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フォーンキャッスル冷徹の姫 作者:佐久野宗希
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12/32

12話 1人

フォーン軍壊滅。
その知らせは瞬く間に広がった。
丁度マディーナ荒野で一狩り終えていたウルリアはすぐに出発した。
この伝令を聞いて、動いたのはウルリアだけではなかった。
ヘイアスが用意させていた馬車も同時に動き出した。

「そこの冒険者さん!ヘイアス様のとこへ行くんだろ?」
「は、はい?」

突然声をかけられてウルリアは驚きを隠せずにいた。
その男は自分より年上に見えた。
身なりは平民のものではなく、貴族とまではいかない。
しかし、それなりに良い格好はしていた。
髪はそんなに長くなく、色は茶色。
商人のような格好だが、それにしては立派な服装だった。

「ヘイアス様が、『壊滅の伝令を耳にしたら青髪の剣士様、ウルリア様と共に"この場所へ"』って」

そう言う馬車の主人は、ウルリアに地図を渡す。

「これは?」
「そこでヘイアス様が待ってるらしいんだ」

その記された場所は、間違いなく水のある場所だった。

「……ここは、川なのでは」

ウルリアは不思議そうな顔で言葉を返す。

「あぁ……そうだな。地図では"川"だ。だがなぁ……裏ルートっていうもんもあるんだな」

そう言って手を差し出してきた。

「申し遅れましたな。私は商人ギルド長の代表、オーキスって言います。とにかく、早く乗った乗った!」

商人ギルド長……。
なるほどと合点がいく。
ただ、ウルリアにとってオーキスの見た目は、ギルド長にしては若く映った。
40~50歳のおじ様だと勝手にイメージしていたからだ。
このオーキスと名乗った男は、20~25歳ぐらいに見える。

「あ……私は、ウルリア、冒険者です」
「知ってる知ってる」
「あ……!はぅ」

顔を赤らめながら馬車に乗り込むウルリアを見た馬車の主人……ギルド長のオーキスは、微笑みながら出発した。






戦場を迂回はしているものの、血生臭さは漂ってくる。
相当激しい戦いだったのだろうか。

「……戦争の匂いだな……はぁ」
「敵はダークエルフなのですか?」
「ん、そうだな。……だが、過去の戦いで生き残ってる残党が主犯だと噂されてる」
「過去の……」

ウルリアも話では聞いた事があった。
数年前、フォーン城を襲ったエルフ軍は、フォーン王を討ち取ったと。

「そのエルフの残党がな、ダークエルフと手を組んで神秘の泉を狙っているらしいんだ」
「神秘の泉……!?」
「あぁ……。なんでも願いが叶うんだろ?」
「そうらしいのですが……」

通っている道はあまり整備されていないのか、馬車は時折大きく揺れながら順調に進んでいく。
地図で川となっていた場所の一部は砂利道になっていた。
確かに川も流れてはいるが、全く深くなく、水浴びやキャンプをするのに最適な場所に見える。
ここにテントをたて、その奥に広がる森へ狩りに出たとしたら……しばらく居座れそうなどと考えてしまうウルリアだった。

「冒険者は神秘の泉には興味ないのか?」
「……興味がある者もいるとは思いますが、多分大半は信じておりませんよ」
「そういうもんかね」
「えぇ……。それよりも自分の強化をする者の方が多いです」
「……あははは!まぁそうかもなぁ!」
「……そんなに笑う事でしょうか?」
「いやぁ普通に考えりゃー伝説を信じるよりも合理的だと思ってな!俺ら商人と一緒だと思ったら、何かな……!くくく……!」
「……もぅ、あんまり笑うと話しませんよ……!」
「ひ、ひひひ……!す、すまんすまん……!」
「全く……ふふ」
「って、嬢ちゃんも笑ってんじゃねぇか!」
「貴方のせいですー」

そんなやり取りの中、オーキスの声が少し暗くなった。

「……こんな普通の子が、剣を振り回さなきゃいけない時代になるなんてな」
「な、なんです?急に」
「なんとなくだよ……。ただ……」
「ただ?」
「こっちは儲かっていいんだがな!」

そう言ってまた笑い出す。
変な人だなと思いつつも、今が楽しいと思えた。

「しっかし、綺麗な顔してんなぁ」
「え?」
「顔の傷には気をつけろよ?」

変な人は変な心配もするんだなぁと思うと同時に、ウルリアは自分が褒められている事に気づいた。

「そ、そそそんな!……そんな事を言われたのは初めてです」

自分の頬に両手を当て、冷やす。
そうでもしないと、赤みを帯びそうだった。

「お?照れてんのか?」
「だ、だだ誰が!!」
「俺は嬢ちゃんとしか話してねーんだがなぁ」
「……あぅ」

ウルリアは膝を抱え、その中に顔を埋めた。

「嬢ちゃんは素直だなぁ」
「も、もうやめてくださいーー」
「はははっ!」
「もーー」

こんなに喋ったのは久しぶりだとウルリアは思っていた。
ずっと1人で旅をしていたので、感情を表に出す事は少なかった。
仲間が居たら、こんな風に楽しく旅が出来たのかなと思った時、オーキスが今までとは違う雰囲気で話しかけてきた。

「……なんか聞こえねーか?」
「え?」

オーキスが馬車の速度を緩める。
かすかだが、遠くから金属のぶつかり合う音が聞こえた。

「オーキスさん……!」
「あぁ……、こりゃー戦ってるな」
「……まさか、シュネリア様達が襲われているんじゃ」
「……ふむ、そうかもしれん」
「私、見てきます」
「……馬車じゃバレちまうかもしれねぇもんな……。よし、森へひとまず隠そう。俺も行く」
「……戦えるのですか?」
「ばかやろう!俺が戦えるように見えんのか!?」

そう言ってニカーっとするオーキスを見て、ウルリアは苦笑いを返したのだった。
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