挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
フォーンキャッスル冷徹の姫 作者:佐久野宗希
21/32

21話 大切なものとは


「うぅ……」
「嬢ちゃん!」
「こ、ここは……」
「医務室だ!大丈夫か……?」

ウルリアが目を覚ますと、そこは見慣れない場所だった。

「私は……アイツと戦っていて……それで……」
「シュネリア様が助けてくれたんだ……。瀕死状態のお前さんをここまで運んだのはエルフ騎士団長のグラン様だ」
「そう、でしたか……」

自分はアイツに負けた。
ただ復讐するために力をつけてきたのに、簡単に負けてしまったような気がして……怪我のせいもあるかもしれないが、体に力が入らなかった。

「でも無事で良かった……。嬢ちゃんまで死んだら、俺がどうにかなっちまいそうだよ」
「私まで、とは……?」
「あ、あぁ」

オーキスが目線を違うベッドへ移す。
その目線の後をウルリアは目で追った。

「……!」

そこに寝ている人物を見て、ウルリアは驚愕した。

「……え?」
「俺のせいなんだ……。俺を庇って……ヘイアス様は……!」
「まだ可能性は……ただ気絶しているだけという可能性は、ないのですか?」
「……」

オーキスは静かに首を横に振った。

「そ、そんな」
「傷が……深すぎた」
「……」
「……嬢ちゃんも、無理すんな。死んだら……終わりなんだ」

ウルリアの手をオーキスはそっと握った。
その手はとても温かく感じ、同時に兄の顔を思い出す。
自分が寝れなかった時、いつも手を握ってくれていた。

「……」

その温もりを自分は忘れていたとウルリアは思った。
兄が死んでからは、ずっと1人だった。
1人で、旅を続け、力を求めて戦い続けていた。

「そう、ですよね」

死んだらそこで終わりで、復讐すら出来なくなる。

「あぁ。死んだら、笑う事も、泣く事も、怒る事も……出来なくなる」

そう言われたウルリアは、オーキスと初めて会った時を思い出した。
知らない自分を相手に、なんの躊躇いもなく話かけ、笑いあったあの時。

「俺と嬢ちゃんはまだ出会って間もないかもしれない。でもな、それでも俺にとっちゃもう仲間なんだ」
「仲間……?」
「だから、無理はすんな」

握られている手の力が少し強くなった。
復讐が出来れば死んでもいいとまで思っていたウルリアだが、オーキスの存在はその思いをかき消そうとしていた。

「私は……」

ウルリアは、自分が死んだら悲しんでくれる存在が居る事を初めて実感していた。

「とりあえず寝とけ」
「……はい」

ウルリアは目を閉じた。
しばらく見つめていたオーキスは、静かに呟いた。

「……5つぐらい差があっても、関係ねぇのかな……」

ウルリアの頬が若干熱を帯びた事は、ウルリアとそのベッド以外知る由もなかった。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ