第38話:前進
「先生。オレ、頭悪いんで屋上行ってもいいですか?」
授業中。オレは手をあげて発言する
「………哀川。それは、ボケか?ツッコミ待ちか?」
お笑いが好きだという数学の教科担任の男性教諭は、何故か、こめかみをピクピクさせながらオレに聞く
「至って真面目ですけど、ツッコミたいならどうぞ」
「痛いんじゃなくて悪いのか!?というか悪いんだったらどうした!?だいたい哀川は頭悪くないだろ!ていうか何で保健室じゃなくて屋上なんだよ!?そもそも屋上は立ち入り禁止だ!」
一息でツッコミを入れる先生。お笑い好きなだけあって流石だ
「ちょっと、すべった感じはするけど、さすが先生」
素直に賞賛してみた
「やっぱりケンカうってるだろ」
何故か気分を悪くする先生。訳が分からない
「というわけで、じゃ行っていいですか?」
「………フェルマーの最終定理の証明ができたら行っていいぞ」
「時間的に不可能です」
一応、証明の内容は憶えているが、あの内容を授業中だけで書ききるなんて不可能だ
「仕方ないな……じゃあ、この世界が何次元で構成されているか、最新の学説をもとに答えてみろ」
「いきなり科学の話になりましたね」
「別にいいだろ。これなら一瞬で答えられる」
まぁ、知ってることを答えるだけだし楽でいいけど
「「(え?普通に三次元じゃないの?)」
クラスメート達があちこちで答えが何なのか話あっている
「十一次元です」
『は?』
クラス中がハテナマークになったのが分かった
「………正解だ。行っていいぞ」
「ありがとうございます」
適当にあいさつをいい、席を離れる
「………誠矢君」
教室をでる前に声をかけられる
「何かようか?暁」
「相原さんですか?」
ただ一言。暁はそう聞いた
「そうだな。ちょっと会ってくる」
オレは教室を離れた
「電話いれてみるか」
屋上についたオレは携帯を取り出す。学校にいるかいないかわからなかったが、授業を受けてないなら出ることが出来るだろう
(……出てくれるかどうかは知らないが)
既に着信拒否されてる可能性もないわけではないのがツラいところだ
「どちらにしても、かけるしかないか」
オレは登録していた番号にかける
『……何かよう?』
数回の呼び出し音の後、相原の声が聞こえた
「今、ドコにいるんだ?」
『そんなのアンタには関係ないでしょ?』
「悪いな。珍しいことに相原に会いたいんだ」
『………あっそ。じゃあ今、私がドコにいるか分かる?』
「なんとなく分かる」
『へぇ……じゃあ当てて見てよ』
「学校の屋上。オレのことが見えるとこ」
『………………………』
「違うか?」
「何で分かるのよ?」
声は真後ろから聞こえた
「………で?逃げたアンタが何のようよ?」
「あぁ、うん。逃げたのは謝るわ」
「…………アンタ悪いと思ってる?」
「相原が何を言おうとしてたかによるな」
「……………………」
「で?何を言おうとしてたんだ?」
まずは知ること。それをしなければ、オレは先に進めない
「そうね。それじゃ言うわ」
「ああ」
「私はアンタのこと――」
覚悟を決める
「――優秀な下僕だと思ってるから」
…………………………
「………はい?」
「二度は言わないわよ。けっこう恥ずかしいんだから」
「………人のこと下僕呼ばわりして何が恥ずかしいんだ?」
「『優秀な』がついてるでしょ?私が人のこと褒めるなんて滅多にないんだから」
…………え〜と。オレは大きな勘違いをしていたかもしれません
「………まぎらわしいんだよ!!」
「ん?何がまぎらわしいの?」
「オレはてっきり………」
「てっきり………なに?」
………こいつ、絶対分かって言ってる
「………何でもないよ」
オレは、すねたように言う
「クスクス………いい?誠矢。世の中、ありえないことを消去していって、初めて真実にたどり着くのよ」
「………はいはい、そうですね」
マジで人の神経を乱す奴だ
(………いやな感じじゃねぇんだけどな)
不思議と不快ではないのが謎だ
「とにかく!………授業行こうぜ、相原」
「そうね。行ってらっしゃい」
「………………………」
「何よ?」
「相原は行かないの?」
「行かないわね」
「どうしたら行くんだ?」
「『誠矢』しだいよ」
…………なるほど、そういうことか
「………じゃ、行こうぜ、『久乃』」
たぶん、こいつの求めてるのはこういうことだと思う。かなり、恥ずかしいけど、必要なんだと思う
「イヤよ」
「そこは流れを読んでうなずけよ!」
「ふふ、冗談よ」
「………何だかなあ」
「さっさと行くわよ、誠矢」
「そうですね、久乃様」
オレの周りは、訳の分からないことばかりだけど、日常がかえってきた。
安心の出来る日常が
ほんの少しだけ変わった日常が
そうオレは思っていた
微妙なシリアスは今日までです。
次回は球技大会の予定。コメディーにご期待ください
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