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フォーンキャッスル冷徹の姫 作者:佐久野宗希
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17話 帰還


シュネリアは変な感覚に陥っていた。
自分の家なのに、なぜこそこそとしなければならないのか……。
占拠されていると分かっていてもなぜか納得出来なかった。

「……何か、不思議」
「不思議、とは?」
「だって、自分の家なのになんでこんな……」
「は、ははは……」

ウルリアは困った顔をしながら笑って返してくれた。
こんな事を言ってもただ困らせるだけだと分かっていたが、どうしても言いたくなったのだ。

「ささーっと取り返しちゃいましょう」
「提案があるのだけど」
「何です?」
「こそこそと行くのが面倒くさいので、もう兵士達をなぎ倒して行くというのはどうでしょう?」

また困らせる事を言っていると自分で思うが、もう本当にそう思っていた。
自分とウルリアの剣があれば、正直どんな敵も、数が多くても大丈夫だと確信していた。
あのマヌスとの戦いを見れば一目瞭然。
ウルリアに勝てる者、モンスターなど……。
しかしウルリアがすんなり賛同してくれるかどうかが問題だった。
いっその事、"これは命令です"とでも言ってしまいたかったがそれは心の奥底へしまう。

「……そう、ですね。ダークエルフ相手でしたら戦い慣れていますし。行きましょう!」
「ほんとに?」
「え、ええ……。その変わり、私が先に出ます!」
「あ、う、うん」

賛成してくれた事に驚いてしまい、つい素で返事をしてしまった。
ウルリアは勢いよく腰に下げている剣を抜いた。
シャリンと澄んだ音が城の中に響く。
その音を聞きつけたのか、数人の足音が近づいてきた。

「では、後に続いてください……!」

そう言ってウルリアは飛び出した。

「ぬ……!く、くせも、ぐああ!」

瞬間、1人の兵士は胴を斬られていた。

「こ、こいつ……!」

2人目の兵士がウルリアに向けて剣を振りかざす。
ウルリアはその剣を盾で弾き返し、兵士の心臓を一突き。

「ぐふっ……!」

続いて固まっている3人目の足を斬り、肩を目掛けて剣を振り下ろした。

「ぐあああ!!」

4人目は食堂の方へ走っていく。
その光景をただ見ていたシュネリアは、自分よりもウルリアの腕は上だと確信した。

「ふぅ。あ、シュネリア姫……もう出てきてもいいですよー……?」

ウルリアは一緒に戦っていると思っていたのか、少し不安そうに声をかけてくる。

「あ、ごめん……つい」

シュネリアは、シュネリア姫ではなく、完全にシュネリアで返事をしてしまっている事に気づいた。
少し顔を赤らめながら、とてとてとウルリアに近づく。

「1人を逃がしたので、これで沢山出てくると思います」
「そ、そうですね……。ではここで待ちましょう」
「後を追わなくてもいいのですか……?」
「これより先に進むと、少し広いので囲まれる可能性があります。ならここの方が戦いやすいと思いまして」
「なるほど……!さすがはシュネリア姫!」
「……ありがとうございます」

自分の家だしなと思いつつ、返事をする。
実際、ここの廊下は3人が横に並べるぐらいの広さだ。
数が多くても大丈夫だとは思ったが、囲まれるとそれはそれで面倒ではある。

「ウルリア……ここの兵士をある程度倒したら、私は地下の牢屋へ向かいます」
「牢屋……?」
「……きっと、フォーン兵達が囚われているはずです」

傷を負っている者もいるかもしれない。
そう考えるとすぐにでも救出したいが、確実に守りが堅いはずだとシュネリアは睨んでいた。

「分かりました。全力でサポートします!」

ウルリアは盾を構え直し微笑んだ。









フォーン城地下2階。
罪人などを収容しておく牢屋がある。
そこにフォーン兵は囚われていた。

「やはり矢が尽きた途端……だったな」
「誰もが予想できた事です。しかし、住民が全員セカドフォレスへ避難出来るだけの矢があって良かったです」
「あぁ……」

ゴルターは小さく頷いた。
城に避難させていた平民を全てセカドフォレスへ。
それはヘイアスから言われていたもう1つの策だった。
万が一フォーン軍が押し負ける事があった場合のために、セカドフォレスへすぐ逃げられるよう準備されていた。
セカドフォレスはフォーン城から南へ行くとある町だ。
ただ、正規ルートで行く場合は、西にあるスリーグリンという町の方が近い。
ではなぜセカドフォレスへ避難なのか。
それは、崖という問題さえクリアすれば、すぐ真下にあるセカドフォレスのが距離的に断然近いからだった。
崖に石を詰み、階段にする。
その作業をフォーン城が一度壊滅した時にヘイアスが進めていたのだ。

「なんというか……さすがヘイアス様だな……」

ゴルターはただただ関心するばかりだった。

「こりゃーもう父親であるフレデリック様を超えているんじゃなかろうか」

そんな呑気な事を言っていられるのも、ヘイアスのおかげだなとまた関心する。
今現在、この牢屋に居るのはゴルターを含め5人。
ヘイアスに告げられていた事をもう一度思い返す。
弓隊は矢の数が減ると同時にセカドフォレスへ避難させる。
矢の生産が一番多いセカドフォレスへ行けば、弓隊はまた力を取り戻せる。
次にスリーグリンへと行き、そこに居るフォーン兵と合流。
壊滅の知らせが届いているであろうアズィームファイマディーナからもフォーン兵と同盟軍でもあるプランシア女王のエルフ兵が援軍で駆けつけてくる手はずになっている。

「そうすれば、西からと北からでフォーン城を囲み、攻め落とせる……か。よくまぁここまで予想して準備出来るもんだな」
「全くです……!」

囚われているフォーン兵達もゴルターと同じようにヘイアスの策を思い返していたのだろう。
特に疲弊した様子はなかった。
むしろこれからだという顔さえしているようにゴルターは見えた。

「ん、何やら外が騒がしくないか?」

金属の擦れる音と、足音が騒がしく聞こえる。
どうやらダークエルフ達は上の階へ向かっているようだった。


「……もしや、もう援軍が……!」
「いや、それにしては音が少なし、近づいているというより遠ざかっているように聞こえるな」

この時ゴルター達は、まさかシュネリアが単身でここに現れるとは思っても居なかった。









「35!」
「ぐああ!」

倒した兵士を数えながら、剣を振るっている。
ウルリアは疲労を知らないのかと思うほどの動きを続けていた。
兵士が持っている盾は、盾で叩き落とし、空いた胸へ剣を突き刺す。
槍兵相手は盾で突進し、よろけた所を容赦なく剣を振り下ろす。

「……よりによって、アイツか」

オクルスは嘆息した。

「ふん、さっきは油断しただけだ……!今度こそ叩き斬ってやる」
「2人で行けば、やれるかもしれない」
「やれるかも、じゃないな。姫の姿は見えねぇ……!盾を持ってるお前が居るなら……簡単だ」
「じゃ、行きますか」
「おう」

マヌスが一歩前に出る。
ウルリアの元に駆け付けたダークエルフの兵士が、丁度全員やられたと同時だった。

「今度は、手加減しねぇ!」
「やめといた方がいいのに……」

ウルリアは完全に舐めている。
それが好機と見たマヌスは斧を構え、高らかに飛び上がった。
それを見たオクルスはウルリアに盾で突進する。

「ほっ」

軽い掛け声と共に、ウルリアは剣を振り上げた。
盾で突進したオクルスは軌道を逸らされるが、その軌道の遠心力を利用して回転して横に一閃。
剣を振り上げていたウルリアは、オクルスの剣が胸に触れるか触れないかという所で剣を振り下ろした。
パキィンと音を立てて、オクルスの剣は真っ二つになった。

「なっ……!」

そのまま倒れ込みそうになる所を必死に堪え、盾をウルリアの前へ持っていく。
同時にマヌスが上空からウルリアへ向けて大斧を振り下ろした。

「おらぁ!!」
「遅い」

ウルリアは体の向きだけを変え、ギリギリの所で斧を避けた。
ズガァァン!とけたたましい音を立てて廊下を抉る。
と同時に、ウルリアの剣はマヌスの頭目掛けて鋭い突きを放っていた。
オクルスは盾でマヌスの頭を守るが、予想以上の重さの突き攻撃で体勢を崩す。
反動で弾かれた剣をウルリアは力まかせに留まらせようとせず、そのまま回転。
その遠心力を利用し、オクルスの足を狙った剣が振り下ろされた。
斧の柄をマヌスはオクルスの足の前へ持って行き、それを防ぐ。
柄と剣の鍔迫り合いの中、マヌスは冷や汗を流していた。

「……まさか2対1でこれか」
「これを防がれるとは思いませんでした」

力はやはりマヌスの方が上だった。
どんどん押されるウルリアだったが、その隙を逃すまいとずっと隠れていた者が飛び出す。
青い輝きを放ちながら、シュネリアの持つ剣が大斧の柄を断ち切った。

「なに!?」

真っ二つとなった大斧は、ガランと音を立てて転がった。

「もう終わりです。おとなしくしなさい」

首筋へ剣を向けられる。
マヌスはもう殺されると観念した。

「……負けだ。殺せ」
「マヌス……」

オクルスも同じだった。
盾を捨て、両手を上げる。

「……フォーン兵は生きている。下の牢屋だ」
「そうですか」

シュネリア姫の声は冷ややかで冷たい。
冷徹の姫と言われているのは知っている。
何を言っても殺されるのだろうと思っていたからか、2人は次のシュネリアの行動に驚きを隠せなかった。
シュネリアはそれだけ言うと、剣を鞘へ収めたからだ。

「ちょっと……!アタシ達は」
「生かしておけば、またお前を狙うぞ」
「……ただ殺すだけが、裁きではありません」

後ろ姿のシュネリアは、冷たく言い放つ。
それを聞いたオクルスとマヌスは……ただ、呆然と見つめる事しか出来なかった。

「ウルリア。彼らを見張っていてください。兵達を救出した後、見張らせます」
「お気をつけて」
「大丈夫です。ここは、私の家ですから」

ウルリアは笑みをこぼす。
それと同時にシュネリアは地下に向けて駈け出していった。
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