挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
フォーンキャッスル冷徹の姫 作者:佐久野宗希
14/32

14話 実力

ヘイアスから渡された紙切れの印。
その場所には着いたが、一向に何も起きる気配はなかった。
森と川に挟まれたこの砂利道に策があるらしいが……。
不安に思いつつも、信じるしかなかった。

「ヘイアスは賢い……大丈夫……大丈夫。私なんかよりも、私の考える事よりも名案を考えてる……!」

両手を胸に合わせ、願う。

「!?」

突然シュネリアは立ち上がり、剣を抜き放った。
シャリィィンと音が響く。

「さすが姫様、もう分かったのか」

森から出てきたのは、盾を持った女のダークエルフだった。

「……もう追手が」

シュネリアは1人つぶやき、剣を構える。

「やる気満々だねぇ……いいね、アタシは好きだよ……そういうの!!」

ダークエルフは瞬時にシュネリアの剣の間合いへ入ってくる。
シュネリアは容赦なく剣を振り上げるが、ダークエルフに盾で防がれる。

「早い……!でも……!」

シュネリアはすぐに剣を引き、2撃目を繰り出す。
上段から斬り下ろすが、またもや盾で防がれた。
3撃目、4撃目と、まるで舞いの如く繰り出される斬撃を全てダークエルフの盾が防ぐ。
しかし、ダークエルフも余裕がある訳ではなかった。

「全て急所を狙った斬撃……!?」
「はっ!!ふっ!」

剣と盾の金属音が鳴り響く。
ダークエルフは全てを防いではいるが……劣勢だった。
剣は抜いたものの、反撃が出来ずにいた。

「まさかこんな強いのが居るなんてね……!」
「終わり……!」
「なっ!」

盾が吹き飛ばされる。
ダークエルフは盾の取っ手を握りしめていた。

「……取っ手と盾の間を斬られたのは初めてだ」
「まだやる気……?」
「……アタシの名は、コル女王親衛隊四天王の1人、オクルスだ……」
「……シュネリア」

名乗り、シュネリアは剣を構え直す。
同じくオクルスも剣を構え――2人が動いたのは同時だった。
シュネリアは剣を下段に構え、斬り上げる。
オクルスはそれをなんとか弾き、蹴りを繰り出す。

「……っ!」

シュネリアは剣を弾かれた力を利用し、半回転しながら飛び上がり、蹴りを回避した。

「これは避けられまい!」

宙に居るシュネリア目掛けてオクルスは鋭い突きを繰り出す。
シュネリアはその突きが来るのを予想していたかのように容易く避け、剣を振り下ろした。
剣は、突きを繰り出していたオクルスの腕を掠める。
切っ先が触れたのか、血が滲んでいた。

「く……!」
「……ふ!」

着地したシュネリアは、すぐさまオクルス目掛けて突進する。

「早すぎる……!」

その攻撃をなんとか避けようとするが、シュネリアの剣はオクルスの胴体も掠めた。

「……まさか、ここまで強いとは」
「……」

シュネリアは無言で振り返り、剣を下段に構え直した。
後ろへ抜かれたオルクスは振り返る。

「このまま殺り合ってたら、アタシがバラバラにされそうだよ」
「……嫌なら、去りなさい」
「そうさせてもらうよ……でも、この戦いを見た後でな!」
「……!」

オクルスが後ろへ飛び上がると、入れ替わりで違うダークエルフが森から飛び出してきた。

「……新手?」

そのダークエルフはグランよりも巨大な斧を持っていた。

「このコル女王親衛隊四天王のマヌスが、貴様の実力を確かめさせてもらおう!」

巨大な斧がシュネリアの頭上を掠めた。

「……!」

しゃがんで避けたシュネリアは、そのままの体勢で剣を振り上げる。
剣は巨大な斧を盾代わりにされ防御された。

「ほう……中々の力……だが!」

剣を弾き、よろけたシュネリアの足を巨大な斧が迫る。

「くぅ……!」

剣を地面に突き刺し、左手で刃を支える。

「得物事真っ二つにしてやるよ!!」

渾身の力で繰り出された斬撃だが、剣は折れずにシュネリアごと吹き飛ばした。

「……!」
「なぬ!?」

吹き飛んだシュネリアを見ながら、マヌスは驚く。

「剣が折れない……?」

シュネリアは空中で一回転し、着地する。
同時に突きの体勢で突進した。

「はぁあ!」
「ふん!」

マヌスは巨大な斧を頭上から振り下ろす。
振り下ろされた斧をシュネリアは左へ避け、半回転しながら横に斬撃を繰り出した。
その攻撃をマヌスは右手に持っている斧の柄で受け止め、すぐさま左手で拳を放つ。
シュネリアは逆へ半回転し拳を避け、そのまま横に斬撃を一閃。
しかしシュネリアの斬撃よりも早く、マヌスは左肘を繰り出していた。

「う……!」

まともに受けたシュネリアは転がりながら吹き飛ぶ。

「ひやっとしたぜ……!」

そう言いながら巨大な斧を肩に乗せ、高く飛び上がった。

「……ごほっごほっ」

腹を強打されたシュネリアは、うずくまったままで立ち上がる事が出来ないでいた。

「終わりだなぁああ!!」

マヌスは叫びながら巨大な斧を振りかざす。
しかしその攻撃は盾で防がれていた。

「何!?」
「盾でマヌスの斧を防いだ……?」

それを見ていたオクルスは驚きを隠せずにいた。
マヌスの腕力は大岩をも砕く威力のはず……それを、自分と同じ女で、同じ職業のパラディンが防いでいるのを見たからだ。

「……まさか、俺の斧を防ぐ盾使いがいるとは」
「命が惜しければ下がりなさい」

マヌスは後方へ飛び上がり、オクルスと並んだ。

「誰だアイツは」
「アタシが知る訳ないだろう」

いつもはダークエルフの本拠地とも言える地下の城に居る2人は知らなくて当然だった。
その盾を持った女パラディンは、一介の冒険者だからだ。

「私は冒険者のウルリア。もしやるのなら私が相手をしましょう」

ウルリアは剣を抜いた。

「ウルリア……なぜ、ここに……!」

腹を抑えながら立ち上がるシュネリアはウルリアの登場に動揺を隠せずにいた。

「ヘイアス様の地図を見ながら進みました所、ここへ辿り着いたのです」
「……ヘイアスの、地図」

ヘイアスが言っていた策とは、ウルリアと合流させるためだったのかとシュネリアは思った。
それほどウルリアの実力を買っていたという事なのだろうか。

「後は私にお任せください」
「……気をつけて」

正直ウルリアの実力はかなりのものだとは思うシュネリアだが、あのマヌスというダークエルフは疲労の溜まっていない本調子の自分でも負かす事は不可能かもしれないと思っていた。
だがそれは、奥で寝ているヘイアスを庇いつつの戦いであったからかもしれないが。
そんな相手をこの冒険者が倒せるのかとシュネリアは不安に襲われる。
しかし怪我を負っているヘイアスを担ぎながら、あの2人を回避しつつ逃げるなど出来るはずがない……。
盾を失ったオクルスならば問題なく今の自分でも瞬殺出来ると確信しているシュネリアだが、マヌスと同時相手となると……もうウルリアを頼るしかなかった。

「頼みます……」
「任せてください。10秒で片付けます」
「生意気な女だなぁ……。お前は俺の奴隷にしてやるよぉ!」

マヌスは巨大な斧を頭上に構え飛び上がる。
斧はウルリア目掛けて振り下ろされるが、それをウルリアは足を一歩下げただけで避けてみせた。
しかしすぐに巨大な斧は、地面をえぐりながら振り上げられていた……が、同時にウルリアの盾は斧よりも早く、マヌスの顔面を強打していた。

「ガハッ……!」

マヌスは予想外の攻撃に思わずよろける。
その隙を逃すまいと、ウルリアは首を目掛けて剣を放った。
マヌスはそれを見極め、間一髪で避けるが、切っ先は首の皮を斬っていた。

「ぬぐぅぅう……!!」

じんわりと血がにじむ。

「……見えなかった、全く……!」

その光景を見ていたオクルスは、次元の違う相手に驚愕していた。

「お、おいマヌス……!こいつはマジでヤバいぞ……!」
「……!……ん?お、お前……!何処かで……!」
「おい!マヌス!!死にたくなかったら退くぞ!」
「あ、あぁ……!」

オクルスとマヌスが何かを取り出し片手を上げる。
瞬間、2人の姿は残像を残し……そして消えた。

「……時空石で逃げたみたいです」

振り返り、シュネリアに言う。

「……うん」

シュネリアは呆然と聖騎士を見つめたまま、適当に返事を返していた。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ