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インター!─ルドプスを埋葬せよ─ 作者:倉永さな

二部*一章 穹(そら)の民

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02

 前を歩いていたはずのナユの足が止まったことに気がついたミツルは、ナユが立っているところまで近づいた。
 今日のナユはクラウディアの新作の灰色がかった青いマントに厚手の下穿き、靴は歩きやすくて汚れが目立たない灰色の革靴を履いていた。日射しがそこそこあるのもあり、フードを被っているから金色の髪の毛は見えない。
 ミツルはいつものマントを羽織り、フードは被っていない。下穿きは動きやすい黒い布でできたものだ。
 二人は今日の朝にインターの本部を発った。前もって乗り合いは利用しないで徒歩で移動というのは伝えてあった。不満そうではあったけど、それに対して文句は言わなかった。
 とはいえ、実際に歩いてみて思ったよりしんどいと思ったのだろう。どうして乗り合いを利用しないのかと言ってきた。
 ミツルが乗り合いを利用しない理由はナユに説明したとおりなのだが、それ以外にもミツルの下心が大いに関係があったのだ。
 本当ならば、貸し切りが良かったのだが、そんな金はない。となると、乗り合いか徒歩の二択。乗り合いは前述の理由により却下。となると、徒歩となる。
 徒歩ならば、周りに人はいるから二人きりとは言えないけれど、乗り合いのような不特定多数の人と長時間狭い中にいるわけではない。周りを気にして話をしなければならないというのもない。
 好感度を上げるのは無理かもしれないけれど、常にそばにいるという印象付けはできる。
 そう思うのならば好感度を上げる努力をすればいいのに、目の前に好物があって真っ先に食べるのが惜しくて最後に食べようとする身としては、簡単にそうするのがもったいないと思ってしまうのだ。ナユからしたらたまったものではないのであるが、ミツルに捕まったのが最後、絡め取られて弄ばれ、骨の髄までしゃぶられることを諦めるしかないだろう。
 それが嫌ならば全力で逃げるしかないが、なによりもミツルはナユ好みの筋肉の持ち主であるのだ。ことあるごとに筋肉に絆されて許しているのだから、逃げることはしないだろう。

「ナユ、どうした?」

 とはいえ、ナユに無理をさせてまで乗り合いを拒否するつもりもなかった。疲れて歩けないと言われても困る。
 だからここらで妥協するかと思ったのだが、どうもナユの様子がおかしい。
 近寄って後ろから少し抱きつくようにして顔をのぞき込むと、ナユは暗い表情をしていた。

「疲れたのか?」

 ミツルの言葉にナユは力なく首を振った。

「それならどうした?」

 ナユが家族のことを思い出して悲しそうな表情をよく浮かべているのをミツルは知っていた。だから今回もそうなのかもしれない。

 ミツルは生まれてすぐにインターと判明したために祖父に預けられたのだが、他のインターたちと違って、細いながらも家族との繋がりが未だにある。
 祖父がインターだったというのもあるが、祖母が出来た人だったようで、家族はインターに対しての拒絶感はそれほど強くない。
 現にミツルがどうにも困って実家に助けを求めたとき、手を差し伸べてくれた。
 そして今回はそのお礼と借りている金の一部の返済を兼ねて、ナユとともに実家へと向かっているのだ。
 とはいえ、正直な話、ミツルは実家が苦手だった。
 両親は未だに健在で、きょうだいもいる。血は繋がっていても、ともに育ってきていないため、他人同然だ。ミツルにとって実家とは、いざとなれば帰る場所があるといった程度の存在だ。いけば邪険にされないが、歓迎もされない。半ば空気のような扱いを受ける。そのことは別に何とも思っていないのだが、実家にはミツルがもっとも苦手とする母がいるのだ。
 少し神経質な人のようで、ミツルを産んだ後、ミツルがインターだったということで精神を病んでいた。今は治ったという話なのだが、ミツルを見ると泣き始め、謝り続けられるのだ。
 そうまで後悔するのなら手放さなければいいのにとミツルは思うのだが、ミツルの家族がミツルを受け入れても、周りがそれを許さなかっただろうから、遅かれ早かれ、ミツルはどこかにやられていただろう。なので祖父の元へ預けられてミツル自身は良かったと思っている。
 ミツルは他のインターに比べればかなりマシだと思っている。だけど疎外される悲しさや淋しさは知っていると思う。
 いくら他人に興味がないといっても、拒絶されるのは話は別だ。
 インターだというだけで輪に入れてもらえないのにはやはり納得しかねる。
 本来ならばインターがいなければ立ちゆかなくなるのだから国がしなければならないのに、なにもしてくれない。
 そんななにもしてくれないものに頼ることも待つこともできなかったミツルは、ガラではないと思いつつも本部を作ることにしたのだ。
 そして作ったのはいいけれど、どうやっていけばいいのかまったく分からず。
 はじめの頃はただ認めてもらいたくて、馬鹿みたいに毎日城に押し掛け、王に繋いでほしいと頼みまくった。
 あまりにも毎日通っていたからか、ある日、摂政だか宰相だかがやってきて話を聞いてくれた。
 それからは驚くほどとんとん拍子に話が進み、各村や町にインターを常駐させることと、そのための推薦状を書いてもらうことの約束を取り付けた。
 とはいっても国の後ろ盾があったとしても、インターが常駐するのは厳しいだろうというのはミツルの読みだった。しかもミツルは自分以外のインターを知らない。
 それに連絡を取ろうにも、インターは放浪していることが多いので、連絡を取るのが激しく困難だった。
 だから国を通じて村や町にインターを常駐させるというお達しと、常駐したいインターの募集をかけた。
 それを見たインターから連絡が来て、ミツルが面会をして確認して……という地道なことを行ってきた。
 後はインターとして要請されればミツルが出動し、そこでミチやユアン、ノアと出会うことになるのだが、それはまた別の話だ。

 ともかく、本部に人員が増え、問題は山積みだったが常駐するインターも増えて、ほんのすこーしインターの地位は向上した……と思う。
 しかし、それでもまだまだインターは忌み嫌われる存在だ。
 次なる手を考えて、もっとインターが生きやすくしていきたいと思いつつも、良策がなく手をこまねいている状況である。
 だから今回のこの実家訪問が少しでも前進できる一歩になればよいとも思っているが、そうそう上手くいくとは思っていない。
 ただ、このところずっと本部と城の往復で行き詰まっていたので息抜きになればいい。
 さらにいえば、実家にナユを同行させてどさくさに紛れて家族に紹介できればともくろんでいた。
 ナユは気がついていないが、シエルは気がついているだろう。しかし、現れる気配がないところをみると、反対はしていないのかもしれない。
 ミツルがナユのことを好きだというのはシエルにはすでに知られてしまっている。最低だとか言われたような気がしないでもないが、止められた様子はなかったので賛同してくれていると思っている。
 そう思ったミツルはあながち間違いではなかったのだが、ミツルは知らなかった。
 シエルがどうしてミツルの側を離れてナユと母のラウラを助けなくてはならないハメになったのか。そして、なんでナユの中にシエルが入り込んでいるのか。
 しかし、ミツルがそのことをこの時点で知っていたとしても、いや、知っていたらきっと、ミツルはますますナユに執着しただろう。
 真実を知った時、ミツルは自分が意外にも潔癖だったことを知ることとなる。
 あまりにも不憫な身の上に、ミツルはナユに固執することとなるのだった。











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