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インター!─ルドプスを埋葬せよ─ 作者:倉永さな

  *二章 インターとは

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07

 バルドがミツルとの密談を終えた頃。
 カールとクルトがそろそろ戻ってくるからとナユは用意してもらった部屋で待つことにしたのだが、なかなか戻ってこない。バルドは村の人たちと話すと言っていたからまだ戻ってこないのは分かったのだが、二人はバルドより先に出たのに、なにをしているのだろう。
 神経は高ぶってはいたがさすがに疲れたから眠れなくてもせめて身体だけでも休めたいのに、寝具がないからナユは横になれないでいた。
 だれかがいればおしゃべりでもして気を紛らわすことが出来るのだが、部屋にはナユ一人。

「遅いっ!」

 と文句を口にしたが、当たり前だが返事はない。
 カールとクルトはなにをしているのだろうか。
 様子を見に行きたかったが、しかしここがどこだかナユは思い出して怖くなり、あきらめた。
 しかし、部屋に一人だと心細すぎて嫌だった。
 だから部屋を出ようと扉に手を掛けたところで、外が騒がしいことに気がついた。
 耳をそばだててみたが、ざわめきしか分からない。
 それならばと扉を開けようとしたところ、勝手に開いた。ナユは驚き、思わず飛び退いた。

「ナユ! おまえは無事か!」

 部屋に飛び込んできたのは、バルドだった。

「無事かって、なにかあったの?」

 強ばった表情のバルドを見て、嫌な予感がよぎった。カールとクルトの帰りが遅いことに関連しているのかもしれない。

「ナユが無事なら、それでいい。……おまえは絶対にここから出るな。いいな?」

 バルドはそれだけ言うと、扉を閉めようとした。
 ナユは嫌な予感を確かめずにいられなかった。

「カール兄さんとクルト兄さんは」

 ナユの問いに、バルドの表情がますます強ばった。

「二人は……」
「動く死体になった」

 バルドの後ろからミツルの冷徹な声が聞こえてきた。

「ルドプスにやられた……と、カダバーが言っている」
「う……そよ!」

 ナユは部屋から飛び出そうとしたが、バルドに遮られた。

「バルド兄さんっ!」
「ダメだ、ナユ。おまえはここにいろ」
「でもっ!」
「おまえも動く死体になりたいか?」
「っ!」
「村の人たちには外出するなと言ってある。おまえたちも出てくるな」

 ミツルはそう言って、バルドも部屋へと押し入れようとした。しかしバルドは抵抗した。

「オレも手伝う」
「素人が出てきても邪魔になるだけだ」
「だけどっ!」
「本部に待機しているインターを呼び寄せた。おまえたちはここでおとなしく……って、待て!」

 バルドとミツルが押し問答をしている隙をつき、ナユは隙間から抜け出した。

「ミツルの嘘つき! あんたの手なんて借りないんだからっ!」
「待て! 動く死体になりたいのか!」
「ならないわよ!」

 その根拠のない自信はどこから来るんだとツッコミをしようとしたのだが、ナユに気を取られて力が緩んだからか、バルドもミツルの脇を抜けた。

「おまえら待てっ!」

 ミツルの制止の声を聞くことなく、バルドも走り去ってしまった。

「くそっ」

 動く死体ならまだしも、ルドプスになった上に仲間を作ってしまった。
 一番危惧していた事態となってしまった。
 こうなってしまったらミツル一人では手に負えない。
 幸いなことにコロナリア村は本部から近い。しかも今日は人がいてくれた。
 ユアンとミチ、そして新人で少し心許ないが対動く死体に精通しているノアが来るという。それまでにこれ以上の犠牲者を出さないようにしなくてはならない。
 それにしても、とミツルは拳を握りしめた。
 村にはルドプスの気配を感じなかったから森に入らなければ大丈夫だと思っていたのだが、間違っていたのだろうか。
 念のためにと村人には家から出るなと伝えたが、今も森にしか気配がない。
 カールとクルトは森の側にあるヒユカ家に荷物を取りに戻った。確かにあそこは森の近くだが、ルドプスがあの辺りにいた気配をまるで感じなかったのだ。
 なにかがおかしいのだが、具体的になにがどうというのが分からない。
 動く死体は動かない死体が土に触れることで発生する。
 ミツルが村に到着したのは暗くなってからだったが、ミツルが見て回った範囲では土が露出している場所があるようには見えなかった。
 さすがにルドプスがいる森には入れなかったが、あの中も土がむき出しになっている場所があるとは思えなかった。
 ……いや、違う。

 動く死体は森の中で発生・・したのだ。

 さらに森の側にあるヒユカ家に行った二人がさらにそこで動く死体となった。

「まずいっ!」

 どうしてヒユカ家を見たときにもっと周りを見なかったのだ。
 家が壊れているのを見て、ルドプスが壊したと推定したのにどうしてもっと周りを探索しなかったのか。
 ナユが引き受けないとかたくなに拒否していたが、そんなものは二の次にするべきだったのだ。
 インターを商売にしようとしたのがそもそも間違っていたのだ。
 ユアンと違い、そういうのは苦手にもかかわらず、強固な姿勢を貫き通した結果がこれだ。

「くそっ」

 ミツルは苛立ちを扉へとぶつけた。がたんと待機所全体が揺るぐほどだった。

「ミツル、こんなところにいたのですね」

 その声にミツルはゆるりと顔を上げた。

「ユアン……」

 本部から呼び寄せたユアンたちがコロナリア村へと到着したようだった。

「今から対策を練りますから、情報を提供してください」
「……分かった」

 そうだ。
 今は後悔しているときではない。
 ルドプス一体、動く死体二体の計三体を埋葬しなくてはならないのだから。

 ミツルはさらに顔を上げ、ユアンに視線を向けた。

「ミチとノアは?」
「イルメラと共にあなたが来るのを待っています」
「分かった」

 ユアンが歩き出したのを見て、ミツルもその後へと続いた。

     *

 待機所を飛び出したナユとバルド。 
ナユは広場に向かって走っていたはずなのに、なぜか村外れにやってきていた。バルドが追いかけてきていたはずだからと振り返っても、そこはぽっかりと闇が広がっているだけ。

「バルド兄さん……?」

 と呼びかけても、返事はない。
 ナユが動きを止めると、静寂が訪れた。
 いつもなら聞こえる風の音や森のざわめき、動物の鳴き声、人の話し声……そんなものがまったく聞こえない。
 考えてみれば、祭りなどの特別な日以外に日が落ちてから外出することはなかった。しかもそういう特別な日は煌々と明かりが焚かれ、昼間のような様相になっていた。
 だけど今は、ミツルが家にいるようにと通達を出したみたいだし、かなり夜も更けてきていた。
 明かりもケモノの気配さえなくて当たり前かもしれない。
 そうなると、ナユはこの世界にたった一人になったような錯覚に陥った。

 ナユの側にはいつだってだれかしらの気配があった。
 実家にいればにぎやかを通り越してうるさいくらいだったし、城下町で暮らすようになってからはクラウディアと寝食を共にしていた。
 一人になる、という場面が全くなかったというわけではなかったが、一人の時でもどこかにだれかの気配が残っていた。
 だけど今、ここにはナユ以外の生き物の気配を感じない。
 それがどれだけ淋しくて、悲しいことか、ナユは初めて知った。
 孤独というのはなんと辛いのだろう。
 息をするのも苦しいように感じてしまう。
 ナユは深呼吸をしたいと感じたがなんだかそうするのが恐ろしくて、一気に吸い込みたいのを我慢して、ゆっくりと息を吸い、ゆっくりと吐き出した。
 そうすると少し落ち着いてきた。
 なにも考えないで待機所を飛び出してきてしまったけど、ナユはなにをするべきか。いや、なにをしなければならないのか。
 少し冷静に考えられるようになったような気がした。











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