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フォーンキャッスル冷徹の姫 作者:佐久野宗希
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25話 生命の雫


「いやぁ~結構頑丈だな俺は」
「そう、ですね……」

グランの体力の心配はしていなかったシュネリアだが、まさかこんなに元気なまま氷から出てくるとは想像以上だった。

「んで、その石でヘイアスは元に戻るのか?」
「それを願うしかありません……」

今2人は医務室に居た。
オーキスとウルリアの姿はなく、警備しているエルフ……グランの配下に聞いた所、城下町の復興作業に行くと言い、出て行ったらしい。

「2人は仲が良さそうですね」
「俺も嫁……ナターシャとはすげぇ仲がいいんだぞ?」
「……はは」

自分から話を振ったものの、反応に困るなど情けないなと思うシュネリアだった。
ちなみにナターシャというのはグランの奥さんで、ダークエルフにさらわれていた張本人でもある。
話によると、オクルスがシュネリアを追いかけた時に隙を見て救出出来たらしい。

「さ!早く石を!」

グランが今か今かと興奮気味に言う。
しかしシュネリアはこの石の使い方が分からないでいた。

「……かざせばいいのでしょうか?」
「へ?……あぁ、砕いて飲ませるとかじゃないよな……?」
「え?」

2人はヘイアスを見つめる。
もし生きていたら鋭いツッコミを入れられるだろうと思っていた。
なぜ使い方を聞かなかったのかと。

「生きてりゃあ、文句の1つでも言われたんだろうな俺ら。何で使い方を聞いてこなかったんだって」
「……」

この生命の雫と呼ばれる石で、ヘイアスが生き返らなかったら。
そうは考えないようにしていたシュネリアだが、一気に不安が募っていく。
それはグランも同じようで、先程までの明るく振舞っていた姿はなく、真剣な目でヘイアスを見つめていた。

「……頼むぜ、ヘイアス。戻ってきてくれ」

シュネリアも同じように見つめる。
見れば見るほど、生きていないという事実を突きつけられているようで、辛い。
大丈夫、生き返る。
そう言い聞かせ、シュネリアは生命の雫をヘイアスの前へ翳す(かざ)す。
すると、突然石が輝きだした。
光の粒となり、ヘイアスの体に落ちてゆく。

「うぉ……!な、何したんだ!?」
「分かりません……!」

その光は瞬く間にヘイアスの体を包み、そして静かに収まっていった。

「ど、どうなったんだ?」
「……ヘイアス」

しかし、ヘイアスは起きなかった。
何も変わらず、寝たままの姿。

「……嘘、だろ?」
「……」

シュネリアはその場に崩れた。

「リ、リアの嬢ちゃん!」

慌てたグランの声がシュネリアの耳を通り抜ける。
続けて何かを言っている気がしたが、シュネリアには何も聞こえていなかった。

「……もう、終わりだ」

フィンブルとの約束。
フォーン軍の復興。
大陸の統制。
全てをやろうと思っていた。
しかし、ヘイアス亡き今のシュネリアには、何処から手をつけていいのか、何をすればいいのか……ショックのあまり考える事すら出来なくなっていた。
ヘイアスが生き返ったら、まずはフィンブルとの約束を達成しようと相談する。
それは覚えていた。

「……どう、して。私は全てを失わなければならないの……」



「……そんな事は、ないさ」


シュネリアは驚きのあまりに顔を勢いよく上げ、声のする方……ヘイアスを見た。
ヘイアスがシュネリアを見て、微笑んだ。
その瞬間、シュネリアの目からは涙が溢れる。

「ヘイ、アス……!」
「お……おぉ!?ヘイアス!?目を覚ましたのか!?」

2人を見つめるヘイアスは不思議な顔をしていた。
シュネリアは必死に感情を留めようとする。

「俺は……」

ヘイアスは自分の体を見る。
包帯で巻かれた体を確かめると、目を閉じた。
それを見たシュネリアは、また眠ってしまうのではないかと恐怖すると、もういてもたってもいられなかった。

「ヘイアス……!」

まだ体は痛むかもしれないと思うも、シュネリアはヘイアスの体を抱きしめた。
もう離さないと言わんばかりに、強く。

「……ごめん、リア。俺は……一体」

状況が読めていないであろうヘイアスに、今すぐ説明しなければならないと思うも、もう少しこのままがいいという欲求が勝っていた。
その様子を見ていたグランは、静かに医務室から姿を消していた。

「……リア。俺は、生きているのか?」
「生きてるよ……!生きてる……!」
「……そうか」

シュネリアは背中に温かいものを感じた。
ヘイアスがシュネリアの背中に手を回していた。

「ごめん、悲しませて」
「いいの……。こうして、戻ってきてくれたのだから」

生命の雫。
死者を蘇生させる事が出来る石。
まずはヘイアスに、この石の存在から説明しなければならないなと思いつつも、この幸せをまだ味わっていたいと思うシュネリアだった。
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