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フォーンキャッスル冷徹の姫 作者:佐久野宗希
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30話 フィンブルの秘密


「守護神フィンブルよ!約束通りに女王コルを連れてきました!」

シュネリアは祭壇の前で、底の見えない大穴に向かって言葉を放つ。
シュネリアのすぐ後ろにヘイアスとグランが並んで立っている。
ダークエルフのオクルスとラクリマは、その大穴を見て最初こそ驚愕の表情をしていたが、今では落ち着き、コルが眠っている小型の馬車の前でシュネリアを見守っている。

『コルの姿は、何処だ』

大穴から発せられた言葉と同時に、大穴から冷気が吹き出す。
ヘイアス達は身構える。

「女王コルは、あの馬車の中です……!」

シュネリアはコルが眠っているであろう小型の馬車へ指を指す。
同時に、フィンブルが勢いよく姿を露わにした。

『約束を、守ってくれたようだな……ニンゲンの王、シュネリア姫よ』
「女王コルの目を覚まさせて!」

その言葉を聞いていたフィンブルの目は、小型の馬車を見つめている。

「……フィンブル?」

沈黙が続く状況に、シュネリアは疑問の言葉をフィンブルへ向けた。
だがフィンブルは動こうとも、音……言葉を発しようともしなかった。
その様子をシュネリアはおかしいと思い、フィンブルを注意深く凝視した。
するとフィンブルの背中のあたりに小さな魔法陣が浮かび上がっているのが見えた。

「……あれは、一体」

ヘイアスやグラン、オクルスとラクリマは気づいていないようで、ただフィンブルを見据えている。
シュネリアは目線を魔法陣へ戻すと、氷の刃がそこから出現しているのを捉えた。

「……まさか」

シュネリアは勢いよく剣を抜いた。
その音は洞窟内に反響し、同時に4人はシュネリアへ目を向く。

「リア!?」
「リアの嬢ちゃん、どうした!?」

ヘイアスとグランは驚きの声をあげる。
それに構わずシュネリアは魔法陣の場所を剣で指し示した。

「フィンブルの背中を見てください!!」

それを聞いた4人は背中を見る。
瞬間、氷の刃は恐ろしい速度で馬車に目掛けて放たれた。
シュネリアは馬車の前まで移動していた。
鋭く尖った氷の刃を、シュネリアは剣で叩き落とす。
何が起きたのか頭の整理が追いついていないのか、4人は驚いたまま動けないでいた。

「フィンブル……これは一体、どういう事ですか」

シュネリアはフィンブルを見据える。

『女王コルを起こそうとしたのだ。なぜ邪魔をする』

その言葉を聞いたシュネリアは、初めて分かった。

「……私を、騙したのですね」

その言葉は4人の耳に届き、それぞれ違う表情を見せる。
一番に声を出したのは、ラクリマだった。

「……女王コルを、殺そうとしている……?腹心だと言っていたフィンブルが……!?救うというのは……嘘だったのか!?」

ラクリマは剣を抜き放ち、フィンブルへ向けた。

「貴様……!」
『コルを出せ』
「何を馬鹿な事を!」
『ならば、破壊するまで』

フィンブルの角が光る。
途端、冷気が徐々にそこへ集まっていくのが分かる。

「お、おい!ラクリマ!まずは馬車を下へ……!」

オクルスの声にラクリマは向くが、首を横に振る。

「間に合うはずがない!まずはコイツをどうにかせねば……!」

剣を向けたまま立ち尽くすラクリマは、頭をフル回転させていたが何も思いつけずにいた。
そんな様子を見ていたヘイアスは、グランへ告げる。

「グランさん、俺をフィンブルの顔……角の場所へ投げてください!」

その言葉を聞いてグランは驚愕の表情をヘイアスへ向ける。

「ま、待て……!冷気を噴き出している体に乗ったら……」

フィンブルの体には、青い冷気をまとっている箇所がある。
その冷気は炎のように揺らめいていて、触れたりしたらただでは済まないであろう事は予想できた。
フィンブルの角を見ると、そこは冷気をまとっていなかった。
よく見ているなとヘイアスに関心すると同時に、グランはすぐに頷くとヘイアスを持ち上げた。

「うっし……!行くぞ!!」

グランは渾身の力でヘイアスを投げ飛ばし……ヘイアスは無事にフィンブルの顔へ着地出来た。
ヘイアスは左手でフィンブルの顔から生えた一本の角を掴み、手が切れない事を確認すると力強く握る。
冷気を集めているためか、角の温度はかなり低く、痛さを感じるが今はそれどころではない。
右手に持った槍に力を込め、フィンブルの頭を目掛けて思い切り突き刺した。

『……!?』

フィンブルの角から光が消え、一瞬体を震わせた。
手応えこそあまり感じられなかったが、ヘイアスの槍はフィンブルが反応を示す場所まで届いたようだ。

『ニンゲンの分際で……!』
「なぜ……!コルは貴方の腹心なのでしょう!?」

シュネリアは剣を握ったまま叫ぶ。

『エルフも、ダークエルフも、滅ぼすのが我の役目だ……!返せ!ネーヴェを!!』
「ネーヴェ……?」

その名前を聞いて、分かる者は1人しかいなかった。
グランはネーヴェという名前に聞き覚えがあったのだ。

「ネーヴェ……って、あの処刑されたっていう、エルフのネーヴェか……!?」
「知っているの……?」

シュネリアはグランを見つめた。

「……ネーヴェは、人間とエルフのハーフだ。確か、人間と恋をして……処刑された」
「そん、な……」

エルフは人間と恋をしてはいけない。
同じように、ダークエルフも人間と恋をしてはいけない。
それはこの大陸での常識であった。

「……人間に恋をした愚か者が居たとはな」

ラクリマが小さく呟く。
その言葉と同時に、フィンブルが背中に魔法陣を発生させた。
その魔法陣から氷の刃が生成され、ラクリマへ向けて勢いよく放たれたのをシュネリアは見逃さなかった。
剣をラクリマの目の前で振り上げる。
氷の刃は真っ二つに斬られ、地面へ落ちた。
ラクリマは目を見開き、膝を地面についた。

「……!?」
「大丈夫ですか……!」

シュネリアは声をかけるが、ラクリマは地面を見たまま……肩を震わせていた。

「……死ぬ、ところでした……!」
「おいラクリマ!しっかりしろ!」

オクルスが駆け寄り、肩を掴む。

「この私が……死を……!」
「……ち。壊れたか、おい!!」

オクルスはラクリマに声をかけるが、ラクリマは震えたまま地面を見つめている。
その隙を逃すまいと、フィンブルは角を光らせ攻撃をしかけようとするが、ヘイアスはまたもや槍を突き立てる。

『うっとおしい人間め……!』

その言葉と同時に数えきれないほどの魔法陣を発生させた。
それを見たヘイアスは、死を覚悟する。

「……これは、マズイですね」
「ヘイアス!!飛び降りて!」

シュネリアは叫んだ。
グランが祭壇の前へ走りだす。

「俺が受け止める!早く降りろ!」

グランが祭壇に到着したのを確認したヘイアスは、フィンブルの顔から槍を抜き、勢いよく飛び降りた。
グランがヘイアスを受け止めたのと同時に、魔法陣から無数の氷の刃が生成され、放たれた。
飛んでくる氷の刃をシュネリアはグランの前に立ち、叩き割る。
しかし飛んでくる数が多かった。

「ぐぅ!?」

弾きそこねた氷の刃がシュネリアの太腿に突き刺さる。
体勢を崩すシュネリアを、グランは自分の後ろへ投げる。

「!?ぐっ!……っつぅ」
「リア!!しっかりしろ!」

ヘイアスはシュネリアの元へ駆けつける。

「俺が暫く防いでやる!その隙に何か策を!」

大斧を構え、グランは氷の刃を弾く。
何か危険があるといけないからと、エルフの兵士は地下2Fへ残していた。
また出現するであろう、巨大な氷のゴーレム……ブリザードゴーレムを定期的に討伐させるためでもあった。
何かあればすぐに逃げられるようにするためだったが、フィンブルの猛攻に馬車は動けずにいた。

「ラクリマ……!どうにか、馬車を動かせ……!おい!シュネリア姫!お前達はどうすんだ!」
「フィンブルを食い止めます……!」
「……防ぐだけなら、アタシに任せろ!」

ラクリマを馬車の近くまで誘導していたオクルスは、腰に下げた盾を持ち、グランの元へ走りだした。
正気を取り戻しつつあったラクリマは、神秘の印章をシュネリアへ投げようとしてた。

「おい……!シュネリア姫!」

ラクリマの声に、シュネリアは振り向く。

「……この印章と、エルフが持つ印章を合わせて……そのフィンブルを封印しろ……!」

そう言ったラクリマはすかさず印章を投げた。
シュネリアはその印章を受け止めると、ヘイアスへ渡しながら聞く。

「そんな事が、出来るの……!?」
「やってみるしかない……!」

フィンブルの魔法陣から放たれる氷の刃を、グランの大斧とオクルスの盾が器用に防ぐ。
しかし、その数は圧倒的で、グランの左腕や脇腹、右肩に刃が突き刺さる。
オクルスの両足にも氷の刃が貫通している。
しかし臆する事なく懸命に盾や斧で防いでいた。
だが、2人の動きが鈍くなっているのは確かで、氷の刃が体に突き刺さる量は増えていく。

その様子を見るシュネリアは、自分を責めていた。
自分がコルを氷の洞窟へ連れて行きたいと言わなければ……。
項垂れ始めたシュネリアにヘイアスが気づき、神秘の印章をフィンブルへ向けながら言った。

「リア。リアのした事は、世界を揺るがす。君は、最善の方法で世界を導ける……!」

シュネリアはその言葉を聞いて顔を上げたと同時に、グランが倒れ、オクルスの盾が砕け散ったのは同時だった。
腹へ無数の刃が突き刺さったグランが見え、両腕と両足に氷の刃が貫通したオクルスが見える。
フィンブルにとってコルが寝ているであろう馬車への壁がなくなった今、氷の刃は高速で放たれていく。
気づけばシュネリアの前にラクリマが立ち、刃を叩き落としていた。

「……おい!呆けるな!!早く立って、その美しい剣でお前も刃を叩き落とせ!」

その言葉が合図だったかのように、刃が次々とラクリマの体に刺さっていく。

「ガハ……!」

片膝が地面へつき、ラクリマは剣を杖代わりにする。

「……貴様の言葉……信じるに値しない現状だが……!ここまで来たんだ……。コル女王の目を、ちゃんと覚まさせろよ……!」
「……ラクリマ」

その言葉を最後に、ラクリマは地面へ倒れた。
シュネリアは顔をあげる。
ヘイアスが2つの印章を合わせ、フィンブルへかざしていた。
その目の前に氷の刃が迫っている事に気づいたシュネリアは、ヘイアスの前へ立ち……。
同時にヘイアスは叫んだ。

「フィンブルを、この氷の洞窟に封印する!!」

ドシュッという鈍い音がシュネリアの耳がとらえる。
脇腹のあたりが一瞬冷たく感じ、すぐに熱くなる。
だが、刺さっている物が冷たい物質だったのか、すぐに体が冷えていくのを感じた。

「ヘイ……アス……」

印章が光輝いているのが見えたと同時に、シュネリアの意識は途絶えた。
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