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フォーンキャッスル冷徹の姫 作者:佐久野宗希
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2話 冷徹の姫の想い

ヘイアスが去った玉座の間には、1人の少女が無言のまま玉座に座っている。
かつてはスルドア王が座っていた場所。
隣の椅子は空っぽだ。
扉をずっと見つめたまま動かない彼女はドレスのような姿ではなく、銀の胸当て、動きやすさを重視した短めのスカート、フォーン家の紋章が刺繍された青いマント、靴は貴重な皮を使ったロングブーツ。
明らかに戦闘に特化した軽装。
髪は金色に輝くロングヘアーで、容姿は整っており、多くの兵士は彼女を見るとつい目を奪われて手や足を止める程だ。
そんなシュネリアは、フォーン城地下2階にある兵士の訓練所へよく顔をだし、自ら兵士相手に剣の稽古を申し出ている。
兵士にとってその時間こそが至福の時となっているが、当の本人は永遠と気づかないだろう。

シュネリア自身が出歩くのはもちろん自由なのだが、あの襲撃があった後、フォーン城2階の玉座の間に入れる者は兵士長ヘイアスだけとなった。
前まではここでパーティーを開いたり、商人を招いたり、伝令の兵士が飛び込んできたりと騒がしい場所だったのだが……。

ヘイアスが、その中にもシュネリアを狙って来る者が居るのではと注意を払った結果、自分以外の入室は禁止としたのだ。

ヘイアスとシュネリアは幼い頃から同じ時を過ごしてきた。
そして、シュネリアは密かに恋をしている。
しかしそんな感情を少しも表に出せた事はない。
それでも努力はしていた。
シュネリアに出来たアプローチと言えば、ヘイアスに"丁寧語で話さない"だとか、"愛称で呼びなさい"と言った程度だ。
そもそもこれらがアプローチになるのかも分からないが、当時のシュネリアには精一杯の行動だった。
そんな甘い思い出に浸りたいと目を閉じると、次に出てくる記憶は両親や仲の良かった友人の死。

「……っ」

本当は、今すぐ逃げ出したいと思う。
ずっと眠っていたいと思う。
何も考えたくない。
でも、そんな所をヘイアスに見られたくはない。

襲撃が収まった後、シュネリアの部屋に来た彼は言った。

『俺は、強くなる。賢くなる。無駄なものは切り捨てる』
『復讐はしないよ。でも。良し悪しを見定める力は、今以上に厳しくするべきだ』
『シュネリア姫。再建させましょう。フォーン軍を』

強い人だ、と思った。
ヘイアスだって、父親を亡くしているのに……どうしてこんなに前を向けるのか。
今も考えてしまう。

「私は……ただ普通に暮らしたかった」

仲が良い人達に囲まれて。
ヘイアスを隣に。
今は亡きメイドのルーナ、母親のルーン、父親のスルドア、ヘイアスの父フレデリックを隣に。

「でも。貴方は進むんだよね……。だったら、私も進まなきゃいけない」

親族を、友人を、仲間を失った悲しみを押し殺して。

「悲しいのは私だけじゃないもの。……兵士達の家族、そしてヘイアスだって」

シュネリアはヘイアスにそう誓った。
1人の時はどうしても弱気になってしまう。
でも、完全には堕ちない自信もある。
ヘイアスが生きている限り。

「まずは信用のおける、力のある兵士が必要」

シュネリアは歩きながら考える。
部外者で、神秘の印章に目が眩まない人物。
フォーン軍へ志願している冒険者の中に、1人ぐらいは居てほしい。
そう願うシュネリアは、1階へ降りようと扉に手をかけ開けようとしたが、同時に扉が開かれる。
勢い良く開けられた扉に驚き、シュネリアは尻もちをついた。

「いたっ……!」
「失礼しま……!あっ!シュ、シュネリア姫……!」

入ってきた兵士は目の前で尻もちをついているシュネリアを見て驚きを隠せないでいた。
多分、玉座に座っていると思い込んで開けたのだろう。
しかも、自分が開けた勢いで転ばせているという事にも瞬時に気づき、余計慌てふためいている。

「……ごめん、ヘイアス。ちょっと外の空気を吸いたくなって」

開けられる人物は1人しかいないので、当たり前にその名前を挙げる。
もちろんそこに居るのは、尻もちをついているシュネリアに手を貸そうと立っている兵士長ヘイアス。
しかしその顔の角度は何処かおかしい。
シュネリアを見ようとはせず、あさっての方向を見ているのだ。

「……ありがとう」

シュネリアは疑問に思いつつも、差し出された手を借りて、立つ。
あさっての方向を見たままのヘイアスは、何処か落ち着かない様子で言った。

「……例の剣士、ですが、見事ワーウルフとガーゴイルの討伐に成功しました。……今日中には、此方へ到着するでしょう」
「分かりました」
「……失礼します」

結局一度も目を合わせないまま、ヘイアスは扉を閉めた。

「……どうしたのだろう」

気が張っている今の彼女には、ヘイアスがなぜ逃げるように去っていったのかなんて気づかないだろう。

疑問のまま、シュネリアは扉を開けた。
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