盲点
「博士、ついに瞬間移動装置が完成しましたね」
「ああ。私が生きているうちに完璧な物を作れたことは奇跡に近いよ」
「動物実験は成功。動物は今も元気にやってますよ。特に病気も見られません」
助手はケージのハツカネズミを見た。
「次はいよいよ人体での試運転ですね。博士、私にその大役を任せていただけないでしょうか」
「いや、私にやらせてくれ。私はこの研究に人生を捧げてきた。瞬間移動を初めて成し遂げた人間として名を残したい」
「分かりました。それでは、どこに瞬間移動しましょう」
「この近くに公園がある。そこに瞬間移動しよう」
「はい。それでは、お気をつけて」
助手に見送られ、博士は瞬間移動装置を起動させると眩い光に包まれて助手の前から姿を消した。
瞬間移動は確かに成功した。
しかし、助手はここで初めて装置の欠陥に気付いた。
「しまった……ネズミにも服を着せるべきだった」
助手は先程まで着ていた白衣を見ながら、遠くから聞こえる女性の悲鳴を聞きつつ頭を抱えた。