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インター!─ルドプスを埋葬せよ─ 作者:倉永さな

  *五章 インターが忌み嫌われる理由

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04

 ユアンはゆっくりと振り返り、ミツル、ミチ、ノア、ベルジィ、アグリスの順に視線を向けた。
 ミツルは予想通りなんにも反応を返さなかったが、ミチは少しだけ身じろぎをし、ノア、ベルジィ、アグリスの三人は目を見開き、身体を強ばらせていた。

「それで、ユアン」
「ミツル、少し待ってもらえますか」
「あ……あぁ?」

 どうしてユアンが制止をしたのか分からないミツルはユアンをいぶかしく思って見たが、ようやく意味が分かった。ノア、ベルジィ、アグリスの三人が固まっていたのだ。そう、まるで動く死体のあの声を浴びせられたかのように。

「なるほど。ミチは私の裸眼を何度か見ているから少しの抵抗で済んでいるのですね」
「なにをやってるんだ?」
「ミツルは規格外なので効かないのは分かってましたが、本当になんともないとは……」
「ワケが分からないんだが」
「分かりました。説明します」

 そういってユアンは三人から視線を外した途端、がくりと床に崩れ落ちた。

「なにしてるんだ、おまえたち」
「アニキはなんともないんすか!」
「あー? なんとも?」
「やっぱりアニキは規格外ですよ!」
「さっきから微妙に馬鹿にされているような気がするんだが」

 眼鏡を掛け直したユアンはミツルに向き直った。

「馬鹿にはしていませんよ」
「してるだろ」
「ところでミツル。あなたは自分以外のインターを見分けられますか?」
「は?」
「ミチは?」
「できないわよ」
「ノアは?」
「できません」
「おまえたち二人は?」
「わかんねーよ」
「ですよね」

 ユアンはなにか確認を取ったようだった。

「私は、相手がインターであるかどうか、分かるんですよ」
「はあ?」

 インターは死体を前にしないと自分さえインターであると認識出来ない。

「ところでミツル。あなたはどうして生まれてすぐにインターだと分かったのですか」
「あ……?」

 言われてみれば、そうだ。
 インターは死体がないとインターだと分からないはずだ。
 それなのにどうして生まれてすぐにインターだと分かった?

「あなたが生まれた後、だれか亡くなりました?」
「いや、分からないが……」
「まあ、それはいいとしましょう」

 ミツルとしては気になるが、今はそれよりも気になることがあった。

「なにせ普段は両親としかいませんでしたからはっきりは分からないのですが、いつからかインターとそうではない人を見分けられることに気がついたんです」
「見分けられるって、見た目で分かるの?」

 ミチの質問に、ユアンは面白そうに笑みを浮かべた。

「ええ、見た目で分かります。そこのミツルは規格外なので除外するとして」
「をい」
「他の人たちはほんのりと黄色い光に包まれているんですよ」
「黄色い……」
「ちなみにミツルは金色で、ちょっとどころかかなり眩しいですね。派手というか」
「なんだそれは」
「それって」

 ミチにはその意味するところが分かったようだった。

「インターの力の強さね?」
「たぶんそうなるかと思います」
「ふーん?」

 ミツルは身体を見下ろしてみたが、そんなものは見えなかった。

「真偽のほどはともかく、さっき、三人が固まっていたのは?」
「あれは一時的にですが、インターの力を封じてみたんです」
「封じる?」
「何度か繰り返していると耐性がついて効かなくなるみたいですけど、封じられるとなぜだか動けなくなるみたいです」
「で、俺に効かなかったのは?」
「何度も言ってるでしょう。あなたは規格外だって」
「わっかんねーなー」

 そう言われても、ミツルにはまったく分からなかった。

「それでですね。誘拐された頃、まだそういった見極める目を持っているのを知らなかったのですが、鈍色の髪の男に会ったとき、妙な光に包まれていて、さらに私の目を見て先ほどの三人と同じような状況になったのですよ」
「なんだと? あの男がインター?」

 そういえば、ミツルに対して若きインターだとかいっていたような気がする。あの男もインター?

「でも、その当時はそんなことは分からなかったのです。なんだかおかしな男だという思いはありましたが、どこがどうおかしいのかまでは分からなかったんです」

 ユアンにそう言われ、ミツルもあの鈍色の男がどこかおかしいと感じたのは同じであったのでうなずいた。

「それで、おかしいと思ったのはどこか分かったか?」

 ミツルの質問に、ユアンは小さく首を振った。

「やはり分からない、か。俺もなにかおかしいとは思ったが、どこがどうおかしいのかまでは分からなかった」
「ただ」
「ただ?」
「ナユを初めて見たとき、妙な気配……というか、あの男と似た違和感があったんです」

 妙な気配といわれてシエルのことかと焦ったが、そうではないとすぐに分かって安堵したが。

「最初、分からなかったんですよ。なにが違和感をもたらしているのか。きれいな子だと思いましたけど、それでは説明しきれないと悩んでいたのですが……。あの男のことを思い出して、似ているな、と」
「似ている……?」

 ミツルは鈍色の男を思い出していたが、碧い瞳が同じくらいとしか認識できなかった。雰囲気はまったく似てないし、きれいすぎる容姿も似てはいなかった。

「いえ、思い出しても見た目もなにも似てないと思うのですが、どうしてでしょうか。なにか似てるのですよ」

 ミツルの訝しげな視線にユアンは言い訳のように口にしたが、ミツルは首を振って否定した。

「あんな胸くそ悪い男とナユを一緒にするな」

 不機嫌になったミツルにユアンは少し笑った後、表情を改めると全員を見回した。

「それで、鈍色の男との最初の出会いは、私が誘拐されたもののなにもされずに帰される、で終わりました」
「最初の出会い?」
「ええ。まだ続きがあるのですよ」

 続きがあるとは思わなかった全員は、ユアンに視線を向けた。

「私たちはバレては追われ、という生活を相変わらず続けていました。私もいい加減、学習すればいいのに、なにかに惹かれるように村や町に近寄り、インターであると分かって追われました」
「意外にも学習能力がなかったんだな」
「ええ、まったくもって我ながら呆れてしまいます」

 落ち着いて分別のある人物であるというのがここにいる全員のユアンの印象であるのだが、違う部分もあるようだ。

「あまり村や町に行くことはなかったのですが、そのうち、たまに黄色い光を纏っている人を見かけるようになったのです。不思議に思って両親に聞いてみても、そんなものは見えない、と。そして、気がついたんです。私の両親の周りにも黄色い光があることに」

 黄色い光のある、なしの差はなにか悩んでいると、たまたま通りかかった村で知ることになったという。

「村に着くと、人が亡くなったということでインターを探しているようだったのです。その頃になると、寄った村や町でインターを探しているというところに行って、地の女神の元へ送って謝礼を受け取るということもやっていたんです」
「ずいぶんと大胆なことをやっていたんだな」
「ええ。定住することを諦めていたというのもありますからね。それに、そのまま死体を放置して動く死体になられると厄介なのはどこの人たちも同じでしたから」

 動く死体が発生してしまうと、自分たちの命も危ない。それならば、インターにお金を払ってでも早いところ地の女神の元へ送ってもらった方がよいという住人たちの思惑もあったようだ。

「それならば、どうしてインターをここまで蔑むのやら」

 ミツルの呟きにユアンはうっすらと笑みを浮かべ、ミツルを見た。

「それにはきちんと理由があるのですよ」
「……理由?」
「ええ。そのことについてもお話しておいた方がよいかと思いますので、もう少し私の昔話に付き合っていただけますか」











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