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フォーンキャッスル冷徹の姫 作者:佐久野宗希
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4話 ウルリアの心と冷徹の姫


ヘイアスとシュネリア以外、入る事を許されない玉座の間に冒険者ウルリアは居た。
初めて本物の姫を前にしたウルリアは、その美しさに目を瞬く。
だがウルリアも負けて劣らずの容姿と体型を持っている。
間違いなく相方として共に戦いたいと言う男は数多く居るであろう。
ウルリアは姫の像を見た時、とても綺麗な人だとは思ったが……同じ女かと思う程、姫は美しかった。
……しかし、何処か感情が見えないとも思う。
まるで、捨て去ってしまったかのように。

「貴女が闇の洞窟に巣食う、ガーゴイルとワーウルフを討伐した冒険者ですか?」
「……はい。その2匹はこの剣で間違いなく仕留めました」
「そう。……よくいらっしゃいました。ようこそ、フォーンキャッスルへ」

そう言うシュネリア姫の表情は、無い。
無表情なのだ。

「……ありがとうございます」

頭を下げるウルリア。
言葉は歓迎されているような気はするが、なぜか生きた心地がしない。
そんな中、町で出会ったヘイアスというランスロードが口を開いた。

「ウルリア様。貴女がここまでの討伐を受けてくださったという事は、フォーン軍への志願、もしくは助力をしていただけるという認識でよろしいでしょうか?」

なんともなしにやっていた討伐。
ファストブルーでは狩人の森に居るシルバーベア―。
セカドフォレスでは森の洞窟で居を構えるクイーンマンティス。
そして、スリーグリンは闇の洞窟に巣食うガーゴイルとワーウルフ。
ただ、自分の力をつけたいという理由と、人々が困っているからという簡単な理由でここまで来たのだ。
なので、この話も断る理由はなかったのだが……フォーン軍への志願ではない事は、ウルリアの中で明白だった。

「はい……。ですが、志願ではないです。私は、困っている人が居るのであれば助けたい。それだけでここまで来たのです」
「なるほど」

ランスロードのヘイアスは笑顔を向ける。
しかし、玉座に座る冷徹の姫は違った。

「なぜ、力を求めるのです?」
「え?」

突然の問に、ウルリアは驚く。
力なんて……そんな事を言った覚えはない……と思い返す。
確かに口では言っていない事を自分の頭の中で確認する。
ではなぜこんな質問をするのかと考えた時、シュネリアに再び聞かれる。

「力。なんのためにつけたいのかを聞きたいです」

ウルリアの目が向く。
……シュネリア姫。
……冷徹の姫には、自分の心が見透かされていると思った。
ウルリア自身、口では言っていないが、心の中では常に力を求めていた。
あるダークエルフを殺すために。
復讐する力をつけるため。
しかし、この思いを正直に伝えていいものかと……ウルリアは不安になった。

「力、ですか?」

意味もなくウルリアは返す。
それを無言で見つめる冷徹の姫。
そして、いつの間にか姿を消しているランスロードのヘイアス。

「……それは」

誤魔化せばどうにかなるものなのか。
しかし、本当に心を見透かされているのであれば、自分が復讐に駆られている事ももはや筒抜けなのではとも思う。
ならば正直に言ってしまった方がいいのではないか。
そう思った時だった。

「冒険者ウルリア。……貴女からは、よくない感情を感じます」

冷徹の姫の一言と威圧感で、ウルリアは観念した。

「……おっしゃる通り、私は……よくない感情も持って、魔物を狩り続けていました」
「……」
「ある、ダークエルフへの復讐のため、私は力をつけようと思ったのです。でも!困っている人を助けたいというのは本当です!」
「……」

冷徹の姫は無表情のまま、目を閉じた。
復讐なんて、よこしまな考えだとウルリアは思っている。
それでも、あのダークエルフを殺さなければ、この負の感情は永遠と消えない。そう確信していた。
もし否定をされるのであれば、大事な人を失った事がない人なんだと思うだけだ。

「貴女には、次の討伐のお願いをしたいと思います」
「……!?」

復讐心を持っている事に対して、シュネリア姫が嫌悪感を抱いていると思っていたウルリアは驚きを隠せずにいた。

「マディーナ荒野と氷の洞窟の魔物を討伐してほしいのです」

そんなウルリアをよそに、姫は続ける。

「まず、マディーナ荒野を住処にしているゴブリン、オーク、トロル、それと氷の洞窟に住み着いたアイシクルゴーレムを出来るだけ多く、討伐していただけないでしょうか」

状況に追いつけないウルリアは、無意識に話を戻していた。

「私が復讐に駆られているというのは……!問題ではないのでしょうか!?」

そう発した瞬間、我に返る。
自分はなんて事をしているのかと。
一介の冒険者が大陸を統べる姫に意見をする事は死罪ものであった。

「……すみません!!私はなんて事を……!」

しかし姫は、それに対して怒る事も、兵士を呼びつける事もせず……ただ淡々と言葉を発した。

「それは貴女が決めた目的です。……助言を求めているのであれば、私自身の考えを伝えますが、そうではなさそうですので……。ただ、私が困っているのでお願いをしただけです」
「……!?」

その回答を受けたウルリアは、しばらく放心状態となっていた。
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