのではないのか!』

ふふ、効いてるな……、実際そんなことするわけないけど…脅しだ。

『仲良くすればいいんだよ。問題ないでしょ?それとも、もう手遅れだとか?』

『そ、そんな事はありません!ねぇ、銀!』

『そうじゃ、我らは仲良しじゃぞ!』

『うん、それじゃ後で迎えに行くから』

手を振ってあっちゃん達と別れて、俺は茶髪君とともに寮へと向かう道を歩き出した。


「んで、学園てのはどういうシステムなんだ?」

歩きながら、俺は学園のことについて茶髪君に問いかける。

「クラスごとに教室が分かれててな。クラスっていうのは戦闘能力で決まり、星の数で表わされる。悠斗達はシングル…一番低いクラスだな」

これだと茶髪君が服の裾を捲る。ベルトには星のバッチのような物が三つ並んでいる。

「俺はトリプルクラスだ」

「へぇ〜、俺としては学問方面だけ学べればそれでいいんだが…」

「とは言っても、戦闘能力は何するにしても必須だしな。自分自身を守る事が出来るようにって事だ。だから、講義も戦闘能力関連は必須だ」

むぅ……めんどいなぁ。

そんな俺の不満げな態度を見て、茶髪は苦笑いを浮かべつつ、説明を続ける。

「んで、講義だけとレベルに応じた講義を各自受講して、試験などの結果から単位を貰うんだ。そうそう、戦闘訓練は必須授業だからな」

ふむふむ…システム的には大学に近い感じだな。

「一日の流れとしてはまず業務連絡があるからクラス毎の教室に集まって、それから各講義を受けに行くんだ」

「なるほど…んで、クラスってのは上がればなんかいい事があるのか?」

「より高度な講義を受けられるのと、職に就く際の能力評価の基準になるからな、高い給料が貰える職業に就けるって訳だ。それに卒業してからもそのクラスは付きまという。高ければ高いほど、羨望と尊敬の眼差しを受ける。んで、学園の編入試験に合格できるだけの戦闘能力が最低ランクのシングル。それに満たないのは商人とか農民とかになったりするな」

愚かだな…。

それを聞いて思ったのは侮蔑の感情。人の価値を人が決める……笑わせる。

いくら高い評価を得ようと所詮人は人。いや、それどころか人間だけの世界という狭い空間で優劣を極めることでより、より高い位へと昇華する可能性を摘み取ってしまっている。

ゆえに世の中の広さを知らず、あたかも自分たちが最上位に居ると錯覚し他の生物を蔑む。無論、すべての人間がそうでないことは知っている。

だが、結局、人はどの世界においても愚かな者が多いな……とそう思った。

「どうした?」

「いや、なんでもない。続けてくれ」

黙り込んだ俺に声をかけてくる茶髪に気にするなと手を振り、説明の続きを絆す」

「分かった。んで、学園の卒業条件は星四つ以上…クアドラプルのクラスになり、さらに128単位取得することで卒業資格を得られる」

「星ってのはどうすれば貰えるんだ?」

「一般では月に一度、クラス昇格の試験があって、それに合格すれば貰える。大体がこれで星を獲得するな。ただし、三回までしか同じクラスの試験は受けられない」

「何?それじゃ卒業規定に満たずに三回落ちてしまった人はどうなるんだ?」

俺の問いに、茶髪君は自分の首の前で右手をツイっと横に引く。

「強制退学だな。規定を満たしている奴…例えば星5つの試験を三回落ちた奴は強制卒業だ」

うぅむ。結構ハードだなぁ

「逆を言えば、受かればその分だけ学園に残って星を上げることに集中できる。星5つ以上からは学費も無料の特待生扱いになるし、月に幾ばくか金も貰えるようになる」

「って、それじゃ5つ以上になったら試験を受けなければ、ずっとその生活だぞ」

「いや、半年に一回は絶対に試験に受けなければいけないんだ。だからそれは無理だ」

そんなに甘くはないってことか……



茶髪君にあれこれ説明を聞きながら、学生寮へと着いた。

学生寮は京の町並みでは人際浮いた木造の西洋風の三階建ての建物である。

「京の町並みに比べると大分印象が異なるな…」

「ん?あぁ、エレンツァ学園はメルティアと大和が共同で作った学園でな、大和が土地と武器や道具とかを、メルティアは学園や寮の建設を担当したらしい。だから、建物なんかの作りがメルティアよりなんだよ」

「ふぅ〜ん。まぁ、どうでもいいけどな」

「聞いといてそりゃないだろ…」

俺の言葉にゲンナリとした表情を見せつつ、寮の中に入って行き俺もそのあとに続く。

案内されたのは三階の一番奥の部屋だ。室内は6畳半で板張りの床の中央に質素な絨毯が敷かれており、奥の扉を開けるとトイレとバスルームに洗濯機のようなものが置いてある。家具は机が二つと二段ベット。左に視線を向ければ、ちんまりとしたキッチン。

「普通は二人で相部屋なんだけどな。編入生だし、一人で独占だ。どうだ?いいだろ?」

「ああ」

相部屋というのは予想していなかったが、一人でよかった。あっちゃんやギンちゃんなどを招き、今後についての会議とか色々親睦を兼ねた語り合いをしたいと考えていたからだ。

俺の武器となり、俺と共に居ると言うことを二人が示し、俺達はいわば共に生きるパートナーとなった。しかし、まだお互いのことを詳しく知らない。必要最低限の出来事は知っているがまだまだ知らない事が多い。

そもそも魔女の子、精霊姫、妖狐と言ったようにそれぞれ種族も違う……相手のことを詳しく知る必要があるのだ。

例えば寿命だ。魔女の血の影響で俺は不老であり肉体は老いない。

だが、不死と言う訳ではない。致命傷を受ければ老いなど関係ないので当然死ぬ。

しかも、俺には治療関連の魔法は一切効果がない。これは自身が持つ抗魔力の高さゆえの結果だ。

外面に作用する抗魔力は自分で制御できるために外傷に関しては問題ないのだが、内面に関しては常時強力な抗魔力を発揮しているため、内臓なんかがやられると自然治癒に頼るよる他ない。

その反面、幻術やマインドコントロールなどの精神汚染系統の魔術はキャンセルされ効果がないというメリットもあるので善し悪しだ。

話は逸れたが、そう言ったこともパートナーとなる二人には話しておいた方がいいだろうと思っている。だが、相部屋となった場合にルームメイトが邪魔になるのだ。

まぁ、適当に眠らせたりしてから話せば問題ないのだが手間が省けるなら、それに越したことはない。

「まぁ、とりあえずはあっちゃん達を迎えに行こうかな」

小太刀と繋がっているあっちゃんの気配を探って居場所を調べて、念話で状況を確認した後、俺はずぶずぶと自分の影に埋まって行くのだった。




あっちゃん達を迎えに行った後、鈴ちゃん達を誘って町を散策し必需品を購入してついでに夕食を食べることになった。

場所はこの間の酒場。斡旋所だけかと思いきや、マスターの腕がいいのか料理がかなり美味しかったのである。行きつけ決定だな。

そして、何より驚いたのが、料理の名称や食材が元の世界と殆ど変わらないという事だ。ふむ、ひょっとするとこの世界……

いや、考えるのは後だ。今は食事を楽しもう。

「んぐ…んぐ…ぷはーー!美味い!」

考えるのは後にして、俺はジョッキを片手にビールを一気飲み…美味ぇええ。

「おい!学生の飲酒は校則違反だぞ!」

パンフとかに書いてあった校則を覚えたのだろう。向かいに座っている鈴ちゃんが目くじらを立てる。

「固いこと言わない!ほら、鈴ちゃんも飲んで飲んで」

「ばっ!わ、私は…ん!?んぐ!?」

無理やり鈴ちゃんに酒を飲ませながらも、ほかの面々の様子を見る。

ギンちゃんは俺の左隣で、ちょこんとテーブルに乗りつつ、おちょこでチロチロと酒を嘗めている。ちなみに飲んでいるのは日本酒。

あっちゃんは右隣で、俺に寄り添いつつワインをグラスで優雅に飲んでいる。

『なぁ、あんちゃん。前から思ってたんだが…酒ってのはそんなに美味いのか?』

「酒の味を知らんとは…いささか不憫だな。ふむ…試してみるか……マスター!ビールを樽でくれ」

俺のオーダーに一瞬ギョッとするもすぐさま注文道理の品が出て来た。

なみなみと樽に注がれているビール。そこに旋武を突っ込んだ。

『おぉ!なんか、ふわふわした…いい気分だぜ!!』

見る見るうちにテンションが上がっていく旋武。酔っているらしいな…理屈はよく分からんが、まぁ、これで酒の味が分かるなら良しとしよう。

『…私も』

焼ちゃんも興味があるらしいので、旋武と共に樽に突っ込んでやった。



そして三十分後……俺はつくづく後悔した。

「グス…聞いているのか!」

「はいはい聞いてますよ…」

赤い顔をしながら対面に座っている鈴ちゃんがずいっと顔を近づきながらメンチを切ってくる。

「リーデル如きに負けるなんて…うっ…わ、私は…」

わぁああと泣き始める鈴ちゃん。ちなみにこのやり取りは三回目。

まっさか、絡み酒&泣き上戸だとは…

『ひゃっほぉ!!』

旋武も妙なくらいのハイテンションで騒いでるし…

『あっはっはっは!!』

そして焼ちゃんは普段の物静かな態度とは一転してケラケラ笑っているし…

あっちゃんはあっちゃんで…

「マスタぁー。今夜あたりどうですかぁ?気持ち良くしてあげますから…」

ふふふと怪しげな笑みを浮かべ、体を摺り寄せてくる…

「あー、あっちゃんや…冷静になりなさい。酒の勢いでそういったことすると、後でもろもろ問題が出るだろうから」

「ふふ…マスタぁー…今夜…」

駄目だ、聞いちゃいねぇ。

『主よ、酔っぱらいに何を言っても徒労に終わるだけじゃ』

「みたいだなぁ。つか、酒癖悪いなぁ…」

まともなのはギンちゃん位だ。小さい体であれだけ飲んだくせに全然酔っていない。

『そのうち静かになるだろうて…むっ?主よ、すまんが酌を…』

「あ、はいはい」

狐状態のギンちゃんが自分で注げる訳もなく、俺が酌をしているんだがペースが尋常じゃない。つか、俺の片手は酌をしっぱなしである。

もう片方の手で酒を飲んだり、つまみを食べていたのだが、あっちゃんがしがみ付いているのでそれも出来なくなってしまった。

「はぁ〜〜」

溜息を吐き、今度飲むときは一人で来ようと心に誓ったのだった。



酒乱共が揃って寝息を立て始め、起きている俺とギンちゃんはほろ酔い気分ながらも酒を楽しんでいた。

ちなみに、ギンちゃんは先ほど隠れて人間verになり、着物の肌蹴た部分から豊満な肢体が見えるのが、とてつもなく目に毒だ。

耳と尻尾はギンちゃんが隠蔽の妖術を使っているみたいだが、念のために俺もその上から認識遮断の魔術を使っておいた。なので、バレる事はないだろう。

「ほれ、主よ。一献」

俺にしな垂れかかりながらも、お酌をしてくれるギンちゃん。色気抜群だな……是非とも自覚してほしい。いや、自覚しながらもやっているのか?

するとギンちゃんが唐突に切り出した。

「主は強いの…」

「ん?」

「いや…今更ながら知りたくなったのじゃよ。我を圧倒した主の力を思い出しての、如何にしてその力を身につけたかを…」

「ガキの頃から剣は父さんに、魔法は母さんに仕込まれてたんだよ」

「にしても、あの力量は相当の年月による修練の果てに修得した物であろう?いかに才があっても、10、20年ではあの階位に到達できるはずがない…」

「まぁね、いくら才能があってもそれを磨く時間て言うのは必ず存在する。でも、俺は実際には17年しか生きてない。これは事実だ。さて、どんな裏技を使ったでしょうか?」

意地悪な返答を返してやる。いや、別に教えてもいいんだけど…

「主よ、意地が悪いぞ」

そう、そのギンちゃんの拗ねた顔が見たかったのだ。うん、やっぱり可愛いね

「あはは、ごめん、ごめん。ちゃんと教えるから……簡単に言うと母さんの力なんだよ」


〜〜回想〜〜

それはまだ幼い頃、正義の味方という子供ながらの幻想を抱いていた時の事だった。

「やっぱり、攻撃にはバリエーションが必要よねぇ。あ、次はこれいってみよう!」

白き広大な空間。見渡す限り果てもなくどこまでも続く白。地面も空もない。そんな無空間。

そこに場違いな程でかいTVと最新のゲーム機に、ゲームソフトやDVDが散乱していた。

ここは我が家のリビング。しかし、魔法の修行用に母さんが手を加えに加えた特殊空間となっている。

そして、母さんはゲームのコントローラを握っており、TVの中では魔法使いがド派手なエフェクトと共に魔法をぶっ放していた。

「もう一回…」

「おっけー。チョビーヌ!エクスプロードよ!!」

母さんが叫びながら、ボタンを押す。それと同時にTVの中の魔法使い(母さん命名チョビーヌ氏)が先ほど同様ド派手なエフェクトの魔法を放ち、敵を屠っていく。

どうでもいいが、名前にセンスがなさすぎる。

「あ、もうチョビーヌのMPが無い。んで、どう?いけそう?」

「やってみる」

チョビーヌに気を取られている場合じゃない、俺は先ほどの魔法を頭の中でイメージし、自身のエーテルをそのイメージに沿って変化させていく。

「んじゃ、的はペソーネ7体よ。こいつ嫌いなのよねぇ。屠っちゃって」

母さんの言葉と共に、先ほどのTVでチョビーヌの仲間の筈のペソーネ氏が七対現れる。ジョブは戦士。

そのペソーネ七体に向かって、俺は構成した魔法を放つ。

TV画面でチョビーヌが放ったエクスプロード同様に眩い輝きとともに、大爆発が巻き起こる。

「よっし、エクスプロード習得〜♪いい調子よ」

嬉々として母さんが喜ぶが、俺は目の前で無残にも爆散したペソーネ氏に黙祷を捧げていた。

それを終えて、戻ってくると母さんがシミジミしたように言う。

「しっかし、アニメーションとかゲームとか。すごいわよねぇ。私にも考え付かないような魔法を考え付くんですもの。もしこれが空想じゃなかったらと思うと、ゾッとするわね」

そう、これは魔法の修行の一環で、母さんがやっているゲームのキャラの魔法を実際に再現しているのだ。

「でも、そのおかげでずいぶん魔法が使えるようになった」

「そうよねぇ〜。私たちの魔法で一番大事なイメージの部分をこれで大きく補えるんですもの。大したものだわ……それにゲームも面白いしね」

「……あ、チョビーヌが死んでる」

「へ?あぁ!!気を取られて操作忘れてたーー!!ペソーネは…ちっ、使えないわね。それじゃポンタの回復……ってポンタまで!!いいえ、まだよ!この戦闘を乗り切れば蘇生も可能よ!」

「……あっ」

「き、キャーーー!ここで毒!?トンデンあんた主人公でしょ!勇者でしょ!根性を…って、このへっぽこ―――!!」

母さんが叫ぶ。TV画面には敵だと思われる、緑色の気色悪い二足歩行の豚が、ゲヒゲヒ笑っている…

所謂全滅をしたのだ。

「あ、あぁ……はぁ〜〜ま、いいわ。今日も結構魔法習得できたし、続きは今度ね」

「それで母さん。いい加減、この部屋から出して…「んじゃ、またねーー!」…おーい!!」

くそ、また置いていかれた。

母さんが出ていくと同時に、わらわらと異形のモンスターが現れる。

この空間は母さんが管理している一種の異空間らしく、一定の間隔でモンスターが現れるのだ。

さらに、この空間の時間軸は狂っており、向こうでの一日がこっちでは……何日になるんだ?あぁ、いい加減日数数えるのめんどくさくなったからなぁ。

ま、とにかく俺はもうかーなり前からこの空間にいる。

しかも食欲、睡眠欲などの生理的欲求もない。一定の間隔でモンスターが現れ、そいつらと闘ったり、母さんが居なくなった途端にTVが本棚に変化し、そこにある本で知識を学んだりの生活をしている。もう精神年齢は結構なお歳ではなかろうか?

でも、俺は努力する。だって、正義の味方になりたいから。

とりあえず…

「エクスプロード!!」

チョビーヌの死と共に会得したエクスプロードでこいつらを焼き払う事にしよう。



俺の話にギンちゃんは絶句する。

「主の母君は一体何者なのじゃ?」

「魔女だよ!魔女!つか悪魔だ!いや、たぶん悪魔の方が慈悲の心あるな」

「辛かったじゃろうに…」

慈愛の籠った声でそう言ってくれるギンちゃん。だがしかし!だがしかし!

「ふっ……ギンちゃん。それがね…それはまだ第一段階だったのさ…」

どこか遠い目でそう語る俺にギンちゃんは絶句する。

「ある程度の戦闘技術が身についた後は実戦形式でね、空間もジャングルに変わり、敵も数万とかになって…普通に腹が減るようにも、眠くなるようにもなった。そのおかげで、アウトドアの知識と、気配を読む術を身につけたんだけどね。その他にも人間を指揮できるようにって、軍の将校としての多対多の訓練もしたし、暗殺とか護衛ってシチュエーションもあったかなぁ」

あの世界は一種の精神世界だ。ゆえに肉体は成長しない。なので実質17年しか生きてなくても精神年齢は………幾つだ?

正直、あの世界での年数なんぞはいちいち数えちゃいないので分からん。

「我が勝てないはずじゃ……」

その結果で俺は確かに力を経た。人を護る筈だった力を……そして裏切られた。

「……主?」

「あ、なんでもない。ちょっと酔ったかも」

俺の異変に気がついたのかギンちゃんが声を掛けてくるが、適当にごまかす。

「ねぇ、ギンちゃん。ギンちゃんは確かに強いよ。でもね、もしかしたらそれ以上の相手がいるかもしれない。戦うことになるかもしれない。その時は、俺が必ずギンちゃんを護るから」

「あ、主!?」

「あはは、照れてるギンちゃんも可愛いね」

ぽんぽんと頭を軽く叩いて席を立つ、ギンちゃんが小声で子供扱いするでない…と愚痴を漏らしているが、聞こえないふりをして、寝ているあっちゃんを背負う。

「んじゃ、帰ろうか」

「そうじゃの…むっ?主よ。小娘はどうするのじゃ?」

「放置する。酒は呑んでも呑まれるなってね。いい教訓になるでしょ。それに、女子寮まで送るわけには行かんでしょうよ」

基本的に男子禁制だしな。

「それともギンちゃんが送ってく?」

「そんな義理はないの。では、帰るか主よ」

こうして、三人で帰路に着いたのだが、翌日、顔を合わせた鈴ちゃんがご立腹だったのは言うまでもない…






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