第12話・瑠霞とドラミ
暗く広い研究室のような部屋に一人大きなテレビ画面を見つめる者がいた。
その人物はじっとテレビ画面を見たまましばらく黙っていたが急に笑い出し、笑いがおさまると低い声でつぶやいた。
「・・・へぇ〜。やっぱり少し敵の味方しちゃったか。ま、あいつの性格から考えてするかもしれないとは思ったけれど。」
白い、博士のような白衣を身にまとった男のような女が大きなテレビ画面を見つめてつぶやく。
その画面にはドラえもんズと、明がルゥと音を担ぎ窓から出て行くところが映っていた。
「でも。」
一つに束ねた黒髪をなびかせ、怪しい笑みを浮かべる。
「まさかあいつがいるなんて・・・。これで実験の大半は必要なくなってきた。
・・・実に面白くなってきたよ――――。」
「瑠霞様。」
「――――アチモフ・・?」
カチャという微かな音とともにDr.アチモフが部屋へと入ってきた。
怪訝そうに「瑠霞」と呼ばれた女が振り返る。
黒髪が、揺れる。
「何の用だ。」
「あの事ですが・・・。」
「いい。後で行く。」
瑠霞はアチモフの言葉を遮るとドアに向かった。
そしてアチモフの横をすれ違った時に何か言って、部屋から出て行く。
その言葉は――――。
―――どんな手を使っても良い。あいつ・・・。ドラニコフを連れて来い。明にはバラすなよ。―――
その言葉を聞くと、ドアの閉まる音とともにアチモフは怪しげな笑みを浮かべた。
「夢を叶えるため・・・。ドラニコフはもっとも瑠霞様や私に必要な存在だから楽しみだっしょ・・・。」
「何一人で笑ってるんだ?」
「!」
突然声がしたので驚いてアチモフは声のした方へ首をめぐらせる。
「何だ明か。」
「俺で悪かったな。」
そう言いながら明はルゥと音を静かに床に下ろし、音を見つめながらアチモフの顔を見ないで言った。
「もう目が覚めるはずだ。ルゥの目が覚めたら次に行く仕事に一緒に行って欲しいらしい。瑠霞様からの命令だ。・・・ネロ様もこの仕事が成功するのを楽しみにしているらしい。俺は何の仕事か聞かされていないんだが・・・・。何の仕事だ?」
「さあ?聞かされていないんなら聞かない方がいいっしょ。」
「―――分かった。」
それだけ言うと最後にアチモフを睨み、音を抱き上げ部屋を出て行った。
―――アチモフ・・・・ネロ・・・瑠霞・・・・。一体何を考えてる・・・?―――
* * *
「やあ、ドラミ・・・ちゃん?」
「え?」
ふいに誰かに自分の名前を呼ばれ、ドラミは俯いていた顔を上げる。
自分を見下ろしているのはいままで会った事のない、知らない人。
黒髪を後ろで束ねていて、まるで科学者のような格好をしている。
男にも見えるけど、女のようだ。
自分を見下ろすその顔は笑っているけれど、黒い瞳は全く笑っていなかった。
―――まるで、実験動物を見る目みたいに―――
「誰・・・?」
震える声でドラミは尋ね、立ち上がる。
「誰かって?」
狭い小さな空間では2人の間はほんの少ししかなかった。
その間をさらに詰めて女はドラミに迫る。
じりっとドラミは後ずさりするが、すぐに壁に背中がついた。
「私は瑠霞。お前の主人だよ。」
「主人?どういうこ――っ!」
と、とは続かなかった。
急に視界が暗くなり、ドラミはその場に崩れ落ちた。
満足そうに笑う瑠霞の手には何かの機械を操作するような四角い物が。
瑠霞は意識を失ったドラミを見下ろして怪しげな笑みを浮かべた。
「―――感謝して欲しいものだな。お前は、これから私の役に立てるのだから・・・。」
そう言うと、どこでもドアを取り出し、ドラミを抱えドアの向こうへと消えていった―――。
* * *
「これからどうしましょう・・?」
王ドラが腕を組み、ぼやく。
キッドは半分イラつくような口調で王ドラに答える。
「どうしましょうって・・・。どうすんだ?行くとこねぇじゃん。」
「僕眠くなってきたよぉ〜。」
ドラリーニョがあくびをしながら言う。
確かに外は真っ暗で、本来ならもう寝ているはずだった。
しかし。
「そうは言っても、ここはいつ何があるか分からないであ〜るよ?寝てる場合ではないであ〜る。」
「でも〜。」
ドラリーニョがぐずりだす。そこで、どらえもんが何かの道具を取り出した。
珍しく一発で出たようで、嬉しそうにしながらその道具の名前を言う。
「じゃ〜ん!眠くならない薬〜。」
「眠くならない薬・・・?」
その言葉にいち早く反応したのはマタドーラだった。
彼の楽しみはシエスタ。つまり寝る事。「眠くならなくなって寝る事をしない」なんて事は彼にとっては最も嫌な事に違いない。
怪訝そうにドラえもんの持つ薬を見る。
だが王ドラが明るい顔をして言った。
「なるほど!それがありましたね!みんな、これを飲んで下さい。これを飲めば眠くならないですし、疲れもあまり出ませんよ。」
「俺は反た・・ぃ・・っ?!!」
マタドーラは文句を言おうとしたが、不意打ちで王ドラに口の中に薬を押し込まれ、無理矢理飲まされてしまった。
当然王ドラに食って掛かろうとするが、あっけなく足払いをされ派手にこけた。
「さあ、みんなも飲みましょう。」
何事もなかったように笑顔で王ドラはみんなに呼びかける。
反対する者は1人もなく、みんな静かに薬を飲んだ。
飲み込んでから、キッドが小さくつぶやく。
「ドラニコフ・・・。目、覚めねぇな。」
「うん・・・。」
ドラえもんは小さくうなづく。
――ドラニコフ・・・。大丈夫かな・・・?
王ドラが静かに言った。
「もう少しで覚めるでしょう。待つしかありませんよ。・・・私達には。」
「・・・だな。」
マタドーラも同意する。
俺たちには・・・。待つ事と祈る事しか・・・出来ないな・・。
すごく・・・辛い事だけれど―――。
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