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フォーンキャッスル冷徹の姫 作者:佐久野宗希
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13話 ダークエルフの四天王


水の流れる音を聞きながら、シュネリアは隣へ寝かせたヘイアスを見つめていた。

「ヘイアス……」


――
――――
――――――


あの時。
ヘイアスはシュネリアに抱きついた……いや。
庇って斬られたのだった。
ダークエルフがハーミット状態……姿を消して移動する事が出来る特技を持っていたようで、シュネリアとヘイアスは気づけなかった。

「ぐぅ……!」
「ヘイアス!!!」
「さて……まずは1人」

ヘイアスが斬られた……。
その衝撃はシュネリアにとって様々な感情を生み出していた。
無意識に剣を抜く。

「俺の早さについてこれる者などいない……」

ダークエルフはそう言い残し、姿を消す。
シーフという職業が得意とする技、ハーミット。
シュネリアも本では読んだ事があった。

「……」

一度使われると見つけるのが困難だと言われている。
一方で、姿を消しても殺気や音で認識されてしまうため、使いこなせるシーフは数少ない。
だが、このダークエルフに限っては違う。
何者にも気づかれないよう気配を消すことに特化した訓練を受け、且つ敵の急所を的確に狙う技力を持ち合わせた暗殺者だったからだ。
しかしそんな事をシュネリアが知る由もなかったが。

「……」

シュネリアは無言のまま剣を振るう。
青く輝く刀身が、姿を消しているはずのダークエルフを襲った。
青い軌道を描きながら繰り出される斬撃。
その早さは尋常ではなかった。
瞬く間に肩から腕を落とされたダークエルフは驚愕し、姿を露わにした。

「……んな、馬鹿な、なぜ、あ、あがあああああああ!!」
「……」

もがき苦しむダークエルフの首を容赦なく斬り落とした。
血糊を剣を振って飛ばし、布で拭き取り剣をしまう。

「ヘイアス……」

表情を変えないようにとシュネリアは気持ちを落ち着かせようとする。
だが、ヘイアスの背中から流れる血の量は、もはや助からないのではないかと思う程だった。
その姿を見て目頭が熱くなり、鼓動が早くなる。

「……リ、ア……ここ、へ」

ヘイアスが紙切れをシュネリアへ渡そうと手を出す。
シュネリアは飛びつくようにその手を握り、そっと紙切れを受け取る。

「なに、ここ……?川って……!」

その印がつけられた場所は、川と書かれている。

「そこへ……行けば……俺の策……が……ごふっ!ごふっ!」
「もうしゃべらないで!!!分かった……!分かったから……!」

シュネリアは自分が冷徹である事こそがヘイアスのためで、皆のためだと思っていたが、もうそんな自分を演じる余裕もなくなっていた。
ヘイアスが死ぬかもしれない。
最初にすべき行動だと思いつつ、がむしゃらになって腰に下げた布袋を弄る。
長い戦いの中で飲み干してしまったのではないかと不安になるが、最後の1つのハイポーションをヘイアスへ飲ませた。

「ごふっ!」
「ごめん……!頑張って……!」

血が邪魔をして上手く飲めないであろうヘイアスに、無理やりにでも口へ流しこむ。
そうでもしなければ、もう長くはない傷だった。
最初は噎せていたが、徐々に喉を通るようになったようで、ヘイアスは順調にハイポーションを飲んでいく。
やがて全てを飲み干したヘイアスは、シュネリアへ向けて微笑むと目を閉じた。

「……ヘイアス、すぐに助けるからっ!」

シュネリアはヘイアスを背中に乗せ、歩き出す。
この状態でもし襲われれば確実に斬られてしまうだろう。
だが、今のシュネリアに近づこうと思う者はいなかった。
あのダークエルフの暗殺者は姿を消していたのにも関わらず瞬殺された事実が、敵軍の兵士を硬直させていたのだった。







見ていた者はそこから動けずにいた。
一歩でも動き、音をたて、それを聞かれた瞬間……もう自分は死んでいるのではないかとしか考えられなかった。
ダークエルフの兵士達はシュネリアを呆然と見つめ、姿が見えなくなるのを確認すると安堵したように剣を下ろす。

「どうやら、お前達では手に負えない実力者のようだな」

その声を聞いた瞬間、兵士達は我に返ると同時に一瞬で血の気が引くのを感じた。

「……こ、これは!オクルス様……!!」

ダークエルフの兵士達は皆、跪き頭を垂れる。

「いいんだ。私が追おう」
「わ、我らも……!」
「今のを見て、お前達が勝てるとでも?」
「……」
「帰ってマヌスに伝えろ。とても良い獲物を見つけた、とな」
「は、ははぁー!」

女ダークエルフの騎士オクルス。
女王コルの親衛隊の1人。
剣と盾を自在に操り、特に盾を使った防御法を破った者はいないと言われている。

「フォーン軍のお姫様……シュネリア姫、か。その実力、楽しみだ」

オクルスはそう呟き、シュネリアの後を追った。







「獲物だぁ?」
「は、はい……!」

ダークエルフの本陣にマヌスという男は居た。
その体は大きく、ダークエルフの中で一番の怪力だと言われている。
兵士の訓練をしているのは、このマヌスだった。

「んで、オクルスは何処行った?」
「そ、それが……後を」
「……そう、か。お前さ」
「は、はい!」
「ここの総大将になってくんね?」
「……へ?」
「じゃ、後は頼んだ」

そう言って、マヌスは立ち上がった。
自分の2倍ある斧を携え歩き出す。

「ま、待ってくださ……ひっ」

斧の刃を軽々と兵士の首元へあてる。

「いいんだよぉ……お前はここに座ってりゃ。お前に口答えした奴らは俺が全部頭をかち割ると、そう伝えとけ」
「……か、かしこまりました」

刃を兵士の首元から離し、斧を肩に乗せたマヌスは見たことのないシュネリア姫を求め走り出した。
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