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二人のイケない罰ゲーム
作:七海光



第三章 慰めの夜


朝起きるのは辛かった…
この前二人で交わした『好き』って言葉の意味を考えながら眠ったんだ…そりゃ憂鬱にもなる。

ただ優太に確認を取ればいいだけの話。

…もしかしたら俺の勘違いかもしれない☆笑って『馬鹿かお前?』とか言ってくれるかもしれない。

…でも夏美さんとの仲が本当だったら?
俺に言った好きって言葉も薄っぺらなものだったら?

…そう思うと切り出せない自分がいる…

俺はベットの上で黙り込んでいた。

………ん?…ちょっと待て…何しんみりしてんだ?こんなの俺じゃない…こんなんじゃダメだ…

落ち込んでいた自分に自問自答した。

何事もくよくよしてちゃ進まない…よぉし…

手を大きく広げてパンパンッと顔に喝をいれた。

まぁ、喝をいれたっつってもモヤモヤはしている。でも会社には行かなければならない。行ってみなければ分からないんだ…

俺は重い腰を上げて会社へ出勤した。


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会社に着くと、とりあえず優太の席を確認した。
見る限りではまだ出勤していないようだった。

『康おはよっ♪』
『おはようございます☆』
次々と同僚が出勤してくる。
しかし、夏美さんと優太がまだ来ていない…

まさか…と思った瞬間、

『おはよ♪』
優太一人だけで出勤してきた。俺はホッとしていた。

ホッとため息をついていると、優太はまっすぐに俺の所に近付いてきていた。

ホントだったら会社ではあまり話をしちゃ駄目って約束を破られた事に腹が起つんだろうけど、今日は俺が破りたい位優太と話がしたかった。

『康?昨日どうした?何回も電話したんだぞ?』
と優太は不安な顔をして言ってきた。

…あっそういえば電源切ってたんだ…

『ゴメンゴメン♪昨日疲れててさぁ、すぐ眠っちゃったんだぁ☆』

今、優太と話を出来てる事に俺は心の中で歓喜の雄叫びをあげていた。

そのままの勢いで昨日の事を聞き出そうと口を開いた、

『優太…そういえば昨日…』
思い切って問い掛けようとした瞬間…高い声に阻まれた。

『優ちゃ〜ん♪おはようございます☆』
この上ない笑顔の夏美さんが優太に近付いた。

『あ、おはよ夏美ちゃん♪』それを優太も可愛いらしく返事をしていた。

…ゆ、ゆうちゃん?そんな呼び方俺した事ないぞ!

気付くと二人は俺そっちのけで昨日の事について仲良く語りあっていた。

『それじゃ、また後で♪』

…どうやら話が終わった見たいだ。俺は堪忍の尾が切れそうだった…

優太は振り向くと、そういえば…みたいな感じに
『康…さっき何か言おうとしていなかったか?』

と、今さら言われてももう話す気にもならなかった。

『………なんでもない…』

吐き捨てるように言って、丁度始業のチャイムが鳴ると俺は無言で仕事に取りかかった。

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俺は吹っ切れて仕事をしていた。皆に迷惑をかけないように、周りに明るく接した…

…ホントは暴れたい位イライラしている…ホントは誰にも話し掛けてこないで欲しい…そう思っていた。

けど、そんな時に限って優太が近付いてきた。

『君…ちょっと手伝ってくれないか?』



マジな顔して優太は俺に問い掛けて来た。

…でも上司だからってそんなに『はいはい』とついて行くほど従うつもりはなかった。

『すいません。自分今忙しいんで他に当たってもらえますか?』
と、淡々とした口調で言い訳をして断った。ホントはそんなに忙しいわけでもない…

『そ、そうか…悪いな…』

優太は落ち込んだような表情になり自分の机へ戻って行った。

別に人の手伝いはいらなかったんだろう…ただ俺と話をしたかっただけ…そう解釈したけど、今の状態では話もろくにできないと思い突き放した。


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終業のチャイムが鳴ると俺は急いで帰る支度をした。
早く優太のいない空間に行きたい…そう願っていた。

帰る前に一応チラッと優太の机に目をやるとそこにはまた優太と仲良く話す夏美さんがいた。

もう知らない…

完全に呆れてため息をついて黙って二人を見ていた。

その時、急に俺の名前を呼ぶ声がした、

『やっちゃん?やっちゃん?』

ボーっとしてていきなり後ろから声をかけられて俺はビックリした。

振り返るとそこには俺を慕ってくれる仲のいい後輩のコウがいた。

『やっちゃんどうしたの?ボーっと優太さん達の方見て?』
首を傾げて問い掛けて来た。
でもホントの事は言えない…
『あ…あぁ…いや、あの二人…お似合いだよなぁってぇ…』

本心でもない事を口にした…

すると皇はにかっと笑い
『この課の人みんなあの二人の噂してるよ?絶対あれはデキてるね♪』
とニヤけながら言っているが、正直笑えない…

…みんなお似合いだって思ってるんだ…

心からため息をついた。

『…皇?今日…暇?暇だったら飲みに行こっか…』
気付くと俺は後輩を誘っていた。
ハっと我にかえり『今の無し』と言おうとしたが、それよりも早く

『全然OKだよ♪どこに行く?』
と皇はその気になっていた。
元気なその笑顔に『今の無し』とは言えなかった…

そして俺と皇は優太と夏美さんが話してる隣りを通り、二人並んで職場を後にした…

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皇と二人で随分と飲んだ。
いろんな店を周って自棄酒のように飲んだ。どれくらい飲んだのかもわからないくらいに。

『やっちゃ〜ん♪次どこいく〜?』
皇ったらまだ飲む気なのか?でも次に行く金も無くなって来たからなぁ…

今日は結構持って来たはずだったが、いつの間にか財布が軽くなっていた。

『皇、今日はもう御開きにしよう?』
もう少し飲みたい気もあるが、金が無くては生活もできないと思い、解散を提案した。十分に飲んでスッキリできたし。

しかし、皇は引かなかった…
『じゃ〜あ、俺んち行こう?ここの近くだし、冷蔵庫にお酒いっぱい入ってるし♪やっちゃん泊まって行けばいいじゃん☆』

『え?ちょっと、皇?』

そういうと皇は俺の手を掴みズンズンと進んで行った…

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意外と近くに皇の家はあった。

中にはいると早速皇はビールを持ってきた。ありがたいんだけど、今の状態で人の家に泊まる事はできない…
一本飲んだら帰ろう…。

『カンパーイ♪』
まだハイテンションの皇に俺も合わせていた。

グイッとビールを飲んだ。ヤケクソのように飲んだ。
…あのまま優太と上手くいけば、ホント今頃は優太の腕の中で眠っていたんだろうなぁ…と思い出し、飲み終わる頃にはしみじみとなって、はぁ…とため息混じりの息をしていた。

気付くとなんか静かだった。

ふと皇の方に目をやるとさっきまでニヤけていた顔がキリッとしていた。
あれ?どうしたんだろ?
不安になり、

『こ、皇?大丈夫?』

と体を気にした。

すると皇はキリッとしたままで口を開いた、
『それはこっちのセリフだって…やっちゃん…どうしたの?なんかあったんでしょ?』

『え…』
的をい抜かれた気持ちになり、ドキッとした…

『気付いて…たんだ…皇…』
明るく接してきた声のトーンもいつの間にか暗く低くなっていた。

『最近やっちゃんの雰囲気変わったんだもん…俺だって気付くさ』

…仲がいいぶん筒抜けってことか…俺は隠す事を諦める事にした。

『…お前には敵わないょ♪』
皇にそういうと彼はニカっとさっきまでの表情に戻った。

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俺は優太との関係や今までの事を嘘偽りなく皇に打ち明けた。
意外にも彼は驚きもせず俺の話を聞いていた。ずっと俺の目を見て一言も逃さないように耳を傾けてくれた。

『…ていうわけだ…』

と今の状況を伝え終えた。
話が終わると皇は腕を組んで悩んでいた。

『ん〜〜〜〜……………』

俺以上に思い詰めた表情をみて申し訳なく思えた。

『皇…そこまで考えなくても…』
相談した事を謝ろうと口を開こうとした時、

『人の気も知らない優太さんが悪い!けど…じっとしているやっちゃんも…悪い』
と皇は俺に説教じみた事を言ってきた。

生意気なぁ…と思ったが、図星をつかれて何も言えなかった。

『そもそもなんで人前でイチャイチャしちゃいけないとか決まりごとをしてるんだよ?…好きだったら話したっていいだろ?…近くにいたっていいだろ?…好きだったら男も女も関係ないだろ?』

と皇の一言が重く、胸に突き刺さり、苦しくなっていた…分かっている…分かってるんだけど…
涙が込み上げてきた。

『なんで…』
と皇が続きを言おうとした時、咄嗟に俺は皇に抱き付いていた…

『皇…やめて…分かってるから…おねがいだから…』
泣いてやめるように願った。

『あっ…ご…ごめん…やっちゃん…』
皇は自分が言い過ぎてしまった事に反省しているようだった。でも皇の言ってる事は正しかった…だから泣けてきたんだった。

『辛かったんだよね…ごめん…』
そういうと皇は俺の頭を擦ってきた。
後輩に擦られるのは腑に落ちないけど…嬉しかった。

『…ありがと……』
『どういたしまして…』


その日は心がスッキリした気分で心地よく眠れた………












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