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インター!─ルドプスを埋葬せよ─ 作者:倉永さな

三部*一章 消えたナユ

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06

     *

 イルメラもミツルと同じように村の手前で円匙を背負っているのを確認して、それからフードを目深に被った。髪の毛もきちんと中に入っているのかを確認して、村へと向かう。
 とそこに、ミツルが向かったシニクスと同じように村人が村の入口に立っていて、インターの訪れを今か今かと待ちかまえているようだった。
 そして彼らがインターだと認識しているいかにもな格好をしたイルメラを見つけ、大声で叫んだ。

「あんた、おれたちが呼んだインターか?」

 村人の問いにイルメラは小さくうなずくと、そう問いかけた村人は慌てて駆け寄ってきた。

「なんか今、ヤバいのが来てるから、あんたはこっちに隠れておいた方がいい」

 そう言って村人は村の外をぐるりと回って村はずれにある小屋へと案内してくれた。

「呼んでおいてなんだが、ちょっとここに隠れて・・・おいてくれないか。鍵はかけないが、もし必要ならば、中から掛けてくれ」

 村人はそれだけ言うと、小屋を出ていった。村人が言ったとおり、鍵は掛けられなかった。
 小屋の中は閑散としていて、椅子さえない。出入りするためだけど扉が一つだけあり、窓はない。物が置かれていないということはここは物置ではないようだ。なにもないし村の外ということは、ここはもしかしたら隔離するための場所なのかもしれない。それでも掃除は定期的にされているのか、多少の埃はあるものの、不潔な感じも嫌な匂いもしない。イルメラは言われるがままに素直にここについてきたけれど、なんだというのだろう。
 訳が分からなかったが、村人に敵意は感じなかったし、誘き出してなにかしようといった感じでもない。
 しばらくここで外の様子をうかがってから判断しようとイルメラは耳を澄ましていたのだが、どうにも村の中が騒がしい。
 村で人が亡くなったとき、独特のざわつきというのはあるけれど、それはこんなに騒がしい感じではない。これはどちらかというと、少し前にコロナリア村で動く死体とルドプスが発生したときのような騒ぎだった。
 もしもそうならば、イルメラはここにいるのではなく、事実を確認して、本部に連絡を取って指示を仰がなければならないのではないだろうか。
 イルメラが確認のために小屋を出ようとしたとき。

「こいつ、インターなのか!」
「止めてっ!」

 聞いたことのない耳にキンと響くいやに甲高い声と、それを制止する声が聞こえてきた。

「部外者のおまえがなにをするんだっ!」
「うるさいっ! 素直に死体を渡せばいいんだよ! インターなんて、死んでしまえ!」

 耳を覆いたくなるような罵声に、イルメラはかつて浴びせられたことのある様々な言葉を思い出し、体がすくんだ。

「なんでおまえにあいつの死体を渡さないといけないんだよ!」
「こんな役立たずなインターに変わってきちんと有効活用してやるって言ってるだろう」
「なに言ってるんだ! 借りていた身体を地の女神に返さなくてはならないのに、なにが有効活用だ!」

 はっきりと聞こえたのはここまでだった。どうやらイルメラがいる小屋から離れていったようだ。
 それにしても、とイルメラは思う。
 あの耳に残る甲高い声が言っていた死体の有効活用とはなんだというのか。
 イルメラはさらに考えようとしたら、村の中で争っているような音がしてきた。小屋の中だと音しか分からず、だからといって外に出て確認するのも怖い。
 わー、ぎゃー、ドタンッ、としばらく音がしていたのだが、急に静かになった。
 そして、扉が叩かれる音。

「中にいます?」

 この声はイルメラをこの小屋に連れてきてくれた人だ。

「……はい」
「せっかくきていただいたのに、死体が盗まれてしまいました」

 死体が盗まれた?
 イルメラは訳が分からなくて、恐る恐る扉に向かい、うっすらと開けて外を見た。
 そこには、イルメラをここに案内した村人と、顔を腫らした少年がうつむいて立っていた。

「しかも死体泥棒に、こいつ、インターだと言って殴られました」

 あまりの出来事にイルメラはどうすればいいのか分からず、そのまま固まった。

     *

 ミツルがリティラに到着したとき、すでに死体が盗まれて、イルメラがちょうど状況説明を受けているところだった。

 ミツルは村の手前でフードを被り、それから円匙を背負いなおした。そして村に入ろうとしたのだが、どうにも村の様子がおかしい。妙にざわついているし、しかも入口に近い家の壁が壊れているのを見つけ、フードの下で眉をひそめた。
 もしかして、死体に土がついて動く死体が発生したか?
 しかし、それにしても妙に静かだ。
 まさか村人全員がすでに動く死体に……?
 ミツルは背負っていた円匙を背中から外し、万が一に備えることにした。
 ミツルはフードを被ったまま円匙を構え、ゆっくりと村へ入っていく。周りを見回しながら、動く死体の気配を探るのだが、まったく感じられない。動く死体は人間のように気配を殺すということはしないから、どこかにいればミツルには分かるのに、まったく感じないのはおかしい。
 ……と思っていたら、建物の角に人影が見えて、ミツルはドキリとした。それは向こうも同じだったようで、びくりと身体を震わせて、止まった。そしてミツルのことを上から下までじっと見た後、口を開いた。

「……おまえ、呼んだインターか?」

 それで目の前の人物が動く死体ではなく生きた人間と分かり、ミツルは肩から力を抜き、円匙を素早く背中に戻した。

「そうだ」
「あぁ……待っていたんだが、一足遅かったな」

 もしかして、別のたまたま近くを通ったインターが地の女神の送った後だったのかと思ったが、村人は違う言葉を口にした。

「死体が盗まれたんだ」
「盗まれた……?」

 シニクスと同じ言葉を告げられ、ミツルはフードの下で顔をしかめた。

「もしかしなくても、妙に甲高い声のガキか?」
「あぁ、そうだ。死体を有効活用してやると言って、オレたちが止めるのを振り払って持って逃げた」

 またもやここでも死体が盗まれてしまった。

「それと、この村にインターがいた」
「え……」

 死体がそばにない限り、自分がインターかどうか分からない。そしてなぜかインターのそばには人の死が付き物だ。だからどこかで自分がインターだと気がつくのだが、とはいえ、可能性は低いが、自分がインターだと気がつかないまま亡くなった人も中にはいるかもしれない。

「その人物は?」
「今、村長と一緒にいる」
「案内してもらってもいいか」

 ミツルのお願いに村人はこくりとうなずき、村の外を指さした。

「外にある小屋に行っている」
「小屋?」

 どうしてそんなところにと思ったが、どうやら案内してくれるようで、村人はミツルの前に立つと歩き始めた。ミツルは素直に後ろについて行く。
 先ほど入ってきた村の出入口から出ると、囲いの周りをぐるりと回ってたどり着いたのは、窓がなさそうな小さな小屋。その小屋の外に二人の男性が立っていて、小屋の中に向かって話をしている様子なのが見えた。

「だれか中にいるのか?」
「……さあ?」

 疑問に思いつつ、二人は近づくと、男性二人はミツルたちに気がついて視線を向けてきた。

「あなたは?」
「本部にインターの出動要請があったから来たんだが、先にもう一人、来てないか」

 ミツルの問いに対して、小屋の中から声がした。

「本部長?」
「中にいるのはイルメラか?」
「はい、そうです」

 事情を知らないミツルはどうしてイルメラが小屋の中にいるのか分からず、小屋の外にいる二人の男性に視線を向けた。フードを被っているから表情は見えないだろうが、だからこそなのか、二人はミツルがなにも言っていないのに、大きく頭を振って否定してきた。

「とととと、閉じこめてませんよ!」
「本部長、それは本当です」

 とは言うが、状況的にどうみても閉じこめているようにしか見えないミツルは首を傾げた。すると顔を腫らした青年……というより少年が前に出てきて両手を広げた。

「父さんは中にいる人が危ないからここに隔離したんだ」
「危ない?」

 そして少年はミツルにだけ聞こえるように声を潜めた。

「おれ、インターだってバレて、あの変なガキに殴られた」

 ミツルは少年の言葉にフードの下で眉をひそめた。










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