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神と悪魔と犬と猫。 作者:真木あーと
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第十四節

「むが? むおっ?」
 息苦しさと圧迫感で目が覚めると、目の前に足の裏があった。
 状況を確認すると、ノワールとシェリムは少し離れたところに正座している。
 つまり、あの二人ではない、とすると、消去法で一人しかいない。
「おかえり柚奈。なんなんだよ、どうしたんだよ柚奈?」
 柚奈はにこにこと笑っていた。
 ああ、分かった、これは本当に怒っている時の笑みだ。
 俺も長年柚奈の兄をやってない。
「どうして三人で仲良く寝てたのかな?」
「いや……疲れたからさ……」
「でも、ノワールはお兄ちゃんにキスとかしてたよ?」
「そうなのか、まあ、あいつも空気読めない奴だからな。ま、そういうところが可愛──」

 ドゴォォン!

 にこにこ顔の柚奈が右手を入り口のドアに叩き付け、ドアは吹き飛んだ。
 やばい、本気の目だ。
 俺は、死を覚悟した。
「しょうがないなあ、お兄ちゃんは。でも罰は受けてもらわないとね」
 やばい、悪い予感しかしない。
「三人とも晩御飯抜き」
 柚奈の言い放った罰に、俺は拍子抜けた。
 それだけでいいなら安いものだ。
「で、お兄ちゃんはおちんちん抜き」
「抜き!?」
 俺が驚いた瞬間には既に柚奈は俺のモノを握っていた。
「ひぃっ!」
「じゃ、抜くね?」
「ごめんなさいっ! ごめんなさいっ!」
 何が悪いのか分からないが、俺はとにかく謝った。
 謝らないと俺の男が死んでしまう!
「抜かれたくない?」
「抜かれたくないっ!」
「じゃ、私の後に続いて同じ言葉を喋ってね?」
「え」
 柚奈はにこにこした顔のまま、あと俺の股間を握ったまま、わけのわからないことを言った。
「私、貴大は、二度と柚奈以外の女の子と一緒には寝ません」
 柚奈はいきなりそんなことを言い出した。
 なんだこれ? これを俺にも言えって事か?
 だが、柚奈以外って柚奈はいいってひぃっ!
 股間が強く握られた!
 本当に抜く気だ。
「わ、私、貴大は、二度と柚奈以外の女の子と寝ませんっ!」
「今日の夜は、柚奈と一緒に寝ます」
「ええっ!? ひぃっ!」
 俺が抗議というか、理由を聞こうとすると、また抜かれかけた。
 考えてる暇はない。
「今日の夜は、柚奈と一緒に寝ますっ!」
「一緒に寝たいの? しょうがないなあ、じゃ、今日は一緒に寝てあげる」
 自分が言わせたのに、俺が頼んだかのように答える柚奈。
「そういう事だから、二人は別の部屋で寝てね?」
「は、はいっ!」
「にゃぁ……たかひろと寝たい……」
「ノワールはもう少しおしおきが必要かな?」
「ふぎゃぁっ! ねる! 他で寝る!」
 涙目で悲鳴を上げるノワール。
 一体何をされたんだろう?
「じゃ、私はご飯作って来るから」
 にこにこと笑ったまま、柚奈は出ていた。
「にゃぁぁぁっ! 怖かった! 柚奈こわい!」
 ノワールが震えながら抱き付いてきた。
「何があったんだよ?」
 俺はノワールの頭を撫でてあげながら、シェリムに聞く。
「…………」
 シェリムは泣きそうになって、何も言わなかった。
「ううっ……私、これでも神なのに……」
「神の尊厳に関わるようなこと!?」
 俺にセクハラされるよりもひどい落ち込みようで、なにをされたのかさっぱり分からないし、聞かない方がいいような気がした。
「まあ、野良犬にレイプされたと思って諦めろ」
「そこまでひどくないですよ!?」
 シェリムに抗議された。
 なんだ、大したことないのか。
「そろそろアヴィーラも戻ってくる時間だな。ノワール、もうすぐお別れだ」
「にゃあ……もっと貴大と遊びたい……」
 ノワールにすがるように見つめられるが、俺にはどうすることも出来ない。
「あのね? 今日は貴大と遊べて楽しかった!」
 だが、無理だと悟ったのか、ノワールはさようならの挨拶を始めた。
「そうだな、俺も楽しかったぞ?」
 じゃれついて来るノワールの頭を撫でてやる。
「あのね! 明日はもっと遊ぶの! ずっといちゃいちゃするの!」
「柚奈が許す範囲ならいくらでもしてやるぞ?」
「柚奈こわい! ノワールが泣いてもおしりぺんぺんやめてくれなかった!」
 再び泣きそうになるノワール。
 そうか、尻ひっぱたかれたのか。
 ノワールがされたってことは、シェリムもか?
 俺はシェリムをちらりと見る。
 シェリムは俺に柚奈の罰がばれたのが恥ずかしいのか、顔を真っ赤にしてうつむいている。
 くそっ! 俺はなんで寝てたんだよ!
 シェリムがお尻出してひっぱたかれてるところが見たかった!
 仮にも一応神様が俺の妹に尻をひっぱたかれて屈辱的にうめき声を上げるなんてなかなかないだろ!
「痛かったか? ほら、撫でてやるからな?」
 俺はノワールの尻を優しく撫でてやった。
 シェリムも止めに入らない。
 まあ、胸に顔埋めても止めないんだから当然か。
「にゃぁ……」
 ノワールが気持ちよさそうに俺にすり寄ってくる。
 ノワールの身体は小柄だが、その尻は柔らかく、柔らかい筋肉が適度に心地よかった。
 このままずっといるのも悪くないが、今柚奈に踏み込まれたら、確実に抜かれるから、そろそろ──。
「きゃぁぁぁっ!?」
 悲鳴が胸の中から聞こえる。
 ノワール、いや、アヴィーラが悲鳴を上げたようだ。
「どこ触ってんのよ!」
 アヴィーラは吹き飛ばすタイミングで手を上げる。
 俺も吹き飛ばされることを覚悟した。
「…………?」
 だが、俺はいつまでたっても吹き飛ばされることはなかった。
 不思議に顔を上げると、アヴィーラが不思議そうに自分の手を見ていた。
「どうした?」
「ねえ。あんたあたしに何をしたのよ? まさか一線越えてないでしょうね?」
「いや、そうしてやりたかったのに、シェリムがさせてくれないし、最後には柚奈に抜かれそうになったから、そこまではしてない」
「そう……おかしいわね……あと、お尻がなんだかひりひりするんだけど、本当に何もやってないのよね?」
「それは柚奈がノワールの尻をひっぱたいたんだ」
「……なるほど、通りで」
 アヴィーラが笑う。
 それはいつもの可愛い女の子のそれじゃなく、邪悪な悪魔のそれだった。
「どおりで魔力が満ちてると思ったわ」

 ぼんっ!

 それは、爆発音に近い大きな音だった。
 その一瞬で、アヴィーラの身体が変化した。
 そこにいるのは確かにアヴィーラのはずだが、それはアヴィーラではなかった。
 俺が思い描いていた、典型的な女悪魔。
 女性的魅力が溢れ過ぎて何でも言う事を聞いてしまいそうになるような悪魔だった。
 小柄だった身長は伸び、貧弱だった胸も凶暴なほど大きくなった。
 元のアヴィーラから五歳ほど成長させような姿。
 強烈な圧力を感じるような、身動きするのも恐怖するような、そんな圧倒的な迫力に、こいつが魔王の娘であったことを思い出した。
 この狭い俺の部屋なのに、ドームくらいの大きさに感じるその存在感。
「! おいシェリム!」
「はいっ! 油断しました! セクハラで魔力の充填をしてたのですね!」
「そんなことはどうでもいい! 胸まで負けたぞ! どうするんだ!」
 俺はそう叫ぶように言いながら、目の前のアヴィーラと比べると貧弱に見えるシェリムの胸をわしづかみにした。
「きゃぁぁぁっ! どさくさに紛れて触らないでくださいっ!」
「どさくさになんか紛れてないっ!」
「余計に駄目ですっ!」
「やかましいっ!」
 アヴィーラの怒鳴り声。
 それは声で怒鳴っただけのはずが、俺やシェリムがバランスを崩すほどの圧力があった。
「クックックッ……これだけの魔力があれば、今宵のうちにこの国程度なら征服出来るかのう」
 邪悪な表情で愉快そうにアヴィーラが笑う。
 前は取ってつけたようなそんな口調や表情も。今はしっくりと来る。
「ちょっと待て、魔力の充填って確か、休眠の他には、エロい事をするんだったよな?」
「そうです! だから、猫を自由にさせたんだと思います」
 シェリムが言うが、問題はそこじゃない。
 さっき思った以上に魔力が貯まっていることに、アヴィーラ自身驚いていた。
 その時のやり取りを思い出す。

「そう……おかしいわね……あと、お尻がなんだかひりひりするんだけど、本当に何もやってないのよね?」
「それは柚奈がノワールの尻をひっぱたいたんだ」
「……なるほど、通りで」

 そうか! 分かった!
「アヴィーラは超ドMだっ!」
「ええっ!?」
「尻をひっぱたかれたことで必要以上の魔力が貯まったのがその証拠だ!」
 俺はびし、と、アヴィーラに指を突き立てる。
「五月蠅い、黙れ矮小な存在よ。貴様など、最早我が意の玩具に過ぎぬ」
 アヴィーラが静かにそう言うと、俺の身体に衝撃が走る。
 全身に電気のような痺れが走る。
 な、何だ?
 俺はアヴィーラを見上げていた。
 シェリムも見上げていた。
 立ったまま、俺より身長が低いはずの二人を見上げていたのだ。
「わおん(なあ、一体何したんだよ?)」
 俺は喋ろうとして、何だか犬のように吠える事しか出来なくなっていることに気付いた。
 あれ? 俺の腕ってこんなの毛深かったか?
「貴大さんっ! ……悪魔の人っ! 貴大さんを犬にするなんてあんまりですっ!」
 シェリムの声。
 ああ、俺、犬になったんだ。
「クックックッ……妾はそやつの望みをかなえてやっただけだ。そやつは犬になって元々犬だったあの女に飼われたいと言──」
「きゃぁぁぁぁぁっ!?」
 俺は何の躊躇もなく、シェリムのスカートに潜り込み、思いっきり白い太もも辺りを舐めまわした。
 犬だから舐めるのは仕方ないよな?
「や、やめてくださいっ!」
 シェリムはスカートを押さえるとともに、俺をスカートの中から排除した。
 だが、これで終わりじゃない。
「ふんふんふんふん」
「や……っ! 嗅がないでくださいっ!」
 俺は人間の一万倍と言われる嗅覚で、シェリムの体臭を嗅ぎまわった。
 すげぇぇぇぇっ!
 人間の時より遥かにシェリムを感じる!
 これがシェリムなんだ!
 これがシェリムの匂いなんだ!
 俺はシェリムがスカートを押さえる手の隙を縫って、細い鼻をスカートの中に押し込んでいった。
「やっ! んっ! たすっ! あんっ!」
 シェリムが必死に俺に抵抗する。
 だが、俺の勢いは止まら……。
「本当に仕様のない奴よのう……」
 ずっと尊大な態度をしていたアヴィーラが、心底呆れ果てた顔になった。
 俺の身体は更に衝撃を受ける。
 ん? また何かあったのか?
 まあいいや、シェリムの匂いを嗅ごう。
「ちょっ! 貴大さん!」
「やかましい! ふんふんふん」
「人間にもどってますって!」
「それがどうした! ふんふんふん」
 俺は構わず続けた。
 よく考えたら犬の力はシェリムより弱かったが、人間なら負けやしない。
 シェリムの体中の匂いを嗅いでやる!
「鬱陶しい蠅のような奴よのう。そろそろ大人しくせんと、女の子にしてやるぞ?」
 俺は、その言葉に一瞬手が止まる。
 こんなことを、下にいる柚奈に聞かれたら、間違いなく俺は明日から柚奈の姉になるだろう。
「分かりました、おとなしくします!」
 俺は気をつけの姿勢でそう答えた。
「あの、パンツ返してください……」
 どさくさに紛れて脱がしたシェリムのパンツを握りしめていた俺は、即座にシェリムに返す。
「まったくブレがない雄よのう。だが、考えてみれば、妾の奴隷が雄というのは些か面倒よの。よし、貴様は雌になれ!」

 ぼんっ!

 その一言で俺の身体に三度衝撃が走りる。
「お前、またおれ……」
 俺はアヴィーラに抗議をしようとして、自分の声の高さに驚いて言葉を止める。
「ふむ、可愛くなったではないか、それでこそ我がが奴隷というものだ」
 ちょっと待て、という事は俺、今女になってるのか?
 俺はとりあえず胸に手を当てる。
 そこには固い衣服があった。
 これは、この締め付けは、ブラジャー?
 俺の胸は女の子のように盛り上がっていて、確かにブラジャーがなければ垂れてきて動きにくくなるだろう。
 そうか、ブラジャーって揉まれるのを防ぐために着けてるわけじゃないんだ。
 これで俺も女体理解に一歩近づいた!
 大きな勉強になったな!
 もっと詳しく勉強するか!
「よし、風呂に入ってくる!」
「ちょっと待ってください、何でそう簡単に受け入れてるんですか?」
 シェリムがそんなどうでもいいことを訪ねてくる。
「そりゃ女体に興味を持つのは当たり前だろ?」
「いやだから、あなた今、女性なのですよ?」
「それがどうしたんだ? あ! そうか! じゃ女同士一緒に入るか!」
 俺はシェリムを引っ張って部屋を出ようとする。
「だから! そんな場合じゃないですってば!」
 少しいらいらしているシェリムに引き戻される。
 男の時は強引に引っ張ったり担いで行けたり出来たが、この身体ではシェリムに引かれてふらつくくらい筋力がない。
「戯言はそれ位にしておけ。奴隷、日本を征服に行くぞ」
「え? な、なんだこれ……?」
 俺は何かの力で連れ戻された。
 連れ戻された、というか、傍から見ていれば俺が自分から戻ったようにしか見えないだろう。
「まずは妾にひれ伏せ」
 アヴィーラが言うと、俺は自分では望みもしていないのに、頭を床にこすり付けていた。
 しかも今の俺、女の子でそこそこミニスカだから、アヴィーラからは見えないが、シェリムからは丸見えだろう。
「くっ……アヴィーラの癖になまい……いでててっ!」
 アヴィーラは魔法を使うまでもないと、俺の髪の毛を引っ張る。
 いつの間にかショートボブくらいまで伸びていた髪はつかみやすく、俺は右に左に強い力で髪を引っ張られ、最後には長身のアヴィーラに持ち上げられる。
「いでっ! いでででぇぇぇっ! ごめんなさい!」
 さすがに宙吊りになる痛みには耐えられず、俺は謝った。
「ふん、赦して欲しくば忠誠を誓え。心からのな」
「誓います! アヴィーラさまのためなら何でもします!」
「いいだろう。今度二度と逆らわないと誓うな?」
「誓います! アヴィーラさまの奴隷として生きていきます」
 俺が言うと、何故だかアヴィーラが複雑な顔をする。
 あ、そういえばこいつ、Mだったっけ。
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