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インター!─ルドプスを埋葬せよ─ 作者:倉永さな

  *二章 盗まれた死体

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04

 ミツルはラディクが部屋にいないことに気がつき、ベルジィとアグリスに視線を向けた。

「それでおまえたち。ラディクを見なかったか」

 ミツルの質問に、ベルジィは少し呆れた表情を浮かべ、ミツルを見た。

「アニキ、拾われたオレたちがいうことではないかもしれないけれど、むやみやたらになんでも拾うのは止めた方がいいと思うんだが」
「……そこにいるユアンも、ミチもノアも拾ってきた」
「なるほど、アニキの趣味は拾いもの、と。だからって昨日、拾い食いして倒れるんですよ」
「あのな」

 断じて拾い食いなんてしていないのに、そう言われてしまうのは大変不本意だが、助けてもらった手前、あまり強く言えない立場である。
 ラディクの行方をもう一度訊ねようとしたところ、扉が開いた。

「ラディクなら、疲れていたみたいだから部屋で休むようにさせたわ。あと、怪我もしていたから手当てもしておいたわよ」

 そう言いながら入室してきたのはミチ。その後ろからノアも入ってきた。

「あの子、インターとは思えないほど純真ね」
「インターだと分かっていてもずっと両親の元で育ったからな、俺たちみたいにひねくれてない」
「ミツル、ひどいわ! 私はあなたみたいにひねくれてないわよ」
「なに言ってるんだ。口は悪いし、腹黒だし、どこがひねてないんだ」
「ミツルには負けるわ」

 ミツルは言い返したかったが、今はそれどころではないことに気がついたので真面目な表情をして、部屋にいる者たちに視線を向けた。ミチもすぐに空気を読み、口を閉じた。

「全員そろってるな」
「はい」
「改めて報告しよう」

 まずはミツルがコロナリア村でイルメラと合流して、ミツルはシニクスへ、イルメラはリティラへと行き、両方の村で死体を盗まれた。ミツルはシニクスからリティラへと向かって再度、イルメラと合流してラディクと会い、ここに連れてくることになったところまで話した。
 そして次にオフィキナリスに派遣させたノアから話を聞くと、ノアが村に到着したときには死体が盗まれた後だったという。

「死体が盗まれる……ねぇ」

 死体を盗んで一体なにをするつもりなのか皆目見当がつかないため、狂っているとしか思えない。

「こうなったらサングイソルバまで行くか」
「……は?」
「死体を盗んでいった筆頭は、耳障りな妙に甲高い声のガキだったんだろう?」
「そう聞いています」
「そいつは俺が知る限りでは一人しかいないし、そんなヤツが複数人いるとは思えないし、思いたくない。盗んで行った犯人はサングイソルバの自警団の団長だ」
「自警団の団長……ですか」
「そう名乗っていた」

 ミツルの言葉にユアンは唇を噛みしめると、あごを掻いた。

「ミツル、あなたに以前、サングイソルバに近寄らないように忠告をしたと思うのですが、内容を覚えていますか」
「インターにとって危険な町だから近づくな、ということしか覚えていないんだが」
「どうして危険なのか説明したのですが……まあ、危険な町であるということだけでも覚えていたのは奇跡でしょうか」
「おい」
「よりによって、あの町にインターではない人とともに宿泊をしようなんて……まあ、だからこそ、そこの二人を拾ってくることになったんでしょうけど」

 ユアンは大きくため息を吐くと、ベルジィとアグリスをじろりと睨んだ。
 ユアンの言葉に、ナユがサングイソルバで誘拐された事件はなかったものになっていないようだと気がつき、ここでもまた、綻びを見つけることができて内心でにやりとした。
 鈍色の男はどういう手段を使ったかはともかくとして、ナユは元々存在していないというところしか記憶をいじっていないようだ。だからナユが元で起こった事件や出会いなどはなかったことにはなっておらず、こうして<ナユは存在している>という証拠が少しずつ浮かび上がってくる。

「サングイソルバも少し前までは他の町と同じく、人が死んだらインターを探して埋葬させていたのです」

 ユアンの言葉に、ベルジィとアグリスは大きくうなずいた。

「オレたちは三年前の流行病のときにインターだと分かって村から追い出され、行き場所がなくて放浪しているうちにアグリスと会って、それから他のヤツらとも会い、気がついたら十人になっていた。それだけの集団になれば大きな町でないとやっていけないからと、流れ流れてサングイソルバにたどり着いた。それがたぶん二年くらい前だ。そのときは取り立てて変わりのない、普通の町だった」

 おかしくなったのは一年くらい前からです、とアグリスがベルジィの言葉を引き継いだ。

「王都に近い大きな町ということと、商業の要所ということもあって人の出入りの激しい町でして、揉めごとも多いために自警団が昔からありました。おれたちの仲間が何度か自警団にお世話になることもありまして……へへへ」
「そこ、笑うところか」
「あ……はい、すみません……」

 ミツルのつっこみに、アグリスは引きつった笑いを返し、それから咳払いをすると続けた。ベルジィに比べると気が弱そうに見えるが、荒事を続けてきただけあり、意外にも肝は据わっているのかもしれない。

「ま、おれたちがやるのはけちくさいことばっかりだったのもあり、自警団も『またおまえらか』くらいでお目こぼししてくれていました」
「……自警団の意味、なくないか、それ」
「アニキ、それをいったら元も子も……」
「自警団員に袖の下でも渡していたのか?」
「いえいえ、そんなことはしていませんよ! おれたち、その日暮らしをしているような状況ですよ。そんな余裕はどこにもないです。規模に対して自警団員が足りていなかったので、おれたちは見て見ぬフリをされていたというのが正解です、はい」

 以前からサングイソルバは問題を抱えた町であったというのは今の二人の発言から分かったが、それはどこの村、町でも抱えているとりたてて珍しくないものだった。

「そんな感じでゆるーい関係が続いていたのですが、およそ一年前くらいにどこからかあの甲高い声の見た目はガキの男が現れたんです」
「それまで団長をやっていた男は忽然と消え、あのクソ生意気なガキが引き継いだといって、それからあの町はおかしくなった」

 前の団長が消えたという言葉に二人以外は眉間にしわを寄せ、顔を見合わせた。自警団の団長をしているくらいの人物であれば、本人がなにも言わずに姿を消したばかりではなく、見ず知らずの怪しげな人物に団長職を譲るとは思えなかった。そこになにかありそうだと思ったが、決め手はない。

「あの見た目と耳障りな声ですから、自警団員は最初、相当反発したようです」
「それは自警団員から聞いたのか」
「ええ。おれたちはならず者だから表立っては仲良くしていなかったけれど、サングイソルバに出稼ぎに来ていたために助かったけれど、流行病で村がなくなったという自警団員がいて、おれたちの身の上を同情してよくしてくれる人がいた」
「……ぐだぐだだな」
「あははは」
「ま、そんなこんなでオレたちは悪いこともしていたけれど、自警団の人手のなさも知っていたから、ちょっとした揉めごとくらいなら仲裁していたんだぞ」

 とベルジィは胸を張っていたが、それはきっと……。

「解決してやるから金を出せ、とやっていた、と」
「あははは」

 それで解決するのならいいと自警団も目を瞑っていた部分があるのだろう。だからこそベルジィとアグリスたちならず者は捕まらずにいた。

「ま、持ちつ持たれつ、っすよ」
「そういうことにしておいてやろう」

 ミツルの白い目にベルジィとアグリスはきひひと変な笑いで誤魔化した。










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