kou@第3話 夢であるように…
うまく探し出せるとも思ってもいない…。ただ思った方向に進んだだけ…。運命なんてただの偶然…。追いつけなければ明日渡せばいい…。
そう思って走っていたのに…俺は千亜妃さんに追いついていた。
『皇…ちゃん?』
彼はビックリした顔をしていた。そりゃ後ろから突然会社の同僚が走って来たんだ、ビックリもするだろうな…
『はぁ…はぁ…こ、これぇ…っぁ…昨日…電車に…』
俺は体全体で息をしながら携帯を差し出した。
『え?あ…これは…ホントだ…俺の携帯だぁ♪』
千亜妃さんは自分の携帯が手元に戻った事に喜んでいた。
俺は彼のせいで今日一日ずっと疲れていたが、千亜妃さんの幸せそうな笑顔をみた途端、ホッとした。
…はぁ…良かったぁ…
『じゃあ…俺はこれで…』
帰ります☆と言おうとしたが千亜妃さんが俺の手を掴んだ。
…え?
急な事に呆気にとられた。
『わざわざ届けて貰ったんだもん☆お礼させてょ♪うちすぐそこだからさぁ』
ニコッと彼は笑い、俺の手を引っ張った。
『いや、そんな…』
…別にお礼とかいらないですょ。と言おうとしたが
『遠慮しない☆』
と先に言われてしまった。
…まぁ走って疲れたし、ちょっと休んでいくだけでもいっか…
と俺は諦めてついて行くことにした。
━━━━━━━━━━━━
『すっげぇ…』
俺は口をパカッと開けて固まっていた。
彼に連れて来られたのは高級そうなマンション…俺が住んでるしょぼいアパートなんかと比べ物になんかならないモノだった。
『何してるの?皇ちゃん。さ、入って入って☆』
ボーとしている俺の手を千亜妃さんは引っ張り、そのまま俺は中に導かれた。
━━━━━━━━━━━━
部屋に入ると俺はソファに倒れ込んでいた。
普通なら遠慮して座るのもためらうのだろうが、限界まできていた。
久し振りに走って体はボロボロ…
昔は陸上やってて体力に自身あったんだけどなぁ…俺も若くないなぁ…
などと20代前半にしてこんな事言うと、夏美さんや優太さんに怒られるだろう↓
でも気持ちは若くいようと思っても体がついていかないのであるからして、仕方ないのだ(言い訳)
心の中で一人言を呟いていると
『疲れてるねぇ♪』
と明るい声が後ろからした。振り返るとアルミ缶をもった千亜妃さんが立っていた。
まさか…
『疲れた時は飲むしかないよ☆』
彼が手に持っていたのは500ml缶のビール。
え?…まだ火曜日ですけど?…明日会社あるんですけど?…つか俺酒弱いんですけど?…
ビール缶を見た瞬間俺の頭の中で疑問文しか出て来なかった。
『あの…俺はいいですよ…千亜妃さんだけ飲んで下さい☆』丁寧に断ったつもりだった。が、
『俺に遠慮しなくていいから☆まだあるし飲んで♪』
そういう事ではないし、俺は飲む気はさらっさらない、それなのに彼は俺の分であろうビール缶のフタを開けてしまった。
『はい☆どうぞ』
彼はにこやかに缶を差し出した。その笑顔には勝つ事ができず受け取ってしまっていた。つか卑怯だよその笑顔…
『乾杯♪』
渋々缶に口をつける…
はぁ…ついに飲んぢまった…↓無事家に帰れるかなぁ…
俺は根っから酒は好きだが、…免疫がないといいますか、変になるといいますか、世間でいう『弱い』方の人に分類される人である。
それにしても千亜妃さんは不思議な人だなぁ…と心でため息混じりに呟いた。
会社じゃお淑やかな感じにみんなに振る舞っているのに、今みたいに常時茶目っ気のある表情をしたりして…分からん…って…あら?
考え事をしてる間に気付くとビール缶は空になっていた…。
『イケるねぇ♪』
千亜妃さんに飲み干してしまった事を悟られてしまい『ドンドンいこ♪』と、また新たな缶が俺の前に出た…
…どうなっても知らん…
━━━━━━━━━━━━━
『あはぁ〜千亜妃さ〜んもう無理で〜す♪飲めませ〜ん☆』
完全に酔っている。自分でどのくらい飲んだのかもわからないくらいに…。
しかも俺には酔ってしまうと人肌恋しくなってベタベタとくっつくクセがある…そして今まさに千亜妃さんにくっついている状態だ。
『千亜妃さ〜ん♪何お茶とか飲んでんですか〜?』
確かに彼は乾杯をした時からお茶を飲んでいて、俺一人酒を飲んで酔っ払っている。
『俺ちょっと体悪くて酒は飲めないんだ↓てか皇ちゃん大丈夫?だいぶ酔ってるみたいだけど?』
うっすらと耳に彼の心配する声が聞こえたがこの状態でまともに対応できるはずもなかった。
『ら(だ)いじょ〜ぶれすよ♪千亜妃さ〜ん☆』
俺はいつの間にか彼の肩に手を回してくっついていた。千亜妃さんも嫌なら嫌だと離してくれればいいのに抵抗はしなかった。
くっついてみて今分かった事だけど、千亜妃さんから甘い良い香りがした。とろ〜んとなる癒される香り。
甘い香りを嗅いで、目が虚ろになり心地いい眠気が襲ってきた。
しばらく目を瞑って意識がもうろうとしていると、どこからか声がした。
『…よっか?』
ん…誰かなんか言った?
『ねぇ…しよっか?…』
…夢か…久々にこういう夢みるなぁ…しよっか?って言われたらそりゃもちろん…
『いいよ…♪』
寝言のように答えるとその後の意識は無くなっていた……
━━━━━━━━━━━━━
朝起きるとベットの上にいた。
…そういうや〜昨日千亜妃さんちで飲んで寝ちゃったのか〜…
昨日の事は一切覚えていない。覚えているといったら夢の相手が小柄な女性…誰に似ていると言われたら…ん〜…千亜妃さん…みたいな感じの人と一夜を共にした…そんな夢だった事くらい…
まぁ夢はいいとして…これから仕事だと考えるとダルい。
でも今日は大事な仕事があるから休めないのが最悪だ…
仕方ないが俺は重い腰を上げようと掛け布団を払いのけた。
『…………え……………』
ポカーンと口が開いたまましばらく閉じなかった。
何故なら掛け布団で隠れていて分からなかったが、
俺は…は、は、は、裸…だった…
…なんで?…俺脱ぐクセあったっけ?ヤバイ…恥かしいぞ…と、とりあえず服、服…
俺は焦っていた。こんな格好千亜妃さんに見つかったらなんて言われるか↓
『俺んちのベットに裸で寝るなんて…シーツの洗濯代頂戴!』←(注)俺の空想
なんて事になりかねない↓
急いで周りを見渡した。
俺の服…俺の服…
…と服だけに気持ちがとらわれていて気付かなかったが俺の隣りにある何かの存在に気づいた…
まさか…と思いその物体が布団で隠れていたので優しくそぉ〜っとめくってみた…
ぱさっ
……………え"っ…………
そこには昨日の夢のお相手の美女♪♪♪…ではなく…
淫らにも裸になったここの住人…千亜妃さんだった…………
状況が把握できなかった…いや、したくなかった。
このシチュエーションは明らかに俺が把握したくないソレであるからだ。
二人とも裸で、寄り添って寝ていて、俺には確かにやったという確信はないがうっすらと行為をしたことは覚えている。
…それはもう間違なく行き着く答えは千亜妃さんとヤってしまったというしかない。
…謝ろう…昨日は酔った勢いで見境なくやってしまったって事を…覚えてる限りでは千亜妃さんが俺を誘ってきたけど、あれは冗談でそれにノッた俺がイケないんだ…
俺は悔やみながらも謝ろうと彼を起こすため体を揺らした。
『千亜妃さん、起きて下さい?』
全然反応がない。飲み過ぎたんだろうか?
…あれ?…でも千亜妃さんは体悪いからお茶しか飲んでないはず…
おかしいなぁと思いつつ彼の体を何度も揺らした。が、なんの反応もない…
まさか…死んでない…よな?…
怖くなって息をしてるか確かめるため彼の口元に耳を近付けた。
…………………………………
『わっ♪!』
『うわぁっ!?』
いきなり耳元で大きな声を出され、その声よりも大きな俺の声が部屋に響いた。
『ふふふふ♪』
一瞬何が起ったか分からなかった…
が、千亜妃さんのイタズラな笑顔を見ると今までの緊張が解け、大きなため息が出た。
『もぉ〜〜!ビックリさせないで下さいよ〜↓』
『ゴメンゴメン♪』
俺はマジでホッとした。千亜妃さんに何も無くて良かったぁ…♪イタズラをされたとしても彼の笑顔を見ると自然と怒りは込み上げてこなかった。
ふぅ…何もなかった事だし……よし……
俺は頃合を見付け、切りだそうとした
『あの、千亜妃さん…』
次の言葉を口にだそうと彼の目をみようとした時、
彼は思いっきりビックリした顔になって何かを見つめていた。
その視線の先にあるものを目で追うと、ん〜とっ…と…時計?……って…!?
『あ"〜〜〜〜〜〜!?』
『あ"〜〜〜〜〜〜!?』
二つの叫びが木霊した。
なんと、長い針が指していたのは、会社の出勤時間まで後10分の所だった。
『ヤバイ!千亜妃さん、急いで着替えて!』
『う、うん!』
謝ってる暇なんてなかった。二人とも裸であっても、もうそんな事も気にしないでいる。
とにかく今は一秒でも早く仕事場につくように最善の事を考えなければならない。
…今日は大事な仕事入ってんのに………
俺は急いで脱いだ服を身に着け、早々と部屋を後にし、近くでタクシーを呼び止め、仕事場に急いだ…。
━━━━━━━━━━━━━
『はぁ〜ったく…二人とも分かったから仕事について☆』
優太さんの呆れた顔が心に突き刺さる。
結局間に合わなかった………。
こうなると今日一日憂鬱になる。
まぁ、優太さんに叱られたからってのもあるけどさぁ…他にも憂鬱になることといったら…
『皇!千亜妃君と一緒に遅刻ってどういうこと!?』
『アンタ昨日とシャツ変わってないけど…まさか…』
『もし万が一の事があったら…』
このお姉さま方の尋問が一番体に応える…
確かに的を射た事ばかりの問いに胸が痛くなる↓
つか俺入った時にあんなに良くしてくれた人達が、ここまで変わるのか…と思うと女って怖い!と感じてしまう。
お姉さまとお姉さまの間からチラッと千亜妃さんの顔が見えた。
ちょうど良く目が合うと彼はニコッと笑った。
…いや、笑ってないで弁護とかしてくれよ↓…嘘でもいいから…
すると俺の心の叫びが聞こえたのか、彼は腰を上げてゆっくりとこっちに近付いてきた。助かる〜♪
『あの〜…彼は…』
うんうん☆俺をかばって☆
『僕の恋人ですので…あまり関与しないでもらえればありがたいんですけど…☆』
そうそう…恋人、恋人…って…
……………はぁ!?
彼はお姉さま方の前でとんでもない事を打ち明けてしまった!? |