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第三部 いざ本番 2-1話 アルビオンの地
エル・シド・フェレーリ・ド・ワルドです。
元は日本人の日野正人、転生者です。
そう、原作にはでてなかったワルド子爵の弟になってしまったのです。


船員たちの声とまぶしい光で、目をさまします。
昨日は自分で思っていたよりも緊張が続いていたせいか、船が出港したら安心してそのまま眠りについてしまったようです。

「アルビオンが見えたぞー!」

との船員の大声が聞こえます。

雲の切れ間から、黒々と大陸が覗き、はるか視界の続く限り伸びています。
地表には山がそびえ、川が滝のように流れ落ち白い霧となって、大陸の下半分をつつむその幻想的な眺めはもう数回見ていますがあきません。
ルイズの方が見ている回数は少ないはずなのに、そのあたりの感動はなさそうに見えます。
サイトは口をぽかんとあけて、間抜けのように立ち尽くしています。
やはり前世の記憶があるせいか、自分とこちらの人間とでは感性が異なるのかもしれません。


さて、各メンバーの確認をしておいた方がよさそうだな。

ジャン兄さんだけども、味方であってほしいが、昨日の様子はなんとなくおかしい気がするな。
特に『ライトニング・クラウド』は命を奪うほどの魔法だけど、それよりも他の魔法で相手から情報をひきだした方が良いと思うのだけどな。
まあ、後できいてみるか。

マルグリット副隊長は、レコン・キスタかもしれないっていう信憑性がどの程度だろうかだ。
普通に気をつけていれば、格下をなめまくるトリステイン貴族の典型みたいなタイプだから、初手ならキュルケでも相手ができるだろうな。
本気になられたら火系統で中位のトライアングルクラスだし、軍人だから、自分だと裏技かな。タバサなら多分余裕で勝つだろう。
ジャン兄さんが味方なら、それこそ心配はいらない。もしジャン兄さんが味方でなかった場合が問題だな。
ジャン兄さんが今さらレコン・キスタに入るとは考えづらいが可能性としては残っていそうだね。
しかし昨年のレコン・キスタとつながりのありそうな貴族への見せしめから時間が立っているから、新しい何かのネタを仕入れたのか。
それよりも可能性が高そうだとしたら『神の頭脳・ミョズニトニルン』か、あるいはガリアの虚無の『担い手』はジョゼフ王ではなくて、そっちが別にしかけてきているのか。
そうすると、マルグリット副隊長とジャン兄さんが組んでいる場合と、別系統で動いている可能性もあるな。
こちらも、まずはジャン兄さんに昨日のことを聞いてみて、また考えてみるか。

タバサは任務から帰ってきたばかりで、昨年の休み方をみていると新しい任務命令までは多分あと数日はあると思うから、今回は純粋にキュルケに巻き込まれたのだろうな。

純粋に味方といえるのはキュルケ、ギーシュ、サイト、ルイズか。
タバサも今のところ味方と考えてよさそうだよな。
ルイズはある意味切り札だな。あの魔法の爆発の威力を他の人間に気付かれないのが一番だろう。
ジャン兄さんが、あの魔法の爆発をどこまで評価しているか問題だろうな。

アニエスはトリステイン軍人だけども平民だからレコン・キスタは気にしなくてもいいが、上役であるマルグリット副隊長や、命令系統は違うがジャン兄さんから命令を受けたときの挙動がよくわからないな。
命令の内容によって動きはかわるような気はするが、どんな命令がだされるかだな。
アニエスは純粋な味方とも、そうでもないともいえないところか。

学生組は味方だけども、軍人組が信用できないって泣けてくるな。



さあ、昨日のことをジャン兄さんにでも聞きますか。
ジャン兄さんが一人はなれて立っていたのでちかより

「ジャン兄さん。昨日の襲撃ことで話があるんだけど」
「そういえばお前の作戦は手早くたてていたが、事前に襲撃を予測してたのか」
「情報屋によったら仮面をつけた貴族が傭兵達を集めているというのは聞いたけれど、襲撃を想定なんていうのはさすがに心配のしすぎかなっと思って」
「まったく、お前はいつも後から言いやがって……次にそういうことがあったら、こっちにも情報を入れておけ。昨日の作戦を話す時に風系統のメイジを心配していたが、サイレントをかけておけば問題なかっただろう。まあ、それでも短時間でよく考え付いたものだな」

元々もってたプランに、アリーが使い魔になって、さらにカスティーリャとも話しをしてさらに2日かけて修正したプランだったけどな。
それでも、サイレントが抜けてるプランだったか。

「ジャン兄さん。うん、次からそうするよ」

いつもこんな感じで答えているけど、そういえばまもってないな。

「ところで、風の偏在3体だせるのにどうして2体だなんて言ったの? それと『桟橋』の方だけど、なぜ『ライトニング・クラウド』を使ったの?普通相手を捕まえて情報をとろうとしない?」
「あー、今は護衛だがこれも軍事行動の一貫だ。学院の生徒であるお前に話す必要は今はないな。トリステインに戻ったら話せる範囲で話してやる」

これは肝心なことは聞けそうにないな。
ジャン兄さんが時々グリフォン隊での活躍を自慢げに話すのに、肝心の細かいところになると口をつぐむんだよな。
普通のトリステイン貴族だったら、絶対にべらべらしゃべるのにな。

「そうだな。ヒントぐらいはやろう。お前が昔いってた、奥の手をさらす時にはもうひとつ奥の手を持っておくだな」

げっ、囲碁を打つ時に囲碁の格言とか独り言を言う癖があるんだけど、そんな前世で読んだコミックの言葉もどきまでしゃべったような……気もするな。

「っということは、まだ、風の偏在はもっとだせたということ?」
「それこそ、お前が得意な『さてね』ってやつだ」

どっちにしてもジャン兄さんが『軍事行動』と言ってきたので、今の時点でこれ以上の情報はもう入手できそうにありません。
アルビオンのスカボローの港につくまでもう少し考えて見ますか。


ジャン兄さんの風の偏在はもしかしたら5体だせるということか。
敵だとすると、自分からそんなヒントを出すなんておかしい。
それとも、性格を知っている上での錯乱情報を流してきているのだろうか。
下手に兄弟っていうのも良し悪しだなっていうか、そもそも、この世界でジャン兄さんの弟として生まれたのが問題なんだけどさ。

それでも相手から情報を入手したいはずなのに『ライトニング・クラウド』のことを考えるとほぼ一撃で相手の命を奪うというのもおかしいな。
けれども、その後、階段を駆け上がったってことは追っ手を心配してたのか。
ジャン兄さんの行動がどっちにでもとれるな。まったくもって、もう。


ジャン兄さんが敵だった場合は、マルグリット副隊長との関係も複数考えられるな。
裏切っていない。レコン・キスタで、なんらかで手を握っている場合。レコン・キスタでも、ジャン兄さんとは連動していない。

より悪い方向を考えるなら、ジャン兄さんとマルグリット副隊長が手を握っていて、情報を交換しあっている場合だよな。
昨日、情報屋にいったとき、ジャン兄さんとマルグリット副隊長が一緒に行動してたし、その前の王宮から一緒に行動してたみたいだから、どれだけ情報交換してたのやら。


こっちの方で相談できそうなのってタバサかキュルケか。どっちも、トリステイン貴族じゃないな。
タバサは後で、敵にまわるかもしれないから必要以上情報をまわせないな。
問題はキュルケに相談できるかだが、今はサイトに夢中だけどサイトが実際に活躍したのって実質上ギーシュの時だけなんだよな。
キュルケに相談すると昨晩の襲撃の対処がうまくいきすぎたから、以前みたいにせまられるかもしれない。いくらなんでも今はルイズがまずいな。
これって、四面楚歌とか、八方ふさがりとかいうんじゃないんだろうか。ちょっと、ウツです。


仮にジャン兄さんを敵だとすると、ジャン兄さんの原作の行動や、過去グリフォン隊での話を聞く限りは、敵を分断して各個撃破が多いよな。
そうやって考えると、昨日の話で自分に帰らせる時に他の生徒も帰らせようとしたのは、その作戦だな。

あれ? そういえばサイトが『ガンダールヴ』だなんて知らないだろうし、タバサも上位のトライアングルクラスとしか情報を渡していないから、
ジャン兄さんが寝返っていたら一番に狙われるのはもしかして自分?
えーと、身内だからって甘くしてくれないかなってのはさすがに甘いだろうな。
隠していたつもりの性格も一部は、わかっているみたいだし、あとはどれだけ裏技が通じるかと逃げ切れるかだな。
そもそも、ウェールズ王子の命と手紙が目的という可能性が高そうだから、殺される心配は少ないかな。
ルイズの力がわかっていても、原作みたいに婚約者じゃないから狙われる可能性は低いと思うけれどな。うーん。

逆に、裏切っていないと考えても、言動に矛盾はないように思えるというのもあるし。

『えーい。いったいどっちなんだーー』



原作みたいに、王党派の船はでてきません。
でてきてくれると楽なんだけどコースはだいたいきまっているが、時間も中途半端な時間だからそうそう会えないよな。
考えても結論がでないうちに、スカボローの港につきます。

本当ならシティオブサウスゴータによって、詳細の戦況情報を集めてからニューカッスルにでむきたかったのですが、ジャン兄さんが

「船長の話では、ニューカッスル付近に陣を配置した王軍は、包囲されて苦戦中のようだ」

とのことで、ジャン兄さんとルイズとの間で話しをしています。
反乱軍(貴族派、レコン・キスタ)の陣中突破を指示してきます。

「陣中突破しかあるまいな。スカボローから、ニューカッスルまでは馬で一日だ」
「反乱軍(貴族派)の間をすり抜けて?」
「そうだ。それしかないだろう。まあ、貴族派も公然とトリステインの貴族に手出しはできんだろう。スキを見て、包囲網を突破し、ニューカッスル付近の森へと向かう。ただ、夜の闇には気をつけないといけないがな」

といってたが、包囲網を突破するには昼間なんて難しいので、

「どうせ近寄るにしても、闇夜にじょうじて包囲網を突破するした方がよいでしょう。そこからニューカッスルの近くの森から、ギーシュのヴェルダンデでニューカッスル城に入るのが良いのじゃない」

元々の計算では、あと3日前後でニューカッスル城が落ちると予想されているので、安全を見ても半日は大丈夫でしょう。
先に落城したらしたで、こっちはかまわないんだけどね。
昼間っから包囲網突破だなんて、この人数じゃ無理っぽいしね。

「それも、そうだな。それで行くか」

馬を買って、ニューカッスル城を目指します。
途中宿にとまれたのはいいかな。
まともに馬を使って一日で行くなんて、野宿ですからね。
寝ずの番なんてこのメンバーじゃ、ちょっと怖いです。


けれども、ジャン兄さんがたてた最初の作戦はちょっと無理があるような気はします。
あらかじめ、情報を貴族派レコン・キスタにわたしているのか?
ジャン兄さんが直接というわけでなくて、マルグリット副隊長が連絡の橋渡しというのも考えられるが、ジャン兄さんの風の偏在を利用する方が確実だよな。

まあ、ジャン兄さんが敵でも味方でも、そもそもトリステインの衛士隊3人が目立つ上にトリステイン魔法学院生徒の制服5人というのは
目立ちすぎて手をだす方もそれなりの覚悟がいるでしょうけどね。

そして、ニューカッスルの地に近づいていきます。



*****
あとがき

主人公は勝手に自縄自縛に陥っています。まあそういう性格ということで。
ちなみにタバサは、トランプの賭け事の仕事をしてきたので精神力はあります。タバサの外伝を確認したらちょうどその話だった。


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