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インター!─ルドプスを埋葬せよ─ 作者:倉永さな

  *三章 新たな仲間

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05

 ベルジィはミツルの言葉に力なくうつむいた。

「おまえら、止めろ! そんなクズのために罪を犯すな!」

 しかしミツルの声は空しくも届かず、団長の動きを止めた動く死体は腕を振り上げると団長の身体に容赦なく攻撃を加えた。

「ぐぁっ」

 守ることも出来ずにもろに攻撃を受けた団長の身体はその一撃で宙に舞い、後方に吹き飛んだ。

「くそがっ」

 ミツルはなにか武器になりそうなものはないかと周りを見回したが、なにもなかった。
 せめて円匙があれば……と思ってアグリスを見ると、その背には円匙があった。

「おい、アグリス!」

 いきなりミツルに名前を呼ばれたアグリスは驚き、身体を震わせてミツルを見た。

「その背の円匙をよこせ」
「え……?」
「剣でもいいが、あるか?」
「いや、これしかない」

 アグリスは背負っている円匙を降ろすと枯れ葉の上を滑らせてミツルへと円匙を渡した。

「借りるがかなり乱暴に扱うから、無事に返ってくると思うなよ!」

 ミツルはアグリスに叫び、円匙を握ると近くの動く死体に近寄り、円匙の先でかなり強く突いた。蹴りでは倒れなかったが、円匙での攻撃を受けた動く死体はよろけて倒れた。
 ミツルは左手に金色の光を宿すと、動く死体に叩きつけた。動く死体は金色の光に包まれて、一瞬、眩しく光ると弾けて消えた。

「な……んだ、今のはっ」

 アグリスの驚愕の声にベルジィは伏せていた顔を上げた。

「おい、ベルジィ、アグリス。今のが動く死体の対処法だ。おまえら、出来るか?」

 再度の問いかけに、アグリスは首を振った。
 アグリスの知っているインターとはまったく違うミツルに戸惑った。
 アグリスもインターだ。ならず者といっても、人が死ねばインターとしてやるべきことはやってきていた。どうすれば地の女神へ死体を送ることが出来るのかは本能で知っていた。
 それに仲間たちもいて、彼らのインターの力も見てきていた。
 ベルジィもすごいと思っていたが、ミツルは圧倒的に違う。
 あんなに眩い光を出すことは出来ないし、なによりも早すぎるのだ。

「ならいい。俺がやる」

 ミツルはそう言うと円匙を構え直し、近くの動く死体を薙払った。動く死体がぐらりと揺れたところに円匙を翻すと横から打ち付けた。
 どぉっと音を立てて動く死体が倒れ、すかさず金色の光が打ち込まれ、あっという間に消えていく。

「あれ……は」

 ベルジィの掠れ声に、アグリスと同じ思いを抱いてるのが分かった。
 力量差は圧倒的だった。あまりの鮮やかさに二人は動くことが出来ないでいた。
 ミツルは息つく間もなく円匙を握り直すと枯れ葉を蹴り、それらが舞い落ちるまでにもう一体を金色の光に包み込んでいた。
 ここまでで三体、残り五体。
 ミツルはまたもや地面に降り積もった枯れ葉を蹴り、二体まとめて薙ぎ倒した。そして、動く死体はあっという間に金色の光に包まれた。
 残りは三体までになったが、ここで問題が発生した。三体の後ろに倒れていた団長がゆらりと立ち上がったのだ。
 暗くてよく分からないが、肩を大きく上下させて息をしているところ、生きているようだった。殺されていないことに安堵したが、コロナリア村でのカダバーの件を思い出すと油断は出来ない。
 ミツルは近くにいた動く死体に円匙を打ち込むと、動く死体が倒れると同時に、円匙が無情にも二つに割れてしまった。これはもう使えないとミツルは投げ捨てた。
 倒れた動く死体に金色の光をたたき込んだところで、ミツルは少しだけ後退した。
 さすがに立て続けて戦って力を使ったせいで、息が上がってきた。

「おまえたち、あいつをやらないとやられるぞ」

 掠れた甲高い声に、残った動く死体二体が思っているよりも素早く動き、ミツルに迫ってきた。

「アニキ、これを使え!」

 ベルジィは大きく頭を振って今は落ち込んでいる場合ではないと自分に言い聞かせ、背負っていた円匙を抜き取るとアグリスと同じように枯れ葉の上を滑らせてミツルへと渡したのだが、目測を誤ったのか、手前で止まってしまった。
 ミツルは円匙に向かって走り寄って拾おうとしたが、動く死体に追いつかれ、寸でのところで腕を振り下ろされたので身体をひねって攻撃を避けた。すると円匙から遠ざかった。
 枯れ葉の上を転がって円匙に近寄ろうとしたが、動く死体はミツルの動きを先読みしているのか、円匙とミツルの間に入ってきて阻んできた。
 これならば二つに折れた円匙を投げ捨てなければよかったと思ったが、すでに遅い。
 直接、蹴りを入れるのは危険ではあったが、そうするしか今はない。
 じりじりと距離をはかり、出来るだけ手数を少なく倒すにはどうすればいいかと考えていると、視界の端に動く者を見つけた。
 どうやらベルジィとアグリスが加勢に入ってくれたようだ。

「オレたちが後ろから攻撃を加える」
「危ないぞ!」
「分かってる。こいつらの気を引いている間にアニキがまた後ろから攻撃を加えればいい」

 そんな試みを試したことがなかったが、ミツルはうなずきを返した。

「団長の相手は任せてくれ」

 アグリスの声にミツルはこちらも無言でうなずいた。二人の力量はやり合ったことでミツルは知っている。任せられると判断して、ミツルは動く死体越しに見えるベルジィに向き合った。
 動く死体は残り二体。
 円匙はミツルから見て動く死体の向こう側。ベルジィからも少し距離がある。
 拾うことは諦め、蹴りでどうにか乗り切ることにした。
 ベルジィが動く死体の一体に背後から近寄った。思いっきり背中に蹴りを入れた。やはりぐらりとしか動かず、動く死体は素早く振り向いていた。

「今だ!」

 ベルジィが叫ぶ前から動いていたミツルは、ベルジィが動く死体から離れたのを確認して、よろけている動く死体の足下を狙い、さらうようにして蹴りを入れた。
 動く死体はぐらりと揺れ、枯れ葉の上に倒れ込んだ。
 そこにミツルはすかさず金色の光をたたき込んだ。
 あっという間に消える死体を目の前で見たベルジィは目を見開いていた。

「ぼやぼやするなっ! 次!」

 ミツルの叱責にベルジィは弾けたように顔を上げ、残り一体へ目を向けた。
 動く死体と目があったベルジィは生きていたときのことを思い出し、涙が浮かんできたのに気がついていたが、今はそれよりも彼を一刻も早く地の女神の元へ送ることが先決だった。
 直接、自分が送ってやれないことに悲しさを覚えながら、ベルジィはじりじりと横にズレていく。
 枯れ葉の上を様子を見ながら移動していると、足に硬いものが当たった。
 ミツルに向かって渡して届かなかった円匙だった。
 ベルジィは円匙の掘る側を踏みつけると、柄が立ち上がった。ベルジィは握り慣れた円匙を掴むと、思いっきり動く死体に投げつけた。

「アニキっ、円匙!」
「おいっ!」

 動く死体に当たればいいが、外れた場合はかなり辛い。
 予想通り、円匙は動く死体の横を掠っていっただけ。
 しかしそれは、充分に動く死体の怒りを買うことはできたようだった。
 動く死体はベルジィへと向かって動き始めた。
 ミツルは動く死体の後ろに落ちた円匙に向かって走り寄り、掴むと後ろから思いっきり打ち下ろした。
 不意打ちに動く死体はもんどり打つと、枯れ葉の上へと倒れ込んだ。ミツルはそこにすかさず金色の光を打ち込むと、光り輝いて弾けて消えた。
 ようやく、八体もの動く死体を地の女神の元へと送り届けることが出来た。残るは団長のみ。

「さてと。あんたを助けてくれる者はいなくなったぞ?」

 ミツルの凶悪な笑みに、団長はしかし、怯むことなくにらみつけてきた。


 










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