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フォーンキャッスル冷徹の姫 作者:佐久野宗希
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28話 ダークエルフ城


「……!」

シュネリアは飛び起きた。
ベッドの横に置いてあった剣を見つけ、すぐに抜き放ちすぐに構える。
静寂の中で響く抜刀の音を聞きながら、シュネリアの意識は回復していく。

「……ここは、部屋?」

辺りを見回すと、ここはどうやら客間のような部屋だった。
大きなベッドに、鏡台、小さな丸テーブルには紅茶が置かれている。
そのテーブルに腰掛けていた人物を見て、シュネリアは安堵した。

「お目覚めかい?シュネリア姫」

カップをテーブルに置いて、オクルスはシュネリアへ向けて微笑む。

「……とりあえずさ、剣」
「……あ」

顔の温度が上昇すると同時に、恥ずかしさを感じたシュネリアは、そっと剣を鞘に収めた。

「ところで、ヘイアスは……?」
「兵士長はラクリマと話し込んでるみたいだよ」
「……え?」
「姫はいつ命を狙われるか分からないからと言って、アタシに護衛を任せて先に言っちゃったよ。……アタシもアンタらの敵だったはずなのにねぇ……」

オクルスはそんな事を言ってはいるが、まんざらでもないような感じがシュネリアにはしていた。

「まぁ、信用されてるってのは、悪くはないよなぁと、思うが……なんだろなぁ……複雑だよ。なんせこんな気分は初めて味わう」

紅茶を一口飲みながら、オクルスはシュネリアを見た。

「アタシはアンタら人間を、少し勘違いしていたようだ」
「それは……どういう」
「人間は、ずる賢い生き物だと思ってたのさ」

そう言ってオクルスは手に持っていた紅茶のカップをテーブルへ置く。

「さて。ラクリマの所へ行くんだろ?」

オクルスは立ち上がり、笑顔をシュネリアへ向ける。
断る理由などなかったシュネリアは、同じく笑顔で返した。

「……はい!」







地下世界と聞いていたシュネリアは、ダークエルフ城は洞窟だと勝手に想像していたのだが、まるで違った。

「……普通のお城みたいですね」
「普通のお城って、フォーン城って事でいいんだよな?」
「はい……」
「コル女王のこだわりってやつさ。まだ歩いて喋ってる頃は、色々と自慢されたよ」
「自慢……」

そんな話をするオクルスの表情は、どこか楽しげに見えた。
しかしそれもつかの間で、すぐに気を引き締めた表情へ戻る。

「……気づいたら、死んだように座ってるだけだしな」

原因が分からないまま、今の状態が続いてるという事に疑問を持つシュネリアは、オクルスへ問う。

「……誰も、気付かなかったんですか?」
「あぁ。昨日まで普通で、次の日にはああなってたっていう感じだったからな……。だから、女王の寝室で何かが起こったのだとアタシらは睨んでる」

寝室は、警護をしている人間も入らない領域……。
……ここの場合は人間ではなくダークエルフだが。
もちろん入り口には居るかもしれないが、大きな音や悲鳴が聞こえない限り、駆けつけるのは難しいだろうとシュネリアは思った。

「ここだ」

オクルスが足を止め、シュネリアに背中を向けたまま言う。
部屋を守るように立っているダークエルフの兵士が扉を開ける。

「オクルスだ。シュネリア姫が目を覚ました」

そう言うと同時に歩き出したオクルスにシュネリアも続く。

「姫、こちらへ」

座っていたヘイアスが立ち上がり、シュネリアの側へ行き手をとる。
そのまま席へ案内され、シュネリアは座った。

「さて、話の続きをしましょうか?兵士長殿」

口を開いたダークエルフは、シュネリアと剣を交えたラクリマだった。

「姫、今丁度フィンブルとコルの関係性についての話をしていました」

ヘイアスはシュネリアに耳打ちをする。

「……そう」
「その話ですが、ありえない話です」

それが聞こえていたのか、ラクリマは怒りを露わにしたような口調で答える。

「コル女王から、そのような話は一度も聞いた事がありませんし、ダークエルフがフィンブルと関係性を持っているなんて事もまた、ありえない話です」
「……それは本当なの?」
「コル女王の事に関して、なぜ私が嘘をつかなければいけないのですか?」

ラクリマの怒りの原因は、コルに対して知らない事があったからなのかとシュネリアは思うと同時に、対話が出来る状況になっている事を嬉しく思っていた。
だからこそ、早く伝えなければと言葉を発した。

「私は、コル女王をフィンブルの所へ……」
「それは先程からそこの兵士長殿から聞いております。ですが、それは難しいですね」
「な、なぜです……?」
「眠っている女王を叩き起こせとでも?それとも、担いで行けと?」

確かに意識のない者をあの洞窟へ行かせるのは、正直体への負担は大きいだろう。
だが、シュネリアは譲れなかった。
なんとしてでも、まずは連れていかなければいけないと。
しかしラクリマも意志は堅かった。

「エルフが印章を持って祭壇に居るとは言っていますが……何を証拠に。のこのこと出て行って何をされるか分からない私達が、動くと思いますか?……確かに兵士は貴方達に人質として囚われている……が、人質と女王の命を天秤にかけるなど……そんな事をすると思いますか?」

確かにラクリマの言う通りだった。
兵士と女王の命など、比べられるものではない。
王の立場でもある自分自身は大丈夫だと言っても、他の者がそれを許さないであろう事はシュネリアにも分かる。
しかし、今はあのフィンブルの言葉を信じるしかないと思い、再び口を開こうとした時。
ヘイアスが書簡を取り出してラクリマへ見せる。

「ここにプランシア女王直筆の書簡があります」
「偽物かもしれない」

それを聞いたヘイアスは、書簡を机へ置く。
シュネリアは思った。
ラクリマは、ただ狂っているわけではないと。
確かにコル女王への執着心は異常だと思うが、それでもしっかりと意志を持っている。
だからこそ、どうすれば動いてくれるのか……シュネリアは考える。
だが、何も思いつけないでいた。

「……まぁそうだろうと思い、こんな物も用意しました」

シュネリアが必死に考えている最中、ヘイアスが言葉発した。
腰に下げた布袋から、ある物を取り出す。
それは。

「……ま、まさか」

それを見たラクリマは、目を見開き、また、ずっと立って聞いていたオクルスも、そしてシュネリア自身も驚愕する物だった。

「エルフが持つ、神秘の印章です」
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