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3:次は俺の出番か
 同じ体系に同じ黒い姿。場所を入れ替わり立ち代りで走り出したら、傍目には誰が誰だか分からなくなってくる。

 だが、役割分担はきちんとされているようで、手榴弾を投げるのはいつもアルで、必ずあとの二人を兄貴と呼ぶ。

 手榴弾は玄関も壊し、三人に立ち(はばか)る扉をも壊していく。

 中は廊下と壁と扉だけで表札も何も無い。

 ビルの警報装置が作動し、警報音を聞いた警備員が走り出す。

 三人の男は、エレベーターを無視して通り過ぎ、その先にある階段を上って行く。

 途中、出会った警備員を殴り倒して気絶させ部屋に連れ込み、警備員の服を()ぎ取って着替える。

 目出し帽を取り警備帽を被れば、ロイとベンとアルは立派な警備員に見えてくるから不思議だ。

 ゴーグルを隠して警備員に紛れて移動すれば、追われる事もなくなる。

 目的地の見取り図は頭の中に叩き込んである。

 三人の男は平然とした様子で目的地の部屋に到着した。

 アルが目の前の扉に触り、ポケットから取り出したカード型の機械を扉に宛てがって言う。

「兄貴、この扉は俺の手榴弾でも無理だ」

「だったら、次は俺の出番か」

 ベンはポケットからハンドライトを取り出す。

 スイッチを入れて、ゆっくりとメモリを回していくと、ライトの光が白から赤に変わっていく。

 赤い光は扉を照らし、もう一つのスイッチを押せば赤い光は細い光線となり、光線は扉の上を這って動き、扉に切れ込みが入っていく。

 赤い光線が1周して最初の切れ込み跡にたどり着いた時、扉はズレてから床に倒れた。

 三人の男は扉の中に入って行く。

 その奥にまた扉があるが、三人は入ってすぐに立ち止まった。床にラインが引いてあるようにきちんと整列をする。

 右端のロイが胸ポケットからタバコを出して口にくわえて言う。

「赤外線トラップだ」

 三人のゴーグルには無数に張り巡らされた赤外線が見えているようだ。

 真ん中のベンがハンドライトの赤い光りを照射してロイのタバコに火をつける。

「赤外線に触れると、更にでかい警報音が鳴るか、俺たちが死ぬか」

 左端のアルが言う。

「ここまで来て、死ぬのはゴメンですぜ」

 アルが左端に立つのは決まっているようだ。

 ロイは煙をゆっくりと吐き出す。

 揺れる煙に赤外線が映り、網目状に張り巡らされている赤外線も揺れ動いているように見える。

 煙が薄くなり赤外線が見えなくなった時、ロイはタバコを前に投げ捨てた。

 瞬間、閃光が目の前を走り、タバコはあっという間に燃え尽きる。

 赤外線センサーが物体を感知すると、壁の光線銃が顔を出して瞬時に感知した場所を特定し、光線が撃ち込まれる仕組みのようだ。

 ベンは口の端を歪めて苦笑した。

「ここのシステムは、タバコ好きのようだ」

 ロイはタバコの箱の中味を見ながら言う。

「それは困った。残り一本しかないから、かわいい()以外は渡したくないんだが」

 アルは体を揺らして言う。苛立っているようだ。

「兄貴、早くして下さいよ。警備員が来たら、まずいっすよ」

 ロイはタバコを懐に入れると、変わりに銃を2丁出した。

「せっかちな男はもてんぞ」

 2丁ともベレッタM92。

 銃は両方とも手入れされていて黒光りしているが、表面の細かい傷が多く目に付く。

 その2丁のベレッタを両手に持ち、まず赤外線の出所に撃ち込んで赤外線システムを壊していく。

 自動システムが作動し光線銃が顔を出せば、撃たれる前に光線銃を撃って破壊していく。

 暫くロイと警備システムとの撃ち合いが続き、勝利したロイは銃を懐に入れからタバコを取り出した。しかし、タバコは吸えない。

 ベンがハンドライトの柄を、ロイの手に載せているからだ。

「ロイ。残り一本のタバコは、仕事を終えてからだ」

「チッ、仕方ねえな」

 ロイは面倒くさそうに舌を鳴らしてからタバコを懐に入れた。

 左端で待っていたアルは、体を揺らしながら足を出して前に進む。

「全く、なんで俺はこんな兄貴たちについてきたんだろう」

 真ん中のベンも歩きながら言う。

「金以外にないだろ、普通」

「そうだ」

 右端のロイも歩きながら言った。

 三人は奥へと入って行く。

 手榴弾では壊せない扉。網目状に赤外線が張り巡らされた通路。下手に歩けば光線銃で狙い撃ちにされる。一体、そんな厳重な警備の奥に何があるというのだろうか。いや、三人がすんなり入れるような場所には何もないのかもしれない。

 三人が歩く通路は一本道。狭くて扉すら見当たらない。

 アルは、胸中の不安を膨らませて、それを隠すようにアタッシュケースを胸に抱いて、おどおどとした表情で言う。

「兄貴。本当にこの先にあるんですかね?」

 ベンは左手をポケットに入れて、ハンドライトを持った右手を前後に振って歩きながら言う。

「あるから行くんだろ」

 狭い通路の先は、吸い込まれそうなくらい真っ暗で何も見えない。だがその闇が、空間の広さを意味している。

 ロイはその闇を見ながら懐の銃に手をかける。

「どうしたんですか、兄貴?」

 ロイは問われても答えない。無言で銃を出す。そして銃を構えてからは言う。目をギラギラとさせて。とても嬉しそうに。

「傭兵の俺が生き残ってきた理由。それは……」

「それは?」

 聞きたがるアルの横で、ベンがハンドライトから細く赤い光を出す。光りが当たった床は焦げてジューと音を出しながら煙を上げる。

「答える必要はないだろ。お前も傭兵なんだから」

「俺さっぱり分からないっすよ。兄貴たちみたいに傭兵長くやってないから」

 ロイは走り出す。闇に向って。

「じゃあ、お前は死ぬだけだ」

 ベンも闇に向って走る。

「これは言葉で言っても分かるもんじゃないからな」

 残されたアルは身震いしながらも小走りで二人の男に続く。

「なんで俺は、あんな二人と組んじまったんだろう」

 前を走る二人の男は不規則に蛇行しながら闇に向って行く。

 闇は静かに二人の男を待ち、男たちが闇に飛び込んだ時、闇の中を無数の光線が飛び交った。
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