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フォーンキャッスル冷徹の姫 作者:佐久野宗希
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26話 コルとラクリマ

シュネリアは、自室にヘイアスを連れて行き、眠っていた間に起きた事柄を掻い摘んで話していた。

「そんな石があったなんて……。しかも、フィンブルと女王コルとの関係性にも驚いたな」
「うん……。どうにか女王コルを、フィンブルの元へ連れていかないと」
「話の通じそうなダークエルフが居ればいいんだけどな……」
「それなら、1人……オクルスっていうダークエルフなら、もしかしたら」
「じゃあまずはそいつから話を聞くか」
「もう体は大丈夫なの?」
「あぁ。だいぶ寝てたしね」
「そ、そうだけど……」

シュネリアは腑に落ちない感じではあったが、ヘイアスが大丈夫と言うのなら大丈夫なのだろうと思い、立ち上がった。






「シュネリア姫……ヘイアス様」

牢の番をしていたゴルターが、シュネリアとヘイアスの姿を見て目を丸くした。

「ゴルターさん。俺の手順通りにやってくれたみたいですね」
「そりゃあ私の頭で思いついたものと比べるなんて恐れ多い」

敬礼したまま笑うゴルターと、他の兵士を見て、シュネリアは安堵する。
どうやらヘイアスの死について兵士達は知らないようだった。

「あの、ダークエルフのオクルスは何処に居ますか?」
「オクルス……あぁ、あの盾使いの女ですな。こちらです」

案内された牢には、疲弊しきっている1人のダークエルフが居た。

「オクルス。シュネリア姫が話をしたいそうだ」

ゴルターに呼びかけられたオクルスは、力のない目をシュネリアへ向ける。

「……姫様がアタシに何のようだい?」

牢の前にはスープとパンが置かれているが、手を付けていないようだった。

「食べないのですか……?」
「……ふん」

これでは話にならない気がしたシュネリアは、ある事を思いつく。

「では、食事をしましょう。断れば極刑です」

その言葉にゴルターとオクルスは驚愕の表情を見せる。
ヘイアスは予想していたのか、肩を竦めただけだった。








食堂でオクルスは出された料理を恐る恐る口にし、その味の美味しさに感動を覚えながら食事を終えた。

「ご馳走様……。で、アタシに食事までさせて、何が聞きたいんだ?」

オクルスはまだ警戒しているようで、隙を見せない。

「女王コルと、ラクリマについて聞きたい事があります」
「……何処まで知ってるんだ」
「何処まで、とは?」
「……女王は、生きているようで死んでいるんだ」
「では今回の首謀者はラクリマですね?」
「……なんだ。知ってたのか」

全て予想の範疇でしか答えていないシュネリアだったが、そんな事など知らないオクルスは淡々と喋り始めた。

「そうだ。ラクリマは女王を溺愛していてな。今はもう座っているだけで生きているのかも分からない女王コルの生命を蘇生させようと、神秘の泉を欲した」
「女王が死んでいる?」
「あれは死んでるようなもんだ。それでもラクリマは認めない。……アタシも女王に元へ戻ってほしいから、ラクリマとここまで来た」
「オクルスと言ったな?女王はいつからそのような状態に?」

今まで黙っていたヘイアスが口を開く。

「……分からん。もうずっと昔からだ」
「ふむ……」

顎に手を当て考え始めたヘイアスを見て、「俺はもう話はしない」という合図だと認識すると、シュネリアは話を続ける。

「私から見て、ラクリマは異常者だと思いました。……貴女はどう思うのです?」

こんな質問をしてまともな返答が返ってくるのか疑問ではあったが、なんとなく彼女なら話せるとシュネリアは思った。

「……異常者、か」

オクルスは嘆息する。
そして目を伏せ、しばらくするとシュネリアを見て言った。

「……あぁ。アタシもそう思う」

その答えにヘイアスも驚いていた。
シュネリアは予想した通りの答えが返ってきて確信する。
女王コル親衛隊四天王達の心はバラバラなのだと。
なので、場合によっては協力も期待出来るはず。

「……私は、女王コルを神秘の祭壇へ連れて行かなければなりません」
「……何?なぜ?」

どう言えば、協力をしてくれるのか。
こんな時ヘイアスならなんと言うだろうと目を向ける。
それと同時に、ヘイアスは口を開いた。

「女王コルは、争いを無くすために立ち上がったと聞いています。それが今ではラクリマの私利私欲……それが女王コルの蘇生なのだとしたら……。印章を揃えて祭壇へ行けば、蘇生が出来る可能性がある……。利害は一致しませんか?」

ヘイアスの言葉に、シュネリアは感心した。
やはり頼りになると思うと、顔が綻んでしまいそうになる。

「エルフが持っている印章はどうなる?」
「グラン騎士長がすでに氷の洞窟で待っています。あとはダークエルフ軍の印章があれば」
「……それをラクリマにアタシが伝えろとでも言いたいのか?」
「賢い人と話すのは楽で良いですね」

ヘイアスは満面の笑みだった。
心底嫌そうな顔をしていたオクルスだったが、どうやら本当に嫌ではなかったようで、大きなため息を1つついてシュネリアに言った。

「……一緒に来い。地下世界ダークエルフ城へ招待する」

シュネリアは頷き、席を立つ。

「よろしくお願いします」
「では、早速馬車を用意します」

そう言ったヘイアスも席を立ち、3人は食堂を後にした。
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