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作:東河哲也



28.屋敷到着、奇妙な再会



 しばらく待っているとやがて屋敷のドアが開き、中年女性が胡散臭げに小次郎を眺め回した。
 「どうも、わたくし橋本小次郎と申すものですが……」
 小次郎はしどろもどろに自己紹介した。
 「ああ、ジェリーから聞いてるよ。ついておいで」
 女中は雷のような迫力のある声でそう言った。屋敷の中はやはり活気に溢れていた。天井が高く巨大なシャンデリアがキラキラと輝いていた。奥には螺旋の階段があり、そこらじゅうにテーブルやソファーが並べられている。細長い窓もいくつもあり、窓の外を眺めじっとパイプをくゆらしている紳士も見られた。室内は立派な身なりの紳士たちでごったがえしていた。皆、一人たたずむ者は自らの思考に、語り合うものはその話題に夢中になっており、小次郎のほうには誰一人目をくれようともしなかった。小次郎は女中に促されるままに奥の螺旋階段を上がり、そのさらに奥へと案内された。
 「じゃあ、こちらの部屋をお使いください。何かありましたらこの鐘を鳴らしてください。それでは」
 迫力のある大声で吐き捨てるようにそういうと女中は出て行った。部屋の中は広々としていて、外に通じる長細い窓が二つついていた。そしてテーブル一つにソファー四つの一組が二つとテーブル一つに長いソファー二つのセットが一組用意されていた。一番奥には立派なベッドが置かれていた。小次郎はふらふらとベッドのほうへ向かいすぐに眠ろうと思った。なぜかとても疲れきっていた。
 ちょうどベッドに倒れ込んだとき、ドアがノックされる音がした。小次郎は勢いをつけてなんとか立ち上がり、ふらふらとした足取りで歩きドアを開けた。そこにはやはり八の字の口ひげを生やし茶色の髪の毛を五分わけに丁寧に撫で付けた立派な風貌の紳士が立っていた。小次郎はその紳士を見てどこかで見た顔だなと思った。
 「どうも小次郎殿。お久しぶりです。その節はお世話になりました。小生がこの屋敷の主人、ドン・ホセ・ピートでございます」
 主人は胸を張ってそう自己紹介した。どうも小次郎にはぴんとこなかった。彼はしばらくぼんやりとわれを忘れて主人の顔を見つめていた。
 「あ、どうもこんにちは。金山小次郎と申します。どうぞ、よろしく」
 我に返った小次郎は慌ててそう挨拶をかえした。
 「わっはっは。ようこそ、我が屋敷へ。お互い見違えますなあ。今、小生はこちらの世界で医者としての活動もしておりましてな。小次郎殿のそのブツブツと目と鼻は小生が綺麗さっぱり治して差し上げましょう。まあその件についてはいずれ後日、改めて……何はともあれ、ずいぶんお疲れのようだ。今回は長居いたしますまい。ではごゆっくりとお休みくだされ。ではまた」
 主人は手を差し出し、小次郎は力なくその手を握り返した。主人は立ち去った。
 『ピート?ピートは全身傷だらけの荒くれ者だ。あんなのっぺりとした綺麗で品の良い顔立ちである筈はない。だがまあ確かに目つきや表情の動きはピートそっくりだったな。まったく何がなんだか』
 小次郎はぼんやりと呟きながら引き込まれるようにベッドの方へと向かい、倒れこみ、そのまま死んだような長い眠りについた。













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