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第62話:失わない過去
「誠矢、悪い。テストがピンチなんだ」
「はぁ……で? オレに何の関係が?」
ある日の放課後、クラスメイトである(今となってはであった)海原俊行うなばらとしゆきにオレはそう返した。
「俺達、友達じゃないか」
「残念ながら違うので話は終わりだ」
「冗談でもそれはひどくないか!?」
「……すまない」
「それは冗談に対する謝罪だよな………?」
「……………すまない」
「……まぁいいや。とにかく教えてくれ」
「妹さんに教えてもらえばいいじゃないか」
俊行にはかなり可愛い妹がいた。とても優秀な。だから一学年くらいなら上の内容でも教えられるらしい。
「何度も言うけど、雪奈せつなは妹じゃなくて、血の繋がらない従姉妹だよ」
「そして恋人なんだっけ?」
「……何度説明しても忘れられるのって結構きついな」
「悪いな」
オレは笑顔でそういった。
「…………ぐだぐだ言ってないでとっとと教えろぶっ食べるぞコノヤロウ」
何故かキレる俊行。わけが分からない
「仕方ないなぁ……」
オレは面倒臭いと思いながらも了承。
「で? 何が分からないんだ?」
「フェルマーの最終定理」
「…………テストにでるのか?」
「きっちり百点分」
「解答時間は?」
「50分」
ムリゲーだとオレは思った。
「そんなの出来るかよ。あの証明を50分て」
「証明? 定理は利用するだけらしいけど」
「ならなんとかなる…………てか、どんな問題を作るつもりなんだ?」
「分からないから聞きに来たんだろ?」
「残念ながらオレも想像がつかない」
「…………じゃあ英語を教えてくれ」
「……面倒臭い」
語学ほど教えるのが大変な教科はない。
「そういえば、お前の大好きなあいつも教えて欲しいって、言ってたな」
「お前……あの話を信じてるのか?」
「いや、流石にないとは思う。いくら可愛いと言っても」
「……だったら言うなよ」
「悪い悪い」
「……ふぅ。じゃあ、まとめて教えてやるか。俊行、お前の家でいいよな?」
「ああ。あいつもオレが呼ぶから」
「そっか。じゃあ、準備が出来次第行くから」
「ああ、よろしく頼む」



このやり取りをオレは覚えている。一言一句覚えている。失わなかったオレの記憶の一つだった。
完結編スタート


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