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フォーンキャッスル冷徹の姫 作者:佐久野宗希
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5話 冷徹になる理由

散々脅かせてしまったであろうウルリアに報酬を受け取らせフォーンキャッスルを発たせたシュネリアは、深く考え込んでいた。
復讐。
それはシュネリアも喉から手が出るほど行いたいと思った行為だ。
しかし、その後の結末は容易に想像が出来てしまう。

「……堕ちなければいいけど」

1人呟き、ため息をつく。

「神秘の印章を手にした時、復讐者は必ずそのために力を使ってしまうはず……」

自分もそのために使ってしまうだろうと思う。
目の前に強大な力があるのであれば、使わない方がおかしい。
しかし歯止めがあれば、使わずにすむのではとも思う。
しかもその復讐の心からも抜け出せるのではないか。
シュネリア自身は、その1人だった。
ヘイアスが居たから。
彼はしないと直接伝えてくれたから。
だから自分自身も冷静でいられる。

「そんな存在が出来れば、彼女もきっと……」

なぜ復讐をしたいのか。
気にならなかったと言えば嘘だ。
だが……それを聞けば彼女は辛い過去を思い出さなければいけない。
そう思うと聞けなかった。

「冷徹さ……。私は保てているのかな」

独り言が最近多いなと思いつつ、シュネリアはヘイアスの顔でも見ようと扉に向かい歩き出した。








「ヘイアス」

1階で考え事をしていたヘイアスを見つけ、声をかける。
彼はいつも通りの表情で答える。

「どうかされましたか?」
「指示通り、ウルリアと二人きりにしてくれて感謝します」
「……あの冒険者がシュネリア姫の命を狙うとは思えなかったので」

ヘイアスは賢い。
だからこそすぐに見抜いてしまうのだろうと思ったが、シュネリアは少し気になる所があった。

「……なぜ、そのように思ったのですか」
「それは姫も分かっていた事なのでは……?」

少し困ったような顔をするヘイアス。
確かにあの冒険者からはただならぬ強い思いを感じたのは確かだ。
それは、自分と似た何かを感じたからとしか、シュネリアにも言いようがない。
だがシュネリアが聞きたいのはそういう事ではなかった。

「……道中で、何か、聞いたり……したのでしょうか?」

ヘイアスは今、冷徹な姫を求めている。
そう信じているシュネリアは、全面にその雰囲気を押し出す。
そのために、余計な感情も表に出さないよう常に努力している。
しかし、"ヘイアスの思う姫"を演じ続けたその努力により、ヘイアスのみならず、シュネリアとおよそ関わることのない平民や兵士の末端にまで"シュネリアは本当に心無い冷徹な姫なのだ"と勘違いされてしまっていることにシュネリア自身気づいていない。

「特に何も。……ただ、何か強い思いを秘めているような目はしていましたね」
「そうですか……」

安堵するシュネリア。
仲良くお話していた訳ではない。
そう思った瞬間、顔の筋肉が一瞬で緩んでしまいそうになるが必死に堪える。
ここで感情をむき出しにしたらヘイアスに呆れられてしまう。
そう信じて疑わなかった。

「……何か聞き出した方が良かったでしょうか?」
「しなくて結構です」

……即答してしまった。
怒っていると思われるかもしれないと内心焦るが、どうにか誤魔化さなければとシュネリアは懸命に話を続ける事を0.2秒ほどで決意した。

「今彼女を動揺させてはいけない気がします。自分の中で戦っている最中に、外側からの余計な詮索をされては気分を害する恐れも出てくると思うのです」
「……そう、ですね」

シュネリアは今、冷静にヘイアスを説き伏せていると思っていた。
しかし慌てていたのも事実なので、念のためもう一度発言した内容を自分の頭の中で再生する。
瞬間、シュネリアは顔の温度が上昇した事を感じる。
いつもより自分の言葉の文法が少しおかしいと思ったからだ。

「……で、では、私は会合がありますので」

そう言い、一礼してヘイアスは城の門へと向かう。

「……き、嫌われてない、よね……?」

シュネリアは呟くと同時に、大丈夫と自分を鼓舞する。
……だが、道中であんな可愛い剣士と仲良く会話をしているなんて……嫌だと思った。

「……何で、よりによって女で……しかもあんな美人なの」

今頃ゴブリン達を屠っているであろうウルリアに向けて、邪念を飛ばすシュネリアだった。
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