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フォーンキャッスル冷徹の姫 作者:佐久野宗希
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19話 復讐

「ひ、姫!?」
「さぁ、こっちです」

牢屋にシュネリアが現れた。
兵士達は驚き、固まってしまった。

「……何をしているのです、早く」

いつ見ても美しい。
そんな事を5人が考えていたとは思いもよらず、シュネリアは急かしていた。

「は、はい……ありがとうございます」
「シュネリア姫……!」
「……助かりました」
「礼など不要です。早く」

シュネリアは兵士達と足早に1階へ戻る。
ウルリアがダークエルフをロープで縛り付けて待っていた。

「シュネリア様!」
「遅くなりました」

シュネリアはウルリアに目で礼を言う。
そして兵士達に向き直った。

「……戦いの疲労があるとは思いますが、貴方達5人へお願いがあります」

兵士達は呆然と立ち尽くす。
命令ならともかく、お願いと言われたからだ。

「この2人をお願いします」

そこにはダークエルフが2人居た。
1人は細い女のダークエルフ。
もう1人は男で巨躯なダークエルフ。
2人共得物は持っておらず、疲弊しきっている様子だった。

「かしこまりました!……それと、コイツを」

敬礼していた1人の兵士ゴルターは、シュネリアとウルリアにアインスポーションを渡した。

「これは……!」

ウルリアが驚く。
アインスポーションは、アルケミストという職業しか生産法を知らない。
よって数に限りがある貴重なポーションだったからだ。

「これは、ある冒険者から頂いた物です。どうぞお使いください」
「ありがとうございます」
「すみません……!」

シュネリアとウルリアがそれぞれポーションを受け取り、それを飲み干すのを確認したゴルターは、話を再開した。

「おそらく敵の総大将は男ロードナイトのダークエルフです。名をラクリマというようです」
「ラクリマ……!」

ウルリアが力を込めて名前を繰り返す。

「何処に……!」

手を震わせながら言うウルリアを、ゴルターは心配そうに見据えながら答えた。

「4階の屋上へ行くと聞いたのが最後だ」

それを聞いた途端、ウルリアは駈け出した。

「ウルリア!!」

シュネリアが呼び止めようとするが、振り返らずに走り去ってしまう。
それを見て、シュネリアはある事を思い出した。

「復讐の相手は……この2人ではない……!」
「シュネリア姫……?」
「後は頼みます」
「ひ、姫!?」

何が起きているのか分からないという顔をしているゴルターに言い残し、シュネリアはウルリアの後を追った。

「お願い、間に合って……!」

そう願いながら懸命に屋上を目指す。
途中、遠くから金属の重なる音が鳴る。
激しい金属音が鳴ったと思えば、次に聞こえるのはウルリアではない声が響く。
それを聞く度に、シュネリアは安堵すると同時に危機感を覚えた。

「いくら強いといっても、冷静さを失ったら……!」

ヘイアスが斬られた時、正直シュネリアは冷静ではなかった。
あの暗殺者は全く問題ではなかったが、オクルスとマヌスが相手の時。
力任せに剣を振っていたのでは、自信こそあったがオクルスにも遅れをとっていた可能性はある。
マヌス相手ではもっと早くやられていたかもしれない。

「でも、今ならマヌス相手でも」

ヘイアスが無事だった。
その事実がシュネリアの力と変えていた。
ヘイアス無しでは自分は生きられないとも同時に思う。
という事は、ウルリアにも自分と同じように大切な何かが居て、それを失った悲しみを復讐の力にしているのではと推測する。

「……ならばせめて、彼女の好きにやらせた方がいいのかな」

だが、シュネリア自信も大切な家族や友人を一度に失っている。
ヘイアスも大事だけれど、彼らのこともヘイアスと同じように大切だった。
ならばウルリアにも、シュネリアにとってのヘイアスのように、唯一無二の大切な存在が出来れば復讐ではない道も開けるのではないか……と、考えているうちに、目的地は目前に迫っていた。

「……結局、敵には会わなかった」

敵兵は全て倒されており、シュネリアは、ここでもウルリアの強さを嫌というほど思い知らされた。

「ただ走っていただけの私が追いつけないほどのスピードで敵兵をなぎ倒しながら進むなんて……」

4階の最上階へ近づくにつれ、金属のぶつかる音が大きくなってくる。
その音は連鎖的で、音を聞くだけでも激戦になっていることが伺えた。
シュネリアはウルリアの実力に圧倒されながらも、単身最上階の4階へ辿り着いた。








シュネリアが到着する少し前。
ウルリアは階段を駆け上がっていた。
展望台の中央には長机が置いてあり、そこに腰を掛けるダークエルフを見つける。

「あの服……髪型……あの目……!」

こみ上げてくるあの日。
自分の兄が殺された、あの日が鮮明に頭によぎる。

「……っ!!」

もう抑えられなかった。
ウルリアは剣先をダークエルフへ向け、目にも留まらぬ早さで突進した。

「来たか」

ダークエルフは、まるで分かっていたかのようにウルリアの剣先が自分の喉元に届く一歩手前で剣を抜き、弾き返す。
ウルリアは弾かれた軌道の力を生かして半回転し、首を目掛けて剣を振り下ろした。
その斬撃は一歩下がられただけで避けられるが、ウルリアの猛攻は止まらない。

「この日を待っていた……!ようやく、ようやく!」

激しい金属音が凄まじい早さで鳴り響く。
斬り上げれば、ダークエルフも同じように斬り上げて弾き、突きを繰り出せば横に弾かれる。
それを何回も放ち続け、弾かれる。
頭上高く振り上げた剣を振り下ろした時、初めて鍔迫り合いになった。
ダークエルフの顔が間近にある。
自分の敵だと再確認したウルリアは、剣に力を込める。
一方でダークエルフの方は不敵な笑みを浮かべていたが、次第に顔は歪んでいった。

「……?お前は誰だ?」
「…………!」

当たり前のように言われ、ウルリアは今まで以上の怒りに襲われた。
頭が一瞬熱くなり、真っ白になる。

「うあああああああ!!!」

鍔迫り合いだった剣を弾き、力任せに剣を振るった。

「うるさいやつだな。ほれほれ!」
「お前だけは!お前だけはああ!」

続けざまに繰り出される斬撃を軽々と弾き返される。
異様な早さで繰り出しているはずなのだが、ダークエルフには全て見ぬかれていたかのように、全ていとも簡単に防がれた。
時折隙を見てダークエルフはウルリアの肉体を斬っていく。
だが怒りが先行してるウルリアは構わなかった。
肉を斬り裂きバラバラにする事だけしか頭になく、剣と剣がぶつかる音はただもどかしいだけだった。

「……ふむ、見事な剣筋ですが」

ダークエルフはウルリアの剣を弾くのをやめ、体をのけぞらせる事で一撃を避けた。
そして留守になっているウルリアの左手にある盾を弾く。

「なっ……!」

剣にばかり集中していたウルリアは驚愕する。
盾は宙を舞い、やがて地面に落ちた。
ガコンッ!と音を鳴らし、転がる。

「相手が悪かったようですね」
「……!!」

ウルリアは肩に雷が落ちたかのような衝撃に襲われた。
一瞬冷たいと感じた肩はすぐに熱くなり、同時に片膝を地面についた。
剣を落とし、その手で肩を抑える。

「ああああ……!!」

あまりの激痛に、ウルリアは何も考えられなくなる。

「それでは苦しいでしょう。すぐ楽にしてあげますよ」

ダークエルフは剣をウルリアの頭上へ振り上げた。
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