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フォーンキャッスル冷徹の姫 作者:佐久野宗希
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8話 奇襲


「ぐあああ!!」

状況は最悪だった。
ダークエルフ軍は、ベアーダークネスを率いていた。
巨躯の体と、鋭く太い長い爪。
腕力は岩も破壊するほどだ。

「シュネリア姫、もうここは持ちません……!」

ヘイアスは槍を振るいながらシュネリアへ言う。
よそ見をした所を狙ったダークエルフが手に持つ短剣でヘイアスを襲う。
その短剣を持つ腕をシュネリアは斬り、首を落とした。

「すでにダークエルフは印章を揃えているはず……!引き返してしまったら、神秘の泉へ向かわれてしまう!そうなれば、世界は終わりを迎えるかもしれません!」

実際、揃った所で何も起こらないのかもしれないが、もし本当にどんな望みでも叶うのだとしたら……。

「しかし……!このままでは……!」

ダークエルフが剣を振るう。
かろうじて間に入ってくれた兵士がそれを弾いた。
その隙をヘイアスは逃すまいと、左胸を目掛けて槍を突く。
すぐさま引き抜き、倒れるのを確認してシュネリアを見ようとした途端。

「がっ……!?」

先ほど剣を弾いてくれた兵士が宙を舞う。
ヘイアスは何が起きたのかと辺りを見回した。

「ベアーダークネスです……!」

シュネリアは剣を構え直し、足を目掛けて剣を振るった。
その斬撃は見事に命中し、ベアーダークネスは体勢を崩す。
ヘイアスは勢いよく踏み込み、槍を渾身の力で突き出した。
槍はベアーダークネスの体を貫通する。
すぐさま引き抜き、右腕、左腕を斬り払う。
再起不能となったベアーダークネスは崩れ落ちた。

「もう、この本陣までベアーダークネスが来ているのです……!姫がやられてはフォーン軍は終わってしまいます……!前線の兵達は姫が退かない限り、この無謀な戦いを続けるのです!!」

シュネリアは剣を持つ手に力を込める。
ここで退いてはいけない……内心はそれしか考えていなかった。
しかし、ヘイアスの言う事もまた納得出来る。
皆、フォーン軍のため……フォーン軍の姫でもある私の……そして、自分達の家族のため。
そのために命をかけ、ダークエルフ達を相手に勇気を振り絞り、戦っている。
兵士の悲鳴が聞こえる。
フォーン軍の旗がどんどん倒れていく。
本陣に居る護衛の兵士はもう数える程度しかいない。
前で、懸命に槍を振るうヘイアス。
肩で息をしている。
退いたら、城は火の海になるだろう。
でももう皆は耐えられない。
シュネリアは、ヘイアスへ撤退を告げようとした瞬間。

「ひ、姫……!あれを……!」

ヘイアスが敵の本陣に向けて指を指す。

「……何が起きているの?」

敵の本陣が慌ただしかった。
しかしフォーン軍は誰1人として近づいてはいない。

「……プランシア女王が率いるエルフ軍でしょうか?」

ヘイアスの疑問の声にシュネリアもそう思ったが、その考えはすぐに捨てた。
グラン騎士長がいないのに、戦場へ出てこれるエルフの騎士は鉄壁と言われているロジンクという者だけだ。
しかしそのロジンクを出陣させたら……今度はプランシアの身を守る騎士で剛の者はいなくなる。

「ありえません……。この最悪の状況化で戦えるエルフの騎士はいないはず……」
「鉄壁のロジンク将軍なら……あ」

そこまで言って、ヘイアスも気づいたのだろう。

「……姫の言う通りです。では……」

では一体誰なのか。
シュネリアとヘイアス、そして他のフォーン軍兵士も立ち尽くしており、また同じくしてダークエルフ軍の兵士やベアーダークネスもダークエルフの本陣を見据えていた。
何が起きているのか。
戦場はその疑問だけが飛び交っているようだった。
しばらくするとダークエルフ軍は我にかえったのか、慌てて本陣へ向けて走っていく。
それを見たフォーン軍は追いかけようとするが、ヘイアスは撤退の合図を出す。

「好機ではありますが……」

ヘイアスはシュネリアに問う。

「いいのです」

そう言ったと同時に、ダークエルフ軍本陣の旗が倒れた。
そこから出てきたのは、エルフ軍でもフォーン軍でも、ダークエルフ軍でもなかった。

「ダークエルフのこの本陣、ウルリアが占拠した!」
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