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インター!─ルドプスを埋葬せよ─ 作者:倉永さな

  *四章 真犯人

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※少しグロテスクな表現が出てきます。
 苦手な方はご注意ください。



 どうにも今回の動く死体とルドプスは勝手が違う。

 インターたちは家族から絆を切られてインターとなる。
 どんなに仲のよい家族でもそれは同じで、インターの力があるというだけで爪弾きにされてしまう。
 そんな家族しか見てこなかったミツルには、ヒユカ家が奇異に映ってしまう。
 たぶん全員が馬鹿がつくほど真面目なのだろう。……ナユを除いて。
 そして働くことが好きで、木こりであることを誇りに思い、金がなくて苦しくても、相手を思いやれるだけの心の余裕を持っていたのだろう。
 そんな男を四人もこの村は一気に失ってしまったのか。惜しい男たちを亡くした……。

 ヒユカ家跡地に残っていた気配をたどると、森に入っていったのが分かったので、取り留めのないことを考えながら、ミツルは後を追った。
 あまりにも不自然なほどの気配の残り具合に訝しくは思ったが、ほかに手がかりがない以上、素直に追うことしかできなかった。
 森に入ってしばらくいったところで、ざくざくという土を掘る音が聞こえてきた。
 村の人たちには森に近寄らないようにと伝えてあるし、気配からして動く死体とルドプスだろう。
 しかし、どうして土を掘る音がするのだろうか。
 その疑問は、すぐに答えが出た。
 昨夜から今日の昼までの雨のせいで木がかなり生長していたのだが、その中でもひときわ高くて太くて立派な木の周りに動く死体とルドプスがいて、円匙で地面を掘っていたのだ。
 その光景を見て、ミツルは唖然とした。
 普通は死んだらそこまでである。
 だけどこの国では、死んだ後に土に触れると動く死体になってしまう。とはいえ、動く死体になるなんてのは珍しくて、仮にその珍しい状態になったとしても、破壊衝動のみしか備わっていないため、動くものを見つけて命を奪っていく。
 それなのに目の前の四体は生前と同じように円匙で地面を掘り、木を倒そうとしている。それが制御できない破壊衝動を抑えるためだとしても、そんな理性は持ち合わせていないはずだ。
 こいつら、おかしいのか?
 ミツルはそんな疑問を抱きつつ、これは絶好の機会ではないかと隙をうかがうことにした。
 しばらく見ていたが、隙どころか息つく間もなく次から次へと木を倒していくのだ。
 なんだか拍子抜けした。
 このままずっと身体が朽ちゆくまで掘り続けるだけなのなら、放置でいいのではないかなんて思い始めた頃。
 ミツルがいる反対側から、つまりは森の奥からゆらりと四体とは別のなにかが近寄ってきた。
 遠目で最初は分からなかったが、あれは行方が分からなくなっていたカダバーではないだろうか。
 しかし左肩口を押さえながらふらふら歩いている姿はなんだか変だ。
 カダバーは四体に近づくと辺りを見回した。

「まだこれだけしか倒せてないのか」

 聞いたことのない厳しい声にミツルは眉間にしわを寄せた。

「せっかく不死の身体を手に入れたのに、もっと気張れ」

 そう言ってカダバーはアヒムだった身体に近寄り、頬を叩いた。粘着質な音がして、皮膚がめくれたのがミツルがいるところからもはっきり見えた。
 あまりの出来事にミツルは口を覆った。
 インターは死体を見慣れてはいるが、それはたいてい、死んですぐから経っていても一日程度だ。しかも死体に触れることはない。
 それにしても、なにかがおかしいとミツルの頭の中で警鐘が鳴り響く。
 アヒムが死んだのがほぼ一日前。動かない普通の死体ならば硬直状態が最大になる時間となる。
 しかし今回は動く死体となってしまっている。
 そもそも、動く死体の仕組みというのがどうなっているのかというと、そこは研究をしている人がいないので詳しくは分からないが、無理矢理死体を動かしている状況になるということだけは明らかだ。
 普通は緩慢な動きしか出来ない動く死体だが、この四体は生前と変わらない動きをしている。
 しかもナユがしきりに筋肉、筋肉と言っているとおり、彼らの身体は筋肉の固まりだ。そして、筋肉が多いほど死後硬直の開始は早い。
 それを動かしているのだから、死後硬直をすっ飛ばして緩解が始まっているのだろうか。それとも死んだ直後に動く死体になったから、死後硬直が始まっていないのだろうか。
 だとすれば腐敗が始まるのは早いような気がするが、そのあたりはどうなのだろうか。

 カダバーは手のひらについてきたアヒムの皮膚を見て、目を見開いた後、身体を震わせた。

「きさま……!」

 カダバーは狂ったようにアヒムの皮膚が張り付いた手を振ったが、それは取れるどころか、ますます指に絡まり付いた。

「こんな汚いものを……! このっ!」

 カダバーはそういうとアヒムの服に手を擦り付けた。雨に濡れた後に乾かしてないため、水分を多大に含んだ服は水っぽい音を立てていた。
 カダバーは必死になって張り付いた皮膚をとろうとしていた。
 とそこで、おかしなことに気がついた。
 カダバーはどう見ても生きている人間にしか見えない。しかし、四体は襲うどころか大人しく従っていた。

「くそっ! 取れないし、肩は痛いし、さんざんだ! いいか、おまえたち。さぼっていたら赦さないからな!」

 カダバーは鼻息荒くそれだけ告げると、気持ちが悪いだとか悪態を吐きながら来た道を戻っていた。
 こちらに来たらどうしようかと思っていたのでミツルはほっとした。

 それにしても、なにかおかしい。
 これは戻ってユアンに相談しようと動いた瞬間、地面に落ちていた枝が折れた音が響いた。
 雨で濡れていたはずなのにと思ったのも束の間、四体が一斉にミツルへと向かった。

     *

 それからは早かった。
 ミツルはきびすを返すと地面を蹴り、四体とは反対方向へと走った。
 後ろから追いかけてくる気配はあったが、恐ろしくて振り向けない。
 こんなに素早く動く動く死体、それも四体なんて勘弁してくれと思いながら、全速力で走った。
 森が途切れて飛び出したところはちょうどインターの待機所だった。
 雨のせいで木が生えてきて、かなり森の範囲が広がっているようだった。
 本当にこの国の植物の生長速度は恐ろしい。木を切り続けないとこうやって森の木が人の住む場所を浸食していくのだ。
 振り返ると、四体はこちらに背中を向けて森の中へと戻っていくところだった。
 どうにもおかしい。
 どうして彼らは森から出ない?

 後ろ姿を見送りながら息を整えていると、待機所内からノアが出てきた。

「あれ、本部長?」

 まさか外にいると思っていなかったミツルがいたことにノアは驚いていたが、嬉しそうに笑みを浮かべた。

「探しに行こうと思っていたんです」
「俺をか?」
「はい」

 なにか進展でもあったのだろうかと思ったが、ノアの様子はそんな感じではなかった。
 待機所に戻るとイルメラもいて、お茶を出してくれた。
 ミツルはお茶を飲みながら、ユアンとノアに先ほどのことを話した。
 イルメラは控えめに後ろにいて、ミツルの話を聞いていた。

「イルメラ」

 ミツルの話を聞き終わったユアンはイルメラを呼んだ。

「カダバーと村の人たちの関係はどうだ」
「カダバーと村人ですか」
「そうだ。どうも彼だけこの村の人たちと質が違うような気がするんだ」











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