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フォーンキャッスル冷徹の姫 作者:佐久野宗希
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29話 信頼

ヘイアスが持っているものは、間違いなく神秘の印章だった。
それを見たラクリマは、驚愕を隠せない様子でヘイアスを睨んだ。

「なぜ……貴様が……!印章を持っているんだ!」

そんなラクリマをよそに、ヘイアスは淡々と述べる。

「本来はエルフが所持する神秘の印章を、なぜフォーン軍の俺が持っているのか……。それは簡単です」

これにはシュネリアも頭を捻った。

「簡単なことですよ。グラン騎士長からお借りしたのです」

その言葉を聞いたラクリマは、席を勢いよく立ち上がり、呆れているのか驚いているのか分からない表情のまま固まっていた。

「……グランは、馬鹿なのか?」

今まで黙って聞いていたオクルスが口を開く。

「……なんとも答えづらい質問ですね」

ヘイアスは肩をすくめてオクルスを見る。
こればかりはシュネリアもオクルスと同じことを思っていたが、それとは別にもう1つの思いもあった。

「……きっと、これも信頼なんだと思います」

シュネリアの言葉を聞いたオクルスは、一瞬驚いた表情を見せるが、すぐに笑顔へと変わった。

「……なるほどな。アンタら2人とグランの間では、計り知れない何かがあるって事なのか」
「……信頼だけで、世界を揺るがすかもしれない印章を……渡すのか……?」

ラクリマは心底信じられないという表情のままだった。

「ラクリマ。アンタはさぁ、コル女王にだったら何でも渡すだろ?それと同じさ」
「……なっ!?」

それを聞いたラクリマは、何かを理解したのか力なく席へ座った。

「……そう、か。そこまで、お前達とグランは……」
「人やエルフ、ダークエルフもそうですが……簡単に信じてしまうと痛い目を見ます。ですが、信用しない事には信頼が生まれず、先に進めないのも事実。……さぁ、どうです?ラクリマ殿。コル女王を連れて、氷の洞窟へ来てくれますか?」
「……く」

ヘイアスの言葉を聞いたラクリマは、苦渋の選択を強いられている表情をしていたが、暫くすると静かに項垂れ、頷いたのだった。









氷の洞窟へダークエルフを入れるというのは、フォーン軍が誕生して以来、初めての事だった。

「へえ……これが氷の洞窟……」
「本当に全てが氷で出来ているようだな」

オクルスとラクリマは、物珍しそうに洞窟の細部まで目を凝らしていた。

「この先にグラン騎士長が居ます」

ヘイアスが指し示した方向には、下へ降りる階段があった。

「そこを降りたら祭壇があるのか?」

ラクリマはコルを乗せている小型の馬車を見ながらヘイアスへ言う。

「ここを降りますと、広いフロアに出ます。その先にも降りる階段がありますので、そこを降りれば神秘の祭壇ですね」
「……コル女王のお体が心配だ。なるべく急ぎたい」
「ちなみになんだが、その広いフロアってのは何かあるのかい?」

オクルスの質問にはシュネリアが答えた。

「広いフロアには、巨大な氷のゴーレムが居ます。ですが、それはグラン騎士長の部隊が倒しているはずです」
「巨大ってのは、マヌスぐらいか?」
「いえ。洞窟の天井ほどの大きさです」
「……へ?」
「……」

それを聞いたオクルスは空いた口が塞がらないといった様子だった。
ラクリマも無言のまま階段を見つめていた。








「遅かったなぁリアの嬢ちゃん!」

大きな斧を肩に乗せ、グランはシュネリアに笑顔を向ける。

「ゴーレムの討伐、ありがとうございます」
「なに!今回はこの人数だ……!」

このフロアは、かなりの人数が入れるぐらい広い。
500人は余裕で入りそうだ。
グランが連れてきた人数は60人ぐらいで、どのエルフの兵士もかなり腕が立つ人材のようだった。

「まぁなんにしても、2人で倒した時よりは楽だったぜ?」

その会話を聞いていたヘイアスは槍を落としそうになった。

「ま、待ってください……!2人って……まさかリア……シュネリア姫とグラン騎士長であのゴーレムを倒したのですか!?」
「あぁ。アイツを倒さんと、この下の祭壇には行けねえだろ?」
「ま、まぁ……そうですけど」

ヘイアスは呆れると同時に関心もしていた。
そんな会話を聞いていたオクルスは、冷や汗をかいていた。

「……あの天井に届くほど巨大って……冗談だろ?」
「いくらか魔物は居るだろうと思っていましたが、これは予想外ですね」

さすがのラクリマも、これには驚きを隠せないといった様子で深く考えこんでいた。
シュネリアは異様な光景を見ているなと、改めて思った。
まだ同盟などを結んでいる訳でもないのに、今まで戦っていた者同士が集まって1つの場所を目指している。
可能なのであれば、このまま戦いのない世界を築いていければいいと心の底から思った。

「それでは、祭壇へ行きましょう」

もし、このフィンブルとの約束を果たし、何かしらの事柄でお互いの睨み合う原因が取り除ければ、平和への一歩を踏み出せるかもしれないとシュネリアは思っていた。
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