挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
フォーンキャッスル冷徹の姫 作者:佐久野宗希
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

3/32

3話 平和な1日

兵士長ヘイアスが、なにやらおかしい。
階段は踏み外すわ、用もないのに調理場に来るわ、同じ場所を行ったり来たりするわと、妙な行動が目立っていた。

「兵士長、何があったんだ?」
「さ、さぁ……」
「さっき調理場に来たけど、何かを思い出したように慌てて出て行ったのは見ましたなぁ」
「先ほどから西の廊下を行ったり来たりしているのです……どうしたのでしょう」

生き残ったフォーン軍の兵士やコック、メイドの噂。
このように、噂が広がるのはとてつもなく早い。

「ずっと働きっぱなしですものね……」
「少しは休んでもらった方がいいのかもしれませんな」

そんな心配の声をよそに、今日もヘイアスは行く。
いや。
考えていた。

「……シュネリア姫にはやはりドレスのような服を」

しかしいきなりそんな事を言えば、考えを聞かれるに違いない。
問われたら何をどう説明すれば良いのか。
『いつも軽装ばかりでは姫の威厳の低下にも繋がりかねません……』
とでも言おうか。
……いや、そんな事はない。
戦闘スタイルの姿は、兵士の見本だ。
いつでも戦いにいける姿というのは士気が上がる1つだと思う。

「しかし……しかしな」

そもそもシュネリア姫は椅子に腰掛けているよりも外へ出て剣を振るう方が好きだ。
それに軽装なのは昔から変わらない。
ドレスのような服や、長い丈の服を身につけている姿をここ最近ヘイアスは見たことがない。

「……だとしても、あのように短い布をヒラヒラとさせるのは戦いに向かな……」

そこで気づく。
自分が1日中、シュネリアの服装の事ばかりを考えていると。

「……そもそも、尻もちをついたのならすぐに隠す等していただかなければ」
「ヘイアス?」
「うわっ!!」

突然の女性の声に驚く。
そこに立っていたのは、紛うことなく今までずっと自分の頭の中で再生していた人物だった。

「……メイドが、ヘイアスの行動について噂しているのを耳にして……」
「ひ、姫!なぜこんな所に!」
「……自分の家なんだから、何処へ居てもいいでしょう?」
「……た、確かに」

それもそうだった。

「何か、手詰まりでも?」
「い、いえ!!じゅ、順調です!」
「……?」

首をかしげるシュネリア姫。
その顔はまるで無表情だ。
その表情が、ヘイアスを余計に焦らせる。
なんせ自分が考えていた事は……。
その内容はシュネリアにとってあまりにもどうでもよく、そして距離を置かれる内容だと瞬時に理解するヘイアスだった。

「と、とにかく!!私はスリーグリンへ行きます!その剣士を早くフォーン城へ連れて来なければ!」
「分かりました。では、首を長くして待ってますね」

そう言った彼女の表情は、何処か嬉しそうに微笑んでさえいるように見えた。

「……!?」

ヘイアスは目を見開く。

「どうしました?」

しかし目の前に居たのは、いつものシュネリア……冷徹の姫だった。

「い、いえ……」
「……」

シュネリアはマントを翻し、外の訓練場の方向へ歩き出した。

「……気が緩んでいるから、幻覚を見るんだ」

シュネリアの後ろ姿を見ながら、ヘイアスは呟いた。






スリーグリン。
フォーンキャッスルから西の、山の上にある緑に囲まれた町。
町の中央にはシュネリア姫の像があり、多くの観光者が訪れる。
しかし山道はかなり危険な魔物が多く、力の持たない者には険しい道だ。
なので多くの者は冒険者という用心棒を雇う。
観光者や商人が多いこの大陸には欠かせない存在なので、この用心棒の職業になる冒険者は多い。
しかしフォーンキャッスル直属の兵士に入るお金は、用心棒よりも断然多い。
毎回命を懸けて戦う用心棒と、治安を守り続ける兵士。
他にも色々選択肢はあるが……今から会うその剣士は、このどちらかしか選択をしないだろうとヘイアスは思っている。

「リアの像で待つように指示を出したとゴルターさんは言ってたよな……」

フォーン兵士ゴルター。
今は亡き父、フレデリック親衛隊の1人。
ヘイアスが心の底から信用している1人だ。
今は一番重要な、ファストブルーで駆け出しの冒険者を募るという役を引き受けてもらっている。

「……1人、か。他に仲間が居ると思ったが」

シュネリアの像を見つめる1人の女剣士の姿をヘイアスは見つけ、足を止めた。
使い古された皮のロングブーツと足の長さまである白いロングコート、激しく動き続けても、太ももの皮膚を痛めないようにとズボンではなくスカートを身につけ、そして左手には盾を持ち、腰には片手用の剣を下げている。
その装備を見て、彼女の職業がパラディンだと分かった。
ヘイアスはそれぞれの武器の強さを遠巻きながら瞬時に見抜く。
アハトシールドと、アハトブレード。
どちらも8段階に強化された物だ。
ちなみにヘイアスが持っている槍はこの冒険者よりも2段階上の得物、ツェーンスピア。
物の価値を分かりやすくと、遠い昔からある法則が作られているためこのように何段階上か下かを把握出来る。
その法則とは、同じ種類で価値ある物には定められた名称をつけるというもの。
なので槍にもちゃんとアハトスピアは存在する。

「しっかりと得物も強化されている。しかし……鎧の類をつけないとは、珍しいパラディンも居たものだな」

そう呟き、止めていた足を動かす。
それと同時に、シュネリアの像を見つめていた女剣士がヘイアスの方を見る。
肩まで長さのある青髪を風に(なび)かせながらじっとヘイアスを見つめるその容姿は、幼さが残る印象だ。
その彼女の前で止まり、ヘイアスは口を開く。

「初めまして。冒険者様」

彼女は微笑みながら答えた。

「はい……!」
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ