ルイ14世が出来るまで
神速果断のシャープネスで、王の法について書いているので、王様の事を書きます。
うちの世界では、王政国家のくせに法の中心が一つじゃない。「王の法廷」と「剣の法廷」っていう2つの形式があって、決闘で勝ったら王の権威にも口出しできるんです。
……我ながらアホな国家構成ですなー、一神教の経典に神様に逆らう方法をわざわざ記すようなものだ。
太陽王のルイ14世の時代。絶対王政が完成し、偉大なる王が統治し、壮麗なヴェルサイユ宮殿が完成した時代。歴史的みても、輝かしい時代です。
だけど、この時代はブルボン王朝の終末期であり、ルイ14世こそがフランス革命の引き金を引いたという解釈もできるんだ。「魔法使いのお仕事」でも少し書いたけど、魔女裁判みたいなのが流行する時代にまともな法が働いているはずがない。
もともと、ルイ14世は期待されない王だったらしい。リシュリュー以降の枢機卿は、王を遊ばせて、放蕩行為を存分にさせた。王を無能化して政治への興味を失わせる事で実権を掌握したんだ。
また、このときに王の無能さを宣伝する事も忘れなかった。宮廷内で、ルイ14世を支持するものは少なく、若い放蕩者を「プチムッシュー」と馬鹿にする声も少なくなかったとか。
この思考は、後々の枢機卿。「リシュリューの亡霊」の異名をとった、マザラン枢機卿にも受け継がれていったらしい。つまり、ルイ14世は、徹底した無能者、放蕩者になるための英才教育を受けてきたと言えるかもね。
ルイ14世は、王家の血を引いているかさえ疑われていたらしい。父親のルイ13世とアンヌはとても不仲だったらしいから。三銃士でも「アンヌ、不倫説。イギリスのバッキンガム公と密談?」っていうのが、首飾り事件として描かれている。
これは、ヴェルサイユ宮殿の観光ガイドが言っていたんだけど、ルイ13世が酔っ払って雨の日にアンヌの屋敷を訪れた時にルイ14世を身ごもったらしい。酔っ払った夜に生を受けた子どもは、無能者になるって迷信もあったとか。
鉄仮面伝説、ルイ14世双子説。なんかも、ルイ14世の出自を疑う題材で、ブルボン王朝最大のなぞと言われている。ルイ14世の時代に絶対王政の根幹である王の長子相続違反体制を揺るがす出来事であり、伝説なんだな。
とまあ、産まれに呪われ、支援者はなく、学問を自らするには恵まれず、アレクサンダーのように学友=親友=側近という教育環境に恵まれなかったのがルイ14世というわけ。それがある時をきっかけに人が変わったように政治を始めるんだ。これも双子説を加速させる理由なんだけど。
このあたりのエピソードは、ディカプリオの「仮面の男」、藤本先生著の「ブルボンの封印」。SAゴロン「アンジェリク」、デュマの「三銃士」、遠藤周作「王妃 マリー・アントワネット」。などがオススメです。フランスの国風とか歴史とか、思考を学ぶにも、学んでから深く読み込むにも面白いですよー。
絶対王政を完成させたもの、太陽王の異名を持ちながら幸福な少年時代を過ごしていないみたいね。だけど、これはアレクサンダーも、武田信玄も同じ事、歴史的な偉人と言うのは家庭環境、教育環境が最悪であった場合が少なくないんだな。
それをいうなら、カエサルだって30歳になるまではローマ随一の借金大王で、放蕩者で、女癖が悪かった。それでも、イタリア人に「カエサルみたい」が最高のほめ言葉になっている。ルイ14世が輝くためには、ヴェルサイユ宮殿という装置の登場が必要だと思う。