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28:女神像
 小型飛行機は一度パキスタンのイスラマバード国際空港で補給をしてイタリアの孤島ガルネオ島へ向った。

 知子と両親は疲れて眠っていたため飛行機が一度着陸した事に気づいていない。それを知っているのは起きていた圭介と智だけ。

 日本からイタリアのガルネオ島まで約12時間。空を移動して小型飛行機はガルネオ島に到着した。

 知子は母に体を揺らされて目を覚ました。

 智と圭介はすでに立っていて知子を見下ろしている。

 母は腰を上げて中腰になり、知子を先に立たせてから立ち上がった。

 飛行機はいつの間にか着陸していて機内の窓から何本かの木が見える。

 トロッキオの子分に誘導されて飛行機を降りると、窓から見えた木の先にコバルトブルーの波を揺らして広がる海が見えた。

 知子は連れられて車に乗る。今度はトロッキオでなく父と母が一緒にいる。

 知子が車の窓から外を見ると、圭介と智が乗り込んだ車にトロッキオが乗り込むのが見えた。

 知子としては両親と車に乗れて安心なのだが、すぐに銃を向けるトロッキオと乗っている王子智とキング圭介が心配で仕方がない。

 車はそんな知子の思いを乗せて走り出した。

 道路はあるが標識も信号も何もない道。その道はずっと先のガルネオ自慢の白い別荘へ続いている。

 途中牧場を通り過ぎる。知子は牧場にいる牛が全てガルネオのものとは知らない。次に通り過ぎる畑も。

 車は10分ほど走りガルネオの別荘に到着した。

 玄関前はロータリーになっていて、ロータリーの中心には噴水があり水を噴き上げている。

 知子の乗る車は玄関に横付けされ、知子は車から降りた。

 玄関前の階段の左右に女神像が立ち、知子を見下ろしている。女神像の表情は優しく、来訪者の知子を歓迎しているように見える。

 知子は白い別荘を見て思う。1階建てのホワイトハウスみたいだと。

 智と圭介も車から降りて、知子の横に並んで立つ。

 トロッキオが後ろから現れて知子たちを通り過ぎて行き、それから背中を押された知子たちがトロッキオのあとに続いて階段を上った。

 トロッキオは扉を開けて中に入る。知子たちも中に入った。

 中はバリアフリーで玄関との段差はない。広い間取りは玄関内というよりエントランスといったほうがいいかもしれない。

 同じ服装の人が数人知子たちとすれ違い、無表情で知子を見ていく。ガルネオに飼われている召使いなのだが、知子にその知識はない。

 知子は自分のパジャマ姿と、靴をはいていない裸足を気にして、召使いと目が合わないように下を俯いて歩いた。

 トロッキオは真っ直ぐ歩いて行き、目の前の扉を開けて入っていく。知子たちも誘導されるがままに歩いてその中に入った。

 明るい部屋。庭が一望できる大きな窓ガラス。壁に沿って置かれた高価そうな棚。棚の中と上には調度品が飾りのように置かれている。

 庭は海まで続いているかと思うほどの芝生が一面に広がり、テラスの近くにある丸いプールには透明な水が静かに揺れていた。

 テーマパークのような家。これが知子の第一印象だった。

 その家主のガルネオはパジャマ姿で大きなテーブルに一人座って朝食を食べている。両手の指全部に大きな宝石がついた指輪をしている。場合によっては一本の指に指輪が3つ填まっていたりする。

 知子たちはそのガルネオの前に一列に並んで立たされた。加藤家は全員パジャマ姿。父と母は靴をはいているが、抱かれて家を連れ出された知子はまだ裸足のまま。智と圭介は黒い服装のままである。

 ガルネオは牛乳がかけられたコーンフレークを口に入れて、唇を牛乳で濡らして白くさせながら知子を見た。

『その娘、写真より幼いな』

 ガルネオはにやつきながら知子を頭の上から足の先まで見ている。

 知子はガルネオの銀色の瞳が怖くて母にしがみついた。しかし、子供の好奇心で怖いもの見たさにガルネオの顔を見てしまう。

 ガルネオは60歳くらいのオヤジだが、丸顔に天然パーマの巻き毛と鼻の下にあるヒゲ面がスーパーマリオに似てなくもない。

 それとは対照的な細面のトロッキオは、ガルネオのコーンフレークが入った器の横に、ベルトに入った金色の銃を置いた。

『ガルネオ様、あの男がこれを持っていました』

『何!』

 ガルネオはトロッキオがさした指の先を見る。その先には智がいた。
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