ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
第2話:よくある登校風景
「おはようせっちゃん」
さて……今の挨拶はオレに対してなんだが、挨拶をした奴はどんなやつでしょうか。
1:可愛い幼なじみの女の子
2:年上のお姉さん系先輩
3:オタクで腐れ縁の男の幼なじみ
とりあえず1と2だと思う人は夢を見すぎだ。答えは3。幼稚園からの付き合いで、その頃から呼ばれ方が変わってないから、自然とこうなったわけだ。なんども変えろと言うのに変えないので、オレは嫌味を込めた愛称(べっしょう)として、こう呼んでいた。
「おはようさん……腐れオタク」
腐れ縁のオタクだから腐れオタク。我ながらいいネーミングセンスだと思う。
「せっちゃん…僕のこと嫌い?」
「嫌いというか気持ち悪い。お前はオタクで可愛くも格好いいわけでもないしかも男にちゃんづけで呼ばれる気持ちがわかるか?」
「う……少しだけわかるかも」
「分かったんならその呼び方やめるか、女子にモテモテになるか、紙刑(しけい)されるかどうにかしろ」
「なんかどれもぴんとこないよ?」
「ていうかそのなよなよしたしゃべり方もやめろ。そのしゃべり方を男で使うんだったら整形して、可愛くなってからにしてくれ。オレの理想が崩れていく」
「せっちゃん酷いよ」
少し泣きそうになってる。マジで気持ち悪い。
「はぁ……さすがに腐れオタクなだけあるな。オタクの上に泣き虫とは……」
「……せっちゃんだってギャルゲーやってるし、泣き虫だったじゃん」

「オレは兄妹でドロドロになるのが好きなんだよ。だから妹キャラ以外は攻略しねぇ。第一、そのギャルゲーもお前が無理やり貸し付けたからだろうが」

「結論から言うと、せっちゃんのほうが危ないよ」
「妹が可愛い男の3分の1がオレと同じ趣味だと思うが?」
だって可愛いんだからしょうがないだろ。
「ふぅ……どうしてこんな人がモテるんだろ……?」
「はぁ? お前何いってんの? オレがモテてるわけないだろ?」
自慢じゃないが、オレは格好よくはないぞ。服も髪型も無頓着だし。
「そのセリフはあそこにいる子の前で言ってくれる?」
「?……あそこにいるのって佐倉じゃん。それが何と関係あんだよ?」
佐倉というのは中学の時のクラスメートだ。……下の名前は忘れたが、それなりに可愛い子だな。ただ、高校もオレと違って、商業系の学校へと入学したので、オレみたいなやつとは関係のない存在だ。
「挨拶してみたら分かると思うよ?」
ワケわからんやつだ。まぁ別に挨拶くらいしても問題ないか。性格いい子だし、オレやオタクみたいなやつが喋りかけても、無視することはないだろうし。
「おはよう佐倉」
「えっ? あっ……うん。おはよう」
よかった。きちんと返してくれた。
「……(誠矢君に話しかけられた……これは夢? 1年間続けてきたかいがあった)」
……なんかつぶやいてる。危ない子だったのか?
「まぁいいや。佐倉またな」
そういえば佐倉と話したの1年ぶりくらいだな。
「えっ?……あっ……うん。またね」
適当に言葉を交わしてまた学校へと歩き出す。
「……これでせっちゃん僕の言ってること分かったよね?」
「なんか言ってたっけ?」
「せっちゃんがモテモテだって話だよ!」
……あぁ、そういえばそんな話してたかもな。
「いや……モテてないだろ?」
コイツはマジで頭大丈夫か?
「はぁ……これまで言うのがなんか癪だったから言わなかったけど……」
「何だよ?」
「せっちゃんは確かに美形とかじゃないけど、優しそうな顔してるし、実際女の子には優しいし、運動も人並み以上にはできるし、…何より頭が良いじゃん。キャーキャー言われるタイプじゃないけど、かげで人気があるんだよ?」
無駄に壮大な嘘をつくやつだ。
「そのわりにはラブレターのひとつも貰ったことねぇぞ?」
コイツの言ってることが本当だったらひとつやふたつは貰ったことあるはずだ。
「……せっちゃんはそういうのを拒んでる雰囲気が出てるよ。気づいてない?」
「………んなもん知るかよ」
「それに、憧れだけでラブレター出す子なんて今どきほとんどいないよ?」
まぁ確かにオレの通ってきた学校はそう生徒数も多い訳でもないし、マンガみたいに下駄箱からラブレターがドダダーってのは見たことなかったな。
「まぁ告白のひとつでもされたらお前の話信じてやるよ」
どちらにしても、オレには関係ないが。
「はぁ……せっちゃんって罪な男なんだね……」
腐れオタクのせいでなんかシリアスな空気になったな。
「ん?……そういえば腐れオタク……」
「せっちゃん……その呼び方は全国のオタクの人を敵にまわすよ……で、なに?」
「お前の名前ってなんだっけ?」
「………………………」
今日も今日とて平和だった。


+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。