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フォーンキャッスル冷徹の姫 作者:佐久野宗希
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6話 エルフ騎士長グラン

会合は、定期的に行われている。
フォーン軍の代表でヘイアス。
エルフ軍の代表、グラン。
商人ギルド長のオーキス。
後は護衛の兵士が数名と、商人ギルドは財力のある家名が数名参加している。
用心深いヘイアスは、この会合にシュネリアを参加させた事はない。
プランシア女王の兵士だからと言って、油断は出来なかったからだ。
だが、その中でも唯一信用しているエルフが居た。
エルフ軍の代表でもある、騎士長グラン。
プランシア女王の親衛隊でもあり、ヘイアスの父親フレデリックと数多くの戦場で共闘していたエルフ。
腕は立つのだが、少々戦略性にかけるグランはフレデリックを心から信頼しているようだった。
その証拠に、毎回エルフの領土でしか手に入らない高価な物を送ってきたり、1人で急にフレデリックに会いに来ては飲み明かしたりしていたのを良く覚えている。
もちろんヘイアス自身も可愛がられ、フォーン城の建て直しの時は毎日のように来ていた。

「ロマールの残党がダークエルフの軍に寝返った可能性がある」

そんな騎士長グランから伝えられた情報。
ロマール……過去にプランシア女王を裏切ったエルフだ。
そして、フォーン軍を壊滅させた張本人でもある。
今現在は、エルフ軍の牢の中だろう。
そのロマール軍の残党はまだ沢山居る。

「地下世界に行かれちゃあ、探しようがない訳だ」

ダークエルフはフォーンキャッスルから北の位置に城を構えていた。
しかしそれは、地下にあるためヘイアスは見たことはない。

「そうですか……」
「女王は近々、ダークエルフと剣を交えるつもりらしい」
「奪われた印章を取り戻すためですか?」

このまま睨み合っていた方が得策だと、ヘイアスは思う。
もし負けてしまえばエルフが所持している印章を奪われてしまいかねないからだ。
しかし、そこまでして取り戻したい理由。
やはり神秘の印章の力を手に入れたいのか。

「フォーン軍にとってはこのままにらみ合いの維持をし続けてほしいと思います」

ヘイアスは会合の参加者へ告げる。
印章を一刻も早く手に入れたいと思うエルフにとっては嫌な意見だろう。
しかしグランの反応は違った。

「俺自身もそれには同意だ」

意外にも、賛成派だった事にヘイアスは驚く。
続いて商人ギルドも賛成の意見を述べる。

「私達も、このまま争いのない状態の方がエルフの領土へ商売がしやすいですな」

これは元々計算内だったので特に何も思わなかった。
それよりもエルフ達だ。
すんなりと賛成する訳がないと思っていたので、もう一度確認の意味も込めて聞く。

「では、エルフの皆さんはダークエルフ軍に手を出さないという事を承認していただけるのでしょうか……?」

グランの周りに居るエルフ達は、グランを見つめる。
そんなグランの表情は、苦笑いのまま答える。

「そうしたいんだが……俺たちエルフは、女王の命には逆らえん。ここでダークエルフには手を出さないと決めても、女王自身がそれに異議を唱えたら……難しい……」

「なるほど」

エルフ達は基本、女王の命令が絶対である。
なのでヘイアスはこの回答を予想していた。

「ならば、私から提案があります」
「提案?」
「グラン騎士長には、氷の洞窟前の警備に着いていただきたい」
「なん、と」

グランにとって予想外だったのだろう。
驚きを隠せないといった様子だ。

「そんな重要な……しかし、いいのか?」

グランが驚くのも無理はなかった。
この氷の洞窟前の警備というのは、世界を預かると言っても過言ではないからだ。
もし印章が揃ってしまえば、何が起こるか分からない。
それゆえ、厳重な警備が出来る力を持つ者や、特例でシュネリア姫が許可証を発行した者、そしてフォーン軍のみが入れる場所……そう昔から決まっていた。

「構いません」

しかしヘイアスはなんともないという顔で答える。
それほどエルフの騎士長グランを信頼しているという事だ。

「……分かった。このグラン、命に変えても守りぬこう」

その言葉を聞いたヘイアスは頷き返す。
父とも仲が良かったグランだ。
断る事はないと思っていた。
氷の洞窟前の警備……これにはプランシア女王も驚くであろう。
初めて、エルフが氷の洞窟近くに行けるのだ。
引き返せという命令はしないだろうし、洞窟の探索をしろなんて無茶な命令もしないだろうとヘイアスは予想する。
探索など行かせたら、それこそこの同盟にヒビが入るのは明白だからだ。
もし探索へ行かせでもしたら、エルフは印章を使いますと公言したと言っても過言ではない。
そしてこれがダークエルフの耳に入ったら、間違いなく攻めてくる。
守るべき力を持つエルフの騎士長は氷の洞窟の警護……。
完全にエルフの行動を封じたとヘイアスは確信すると同時に、グランは信じていてもエルフは信じていないんだなと自分で再認識する。

「よろしくお願いします。グラン騎士長」
「…あぁ。これで立場上、ダークエルフの本陣に足を運ばなくてすむ!!」

護衛の兵士達や商人ギルドの各々も歓声をあげた。

「さすがヘイアス様だ!!」
「噂以上のキレ者です!」
「ヘイアス様!万歳!」

これでしばらくは印章は揃わない。
ヘイアスはそう思った。
そして、この限られた時間でプランシア女王を説得出来るだけの材料を揃えなければ、いずれエルフ達はダークエルフの城へなだれ込んでしまうだろう。

「なんとしてでも止めなければ……」

歓声の中、ヘイアスは1人呟いた。
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